ドル円年間相場予想 「ドルのやや強気」を予想、104-117円を見込む

年間を通したドル/円の見通しは、『ドルのやや強気』ないしは『ドルの中立』、年間の予想レンジは104-117円」−−と予想している。

ドル円年間相場予想 「ドルのやや強気」を予想、104-117円を見込む

「ドルのやや強気」を予想、104-117円を見込む

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恒例の「FX羅針盤」の年間相場予想。
例年動きの激しい年末年始の相場が終了したあたりで、「FX羅針盤」の執筆者の皆様に年間の相場見通しを書いていただいています。
今回は日々の東京市場のドル円概況を御執筆いただいている斎藤登美夫さんのドル強気の年間予想です!
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昨年に続き、「今年のドル/円の相場見通し」をレポートする。まずは、「結論(メインシナリオ)」を指摘したうえで、「何故そうした結論になったのか」という理由について報じてみたい。では、まず今年の年間見通しの「結論」から。


「年間を通したドル/円の見通しは、『ドルのやや強気』ないしは『ドルの中立』、年間の予想レンジは104-117円」−−と予想している。」


<< @ テクニカル  >>

「一年間に為替相場がどの程度動くのか」−−を数値化した「年間変動率」という考え方がある。それによると、ドル/円は年間を通して16%程度動くことが「平均」であるようだ。
つまり、仮に1ドル=100円で寄り付いたとして、一方向に動くとすれば年内に116円、あるいは84円に達しても不思議ではないことになる。

しかし、改めて指摘するまでもなく、通常はそこまで一方向のみに動くことはない。
筆者の使用しているデータで今年の取引が開始された108.65円を起点とし、自身の相場観である「ややドル強気」を参考に、年間変動率の16%を上(ドル高)方向に9-10%、下(ドル安)方向に6-7%動く−−と仮定して計算すると、今年の予想レンジはザックリ「101-119円」となる。

ただ、周知のように、ドル/円は3年連続の小動き。年間変動率は3年続けて10%以下、また変動幅も昨年はわずか8.30円と史上最小にとどまった。それからすると、前段において計算で算出した18円もの年間レンジ予想は、やや広すぎるといえるかもしれない。

と言うことで、過去5年程度を参考に年間変動率を16%から12%に縮小させたうえで、「ややドル強気」見通しで上方向に7%、下方向に5%変動とし、再計算するとレンジは103.22-116.26円の約13円レンジとなる。さらに、筆者の今年の基本予想が「ややドル強気」であるため、このレンジを切り上げスッキリさせた「104-117円」を一応今年の予想レンジ・メインシナリオとしておきたい。

なお、先でも指摘したように、ドル/円は過去3年間いずれも年間を通して小動きだったが、よくよく調べてみると各年とも1月相場はなかなか大きく動いていることが見て取れる。実際2017年から2019年まで、一年をとおして一番動いた月はすべて「1月」だった。

つまり、1月に大きく動いたドル/円相場は、そののち急激に失速。ここ数年は年末にかけて動意が尻すぼみになることが少なくないようだ。これを別の言い方にすれば、「大きく動く1月相場は年間小動きの予兆」であるのかもしれない。

ともかく、今年一年の相場情勢を見極めるうえで、1月相場は非常に重要と考えられる。ここから月末まで残り数日だが、価格変動については、しっかりと注視しておきたいところだ。

<< A 材料 >>

お読みになったという方も多いと思うが、今年1月3日付の日経新聞は「今年のドル/円相場、市場は(2019年より)2円弱の円高予想」−−などと報じていた。
そんな円高予想の背景を一部紹介すると、「米大統領選など政治的な不確実性を背景に、リスク回避で円高が進むとの見方が市場では強い」のだという。

確かに、いわゆるウクライナ疑惑を受け、トランプ氏の史上3人目の弾劾追訴が1月21日に米上院で開始されている。実際、弾劾に至る可能性は過去の事例と同様に極めて低いと考えられるが、そこに至る過程で偽証などが次々と明らかになったりすれば、今秋実施される大統領選でトランプ氏に大きなマイナスを及ぼすことは想像に難くない。
そう考えると、なるほどドル安・円高予想というものも、頷ける部分がありそうだ。

