ドル円見通し 107円台中後半での持ち合いも7日を経過、持ち合い放れか(20/5/29)

107.70円を挟んだ持ち合いの様相だが、この状況も既に7日間を経過しているので、そろそろ上下いずれかへ持ち合いを放れ始めてもよいところに来ていると思われる。

ドル円見通し 107円台中後半での持ち合いも7日を経過、持ち合い放れか(20/5/29)

ドル円見通し 107円台中後半での持ち合いも7日を経過、持ち合い放れか

〇ドル円107円台中後半での持ち合い継続
〇28日は全人代が国家安全法を採択したことによる米中対立激化懸念、欧州通貨高がドル売り材料、アフターコロナの経済再開期待が円売り材料
〇5/19以降0.80円幅の値動き、そろそろ上下いずれかへ持ち合いを放れ始めてもよいところに来ているか
〇米1Q実質GDP改定値は年率換算で前期比5.0%減の下方修正、足元経済の悪化は深刻
〇トランプ大統領は本日香港問題に関し記者会見の予定、要注意
〇ドル円107.75以上で推移中は上昇余地あり、108.07以上に続伸の場合持ち合い上放れ
〇107.50割れで弱気転換、107.34割れで持ち合い下放れ

【概況】

ドル円は5月6日(7日未明)安値105.98円から5月19日夜高値108.07円まで上昇してきたが、その後は新たな高値更新へ進めずに107円台中後半での持ち合いを続けている。5月20日深夜安値107.43円から5月22日夕安値107.29円へと安値を若干切り下げたものの、その後は新たな安値更新を回避し、26日高値107.92円から27日夜高値107.94円へと高値も若干切り上げたが19日夜高値及び108円には届かずにいる。

5月28日は中国の全国人民代表大会(全人代)が28日に香港への統制を強化する国家安全法の導入を採択し、これに対して欧米等が批判を強めていることがリスク回避材料となったことと、ユーロ高が続いていることや英ポンドが反騰したこと等でのドル安感もドル円の上値を抑えた。一方では経済活動再開によるアフターコロナの復興期待感によるリスクオン心理がドル円の下値を支えている。
強弱材料の決め手に欠いた状況の中で5月19日高値以降は凡そ0.80円幅の値動きにとどまり、107.70円を挟んだ持ち合いの様相だが、この状況も既に7日間を経過しているので、そろそろ上下いずれかへ持ち合いを放れ始めてもよいところに来ていると思われる。29日には米トランプ大統領が香港問題を巡って中国への対抗措置を表明するとしているので発言に注目が集まるところだ。

【米1−3月期GDPは下方修正、足元の経済指標は深刻】

米経済指標も想定されている悪化内容ではあったが、足元の不況感を一段と強めている。
米労働省が発表した5月23日までの1週間の新規失業保険申請は212万3000件となり、前週から32万3000件減少したものの市場予想の210万件を上回った。感染拡大による経済活動が急激に停止した3月中旬からの10週間の累計は4000万件を超えた。ただ、申請件数から1週遅れの失業保険受給者総数は5月16日までの1週間で2105万2000人となり386万人減少して市場予想の2575万人を下回った。
米商務省が発表した4月の耐久財受注は前月比17.2%減となり市場予想の19.0%減を上回った。しかし3月の16.6%減からは2か月連続のマイナスであり、低下率は2014年8月の18.4%減以来5年8か月振りの悪化となった。

米商務省が発表した2020年1−3月期の実質GDP改定値は年率換算で前期比5.0%減となり,速報値の4.8%減から下方修正された。リーマンショックの2008年10−12月期に8.4%減となったが、それ以来11年ぶりの悪化率だった。マイナス成長は6年ぶりであり、4−6月期についてはさらに落ち込むとみられるが、米議会予算局(CBO)は既に37.7%減との予想を示している。
米不動産業者協会(NAR)が発表した4月の中古住宅販売仮契約指数は前月比21.8%低下で前月の20.8%減から悪化、市場予想の15%低下を下回った。前年同月比は3月の14.5%減から34.6%減へと大幅低下した。
NYダウは連休明けの5月26日に前日比529.95ドル高と上昇し、27日も553.16ドル高と続伸して2日間で千ドル以上の上昇となっていたが、28日は連騰の反動や香港問題を意識してやや下げ、前日比147.63ドル安で終了した。

