ドル円見通し 金融市場全体の動揺続く中でドル高と円高の攻防(20/3/17)

夜にはG7が緊急TV会議を実施して協調しての感染問題対策姿勢をアピールしたが金融市場の動揺は収まらなかった。

ドル円見通し 金融市場全体の動揺続く中でドル高と円高の攻防(20/3/17)

ドル円見通し 金融市場全体の動揺続く中でドル高と円高の攻防

【概況】

ドル円は9日夜に101.23円まで下落して2月20日夜高値112.21円からの下げ幅は10.98円にまで拡大したが、NYダウの持ち直しや暴落し過ぎの反動で揺れ返しの上昇となって11日未明には105.91円まで戻し、その後は様子見となっていたが、世界連鎖株安が再び深刻化する中でドルへの投資マネー還流によるドル高感が強まってドル円は3月14日早朝に108.50円まで一段高となって先週を終えた。

3月16日早朝、米連銀は3月3日の緊急利下げに続いて今月二度目の緊急利下げと量的緩和再開を決定した。日銀も緊急会合によりETF買い入れ等の量的緩和拡大を決定した。さらに夜にはG7が緊急TV会議を実施して協調しての感染問題対策姿勢をアピールしたが金融市場の動揺は収まらなかった。
ダウ先物は16日早朝の取引開始早々から1000ドル以上の急落でサーキットブレーカーが発動し、その後は取引中断が続いた。日経平均も日銀の追加緩和発表直後に前日比300円を超える上昇を一瞬見せたが早々に失速して一時は500円安を超える急落となり、終値も429.01円安に終わった。

上海総合株価指数も3.4%安、欧州株も全面安となる中でNYダウは前日比2997.1ドル安となり1日の下げ幅としては3月12日に記録した2352ドル安を更新、下落幅は一時3000ドルを超えた。下落率は12.9%で1987年のブラックマンデーにおける22.6%以来の暴落率となった。国際商品市場も換金売りに全面安となりNY原油は前日比9.55%安、通常は安全資産としてリスク回避時の逃避需要で上昇するゴールドも大幅下落が続いている。

中国国家統計局が3月16日に発表した1〜2月の鉱工業生産は前年同期比13.5%減となり統計のある1990年1月以来の大幅なマイナスとなった。2月の小売売上高も前年比20.5%減となった。
ニューヨーク連銀の3月製造業景況指数もマイナス21.5となり2009年3月以来の低さだった。

【米連銀、日銀の緩和拡大では歯止めにならず】

米連銀は臨時FOMCにおいて1.0%の利下げでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.00〜0.25%として実質ゼロ金利とした。米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を今後数ヶ所で合わせて7000億ドル買い入れ、現在の保有資産も再投資するとして量的緩和拡大を表明した。
日銀は緊急会合により追加緩和を決定、ETF買い入れを12兆円に拡大、CPと社債の買い入れをそれぞれ3.2兆円、4.2兆円へ拡大し、合計で従来よりも8兆円増やしたがマイナス金利の深掘りは見送った。
G7は16日夜に緊急TV会合を持ち協調して対策にあたるとした。

米連銀、日銀、G7と相次ぐ対策表明にもかかわらず、市場は利下げや量的緩和では感染爆発によるリセッション入りは避けられないとして全面安の反応となった。トランプ米大統領がホワイトハウスでの記者会見で、米国がリセッションに向かっているのかとの質問に「そうかしもれない」と語ったと報道されたことも株安を加速させた。

【ドル全面高とクロス円の円高】

3月16日のドル円は米連銀の緊急利下げや日銀の追加緩和等を円高反応で通過、16日夜には105.15円まで下げたが105円割れを回避している。ドルストレートでは投資マネーの還流でドル高が進んでおり、特に新興国通貨売りが顕著となってブラジル・レアル等は対ドルでの過去最安値を更新、南アランドやタイバーツ等も軒並み下落している。また資源輸出国通貨売りも顕著で豪ドル、NZドルの下げが目立った。

