ドル円見通し ダブル底ブレイクに余裕乏しい
【概況】
ドル円は4月15日午前安値で106.91円を付けて4月2日未明安値と同値としたが、安値更新をひとまず回避した。4月16日午後に108.08円まで戻してから16日深夜に107.16円まで反落し、17日朝に再び108.07円まで戻したものの戻り高値切り上げへ進めずに17日夜には107.30円まで再び反落した。
4月2日未明(4月1日付け日足)安値を割り込めば3月24日の戻り高値からの下落は二段下げ型へと発展して円高感が強まるところだったが、同値で踏みとどまったことによりダブル底形成から持ち直す可能性も残った。しかし4月16日と17日の二度の108円超えを維持できなかったため戻りも鈍い印象となり、ダブル底を維持できるのかどうかは微妙となっている。
4月15日安値106.91円の後は、16日深夜安値107.16円と17日深夜安値107.30円がやや切り上がりとなっているもののほぼ1直線で下値支持線を形成しているため、支持線を維持するうちは上昇余地も残るが、支持線割れとなれば4月15日安値試しへ進み、安値更新ならダブル底が破れての一段安入りとなりかねないところにある。
【パンデミック後の復興期待は時期尚早】
4月15日に発表されたニューヨーク連銀の4月製造業景況指数はマイナス78.2でリーマン・ショック後の2009年2月のマイナス34.3を下回って2001年の統計開始以来過去最低となり、3月の米鉱工業生産も前月比マイナス5.4%低下で1946年1月以来74年ぶりの低水準、3月の小売売上高も前月比マイナス8.7%となり1992年の統計開始以来最大の落ち込みとなった。
4月16日に発表された労働省の新規失業保険申請件数も4月11日までの1週間で524万5000件となり、3月中旬からの1か月間で累計は約2200万件となった。米国労働者約1億4600万人の約15%が失業申請したこととなった。失業保険受給者総数も4月4日までの1週間で1197万6000人となった。しかし、これらの戦後最悪級の経済指標悪化に対しても株式市場はさほど弱気反応を見せなかった。
4月17日のNYダウは前日比704.81ドル高と上昇した。感染拡大と経済停滞は続き、米経済指標の悪化も極めて深刻な状況にあるが、パンデミックによる経済混乱が収束すれば復興需要で株高は回復するというのが3月後半からのNYダウ反騰を支えており、すでに2月12日から3月23日への暴落的な下げ幅の半値戻しを実現している。
4月16日にトランプ米大統領は感染拡大が峠を超えた後の経済活動再開へ向けたガイドラインを公表し、29の州では間もなく再開できる見通しを示した。NY州の惨状は続いているものの株式市場はかなり楽観的といえる。その背景にはリーマンショックで1年強の暴落相場が終了した後に史上最高値更新へと歴史的大上昇が発生したこととその再現期待があるのだろう。治療法が確立されてパニックが落ち着けば復興需要による強気相場の復活もあるかもしれない。
しかし、100年前のスペイン風邪によるパンデミックでは第1波から第3波まで三度の感染爆発が発生し、終息までには丸3年を要した。当時よりも医療技術は飛躍的に発展しているとはいえ、今回も第2波、第3波と感染爆発を繰り返さないとは限らず、通常のインフルエンザと変わらないような扱いとなるまでには時間もかかるだろう。また中国が落ち着けば欧州で爆発し、さらに米国へ波及し、先行きは中南米やアフリカ等へ爆発エリアが移ってゆき、また中国、欧米でも第2波、第3波に襲われる可能性も大いに残っているのだろうと思われる。
リーマンショックは金融資産バブル崩壊による金融機関・大企業を中心とした破綻の連鎖だったが、コロナショックは経済活動そのものを止めてしまい経済活動と成長の土台である庶民一般が大打撃を被る。感染爆発が簡単には終わらずに長期化する可能性が再認識され、リーマンショック後のようにはいかないということを株式市場及び金融市場全体が意識し始めれば、再び総悲観に見舞われかねないと危惧される。
【円の立ち位置はまだ定まらず?】
ドル円は2月20日高値112.21円から3月9日安値101.23円へ急激な円高ドル安となり、下げ幅は10.98円まで拡大した。ところが3月9日からはV字反騰となり3月24日高値111.71円まで切り返し、戻り幅は10.48円、暴落の9割超を解消した。しかし2月20日高値を超えられずに4月1日(2日未明)にはV字反騰幅に対する半値押し106.47円に迫る106.91円まで反落した。当初の円高はコロナショックに対するリスク回避による円高だったが、その後のV字反騰はコロナショックが深刻化する中でドル資金需給がひっ迫してのドル全面高が背景となり、3月後半はG7等のドル資金供給協調た主要国の利下げ及び量的金融緩和・財政出動によりドル高が緩んだことが背景だった。
4月に入ってからは方向感が定まらない状況にある。4月15日への下落では4月1日安値と同値にとどまったががその後の反発も鈍い。前述のような株式市場の反騰が続いているにもかかわらず株高と同調した円安には進まない。ダブル底型を形成してその後は下げ渋っているものの勢い付かないまま先週を終えている。
コロナショックに対する収束期待と株高がさらに続けばリスクオンによる円安ドル高という通常モードの反応で進む可能性はあるだろう。しかし株高が続いても株式市場程には楽観できない状況という為替市場の認識も続けば円安にも進み難い。
コロナショックはさらに深刻化するという悲観が強まって株安再開となる場合は、まずはリスクオフでの円高反応へ進むのだろうが、その際に新興国通貨安・資源通貨安が急激に進行する場合は3月24日にかけてのドル全面高と同様に円も売られる可能性がある。また欧米が感染爆発の峠を越える期待が強まる中で一歩遅れて日本の感染爆発が深刻化する場合は日本売りによる円安ということも可能性がないとは言えない。
いずれの進路もあり得るところだが、ファンダメンタルズの解釈が揺らいでいるときはテクニカル・チャート分析を基本として逆張ないしは順張りで対処してゆき、流れが見えたところでファンダメンタルズ的な解釈も落ち着いてくるという考え方で構えて置くべきなのだろうと思う。
【当面のポイント、ダブル底かダブル底破りかの見極め】
(1)4月2日未明と4月15日午前の両安値をダブル底として戻しにかかる可能性があるが、ダブル底完成のためにはその中間にある4月6日高値109.37円を超える必要がある。4月6日高値挑戦へ進むには、まず、4月16日と17日に108円乗せを維持できずに失速したところの抵抗線=108.08円を超える必要がある。108.08円を超えてその後も108円台を維持しつつ108.50円超えへ進めば、4月6日高値試しへ向かう可能性が高まると考える。仮に4月6日高値109.37円を超える場合は3月24日高値111.71円をもう一度目指す上昇期に入るのだろうと考える。
