レジスタンス上抜けでドル高も、いったん調整か(週報2月第4週)

いまの金融市場は楽観的過ぎるとしか思えず、悪材料には目をつぶり、一点の光に注目するといった様子にしか見えません。

レジスタンス上抜けでドル高も、いったん調整か(週報2月第4週)

レジスタンス上抜けでドル高も、いったん調整か

今週の週間見通し

先週のドル円は、週前半は底堅いものの110円の大台を抜け切れずという流れが続いていましたが、水曜に年初来高値を上抜けると一気に弾みがつき111円台半ばへと上伸、続く木曜には112.23レベルの高値をつける動きとなりました。週の値幅は2円50銭を超え昨年8月に急速に円高が進んだ時以来の値幅となりました。

材料を見ると新型コロナウイルスの感染者、死者拡大が続いていて、中国のみならず世界経済に与える影響は大きいものがあるはずです。アップルも売上高未達の見通しを出しましたし、日本国内を見ても旧正月時の中国観光客激減の状況が続いていて、閑散とした観光地の様子がテレビで映されていますが、その通りとしか言えません。

先週も書いたことを繰り返しますが、個人的には不思議でならないため、もう一度書いておきます。昨年10月の消費増税以降、小売りや外食関係者に実際に話を聞いたり、自分の足で確認したりを続けていますが、先日の本邦GDP速報値はそうだろうなとしか言えませんし、年を明けてからの日本でのコロナウイルス感染拡大は、それに追い打ちをかけるような状況となっています。外食では2月以降の客足の鈍さは深刻なものがあると言われますし、たしかに観光地はガラガラ、普段は予約でいっぱいの飲食店もガラガラという状態を目にすると、少なくとも日本の株価も為替市場も何故ここまで堅調なのか理解できません。

いまの金融市場は楽観的過ぎるとしか思えず、悪材料には目をつぶり、一点の光に注目するといった様子にしか見えません。実体経済と金融市場との乖離に、どこかで大きな調整が入らなければいいなとは思うものの、3月に入ってから発表される本邦経済指標を中心に時間差をもって反落がやってくる可能性があります。

しかし、いっぽうでテクニカルには全く違った様相を呈しています。先週金曜のコラムで書いたようにドル円は長期レジスタンスを上抜けてきました。もう一度、ここにチャートを再掲しますが、2015年高値125.86から引いたレジスタンスラインは強いレジスタンスで、これまでもドル上昇局面で何度も反落してきたラインです。それが、先週金曜の週足終値で上抜けたという事実は無視できませんし、テクニカルにはドル上昇局面入りと結論付けてもよい状況となっています。

レジスタンス上抜けでドル高も、いったん調整か

テクニカルには、長期トライアングル(三角もちあい)を上抜けたことで、2017年5月から2018年末まで上値を抑えられ続けた114円台後半を視野に入れる動きになってきたと考えることとなります。唯一気になるとすれば、ユーロ安に続いての円安がドルインデックスを上昇させ、先週は99.82と危険水域となる大台100間近となっている点でしょうか。

材料は悲観的なものが多い中で、理由の無い楽観とも思える市場参加者の動きがテクニカルには大きく流れを変えてしまったのが先週ということになりますが、さすがに動きが速すぎる感もあり、今週は基本的に高値圏でのもみあいを続けつつ、押し目では着実にドル買いが入ってくるという動きになりそうです。

いったん高値は見たとして押しがどの程度入るかですが、日足チャートにいくつかの下値目途としてフィボナッチリトレースメントを表示してあります。赤のターゲットは年初来安値を起点に、青のターゲットは1月末安値を起点に先週高値との押しを示しましたが、青いターゲットの半値押し110.25がほぼ1月高値と一致していることから、同水準は最大限の押しと考えられますが、現実的には青のターゲットの38.2%押しから赤のターゲットの38.2%押しとなる110円台半ばがいいところでしょう。


今週は110.50レベルをサポートに112.25レベルをレジスタンスと、いったん高値圏での調整局面入りを見ておきます。

レジスタンス上抜けでドル高も、いったん調整か 2枚目の画像

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

2月24日(月)
**:** 東京市場休場
06:45 NZ10〜12月期小売売上高
18:00 ドイツ2月ifo企業景況感
29:00 クリーブランド連銀総裁講演

