来週の為替相場見通し:『過剰流動性相場の賞味期限切れに要注意』
〇ドル円は今週約3週間ぶり高値108.17まで上昇
〇ワクチン開発への楽観、住宅指標の好調、フロリダの感染鈍化、米追加経済対策期待等がサポート
〇その後は香港情勢をめぐる米中対立激化懸念、日銀短観の低調が重しで107円台半ばに押し戻される
〇テクニカルの上値重くファンダメンタルズもドル円下落を想起させる材料が山積み
〇来週の予想レンジ106.00ー108.50
〇ユーロドルもリスク先行ムードに一時1.1303まで上伸するも反落
〇コロナ第2波を巡るヘッドライン、7/8のEU復興基金に関する協議等の経済イベント等注視
〇ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想、来週の予想レンジ1.1100−1.1350
今週のレビュー(6/30−7/3)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初107.19で寄り付いた後、早々に週間安値107.04まで下落しました。しかし、心理的節目107.00をバックに下げ渋ると、@株高・原油高を背景としたリスク選好ムードの高まり(新型コロナワクチン開発への期待感も株価を押し上げ)や、A米5月住宅販売保留指数(結果44.3%、予想19.7%、※過去最大の伸び率を記録)の力強い結果、B直近高値(6/16)107.64を上抜けたことに伴う短期筋のロスカット、C月末ロンドンフィキシングにかけてのドル買い・円売り、D米フロリダ州における感染者数の増加ペース鈍化、Eムニューシン米財務長官による「7月末までに上院と下院が協力し追加救済策を進める」との楽観発言、F米長期金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、7/1日本時間朝方には、一時約3週間ぶり高値となる108.17まで上昇しました。
もっとも、同水準では上値も重く、200日移動平均線をバックに戻り売りが強まると、G低調な日銀短観を受けたリスク回避ムードの再燃(日経平均株価の下げ幅拡大)や、H香港情勢を巡る米中関係の先行き悪化懸念、I短期筋のロスカット(108円台での上値の重さを嫌気した見切り売り)が重石となり、結局107.48まで反落しての越週となっております。尚、今週発表された米経済指標(米6月ISM製造業景況指数や、米6月雇用統計など)は軒並み力強い結果となりましたが、ドル円相場への影響は限定的となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1227で寄り付いた後、@米5月住宅販売保留指数(結果44.3%、予想19.7%、※過去最大の伸び率を記録)の力強い結果(ドル買い)や、Aドイツ議会は「ECBの債券購入プログラム支持の動議を計画している」との一部報道(ユーロ売り)、Bユーロ圏6月消費者物価指数の上昇率鈍化、C米長期金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、週央にかけて、一時1.1185まで下げ幅を広げました。しかし、Cユーロ圏製造業PMIの良好な結果や、D新型コロナワクチン開発への期待感(米ファイザーやバイオンテックが良好な治験結果を出したとの報道→米主要株価指数上昇)、E良好な米経済指標(前月分が大幅に上方修正された米6月ADP雇用統計や、2019年4月以来の高水準を記録した米6月ISM製造業景況指数)を受けたリスク選好ムードの高まり、Fフォンデアライエン欧州委員長による「EU復興基金について7/8に協議を行う」との発言(EU復興基金への期待感の高まり)が支援材料となると、翌7/2には、一時1.1303まで反発する場面も見られました。
もっとも、心理的節目1.1300付近では戻り売り圧力も根強く、伸び悩むと、引けにかけて再び反落。G良好な米経済指標(非農業部門雇用者数は前月比+480万人と過去最大を記録。失業率も5月の13.3%から11.1%へ大幅に低下)を受けたドル買い圧力や、Hドイツ議会による「ECBの債券購入を支持する」との一部報道、I新型コロナ第2波リスクへの警戒感が重石となる中、結局1.1246まで反落しての越週となっております。
来週の見通し(7/6−7/10)
<ドル円相場>