(2)108.08円を超えないかわずかに超えても失速して4月17日深夜安値107.30円を割り込む場合はダブル底ラインの106.91円試しへ向かい、底割れの場合はダブル底破りによる一段安開始と考える。その場合は第一に4月16日への戻り幅の倍返しで105.74円、第二に4月6日への戻り幅の倍返し104.45円を目指し、先行きは3月9日安値101.23円を目指す流れと考える。(了)<19日21時30分執筆>
【当面の主な予定】
4/20(月)
07:45 (NZ) 1-3月期 消費者物価 前期比 (前期 0.5%)
07:45 (NZ) 1-3月期 消費者物価 前年同期比 (前期 1.9%)
08:50 (日) 3月 貿易統計・通関・季調前 (2月 1兆1098億円)
08:50 (日) 3月 貿易統計・通関・季調済 (2月 4983億円)
15:00 (独) 3月 生産者物価指数 前月比 (2月 -0.4%)
17:00 (欧) 2月 経常収支・季調済 (1月 347億ユーロ)
17:00 (欧) 2月 経常収支・季調前 (1月 87億ユーロ)
18:00 (欧) 2月 貿易収支・季調済 (1月 173億ユーロ)
18:00 (欧) 2月 貿易収支・季調前 (1月 13億ユーロ)
4/21(火)
10:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨
14:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
17:30 (英) 3月 失業保険申請件数 (2月 1.73万件)
17:30 (英) 3月 失業率 (2月 3.5%)
17:30 (英) 2月 失業率・ILO方式 (1月 3.9%)
18:00 (独) 4月 ZEW景況感・期待指数 (3月 -49.5)
23:00 (米) 3月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (2月 577万件、予想 540万件)
23:00 (米) 3月 中古住宅販売件数 前月比 (2月 6.5%、予想 -6.4%)
4/22(水)
15:00 (英) 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 0.4%)
15:00 (英) 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 1.7%)
15:00 (英) 3月 消費者物価コア指数 前年同月比 (2月 1.7%)
15:00 (英) 3月 小売物価指数 前月比 (2月 0.5%)
15:00 (英) 3月 小売物価指数 前年同月比 (2月 2.5%)
15:00 (英) 3月 生産者物価コア指数 前年同月比 (2月 0.4%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 9.75%)
22:00 (米) 2月 住宅価格指数 前月比 (1月 0.3%、予想 0.4%)
23:00 (欧) 4月 消費者信頼感速報値 (3月 -11.6)
4/23(木)
休場、トルコ
14:00 (日) 2月 景気先行指数CI・改定値 (速報 92.1)
14:00 (日) 2月 景気一致指数CI・改定値 (速報 95.8)
15:00 (独) 5月 GFK消費者信頼感 (4月 2.7)
15:00 (英) 3月 小売売上高 前月比 (2月 -0.3%)
15:00 (英) 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 0.0%)
15:00 (英) 3月 小売売上高・除自動車 前月比 (2月 -0.5%)
15:00 (英) 3月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (2月 0.5%)
16:30 (独) 4月 製造業PMI速報値 (3月 45.4)
16:30 (独) 4月 サービス業PMI速報値 (3月 31.7)
17:00 (欧) 4月 製造業PMI速報値 (3月 44.5)
17:00 (欧) 4月 サービス業PMI速報値 (3月 26.4)
17:30 (英) 4月 製造業PMI速報値 (3月 47.8)
17:30 (英) 4月 サービス業PMI速報値 (3月 34.5)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週
22:45 (米) 4月 製造業PMI速報値 (3月 48.5、予想 38.5)
22:45 (米) 4月 サービス業PMI速報値 (3月 39.8、予想 39.0)
23:00 (米) 3月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (2月 76.5万件、予想 67.5万件)
23:00 (米) 3月 新築住宅販売件数 前月比 (2月 -4.4%、予想 -11.8%)
4/24(金)
08:01 (英) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 -9)
08:30 (日) 3月 全国消費者物価指数 前年同月比 (2月 0.4%)
08:30 (日) 3月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (2月 0.6%)
08:30 (日) 3月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (2月 0.6%)
08:50 (日) 3月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (2月 2.1%)
13:30 (日) 2月 全産業活動指数 前月比 (1月 0.8%)
17:00 (独) 4月 IFO景況感指数 (3月 86.1)
21:30 (米) 3月 耐久財受注 前月比 (2月 1.2%、予想 -10.0%)
21:30 (米) 3月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (2月 -0.6%、予想 -4.0%)
23:00 (米) 4月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報値 (速報 71.0、予想 68.1)
オーダー/ポジション状況
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