ドル円、FRBの緊急利下げ+QE再開を受けて一時反発するも結局Sell the factに
海外時間の為替概況
16日(月)の外国為替市場でドル円は下落。週明け早々に、@米FRBが緊急FOMC(連邦公開市場委員会)を開催し、FF金利を0.00%ー0.25%へ100bp引き下げる(ゼロ金利政策)と共に、債券保有を7000億ドル増加させる方針(QE再開)を示したこと、A米国、欧州、日本、英国、カナダ、スイスの6中銀共同でドル資金供給の拡充を発表したこと、B上記@Aを受けてリスク回避ムードが後退したこと等が支援材料となり、アジア時間朝方には、一時107.57まで反発しました。しかし、先週末金曜日の終値107.92を前に失速すると(窓埋めに失敗すると)、C新型コロナウィルスの感染拡大を受けたグローバルなリスク回避ムード(株式市場の不安定化)や、D世界的な大規模金融緩和を受けても尚収束の兆しが見えないことに伴う投資家心理の悪化(失望売り)、E中国・2月小売売上高(結果▲20.5%、予想▲4.0%)及び、F中国・2月鉱工業生産(結果▲13.5%、予想▲3.0%)の大幅悪化、G米・3月ニューヨーク連銀製造業景気指数(結果▲21.5、予想5.0)の急低下、H米ダウ平均株価の急落と今月3度目となるサーキットブレーカーの発動が重石となり、米国時間には一時105.14まで急落しました。
もっとも、その後は、対新興国通貨でドル買いが強まる中、引けにかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間4時50分現在)では、105.91近辺で推移しております。尚、日本銀行はこの日、金融政策決定会合を前倒しで開催し、3年8ヶ月ぶりに追加緩和(ETF購入額上限を12兆円まで倍増)を決定しましたが、市場の反応は限定的となっております。
昨日のユーロドル相場は乱高下しつつも方向感を見出しづらい展開。@先週のECB理事会での追加緩和決定(政策金利を据え置くも、2020年末までの資産買入総額を1200億ユーロ増額するとの発表)や、A新型コロナウィルスの欧州圏での感染拡大を受けたユーロ売りと、B米FRBによる緊急利下げを受けたドル売りに挟まれる中、乱高下しつつも(高値1.1237、安値1.1086)、終始方向感を見出しづらい時間帯が継続しました。本稿執筆時点(日本時間4時30分現在)では、1.1168近辺で推移しております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、2/20に記録した約10ヶ月ぶり高値112.21をトップに反落に転じると、3/9には、一時101.19(約3年4ヶ月ぶり安値)まで急落しました。この間、一目均衡表雲転換線や基準線、一目均衡表雲上限及び雲下限、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転及び、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークも発生するなど、テクニカル的に見て「地合いの弱さ」を強く印象付けるチャート形状となっております(※トランプ米大統領による経済対策や、FRBによる緊急利下げ、主要中銀による流動性供給策の発表を受けて、足元反発に転じるも上値は重い)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違いや、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中貿易摩擦の再燃リスク、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウィルスの感染拡大リスク(米長期金利低下→ドル売りと、米株安→リスク回避の円買いの2つの波及経路)、E英合意なき離脱の再燃リスク、F米大統領選挙の先行き不透明感、G原油価格の不安定化など、ドル売り・円買いを想起させる懸念材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。トランプ減税やFRBによる緊急利下げ、世界的な流動性供給策の発表を受けて都度持ち直す場面は見られるものの、発表されればされるほど「Sell the fact」に繋がる不安定な地合いが続いております(世界各国の経済対策や金融政策を受けても尚、金融市場の動揺が一向に収まらない不安定な状態)。本日発表される一連の米経済指標(2月小売売上高や、2月鉱工業生産など)が市場予想を下回る不冴な結果となった場合や、新型コロナウィルスに絡むネガティブな報道がなされた場合などには、「米長期金利低下→ドル売り」の経路と、「世界経済の低迷→グローバルな株安→リスク回避の円買い」の双方の経路で、ドル円が更に押し下げられるリスクが警戒されます(特にクロス円売りに伴うドル円下落に要警戒)。米株・米長期金利及び原油価格の動向や、新型コロナウィルスを巡るヘッドライン、米経済指標の結果を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の軟調推移をメインシナリオとして予想いたします。
本日の予想レンジ:103.50ー107.50
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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