【概況】
ドル円は2月20日深夜高値112.21円からの下落が続いている。新型コロナウイルス感染拡大が世界的大流行=パンデミックとなりかねない状況へと深刻化する中でNYダウの暴落を中心として世界連鎖株安が続いており、2月28日早朝に109.32円まで一段安となった。2月19日夜に1月17日高値を超えて急伸する前の小持ち合いにおける下値支持線が2月7日深夜安値109.53円だったが、その水準も割り込んでいる。
2月20日からの下げ幅は2.89円まで拡大したが、この間の下落幅、角度は昨年8月底以降の上昇基調のなかで最も厳しい下げ方となっており、2018年12月に世界連鎖株安からドル円も急落した時の下落角度に近い。しかしNYダウの急落レベルは既に2018年10月から12月末にかけての急落時を超えて直角的な下げとなっている。
【パンデミック懸念で世界連鎖株安止まらず】
新型コロナウイルスの感染拡大は世界的に深刻化しているが、特に欧米への感染とパンデミックへの懸念がNYダウを中心とした世界連鎖株安を発生させている。27日のNYダウは6日目の続落で前日比1190.95ドル安となり、2018年2月の1175ドル安を超えて過去最大の下げ幅となった。
米カリフォルニア州は新型コロナウイルス感染可能性のある8400人を監視中とし、33人の陽性反応を確認したと発表した。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は27日に「パンデミックの可能性がある」とし、「自国には感染しないという考えは致命的な誤り」と警告した。
世界的な感染拡大による世界景気への影響についても悲観論が強まってきている。米金融大手ゴールドマン・サックスは2020年の米主要企業利益成長率前年比横ばいにとどまる可能性があるとした。バンク・オブ・アメリカは2020年の世界の成長率は2.8%となりリーマンショック以来の低水準にとどまるとの予想を発表した。IMFも27日に世界経済見通しを下方修正する公算が大きいとした。
市場の関心は感染拡大問題とそれによる世界連鎖株安が今度どう展開してゆくのかに集中しており、1月までの経済指標等への市場反応は限定的となっている。
米商務省が発表した2019年10-12月期のGDP改定値は年率換算で前期比2.1%増となり速報値と変わらず。個人消費は1.7%増と速報値の1.8%増)からわずかに鈍化した。今後発表される1-3月期の鈍化程度が重要になってくると思われる。
米労働省が発表した週間の新規失業保険申請は季節調整済みで21万9000件と前週比8000件増加して市場予想の21万2000件を上回った。
米商務省が発表した1月の耐久財受注は前月比0.2%減で2か月ぶりにマイナスとなり前月の2.9%増から鈍化した。
米不動産業者協会(NAR)が発表した1月の中古住宅販売仮契約指数は前月比5.2%上昇で予想の2.2%を上回った。
【ダウの暴落角度は2018年末を超えている】
NYダウの月足では2月27日終了時点で前月比2489.39ドル安の大陰線だが、リーマンショックの2008年においても2008年10月の月足での前月比は1525.65ドル安が最大であった。
リーマンショックはBRICsの高度成長による世界的なバブル景気が破裂したことによる金融恐慌不安であり、米連銀を中心とした超金融緩和が恐慌入りを回避させ、その後は金融緩和が新たなバブル的上昇を発生させた。リーマンショックが人為的なものだったのに対して、今回は感染拡大による災害的な事象での株暴落であり、解決には事象の収束、感染拡大の終息見通しが必要になるため、金融緩和策や財政出動等での対処療法が果たして効果があるのかどうか懸念される。
市場はパンデミック不安心理がマックスとなるところで底を打ち、改善見込みが出てくれば先行きの景気回復を先取りして反騰入りしてゆくかもしれないが、現状はまだパンデミック宣言の前夜情勢であり、特に米国の感染実態がどうなるのか、欧州でどの程度の拡大となるのかが見えてこないと市場も落ち着かないのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月20日深夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りして21日夜から25日夜にかけての間への下落を想定してきたが、26日朝時点では25日未明安値を直近のサイクルボトムとし、既に底割れにより新たな弱気サイクル入りしていると仮定した。しかし26日未明安値から26日深夜へ戻したため、27日午前時点では直近のサイクルボトムを26日未明安値と改め、既に反落警戒期にあるので27日未明安値110.18円割れからは弱気転換注意とし、26日未明安値109.89円割れからは新たな弱気サイクル入りとした。
2月27日夜の下落で26日未明安値を割り込む一段安となったため、底割れによる弱気サイクル入りとして2月29日未明から3月4日未明にかけての間への下落を想定する。強気転換は26日深夜高値110.69円を超えるところからとする。
60分足の一目均衡表では27日夜の下落で遅行スパンが悪化したため、遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。また先行スパンを上抜けない内は遅行スパンが一時的に好転しても再び悪化するところからは下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は2月25日未明安値から26日未明安値への一段安において指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せていたが、60ポイントに届かずに上げ渋りに止まり、28日早朝への一段安により30ポイント台へ低下している。このため50ポイント前後までを戻り抵抗としてさらに20ポイント割れを試す可能性があるとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.00円を下値支持線、109.75円を上値抵抗線とみる。
(2)109.75円以下での推移中は一段安注意とし、109円割れからは108.50円前後試し、さらに夜間から週明けにかけて108円前後試しへ向かう可能性もあると注意する。また109.75円以下での推移が続く内は週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)109.75円を超える場合は110円試しとその後の反落を想定し、109.50円割れからは下げ再開とみる。強気転換には2月26日夜高値110.69円を超える規模の上昇が必要と思われる。
【当面の主な予定】
2/28(金)
14:00 (日) 1月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (12月 -7.9%、予想 -6.1%)
16:00 (ト) 1月 貿易収支 (12月 -43.3億ドル、予想 -46.0億ドル)
16:00 (ト) 10-12月期 GDP 前年比 (前期 0.9%、予想 5.0%)
17:55 (独) 2月 失業者数 前月比 (1月 -0.2万人、予想 0.3万人)
17:55 (独) 2月 失業率 (1月 5.0%、予想 5.0%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 速報値 前月比 (1月 -0.6%、予想 0.3%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 速報値 前年同月比 (1月 1.7%、予想 1.7%)
22:30 (加) 10-12月期 GDP 前期比年率 (前期 1.3%、予想 0.3%)
22:30 (加) 12月 月次GDP 前年同月比 (11月 1.5%、予想 1.6%)
22:30 (米) 1月 個人所得 前月比 (12月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 個人消費 前月比 (12月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 PCEデフレーター 前年同月比 (12月 1.6%、予想 1.8%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比 (12月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (12月 1.6%、予想 1.7%)
23:15 ブラード・セントルイス連銀総裁、米経済と金融政策について講演
23:45 (米) 2月 シカゴ購買部協会景況指数 (1月 42.、予想 45.9)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報値 (速報 100.9、予想 100.9)
オーダー/ポジション状況
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