【米中対立問題】

中国の全人代は28日に閉幕したが、香港への国家安全法の導入を決定した。欧米は批判を強めているが、米トランプ政権は強力な対抗措置を取る姿勢を示し、29日には方針を表明するとしている。一国二制度を前提として香港に認めてきた関税やビザ発給などの優遇措置を停止する可能性や中国に対する各種の制裁の動きが強まる可能性がある。
米国は昨年11月に成立した「香港人権・民主主義法」により米国務長官は香港の「高度な自治」が機能しているかどうかを検証して議会に報告することになっており、ポンペオ長官は27日に「自由で繁栄した香港が中国の模範になると期待したが、中国が香港に権威主義モデルを押し付けていることが明白になった」と述べて中国を批判した。
米下院は5月27日に中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族弾圧に関わった中国当局者に制裁を科すよう大統領に求める「ウイグル人権法案」を可決した。

トランプ米大統領は5月28日、中国に関する米国の新たな政策を29日の記者会見で発表するとした。米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は米CNBCのインタビューに対し、「要するに中国は香港から自由を奪った」「米国として見過ごすことはできない。この件に関して中国は責任を問われることになる。必要とあれば香港に対して今後は中国と同様の扱いをする必要が出てくる可能性がある」と述べた。
米中は昨年まで貿易戦争的な関税強化合戦を続けてきたが、今年1月には第一段階の通商合意に到達した。この合意はまだ活きているが、コロナショックによる世界経済の停滞等により合意内容が実現しているのかどうかという懸念もある。新型コロナウイルスの発生源とされる中国と世界最大の感染被害国となった米国との対立感に加え欧米としては相当にセンシティブな香港問題が焦点化してきていることは、11月の大統領選挙での再選を目指すトランプ政権が中国批判姿勢を強めてゆくことへの懸念も深まるところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月26日午前高値からの反落により27日午前時点では26日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとしていたが、27日午前の下落では新たな安値更新を回避して27日夜には26日午前高値をわずかに超えたため、28日朝時点では27日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期は29日午前から6月2日午前にかけての間としたが、5月19日以降は持ち合いレンジでの往来のために戻りは短命となる可能性もあると注意した。
5月27日夜高値からの反落が続いているため、サイクルを短縮した往来相場の継続として27日夜高値を直近のサイクルトップとする。ボトム形成期は6月1日から3日にかけての間とするが、5月19日以降の持ち合いによる往来のため、27日夜高値超えからは強気サイクル入りとして6月1日夜から3日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では5月19日以降の持ち合い相場のために遅行スパン及び先行スパンは実線との交錯を繰り返している。27日夜高値超えからは一段高入りと仮定して遅行スパン好転中の高値試し優先とし、27日安値割れからは一段安入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は40ポイント台での小動きとなっている。40ポイントを割り込む場合は下落感が強まるために30ポイント以下への下落を想定するが、60ポイントを超えるところからは上昇再開及び一段高入りの可能性ありと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月27日安値107.34円を下値支持線、5月27日夜高値107.94円を上値抵抗線とする。
(2)107.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、5月27日高値超えからは5月19日高値108.07円試しとし、さらに高値更新からは持ち合い上放れにより108円台中盤への上昇を想定する。27日高値を上抜いた後も107.75円以上での推移なら週明けも高値試しへ進みやすいとみる。
(3)107.50円割れからは弱気転換注意とし、27日午前安値割れからは107円前後への下落を想定する。ただし持ち合い下放れにより下げが加速しやすいと注意し、107円割れから続落に入る場合は106円台中後半へ下値目途を引き下げ、週明けも続落へ進みやすいと考える。

【当面の主な予定】

5/29(金)
14:00 (日) 5月 消費者態度指数・一般世帯 (4月 21.6、予想 21.1)
14:00 (日) 4月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (3月 -7.6%、予想 -12.1%)
15:00 (独) 4月 小売売上高指数 前月比 (3月 -5.6%、予想 -12.0%)
15:00 (独) 4月 小売売上高指数 前年同月比 (3月 -2.8%、予想 -14.0%)
15:45 (仏) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 -5.8%、予想 -5.8%)
16:00 (ト) 1-3月期 GDP 前年比 (前期 6.0%、予想 4.9%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.4%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.8%)

21:30 (加) 1-3月期 GDP 前期比年率 (前期 0.3%、予想 -10.0%)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 -2.0%、予想 -6.5%)
21:30 (米) 4月 個人消費・PCE 前月比 (3月 -7.5%、予想 -12.6%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 1.3%、予想 0.5%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前月比 (3月 -0.1%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (3月 1.7%、予想 1.1%)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 35.4、予想 40.0)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 73.7、予想 74.0)
24:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ヴァーチャル討論会

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