ドル円見通し 先週の大幅下落一服で107円台回復だが上値も重い(20/6/16)

株安によるリスク回避感が金融市場全般の手仕舞いを助長したことでドルストレートでのドル高感が強まっていたこともありドル円の下落も限定的なものにとどまった。

ドル円見通し 先週の大幅下落一服で107円台回復だが上値も重い(20/6/16)

ドル円見通し 先週の大幅下落一服で107円台回復だが上値も重い

〇ドル円は昨晩株価も107円台前半で急反発に底堅く推移
〇FRBはETFの購入に加えて個別企業の社債買い取りも始めると表明、NY連銀製造業景況指数は予想比改善
〇ドル円は株式を中心とする市場が復興への楽観を取り戻せるか次第
〇6/17ハワイの米軍基地で予定されている米中会談にも注目
〇107円台を維持するうちは上昇余地あり、107.57超えからは三角持ち合い上放れ、108円台前半へ
〇106.97円割れからは三角持ち合い下放れ開始、106.55割れからは105円台後半を目指すか

【概況】

ドル円は6月2日夜からの米10年債利回り上昇をきっかけとして5月19日高値108.07円以降の持ち合いを上放れし、6月5日の米雇用統計が予想外に前月から改善したことで6月5日深夜には109.84円まで続伸した。その背景は株高の進行と米10年債利回りの上昇だったが、週明けからは米10年債利回りが低下に転じ、6月11日はNYダウが前日比1861.82ドル安となり世界連鎖株安商状に入る中で下げ足を速め、6月12日午前には106.55円まで安値を切り下げた。6月5日深夜高値からの下げ幅は3.29円に拡大し、日足は6月8日から11日まで4日連続の陰線での下落となった。

6月12日夜にかけてはNYダウの下げが一服したことで107.50円台へ持ち直していたが、週明けの15日はアジア市場時間での株安が加速したことで午後には106.97円まで反落する場面があった。しかし株安によるリスク回避感が金融市場全般の手仕舞いを助長したことでドルストレートでのドル高感が強まっていたこともありドル円の下落も限定的なものにとどまった。
6月15日夜は一時760ドル安まで下げていたNYダウが反騰に転じたことでリスク回避感が緩み、ユーロやポンド等が戻したことでドル安感が再燃したことがドル円の上値を抑えつつ、株式市場の持ち直しによるリスク選好性がドル円の下値を支えたため107円台前半での推移でしっかりした。

米連銀(FRB)は5月に開始した社債の上場投資信託(ETF)の購入に加えて個別企業の社債買い取りも始めると表明した。
米10年債利回りは一時0.66%まで低下していたが終盤の持ち直しで前日比0.01%上昇の0.72%となった。
NY連銀の6月製造業景況指数はマイナス0.2となり、5月のマイナス48.5から大幅に改善して市場予想のマイナス29.8を上回った。また6か月先の見通しについても56.5となり5月の29.1から改善した。

【楽観的復興期待が回復できるか】

NYダウは6月8日に27580.21ドルまで上昇して2月12日に付けた史上最高値29568.57ドルに迫った。ハイテク株中心のナスダック総合指数は6月10日に10086.99を付けて初めて1万ポイントの大台に乗せて史上最高値を更新し、3月のコロナショックによる暴落を解消した。6月5日の米雇用統計が予想外に改善したことも押し上げ要因となったが、NY州での感染爆発が収まり始めて全米での経済活動再開の動きが楽観的なパンデミック終息と復興期待を助長し、米連銀による大規模金融緩和と米政府による財政出動が株高のエンジンとなってきた。しかし全米の感染者数が200万人を超えたとの報道からは再び感染拡大への懸念が強まり始めた。テキサスやカリフォルニア、フロリダ等での感染者増加が第二波への懸念を強め、6月11日未明の米FOMCに対しても成長率や失業率の予想数字が深刻なものだったことで足元の不況感が強まる状況となり、NYダウの前日比1861.82ドル安への下落を招いた。

NYダウは6月12日に477.37ドル高、15日に157.62ドル高と戻し、暴落商状は一服している。しかし感染拡大の第二波への懸念が強まるようだとこれまでの様に楽観的な上昇再開へと進めない可能性もある。6月16日朝時点の世界感染者数は810万人を超えて死者も43.8万人を超えた。米国も15日時点で前日から2万人近い増加で218万人に達した。ブラジルは88.8万人、ロシアが53.7万人、インドが34.3万人と増え、世界レベルでのパンデミックはまだまだ拡大の最中だ。
金融市場全般が楽観を取り戻せば為替市場はリスク選好でユーロやポンド等が買われてドルストレートでのドル安へ向かい、クロス円では円安を助長してドル円においてもドル高円安へと復調する可能性はあるだろう。しかし楽観を回復するほどに至らなければドル円は膠着状態で横ばい程度にとどまり、悲観が強まれば円高が加速しかねない状況にあると思われる。

