5月6日と6月23日によるダブル底型で戻すも108円台を維持できず
〇ドル円7/1に一時108.16まで上昇するも108円台を維持できず
〇米失業率は急回復でも戦後最悪状況は変わらず
〇株高と並走するゴールド高
〇6月5日からの下げ幅の半値戻しは実現
〇107.72を超える場合は7月1日高値108.16試しへ向かう可能性、107.30割れからは下げ再開を疑う
【概況】
ドル円は6月23日深夜に106.06円まで下げて6月5日安値105.98円に迫ったものの底割れを回避し、両安値をダブルボトム型として戻しに入り7月1日午前には108.16円まで上昇したが、その後は108円台を維持できずにやや失速している。7月1日夜はADP米民間部門雇用報告やISM製造業景況指数が予想を超える良好な数字となったもののドル円の反応は鈍く、2日夜の米雇用統計も予想を大幅に上回る改善となったが、ドル円は発表前安値107.30円から発表後高値107.72円まで0.42円の上昇にとどまり、その後は伸びず、7月3日は米国市場が休場だったために107.50円を中心にわずかなレンジ内でほぼ横ばいの推移で先週を終えた。
【失業率は急回復でも戦後最悪状況は変わらず】
7月1日夜に発表されたADP6月全米雇用報告では非農業部門就業者数が前月比236.9万人増となり、5月分も速報の276.0万人減から306.5万人増へと劇的に上方修正された。
7月2日夜に発表された6月の米雇用統計では失業率が11.1%となり5月の13.3%から改善して市場予想の12.3%も下回った。また非農業部門就業者数は前月から480万人増となり5月の269.9万人増を上回り市場予想の300万人増も上回った。この増加数は1939年の統計開始以来で最大だった。
しかし、雇用統計と同時に発表された週間新規失業保険申請件数は6月27日までの1週間で142.7万件となり前週から5.5万件減少したものの市場予想の135.5万件を上回り、失業保険受給者数は6月20日までの1週間で1929万人となり前週から5万9000人増加して市場予想の1900万人も上回った。
【株高と並走するゴールド高】
コロナショックによる急激な経済活動停止による失業急増は3月後半から4月までがピークであり、その後は経済活動再開により劇的に減少している。しかしそれでも失業率はリーマンショックの最悪期における10.0%を上回っており、2か月間で凡そ750万人が職場復帰しても現状の失業者は1900万人を超える状況にある。経済活動再開を急いだテキサス、フロリダ、アリゾナ、カリフォルニア等は感染増が止まらずに爆発的増加傾向が一段と強まり、活動再開から再び規制・停止に追い込まれ始めている。感染抑制に至ったNY州も活動再開が遅れている。
米ナスダック総合株価指数は7月2日に1万310.36ポイントの高値を付けて史上最高値を更新している。3月のコロナショック暴落を解消し、NYダウが大幅に戻したとはいえまだ暴落分を解消していないこととは対照的な強気相場となってきた。ハイテク株中心のナスダック指数においては、アフターコロナにおけるIT・ハイテク企業の活躍が期待され、米連銀による大規模な量的緩和と実質ゼロ金利政策により過剰流動性が生まれて投機マネーへと変わり復興期待の株買いが巻き起こったといえる。コロナ不況の長期化を踏まえれば、暴落に対するリバウンドは合っても史上最高値を更新するところまでの強気相場化は大方の予想を超えるものといえる。
しかしその一方で安全資産、有事資産とされるゴールドも株高と並走して上昇しており、NYゴールド先物は7月1日に1807.7ドルの高値を付けて2011年9月に付けた1920.8ドルの史上最高値に迫っている。復興期待に走る株高の一方で投資家は先行き不安のリスクヘッジとしてゴールドを買っているともいえる。因みにリーマンショック後の大規模金融緩和時代には株高と共にゴールドも歴史的な大上昇となっている。
ナスダック総合株価指数の強気相場も、あくまでも復興が前提であり、3月から4月にかけてのコロナパニックが再燃して復興は遠いという現実感が強まれば、過剰な期待相場の梯子も外されるのかもしれない。そのあたりの不透明感を踏まえているために、ドル円の動きも株高の割には鈍い状況が続いているともいえるのではないか。
7月4日時点の世界感染者数は1137万人を超えている。7月2日と3日には1日の増加数が20万人を超えた。米国は4日時点で293.5万人に増加、ブラジルも157.8万人に増えた。世界3位のロシアは67.4万人だが4位のインドは67.3万人まで拡大してロシアを超える勢いとなっている。南米や中東の感染増も止まらず、南アでも急増している。
【6月5日からの下げ幅の半値戻しは実現】
6月23日安値106.06円から7月1日高値108.16円までの上昇幅は2.10円だ。6月5日から6月23日への下げ幅3.78円に対する半値戻しラインが107.95円であり既にクリアしている。7月1日高値を超えれば3分の2戻しラインの108.58円から109円を伺い、さらに半値戻しを超えて続伸として市場心理も円安継続期待が強まると思われるので6月5日109.84円への揺れ返し上昇へ進む可能性も出てくるかもしれない。
しかし、安値から2円強の戻りでは新たな上昇トレンドを形成し始めたとまでは言えない。昨年8月26日底以降の上昇期においては、10月3日への下落幅1.97円、今年1月8日への下落幅2.07円、1月31日への下落幅1.98円は、いずれも調整的な押し目の安値となって上昇基調を継続している。このため、7月1日高値を超えて108円台に定着してからさらに続伸するような動きに発展できないうちは、6月5日からの下げ一服によるリバウンドに止まり、107円割れから6月23日安値106.06円試しへ向かい、底割れによる一段安へ向かう可能性も抱えていると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初は7月2日深夜高値107.72円を上値抵抗線、2日夜安値107.30円を下値支持線とする。
(2)107.72円を超える場合は7月1日高値108.16円試しへ向かう可能性が出てくると思うが、108円手前で失速するか、7月1日高値と同値レベルにとどまって107.70円を割り込む場合はダブルトップ型形成による下落再開が疑われる。ただし、7月1日高値を超えた後も108円台を維持して高値切り上げが続き始める場合は6月23日深夜安値からの上昇基調が発展するとみて108.50円から109円にかけてのゾーンを試すところまで上値目途を引き上げる。