しかし、筆者は大統領選における「トランプ氏再選危機」が現実のものとなる公算は低いと考えており、予断は許さないが対中を中心とした貿易問題も原則として選挙後まで先送りされると予想している。
したがって、「再選後」の米中あるいは日米貿易問題は当然要注意だが、選挙前に過度のドル安・円高に振れる可能性は低いのではないだろうか。

また、視点を米国ではなく日本国内に目を向けた場合、今夏には東京でオリンピックが開催されるものの、「日本で開催されるオリンピックと、経済情勢や金融市場は相性が悪い」と言われている。

調べてみると、前回東京オリンピック(1964年)の翌年には「昭和40年(1965年)不況」が発生しているし、札幌冬季オリンピック(1972年)の翌年は「第一次オイルショック」、長野冬季オリンピック(1988年)時は「ロシア通貨危機」−−がそれぞれ起こっていた。
3分の3の確率で、偶然というには符号が合い過ぎる。果たして、今年の東京オリンピック後、来年程度までの期間を考えても平穏無事な時間を過ごすことが出来るのだろうか?

さらに、先で取り上げた大統領選が実施される米国だけでなく、日本についても東京オリンピック・パラリンピック終了後に、衆院解散そして総選挙が実施されるとの見通しが有力だが、こちらも過去の経験則からは「政変」の可能性などが取り沙汰されている。

確かに、今年の干支である「子」年は戦後に6回の選挙があり、うち5回で、なんと「首相が交代」となっていた。例外は1984年だけで、与党にとって、今年の選挙は鬼門にあたると言えそうだ。米国以上に、日本の政治要因・選挙ファクターが要注意であるだけでなく、日本の政局を嫌気したドル買い・円売りが進む可能性も否定出来ない気がしている。

一方、需給要因に目を転じても、かつてのような円買いが進みにくい環境にあると言わざるを得ない。
実際、為替市場における潜在的な円高要因として寄与していた、日本の貿易収支は2018年に続き2019年も「貿易赤字」になったことが先日明らかになったうえ、生損保など国内投資マネーの海外シフトが強まっていることも財務省が発表している「対内外証券投資」のデータに示されている。

本稿執筆段階は、ちょうど「新型肺炎」の話題が市場を席巻。ドル/円にも下押し圧力が高まっているものの、今年一年を通して言えば、絶好のドル仕込み場、押し目買いのチャンスを迎えている気もしないではない。

<< B その他 >>

米国ファクター以外に目を向けた場合でも、幾つか気になる要因が散見される。

米朝あるいは南北関係を背景とした「北朝鮮情勢」も気掛かりであるし、今月末にいよいよEU離脱を迎える「英国情勢」にも要注意。
後者については、米英などで離脱後の貿易問題について協議が実施され、次のステージ入りしている感があるものの、1月25日付の読売新聞はトゥスク前EU大統領がインタビューに応じ、「離脱後もEU加盟国並みの貿易が続けられるという英国の主張は幻想」、「英国がEUから離れれば、潜在的な競争相手として交渉を開始する」−−などと述べたと報じていた。確かに、当初は期待感が先行することも考えられるが、そうした動きも徐々に剥落する公算が大きいように思う。今年もポンド相場は波乱含みか。

一方、潜在的な不安のくすぶる「イラン情勢」や、英国のEU離脱が上手く進行した場合には、それに続くEUからの「造反国」がでてくる可能性なども一部で取り沙汰されている。櫛の歯が欠けるが如く参加国が減る危険性を孕んでいる欧州情勢にも、注意を払う必要があるのかもしれない。



最後に、先日ある専門家の方に取材した際、経験則的にみて世界は70-80年で「価値観などがガラっと変わる」ことが多いとされ、今年あたりは、その「切り替え」に向けた一年になる可能性があると教授された。
筆者が過去に遡って調べてみると、いまから70-80年前は「第二次世界大戦(1939-45年)」があり、大戦前後で軍事を中心に経済面など世界で様々な面の転換が起こったことは改めて指摘するまでもないと思う。
また、その前は、米国は「南北戦争(1861-65年)」、日本は「明治維新(1868年)」。さらに遡ると「米国独立(1776年)」となるなど、いずれも大きな歴史の「転換点」だ。

ともかく、仮にこうした見方が正しいとすれば、今年あたりが確かにある種の「転換点」を迎える公算が大きいのかもしれない。
しかし、それは果たしてどのような新時代を示すことになるのだろうか。今後70-80年の世界が良い方向へ向かうことになる萌芽であれば、良いのだが・・・・・・。

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ドル円月足

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