【米中関係進展あるか】

ロイター通信が6月16日に報じたところによると、ポンペオ米国務長官が6月17日にハワイの米軍基地で中国当局者と会談する方向で調整しているという。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは中国側代表は外交政策統括の楊共産党政治局員が対応するという。新型コロナウイルス感染源問題と香港への国家安全法導入をめぐってトランプ政権は対中批判を強めてきた。11月の大統領選挙を控える中で感染拡大が収まらないことと米国内の人種差別問題がトランプ大統領再選への逆風ともいわれている。対中強硬姿勢を強めるのか融和による外交成果を強調するスタンスへ進むのか、金融市場も注目するところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月8日夜の急落により9日朝時点からは6月5日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして9日夜から11日夜にかけての間への下落を想定してきた。6月12日午後まで続落したもののその後は安値から凡そ1円を戻しているため、12日午後安値を直近のサイクルボトムとする。6月12日夜以降は107.50円台を抵抗として60分足レベルでの三角持ち合いの様相のため、6月15日朝高値107.56円を超えて続伸する場合は三角持ち合い上放れによる上昇の継続として17日夜から22日朝にかけての間への上昇を想定する。6月15日午後安値106.97円を割り込む場合は三角持ち合いの支持線割れによる下げ再開と仮定して12日午後安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして17日午後から19日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月12日夜以降の三角持ち合いにより遅行スパンは実線と交錯しているが先行スパンは上抜いてきている。このため6月15日朝高値107.56円を超えて続伸に入る場合は遅行スパン好転中の高値試し優先とし、15日午後安値割れからは先行スパン転落となるため下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は三角持ち合いのために50ポイントを挟んで方向感に乏しい。60ポイント超えから続伸に入れば740ポイント超を目指す上昇を想定するが、40ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント以下への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月15日午後安値106.97円を下値支持線、6月15日朝高値107.57円を上値抵抗線とする。
(2)107円台を維持するうちは上昇余地ありとし、15日朝高値超えからは三角持ち合い上放れとして108円台前半への上昇を想定する。108.25円以上は反落注意とするが、108円に到達した後も107.50円以上での推移なら17日午前も高値試しを続けやすいとみる。
(3)106.97円割れからは三角持ち合い下放れ開始とみて12日午後安値106.55円試しとし、底割れからは105円台後半を目指す下落を想定する。15日午後安値106.97円以下での推移が続くうちは17日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6/16(火)
休場、南ア
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合
10:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
10:30 (豪) 1-3月期 住宅価格指数 前期比 (前期 3.9%、予想 2.5%)
10:30 (豪) 1-3月期 住宅価格指数 前年同期比 (前期 2.5%、予想 8.1%)
15:00 (独) 5月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 5月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
15:00 (英) 5月 失業保険申請件数 (4月 85.65万件)
15:00 (英) 5月 失業率 (4月 5.8%)
15:00 (英) 4月 失業率・ILO方式 (3月 3.9%、予想 4.7%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見

18:00 (独) 6月 ZEW期待指数 (5月 51.0、予想 60.0)
21:30 (米) 5月 小売売上高・全体 前月比 (4月 -16.4%、予想 8.0%)
21:30 (米) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 -17.2%、予想 5.3%)
22:15 (米) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -11.2%、予想 3.0%)
22:15 (米) 5月 設備稼働率 (4月 64.9%、予想 66.9%)
23:00 (米) 4月 企業在庫 前月比 (3月 -0.2%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 6月 NAHB住宅市場指数 (5月 37、予想 45)
23:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、半年に1度の議会証言(上院銀行委員会)

6/17(水)
07:45 (NZ) 1-3月期 経常収支 (前期 -26.57億NZドル、予想 15.85億NZドル)
08:50 (日) 5月 通関貿易統計・季調済 (4月 -9963億円、予想 -6751億円)
08:50 (日) 5月 通関貿易統計・季調前 (4月 -9304億円、予想 -1兆0518億円)
15:00 (英) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 -0.2%、予想 0.0%)
15:00 (英) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.8%、予想 0.5%)
15:00 (英) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 1.4%、予想 1.3%)
15:00 (英) 5月 小売物価指数 前月比 (4月 0.0%、予想 0.1%)
15:00 (英) 5月 小売物価指数 前年同月比 (4月 1.5%、予想 1.2%)
15:00 (英) 5月 生産者物価コア指数 前年同月比 (4月 0.6%、予想 0.5%)

18:00 (欧) 4月 建設支出 前月比 (3月 -14.1%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前年同月比 (3月 -15.4%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
21:30 (米) 5月 住宅着工件数・年率換算件数 (4月 89.1万件、予想 110.0万件)
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 前月比 (4月 -30.2%、予想 23.5%)
21:30 (米) 5月 建設許可件数・年率換算件数 (4月 107.4万件、予想 125.0万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 前月比 (4月 -20.8%、予想 18.0%)
23:00 (米) パウエルFRB議長、半年に1度の議会証言(下院金融委員会)
29:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、オンライン講演



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