【概況】
ドル円は新型コロナウイルスの感染拡大によるリスク回避感を背景に1月31日安値108.30円まで大幅下落してきたが、春節明けの上海総合株価指数が2月3日に8%を超える暴落で開始したものの2月4日からは反騰に転じて2月7日まで4連騰したこと、1月31日に600ドルを超える大幅下落となっていたNYダウも連騰で切り返して2月6日には1月17日高値を超えて史上最高値を更新したことでリスク回避感が緩んだとみて2月7日には110.02円まで上昇して1月22日以来の110円台に到達した。
しかし2月7日は週をまたいでのリスクを持ちたくないとNYダウが反落し、ドル円も110円台では昨年12月から上値が重くなって失速してきたことによる高値警戒感から反落して7日深夜には109.53円まで下げた。
感染拡大報道は続き、中国の死者数が千人を超え、感染者も4万人を超えた。経済活動の停滞も続いており、春節の大型連休後の企業活動再開も鈍い状況にあるが、中国以外での感染死者数では爆発的な拡大現象は見られていないために株式市場は楽観基調を続けており、上海総合株価指数は2月11日まで6連騰、NYダウは2月11日に29415.39ドルまで続伸して史上最高値を更新した。
株高を背景にドル円も11日深夜に109.95円を付けたものの110円には届かず、終盤にNYダウが上昇分を削ったことでやや押し返されている。
【米連銀議長の議会証言】
米連銀のパウエル議長は2月11日に米下院金融サービス委員会で半期に一度の議会証言を行った。証言では新型コロナウイルス感染拡大について「中国に混乱をもたらし世界経済に波及する恐れ」「米経済にいくらかの影響を及ぼす公算が大きい」と指摘し、「景気見通しに重大な再評価をもたらす事態が生じればそれに対応する」との姿勢を示した。昨年後半以降の米経済については「緩やかに拡大した」とし、米中通商協議の第1段階合意により「貿易をめぐる一部の不確実性が後退し世界経済が安定している幾つかの兆候がある」としたが、「現行の金融政策が適切であり続ける公算が大きい」として当面は政策金利を現状維持してゆく姿勢を示した。
米連銀が感染拡大問題を警戒していることは、状況が悪化すれば利下げを再開するのと受け止め方もされるが、米景気に具体的な影響が出始めるか、世界的な連鎖株安が発生するような危機感が見られなければ様子見が続くのだろうと思われる。
米セントルイス地区連銀のブラード総裁が2月11日の講演で「中国経済は新型コロナウイルス感染拡大への対応措置により今年上半期は目に見えて減速する」との見方を示した。「中国政府による新型ウイルスの封じ込め対策はかなりの規模で、中国の今年上半期の経済成長はこうした対策がない状態と比べて目に見えて減速する」と述べた。またSARSやエボラ出血熱などの流行において米国債利回りに明らかな影響が出た」とし、最近の米長期債利回り低下も同様の状況との認識を示した。
NYダウが史上最高値更新を繰り返す中でも米10年債利回りは昨年末からの低下傾向を続けており、11日時点も1.60%と低水準のままとなっている。またユーロドルが年初来安値を更新するなどドル高基調にあることも、米10年債利回り低迷の中にあってもリスク回避的なドルの買い戻しが続いている事を反映していると思われる。
株高ドル高はドル円にはプラスだが、米10年債利回りの低下傾向が続くことは積極的なドル高円安へ進みづらくし、110円台に到達しても上値が重い状況を作り出しているのだろうと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月1日未明安値108.30円から上昇してきたが、2月7日朝高値で直近のサイクルトップを付けて7日深夜へ下落した。その後は新たな安値更新を回避して109.75円を挟んだ揉み合いとなっているため、2月1日未明安値から5日目となる2月7日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けたと思われる。今回の高値形成期は2月7日朝高値を基準として12日朝から14日朝にかけての間と想定されるので、7日深夜安値割れ回避のうちは上昇余地ありとするが、7日深夜安値割れからは底割れによる弱気サイクル入りとして13日深夜から17日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、2月7日深夜以降が横ばいのため遅行スパン及び先行スパンは実線と交錯して方向感に乏しい。このため2月7日朝高値超えからは一段高入りにより遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、7日深夜安値割れからは一段安入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイントを挟んでもみ合い状態となっている。40ポイント割れからは下げ再開注意とし、2月7日深夜安値を割り込む場合は30ポイント割れへ低下するとみるが、60ポイント超えからは一段高入りの可能性ありとして70ポイント超えを目指すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月7日深夜安値109.53円を下値支持線、2月7日朝高値110.02円を上値抵抗線とみておく。
(2)2月7日深夜安値を割り込まないうちは上昇余地ありとし、110.02円超えからは1月17日高値110.28円試しを想定する。1月17日高値を超えないかわずかに超えたところから110円を割り込む場合は戻り一巡による下げ再開を疑うが、110円台を維持しての推移が続く場合は週末にかけて110円台中盤(110.35円から110.75円)にかけてのゾーンを目指す可能性があると考える。
(3)2月7日深夜安値を割り込む場合は、今回も110円到達で戻り一巡となって下落再開に入る可能性が高まったとみて109.00円前後への下落を想定する。株安が進むなどリスク回避感が大きく強まらないうちは109円前後で押し目買いされて上昇再開へ向かいやすいとみるが、リスク回避感が強まる状況が発生する場合は週末から来週序盤にかけて108円台後半へ下落する可能性も出てくると注意する。
【当面の主な予定】
2/12(水)
10:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.00%、予想 1.00%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 0.2%、予想 -1.6%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -1.5%、予想 -2.3%)
22:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
24:00 (米) パウエルFRB議長、上院銀行委員会証言
28:00 (米) 1月 月次財政収支 (12月 -133億ドル、予想 -115億ドル)
2/13(木)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.0%)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前年同月比 (12月 0.9%、予想 1.5%)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前月比 (12月 -0.6%、予想 -0.6%)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (12月 1.7%、予想 1.7%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 2.3%、予想 2.5%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 消費者物価コア指数 前年同月比 (12月 2.3%、予想 2.2%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 21.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 175.1万人、予想 174.8万人)
24:00 (米) 米上院、シェルトン、ウォラー両氏のFRB理事指名承認公聴会
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.25%、予想 7.00%)
オーダー/ポジション状況
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