2月25日(火)
16:00 ドイツ10〜12月期GDP改定値
16:45 フランス2月企業景況感
23:00 米国12月住宅価格指数
23:00 米国12月ケースシラー住宅価格指数
24:00 米国2月消費者信頼感
24:00 米国2月リッチモンド連銀製造業景況指数
29:15 クラリダFRB副議長講演

2月26日(水)
16:45 フランス2月消費者信頼感
24:00 米国1月新築住宅販売件数
24:30 週間原油在庫統計

2月27日(木)
06:45 NZ1月貿易収支
09:00 NZ2月企業信頼感
09:30 豪州10〜12月期民間設備投資
18:30 南ア1月PPI
19:00 ユーロ圏2月消費者信頼感
19:30 英中銀副総裁講演
22:30 米国10〜12月期GDP改定値
22:30 米国新規失業保険申請件数
24:00 米国1月住宅販売保留件数
25:30 (シカゴ連銀総裁講演)

2月28日(金)
08:30 本邦2月東京区部CPI
08:30 本邦1月失業率・有効求人倍率
09:01 英国2月GFK消費者信頼感
16:00 トルコ10〜12月期GDP
16:00 トルコ1月貿易収支
16:45 フランス10〜12月期GDP改定値
16:45 フランス2月CPI速報値
16:45 フランス1月PPI
17:55 ドイツ2月失業率
19:00 ユーロ圏2月CPI速報値
21:00 南ア1月貿易収支
22:00 ドイツ2月CPI速報値
22:30 米国1月個人所得・消費支出
23:15 (セントルイス連銀総裁講演)
23:45 米国2月シカゴ購買部協会景気指数
24:00 米国2月ミシガン大消費者信頼感

レジスタンス上抜けでドル高も、いったん調整か 3枚目の画像

前週の主要レート(週間レンジ)

先週の概況

2月17日(月)
 ドル円は中国が銀行向け短期金利を3か月ぶりに引き下げたことを材料としたのか、じり高の展開となりました。しかし、他には目立った材料が無いことやNY市場が休場となることもあって、値幅は狭い状態が終日続きました。

2月18日(火)
 ドル円は早朝のアップル売上高未達の見通しから新型コロナウイルスの影響が実体経済にも出てきていることを懸念してのリスクオフが先行しました。その後は株式市場が下げ止まったことからドル円ももみあいとなっていましたが、NY市場に入り強い経済指標とユーロが一段安となった動きから一時109.95レベルの高値をつけました。しかし、大台を前に利食いの売りも見られる中でダウが下げる動きとともに再度安値圏まで下押し、引けにかけてはダウとともに値を戻す動きとなりました。

2月19日(水)
 ドル円をはじめクロス円が軒並み大幅高、円独歩安の一日となりました。東京前場から堅調な日経平均株価に引っ張られて110円の大台を回復した後はやや上値の重たい展開となっていましたが、海外市場に移り東京の高値を上抜けたあたりから、仕掛けのドル買いが見え始め、年初来高値を上抜けるとストップも加わって110円台半ばへと水準を切り上げました。NY市場では日経先物とドル円と双方がリスクオンの動きを作り出し、値頃感で売った向きのストップも巻き込みながら大幅高、後場には111.59レベルの高値をつけ、若干押しての引けとなりました。

2月20日(木)
 前日に続いての円独歩安となりました。実需のドル買いが出ていたとのコメントも見られましたが、長期レジスタンスを上抜けたことによるテクニカルなドル買いポジションが着実に入っていました。株価が下がっても為替は円安という状況が続きNY市場では一時112.23レベルの高値と昨年4月以来の水準となり、昼以降は高値圏でのもみあいのままの引けとなりました。

2月21日(金)
 ドル円は東京市場では狭い値幅でのもみあいが続きましたが、欧州市場序盤に入り日経平均先物が下げる動きとともに調整のドル売りが先行しました。すぐにドル高の流れへと戻しNY市場朝方には東京前場の水準に戻しましたが、弱い米国経済指標に反応し対ユーロでのドル売りの動きからドル円も反落。引けにかけて上値は重たいもののもみあいでの週末クローズとなりました。

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