ドル円は、7/1に記録した約3週間ぶり高値108.17をトップに反落に転じると、7/2には一時107.33まで反落しました。108円台での滞空時間は極めて短く(108円台での滞在時間は僅か100分程度。200日移動平均線をバックに戻り売り圧力が根強い展開)、テクニカル的にみて、「上値の重さ」を強く印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きな米国=イールドカーブ・コントロール導入の可能性もあり。但し、今週発表されたFOMC議事要旨では「イールドカーブ・コントロール(YCC)には更なる分析が必要」と、YCCの早期導入観測が幾分後退する結果となった)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(今週は良好な米経済指標が相次ぎましたが引き続き予断を許さない状況)、B米中対立激化懸念(全人代は6/30、香港国家安全維持法案を可決。米上院は7/2、中国に制裁を科す香港自治法案を全会一致で可決)、C世界的な貿易戦争再開リスク(米大統領選挙への不確実性が増しつつあり、トランプ米政権による強硬外交が強まる恐れあり)、
D朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、E新型コロナ第2波リスク(米国や中国、欧州に加えて、日本においても新型コロナ感染者数が急増)、F日本経済の先行き不透明感(鉱工業生産、日銀短観共に冴えない結果。日本経済低迷→インフレ鈍化→実質金利上昇→円高の波及経路に要注意)、G全米各地で続く人種差別抗議デモなど、ドル円相場の下落を想起させる材料が山積みの状態です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。世界的な株価上昇(大規模金融緩和→過剰流動性→リスクアセット買い)がリスク選好ムードを演出してはいるものの、ここから先は、新型コロナ第2波リスク到来及び、世界的な貿易戦争再開に伴うリスクオフに注意が必要でしょう。欧米株及び米長期金利の動向や、新型コロナ第2波リスクを巡るヘッドライン、米中の主要経済指標の結果(7/6の米6月ISM非製造業景気指数、7/9の中国6月消費者物価指数及び生産者物価指数、米新規失業保険申請件数、7/10の米6月生産者物価指数など)、世界的な貿易戦争に係るヘッドライン、香港国家安全維持法案に対する各国の対応(米国は中国に制裁を科す香港自治法案を可決)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(過剰流動性相場の賞味期限切れに伴うリスクオフ再開に要注意)。
来週の予想レンジ(USDJPY):106.00ー108.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、6/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1423をトップに反落に転じると、6/22にかけて、一時1.1168まで急落しました。この間、一目均衡表転換線やボリンジャーミッドバンドを下抜けした他、約2週間に亘り継続したバンドウォーク(ボリンジャーバンド上限に沿って上昇を続ける状態=強い上昇トレンドを示唆)も終了するなど、テクニカル的にみて、やや「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(今週は一時1.1303まで反発する場面も見られましたが、週後半にかけて再び値を崩す展開)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、A米中対立激化懸念、B世界的な貿易戦争再開リスク(米大統領選挙への不確実性が増しつつあり、トランプ米政権による強硬外交が強まる恐れあり)、C朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、D新型コロナの第2波リスク(世界的な新型コロナ感染拡大リスク)、E新型コロナ復興基金を巡るユーロ圏各国の隔たり、FECBによるEUREP(ユーロ圏以外の中銀にユーロの流動性を供給)導入など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にもファンダメンタルズ的にも「下落リスク」が警戒されます。欧米株や米長期金利の動向や、新型コロナ第2波リスクを巡るヘッドライン(米国や中国で広がるパンデミックが欧州圏に波及するリスク)、ユーロ圏の主要経済イベントの結果(7/6のユーロ圏5月小売売上高や、7/7のドイツ5月鉱工業生産、7/8のEU復興基金に関する協議など)、EUと英国との自由貿易協定交渉(交渉難航ならユーロの下落要因)を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(7/17−7/18に予定されているEU首脳会議に向けて、EU復興基金への先行き不透明感が広がる展開)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1100−1.1350
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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