今週の週間見通し
先週のドル円は、週初は緊急G7開催のニュースもあり、前週の下げの後のもみあいとなっていました。しかし、新型コロナウイルスの感染者拡大が続く中で週後半は株式市場に改めて売りが強まったこと、またFRBによる利下げが為替市場では金利差縮小となりドル売り材料として意識されることとなり、ドル円は金曜日には片足104.99レベルまで水準を切り下げました。
他の材料としては、バイデン前副大統領がスーパー・チューズデーで代議員数獲得を増やしたことは株式市場では左派のサンダース上院議員よりもよいということから好材料とされましたが一時的な上昇に終わりました。また木曜日のOPEC、金曜日のOPECプラスでは協調減産の継続が協議されていましたが、非OPECの代表でもあるロシアが反対し協議は決裂、協調減産の3月末以降の継続はなくなりました。さらに、週末にはサウジアラビアが増産に転じると発表したことで、週明けの原油価格は暴落しています。
新型コロナウイルスの影響で中国での需要が大幅減となる中での供給増は、米国を中心とした金融緩和に続いて、デフレ方向の動きを作りやすくなり、先週強まったリスクオフの動きを強める流れになりそうです。今週も基本的に株安、ドル安、金(ドル建て)価格上昇、米国債利回り低下という動きが続くこととなりそうですが、そこに原油安も加わってくることで、昨年の逆イールドから1年以内にリセッションがやってくる可能性が高いというジンクスが現実のものとなる可能性が高まっています。
今週は材料的には各国から経済指標は連日出てきますが、流れを変えるほどの材料もなく来週18日のFOMCでの追加利下げ思惑と米国長期金利の動きが為替市場ではもっとも注目される材料となってきそうです。ちなみに先物市場の取引価格から見た織り込み度では現在の1.00〜1.25%から一気に75bpの利下げを行い0.25〜0.50%へと下がるという見方がコンセンサスとなっていますが、そうした思惑が為替市場での一段のドル安を招いていると言えます。
そして、テクニカルにドル円は今朝の下げで重要なサポートラインを下抜けてしまいました。まず、週足チャートをご覧ください。
先週は長期トライアングル(三角もちあい)のヘッドフェイク(ダマシの上抜けの後の本流の下抜け)の可能性を書きましたが、ヘッドフェイクが完成した上に、赤の水平線で示した2018年以来の強いサポートとなっていた104円台半ばを抜けてきたことがテクニカルにはかなり危険な兆候を示しています。既に103円台に入って、昨年の年間レンジを超えてきましたが、ここから下では目立ったサポートも無いため、大きくは2016年安値の99.02を意識する流れになってきたと言えます。
こうしたことを意識した上で、下の日足チャートもご覧ください。
あまり綺麗では無いのですが、2019年高値から安値への下げ、その後の2020年高値への上げを3点と考える逆N波動を想定すると、フィボナッチ・エクスパンションでは既に100%エクスパンションは達成し、次に近い127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションは102.08となっていて、大きくは102円、大台100円、そして99円というところが今後の下値のターゲットとなります。
既に大きく下げてきてはいるものの、多くの材料が円高の加速の可能性を示しているとも考えられますので、今週はレンジを広めに考え、最初のターゲットのやや手前102.50レベルをサポートに、105円は遠のいてしまったと見て104.80レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
3月9日(月)
**:** NY市場夏時間移行
08:50 本邦10〜12月期GDP改定値
08:50 本邦1月貿易収支(国際収支)
16:00 ドイツ1月貿易収支、鉱工業生産
3月10日(火)
06:45 NZ10〜12月期製造業売上高
09:30 豪州2月企業景況感
10:00 NZ中銀総裁講演
10:30 中国2月CPI・PPI
16:00 トルコ12月失業率
16:45 フランス1月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
3月11日(水)
16:00 トルコ1月経常収支
18:30 英国1月貿易収支、鉱工業生産
19:00 南ア1〜3月期企業信頼感
21:30 米国2月CPI
23:30 週間原油在庫統計
3月12日(木)
19:00 ユーロ圏1月鉱工業生産
21:30 米国2月PPI
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:45 ECB理事会
22:30 ラガルドECB総裁会見
3月13日(金)
16:00 ドイツ2月CPI
16:00 トルコ1月工業生産
16:45 フランス2月CPI
21:30 米国2月輸入物価指数
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感速報値
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
3月2日(月)
週明けのドル円は金曜引けの水準からギャップダウンして始まり、早朝市場で107.36レベルの安値をつけましたが、東京市場では金曜のパウエルFRB議長に続いて黒田日銀総裁も談話を発表したこともあり、株も為替もリスクオフの巻き返しが続きました。欧州市場序盤には108.58レベルまで回復していましたが、再び株価指数が売りに転じたことからNY前場には107.40へと下押し。NY市場では新型コロナウイルス対策としてIMF、世銀の共同声明、また緊急G7電話会議開催のニュースも加わりNYダウが史上最大の上げ幅を記録。ドル円も108.47レベルまで上昇し底堅い地合いで引けました。
3月3日(火)
前日の緊急G7のニュースで各国の協調、米国の大幅利下げが既に織り込まれていたこともあって株式市場も為替市場も様子見となっていましたが、イベント前の調整によるドル売りが為替市場では目立ちました。これは米国の利下げは株式市場では好感されそうだが、為替市場では金利差縮小によりドル売りになりそうだという面によるものでした。NY市場に入り、米国が0.5%の緊急利下げを行うと、株式市場も反発は一時的でその後はじり安、為替市場は素直に金利差縮小で一時106.93レベルの安値をつけ上値が重たいままでの引けとなりました。
3月4日(水)
ドル円はNY引け後にわずかに安値を更新する動きはあったもののそこまで、東京市場以降は株式市場が底堅い動きとなっていたことから、ドル円も底堅い動きとなりました。NY市場ではスーパー・チューズデーの結果が明らかとなり、バイデン前副大統領が大きく代議員数の獲得を伸ばし、左派のサンダース上院議員が指名される可能性が下がりました。これを好感し米国株式式市場は上伸、引けにかけては大幅高となったことからドル円もやや買いが強まっての引けとなりました。
3月5日(木)
ドル円は終日株式市場が弱く前日の上昇を全て失う動きとなったことからドル円も着実に水準を切り下げNY引け間際には105円台へと入り込む動きとなりました。新型コロナウイルスの感染者拡大が止まらず、一段の人の移動制限が予想される中で、米長期金利の低下も重なってドル全面安となりました。
3月6日(金)
東京市場では株式市場が寄り付き直後は買いが先行したため、為替市場でもドル買いが見られたものの両市場とも後が続かず、じり安の流れで海外市場入りとなりました。欧州市場序盤に米国10年債の夜間取引で利回りが0.7%を割り込み、米国の追加緩和思惑が高まるとともにドルは105円割れ。その後NY市場で強めの雇用統計が発表され105円台半ばへと戻す場面も見られましたが、105円台前半でもみあいのまま引けました。
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