上下とも見たものの上値が重たい展開(週報3月第3週)

日銀も19日の予定を前倒して本日緊急会合を開催し、何らかの追加緩和策を提示すると考えられています。そして今夜NY時間には緊急G7電話会議も開催です。

上下とも見たものの上値が重たい展開(週報3月第3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、レンジが101.18〜108.50と7円32銭にも達し、過去20年間で見ると歴代3位の変動幅となりました。ちなみに、圧倒的1位はリーマンショック後2018年10月の11円55銭です。そして日々の変動も振れが大きく上下の道中を考えたら相当な値動きの一週間になったと言えます。しかも2月中旬以降は毎週2円50銭以上の週間レンジとなっているのですから、インターバンクディーラーは大変だと思います。

この変動要因としては世界的に感染者拡大が収まらない新型コロナウイルスによるものですが、18日に予定されていたFOMCが前倒しで本日未明に開催され1.0%の緊急利下げを行ったことで米国の政策金利は誘導目標が0.00〜0.25%と史上最低に並びました。さらに日銀も19日の予定を前倒して本日緊急会合を開催し、何らかの追加緩和策を提示すると考えられています。そして今夜NY時間には緊急G7電話会議も開催です。

先週の金融市場の大荒れ具合を見てもわかりますが、イタリアで想定を上回る感染者拡大が続いたことが今回の新型コロナウイルスの感染拡大が想定以上の広がりを見せ、感染者拡大だけでなく長期の景気減速が懸念される事態となっています。米国はトランプ大統領が非常事態を宣言し、欧州諸国でも同様の状況です。ただ、今朝の緊急利下げまでの流れを振り返って気になって仕方の無いことがあります。

そもそも、今回の新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速は中国国内で人の移動が制限されたことによるサプライチェーン問題が各国の製造業に影響を与え、前回のFRBによる緊急利下げまでは資金繰り等のニーズに応えるためということでまだ納得が出来ます。しかし、金曜の非常事態宣言後の米国の動きを振り返ると、最大500億ドルの財政出動の道筋を作るためということは景気刺激策としてわかりやすいです。

気になるのは米国の石油国家備蓄を最大限に増やすということ。これは先週のサウジアラビアによる石油価格暴落でコスト的に見合わない米国内の石油産業を支えるためという点が大きいと言えます。現状の原油市場は需給的には4月以降供給過多になるのは目に見えています。ましてや人の移動も制限され航空機も減便となっている状況で需要も明確に減ってきています。それでも安い時に買うのだというならば、首をかしげつつもよしとしましょう。

もっと気になるのは今朝の緊急利下げで実質的に米国が金利をゼロにしたことです。昨年いみじくもパウエルFRB議長が言ったことに政治的な貿易摩擦による景気減速は金融政策では対応しきれないという発言がありましたが、今回のコロナショックはこれまでの○○ショックと違い製造業の停止、流通の停止といった実体経済の動きが大きく遮られたことによるもので金融危機ではありません。

金融危機で無いものに緊急利下げでゼロ金利とすることで、どの程度の効果があるのかというと正直疑問です。これは金曜の石油備蓄の話とつなげると米国の大手石油産業で危ないところが出てきている、そしてその会社に融資している米銀で破綻のリスクがでているところがあるというのは勘ぐりすぎでしょうか。いきなりFRBが全ての手札を切るかのような切羽詰まった行動は逆に個人的にとてつもない不安を感じます。

FRBとして次はもうQEで資金供給をしていくという元の道に戻る方法しか残されていませんし、ホワイトハウスとしては財政出動もするわけですから、これで金融市場が戻らない時のほうが怖いとしか言えません。また最大の影響が出るのは日本ですが、東京オリンピックの開催の可否を決めるのは5月下旬とのことですが、これで延期や中止といった決定がなされた場合には、3月末を超えられても9月末は超えられないという企業が日本を中心に出てくる可能性があります。

今回のFRBによる緊急利下げと米国政府による財政出動が一定の効果を出し、市場も落ち着くということになれば杞憂で済みますが、どうも嫌な予感がしてなりません。サイクル的にも年初の日柄の部分で書いたことですが「1973年以降の約12年周期の超円高サイクル」が2008年のリーマンショックから今年が12年後というのも気になります。今は今週がどうのということよりも今年がどうなのかということを真剣に考えるべき時期かもしれません。

テクニカルにも見てみましょう。

既に2月高値と3月安値で当面のレンジは見てしまったと思いますので、今週は拡大したチャートとなっていますが、このレンジの中で先週金曜の高値はほぼ61.8%戻しと重なりましたので、目先の高値も先週金曜に見てしまった可能性が高いと考えています。

