ドル円見通し 新型コロナウイルス感染拡大でリスク回避の円高進む(週報1月第4週)

新型コロナウイルスの感染拡大が金融市場をリスク回避へ向かわせてドル円は1月25日未明には109.17円まで円高ドル安が進んでいる。

ドル円見通し 新型コロナウイルス感染拡大でリスク回避の円高進む(週報1月第4週)

ドル円見通し 新型コロナウイルス感染拡大でリスク回避の円高進む

【概況】

新型コロナウイルスの感染拡大が金融市場をリスク回避へ向かわせてドル円は1月25日未明には109.17円まで円高ドル安が進んでいる。
ドル円はイラン情勢の緊張緩和により1月6日朝安値107.75円と1月8日午前安値107.65円をダブルボトムとして反騰してきたが、110円台序盤では上値が重くなり1月17日高値110.28円の後は新たな高値更新へ進めずにいた。株式市場では史上最高値更新が進んでいたもののドル円は株高には追従しきれずにいたのだが、そこへ中国武漢の新型コロナウイルスの感染拡大報道から110円を割り込み、さらに感染拡大が深刻さを増したために109円台序盤まで安値を切り下げてきた。

NYダウは1月17日に付けた史上最高値の後は新たな高値更新へ進めずにいたが、感染拡大報道当初の1月21日には152.06ドル安と下落してその後も22日の9.77ドル安、23日の26.18ドル安と続落したが下げ幅は小幅だった。しかし24日は前日比170.36ドル安と下げ幅を拡大して4日連続安となった。ナスダック総合指数は1月24日も取引開始早々に取引時間中の史上最高値を更新してダウとは対照的に先高期待の買いが続いていたが、週末から週明けにかけての感染拡大への不安感により高値から安値まで170ポイント以上の下落となり終値も87.57ポイント安と下げて終了している。イラン情勢をクリアして史上最高値を更新してきただけに、株式市場の先高期待感はかなり強いものだったが、さすがにパンデミックへの不安が勝り始めた印象だ。
株安不安と安全資産買いで米国債が買われ、指標の10年債利回りは24日に前日比0.05%低下の1.68%となった。10年債利回りは1月5日の1.76%から1月8日には1.87%まで上昇していたが、その後は若干の戻りを入れながらも下落基調が続いて年初来安値を更新している。

【パンデミックへの懸念高まる】

米疾病対策センター(CDC)は1月24日に新型コロナウイルスで米国内2人目の感染者が確認されたと発表した。これまでに米国内22州で63人が検査対象となっていたことも判明したが、この報道をきっかけに株安円高が進んだ。
中国湖北省保健当局は1月25日時点で新たに13人が死亡したと発表した。湖北省での死者は1月25日時点で52人となり、中国全土での死者は26日時点で56人となった。フランスで2名、日本も3名、タイで5名など感染者は拡大している。世界保健機構は1月23日時点では感染爆発=パンデミックの宣言をしなかったが、状況はその後に悪化しており、2002年から2003年まで続いた中国発のSARSと同様かそれ以上の規模でのパンデミックへ発展する可能性も懸念される。
比較対象とされるSARSは2002年11月から2003年7月にかけて発生し、中国南部を中心にアウトブレイクを引き起こし、世界保健機構(WHO7)報告では香港を中心に8096人が感染し、37ヶ国で774人が死亡したという。

この時期のドル円は2002年1月に135.15円の高値を付けて円高ドル安の下落期に入っていたが、この下落期は2005年1月安値101.66円まで続いた。NYダウは2000年1月に11750.28ドルの高値をつけてITバブルの天井となり、その後は乱高下を挟みながらも2002年10月の7197.49ドルまで下落が続いた。日経平均も2000年4月に20833.21円の天井を付けて下落期入りしていたが、2003年4月底の7603.76円まで続落している。これらの株安や円高は必ずしもSARSを主要因とした下落ではなかったが、SARSの感染爆発も金融市場全般をリスク回避へ傾斜させる心理的な要因となっていた思われる。