(3)7月2日安値107.30円割れからは下げ再開を疑う。107円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、感染拡大や経済活動再停止の動き等から株安となる場合は106.50円前後、さらに週後半にかけては6月23日安値106.06円に迫る可能性が出てくるのではないかと考える。また107円以下での推移が続き始める場合は先行きで6月23日深夜安値を割り込んでゆく流れを想定する。(了)<5日19:35執筆>
【当面の主な予定】
7/6(月)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -25.8%、予想 15.4%)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前年同月比 (4月 -36.6%、予想 -24.0%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -11.7%、予想 15.0%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 -19.6%、予想 -6.5%)
22:45 (米) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 46.7、予想 47.0)
23:00 (米) 6月 ISM非製造業景況指数 (5月 45.4、予想 50.0)
7/7(火)
08:30 (日) 5月 全世帯消費支出 前年同月比 (4月 -11.1%、予想 -11.8%)
13:30 (豪) 豪準備銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
14:00 (日) 5月 景気先行指数CI・速報 (4月 77.7、予想 79.3)
14:00 (日) 5月 景気一致指数CI・速報 (4月 80.1、予想 84.6)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -17.9%、予想 10.5%)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -25.3%、予想 -16.9)
22:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウエブ・セミナー
27:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、オンライン討論会
7/8(水)
米・メキシコ首脳会談(ワシントン)
08:50 (日) 5月 経常収支・季調前 (4月 2627億円、予想 1兆882億円)
08:50 (日) 5月 経常収支・季調済 (4月 2524億円、予想 7168億円)
08:50 (日) 5月 貿易収支・国際収支ベース (4月 -9665億円、予想 -6390億円)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー現状判断 (5月 15.5、予想 24.6)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー先行判断 (5月 36.5、予想 39.3)
25:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウエブ・セミナー
28:00 (米) 5月 消費者信用残高 前月比 (4月 -687.7億ドル、予想 -150.0億ドル)
7/9(木)
日銀支店長会議
08:50 (日) 6月 マネーストックM2 前年同月比 (5月 5.1%、予想 5.6%)
08:50 (日) 5月 機械受注 前月比 (4月 -12.0%、予想 -3.2%)
08:50 (日) 5月 機械受注 前年同月比 (4月 -17.7%、予想 -16.8%)
10:30 (中) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 2.4%、予想 2.5%)
10:30 (中) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 -3.7%、予想 -3.2%)
15:00 (独) 5月 貿易収支 (4月 35億ユーロ、予想 70億ユーロ)
15:00 (独) 5月 経常収支 (4月 77億ユーロ、予想 100億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 142.7万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1929.0万人)
23:00 (米) 5月 卸売在庫 前月比 (4月 0.3%、予想 -1.2%)
23:00 (米) 5月 卸売売上高 前月比 (4月 -16.9%)
25:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウエブ・セミナー
7/10(金)
シンガポール総選挙
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前月比 (5月 -0.4%、予想 0.3%)
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前年同月比 (5月 -2.7%、予想 -2.0%)
16:00 (ト) 4月 失業率 (3月 13.2%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 -0.8%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前年同月比 (5月 0.3%、予想 0.5%)
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2020.07.06
コロナ感染第2波など警戒しつつ方向性探る(週報7月第1週)
先週のドル/円相場は、ややドル高。1日には6月9日以来となる108円台を回復する局面も観測されたが、続かなかった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2020.07.04
来週の為替相場見通し:『過剰流動性相場の賞味期限切れに要注意』(7/4朝)
今週のドル円相場は、週初107.19で寄り付いた後、早々に週間安値107.04まで下落しました。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。