すると3月安値と先週高値との押しを考えることとなりますが、半値押しが104.84とほぼ105円の大台と重なっています。今週はこの105.00レベルをサポートに、108.00レベルをレジスタンスとする週を見ておきますが、何しろ荒っぽい値動きですから、上下とも一時的に抜ける可能性も考えた方がよさそうです。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。またわかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月16日(月)
**:** 緊急FOMC(前倒し)
11:00 中国2月鉱工業生産、小売売上高
**:** 緊急日銀会合(前倒し)結果発表
**:** 黒田日銀総裁会見
17:00 南ア1〜3月期消費者信頼感
**:** 緊急G7電話会議
**:** ユーロ圏財務相会合

3月17日(火)
09:30 豪州10〜12月期住宅価格指数
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表
18:30 英国2月失業率
19:00 ドイツ3月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏3月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏1月建設支出
21:30 米国2月小売売上高
22:15 米国2月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国3月NAHB住宅市場指数


3月18日(水)
06:45 NZ10〜12月期経常収支
08:50 本邦2月貿易収支(通関)
17:00 南ア2月CPI
19:00 ユーロ圏2月CPI
19:00 ユーロ圏1月貿易収支
20:00 南ア1月小売売上高
21:30 米国2月住宅着工・許可件数
23:30 週間原油在庫統計

3月19日(木)
06:45 NZ10〜12月期GDP
08:30 本邦2月CPI
09:30 豪州2月失業率
17:30 スイス中銀政策金利発表
20:00 トルコ中銀政策金利発表
**:** 南ア中銀政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:00 米国2月景気先行指数


3月20日(金)
**:** 東京市場休場
16:00 ドイツ2月PPI
18:00 ユーロ圏1月経常収支
23:00 米国2月中古住宅販売件数

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時からNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月9日(月)
週明けの金融市場は大荒れの一日となりました。新型コロナウイルスの感染拡大に加え、OPECプラスの協議決裂を受けサウジアラビアが原油増産に転じることから原油市場が暴落、株式市場も急落とリスクオフの嵐が吹き荒れました。ドル円は東京前場に101円台半ばまで急落後は振れ幅は大きかったものの102円台半ばを中心とした動きとなっていましたが、先物市場ではNYダウがサーキットブレーカー発動で取引停止状態のままNY市場に入ると、現物市場でダウは2000ドルを超える下げとなり、ドル円も101.18レベルと2016年10月以来の安値をつけ、引けにかけては102円台前半を回復して引けました。

3月10日(火)
ダウ先物は開始直後こそ前日安値を更新する動きが見られたものの、その後は買いに転じ日経平均とともにじり高の動きとなりました。ドル円でもリスクオフの巻き返しが目立ち東京後場には一時105円台乗せとなりました。海外市場に移ってからは株価指数先物の上下に合わせ押しを挟みながらも上昇していましたが、105.22→103.22とNY市場前場までは大きな振れを伴いました。NY後場にはトランプ大統領による景気対策や日銀によるETF購入枠拡大の思惑もあり、株式市場の上昇とともに105.92レベルの高値をつけた後に105円台半ばへと押して引けました。


3月11日(水)
ドル円は朝方から下げる株式市場を見ながら売りが先行し後場には104円近くに下押し。その後の海外市場ではいったん105円台前半へと戻したものの、上下しながらも上値の重たい流れが続き104円台半ばでの引けとなりました。

3月12日(木)
ドル円はトランプ大統領による演説を受け株式市場で売りが先行する中でリスクオフの円買いが目立ち、前日安値を下回るとストップオーダーも巻き込みながら昼前には103.14レベルの安値をつけました。その後は下値を固める動きとなりましたが、NY市場に入り株式市場が上値の重たい流れが続く中で逆行してドル買いの動きになりましたが、これはECB理事会後のユーロの下げに引っ張られてのドル買いとなりました。一時106.10レベルまでドルが買われる動きとなりましたが、引けにかけてはユーロが戻す動きとともに104円台半ばに押すといった状態で荒っぽい値動きでした。

3月13日(金)
金曜のドル円は終日一本調子での上昇を続けました。東京朝方には安値104.50レベルでスタートしましたが、その後は実需のドル買いが出たところに海外市場に移ってからは前日高値を超えたことによる週末前の短期筋のポジション調整も出て、全般的なドル買い地合いの中で高値を切り上げる流れが続きました。G7を中心に金融緩和や景気刺激策の期待も強くNY市場では株高とともにドル高となり108.51レベルの高値をつけ若干押しての引けとなりました。

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