感染爆発リスクが落ち着けば金融市場全般がリスク選好心理を取り戻して株高円安へ向かう可能性もあるだろうが、今回の感染爆発がどの程度の規模になるのか見通しが立たないうちはリスク回避的な行動が優勢となりやすいと思われる。

【2019年4月天井時との類似性】

1月25日未明安値は109.17円で109円台を維持している。1月8日安値から1月17日高値までの上昇幅は2.63円で、半値押しラインは108.86円にある。半値押し以内から切り返して1月24日夕高値109.65円を上抜き返せば、1月17日からの下落基調と戻り高値切り下がりパターンから脱却して上昇再開感が強まると思われる。しかし、半値押しレベルを超える下落となれば、1月17日高値を当面の天井とした下落期入りの可能性も高まると思われる。

12月2日高値から1月8日安値までの2.07円の円高ドル安だったが、そこからのV字反騰で12月2日高値を上抜いて8月26日以降の高値を更新した。この上昇により8月26日からの上昇基調はさらに継続するとの見方も強まったわけだが、高値を更新しても上昇が長続きせずに失速するダブルトップ型での弱気転換の前例を昨年4月24日高値からの下落で経験済みだ。

昨年3月5日から3月25日まで2.40円の円高ドル安となり、V字反騰で3月5日高値を超えたが、4月24日からの反落により8月26日底への下落期に転じた。その時のV字反騰幅は2.67円、3月5日高値から4月24日高値までの間隔は日足37本だった。今回は2.07円の円高ドル安からV字反騰し、1月17日高値まで2.63円の上昇であり、12月2日高値から1月17日高値までの間隔は日足35本となっている。
1月23日から24日まで2日連続の陰線となっているが、1月27日付け日足が安値を更新しての陰線で終わる場合は3日連続陰線=黒三兵となり下落感が強まる可能性があると注意したい。

【米連銀のFOMC、会見で議長はリスク懸念を示すか?】

中国の春節(旧正月)による大型連休は1月30日まで続く。人口1千万人を超える武漢市などで人の移動が規制される中で経済活動の停滞による世界景気への悪影響も懸念される。中国の景気減速を反映するような統計が出てくるまでにはまだタイムラグがあるが、1月第4週の上海総合株価指数は前週比3.2%安、第4週の高値から安値までは4.5%の下落となっており、2019年4月天井から下落し始めた時以来の下げ方となっている。

1月28日から29日には米連銀のFOMCがある。米国の経済指標は今のところ米連銀の金融政策を変更させるような変化を見せていない。1月27日の米新築住宅販売や28日の耐久財受注等も概ね良好な数字が予想されている。しかし1月27日から28日にかけての新型コロナウイルスの感染拡大状況次第では米連銀議長が会見で必要に応じて利下げを再開させる準備を強調する可能性も考えられる。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)1月17日高値以降、1月22日高値110.08円、24日高値109.65円と高値が切り下がり、1月22日安値109.73円から23日深夜安値109.26円、さらに25日未明安値109.17円へと安値が切り下がっている。この高値・安値切り下がりパターンから脱却する=24日高値109.65円を超えないうちは安値切り下がりが継続しやすいと思われる。
(2)1月24日高値109.65円を下回るうちは一段安警戒とし、まず1月8日からの上昇幅に対する半値押しの108.86円試し、さらに割り込む場合は3分の2押しとなる108.52円前後試しを想定する。108.50円前後では突っ込み警戒感も出やすいとみるが、感染爆発リスクが強まって株安円高が進む場合は108円台序盤へ当面の下値目途も切り下がる可能性があると考える。
(3)1月24日高値109.65円を超える反騰が見られる場合は、ひとまず下げ一服として110円前後を試すとみる。ただし感染爆発の収束感が見られない場合は戻りも限定的とみて110円前後からの反落開始に注意する。(了)<26日16:40>

【当面の主な予定】

1/27(月)
休 場 中国、香港、シンガポール(旧正月)、豪州(建国記念日振替)
18:00 (独) 1月 IFO企業景況感指数 (12月 96.3、予想 97.0)
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (11月 71.9万件、予想 73.0万件)
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数 前月比 (11月 1.3%、予想 1.5%)