ドル円にとってはクロス円での手仕舞い・換金売りで円高となる一方、ドルストレートでのドル高による押し上げもあり、今のところは3月9日安値からの上昇基調の範囲で推移している。3月11日高値105.91円から3月14日高値108.50円へ二段上げとなり、それら高値の後の安値も3月12日安値103.07円から16日夜安値105.15円へ底上げしている。この上昇基調が維持されるうちはドル高優勢でドル円も高値を試す可能性が残るが、クロス円全般における手仕舞い売りが一巡したとは言えないため、金融市場全体の動揺が続くと円高優勢によりドル円も下落再開へ進みかねないと思う。

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月13日の上昇で11日未明高値を上抜いたため、3月12日昼安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしていたが、3月11日未明高値から3日目となる14日早朝高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りとなった。ボトム形成期は17日の日中から19日にかけての間と想定されるので更に一段安へ進みやすいところと思われるが、金融市場全般が乱調のため107円超えからは強気転換注意として14日早朝高値試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして19日早朝から23日朝にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では16日の反落で遅行スパンが悪化しているが、先行スパンからの転落は回避している。遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、16日夜安値割れからは先行スパンからの転落が顕著となるので下げが加速するとみるが、107円超えからは先行スパン突破となるので上昇再開と仮定して遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は16日夜の反落時に30ポイント台へ低下したがその後は50ポイント前後へ戻している。40ポイント割れからは下げ再開とするが、60ポイントを超えてくる場合は上昇再開の可能性が高まると注意する。


以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月16日夜安値105.15円を下値支持線、107.00円を上値抵抗線とする。
(2)107円以下での推移中は一段安警戒とし、105.15円割れからは3月12日安値103.07円前後試しを想定する。また3月9日と12日の安値を結ぶ下値支持線割れとなるため3月9日からの戻り一巡による下落期入りという印象が強まると考える。
(3)107円超えからは上昇再開の可能性ありとみて3月14日早朝高値108.50円試しへ向かうとみる。高値更新できずに失速する場合は戻りのダブルトップ形成から下げ再開に入る可能性があるが、高値更新なら円高圧力よりもドル高圧力が勝っているとみて110円試しへ向かうと想定する。

【当面の主な発表予定】

3/17(火)
13:30 (日) 1月 設備稼働率 前月比 (12月 -0.4%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.8%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -2.5%)
18:30 (英) 2月 失業保険申請件数 (1月 0.55万件)
18:30 (英) 2月 失業率 (1月 3.4%)
18:30 (英) 1月 失業率・ILO方式 (12月 3.8%、予想 3.8%)
19:00 (独) 3月 ZEW景況感・期待指数 (2月 8.7、予想 -26.4)

21:30 (米) 2月 小売売上高・全体 前月比 (1月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 0.3%、予想 0.2%)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.4%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 76.8%、予想 77.1%)
23:00 (米) 1月 企業在庫 前月比 (12月 0.1%、予想 -0.1%)
23:00 (米) 3月 NAHB住宅市場指数 (2月 74、予想 73)


3/18(水)
06:45 (NZ) 10-12月期経常収支 (前期 -63.51億NZドル)
08:50 (日) 2月 通関貿易統計・季調済 (1月 -2241億円、予想 5566億円)
08:50 (日) 2月 通関貿易統計・季調前 (1月 -1兆3126億円、予想 9700億円)

19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調済 (12月 222億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調前 (12月 1231億ユーロ)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 1.2%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数・改定値 前年同月比 (速報 1.2%)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数・年率換算件数 (1月 156.7万件、予想 150.0万件)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 前月比 (1月 -3.6%、予想 -4.3%)
21:30 (米) 2月 建設許可件数・年率換算件数 (1月 155.1万件、予想 150.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 前月比 (1月 9.2%、予想 -3.2%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 1.00-1.25%、予想 0.75-1.00%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

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