1/28(火)
休 場 中国、香港(旧正月)
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)
08:50 (日) 12月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (11月 2.1%、予想 2.1%)
09:30 (豪) 12月 NAB企業景況感指数 (11月 4)
22:30 (米) 12月 耐久財受注 前月比 (11月 -2.0%、予想 1.2%)
22:30 (米) 12月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (11月 0.0%、予想 0.4%)
23:00 (米) 11月 ケース・シラー米住宅価格指数 (10月 218.43)
23:00 (米) 11月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (10月 2.2%、予想 2.5%)
24:00 (米) 1月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (12月 126.5、予想 128.0)
24:00 (米) 1月 リッチモンド連銀製造業指数 (12月 -5、予想 -3)

1/29(水)
休場 中国(旧正月)
EU欧州議会、英国のEU離脱案を採決
未 定 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)
09:30 (豪) 10-12月期消費者物価 前期比 (前期 0.5%、予想 0.5%)
09:30 (豪) 10-12月期消費者物価 前年同期比 (前期 1.7%、予想 1.7%)
14:00 (日) 1月 消費者態度指数・一般世帯 (12月 39.1)
16:00 (独) 2月 GFK消費者信頼感調査 (1月 9.6、予想 9.7)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前月比 (11月 1.2%、予想 0.7%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前年同月比 (11月 5.6%)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 1.50-1.75%、予想 1.50-1.75%)
28:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

1/30(木)
休 場 中国(旧正月)
06:45 (NZ) 12月 貿易収支 (11月 -7.53億NZドル、予想 0.50億NZドル)
09:30 (豪) 10-12月期輸入物価指数 前期比 (前期 0.4%、予想 0.4%)
17:55 (独) 1月 失業者数 前月比 (12月 0.8万人、予想 0.5万人)
17:55 (独) 1月 失業率 (12月 5.0%、予想 5.0%)
19:00 (欧) 1月 経済信頼感 (12月 101.5、予想 102.0)
19:00 (欧) 1月 消費者信頼感確定値 (速報 -8.1)
19:00 (欧) 12月 失業率 (11月 7.5%、予想 7.5%)
21:00 (メ) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 0.0%)
21:00 (メ) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 -0.3%)
21:00 (英) イングランド銀行(BOE) 政策金利 (現行 0.75%、予想 0.75%)
21:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、会見

22:00 (独) 1月 消費者物価指数速報値 前月比 (12月 0.5%、予想 -0.7%)
22:00 (独) 1月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (12月 1.5%、予想 1.6%)
22:30 (米) 10-12月期GDP速報値 前期比年率 (前期 2.1%、予想 2.2%)
22:30 (米) 10-12月期個人消費速報値 前期比 (前期 3.2%、予想 2.3%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCE速報値 前期比 (前期 2.1%、予想 1.6%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 173.1万人)

1/31(金)
英国がEU離脱
08:30 (日) 12月 失業率 (11月 2.2%、予想 2.3%)
08:30 (日) 12月 有効求人倍率 (11月 1.57、予想 1.57)
08:30 (日) 1月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (12月 0.8%、予想 0.8%)
08:50 (日) 12月 小売業販売額 前年同月比 (11月 -2.1%、予想 -1.6%)
08:50 (日) 12月 鉱工業生産速報値 前月比 (11月 -1.0%、予想 0.7%)
08:50 (日) 12月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (11月 -8.2%、予想 -3.3%)
09:01 (英) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -11、予想 -9)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価指数 前期比 (前期 0.4%)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価指数 前年同期比 (前期 1.6%)
10:00 (中) 1月 国家統計局製造業PMI (12月 50.2、予想 50.1)
14:00 (日) 12月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (11月 -12.7%、予想 -12.2%)

19:00 (欧) 10-12月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.1%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.4%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.2%)
22:30 (米) 10-12月期 雇用コスト指数 前期比 (前期 0.7%、予想 0.7%)
22:30 (米) 12月 個人所得 前月比 (11月 0.5%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 個人消費 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 PCEデフレーター 前年同月比 (11月 1.5%、予想 1.6%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前月比 (11月 0.1%、予想 0.1%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (11月 1.6%、予想 1.6%)
23:45 (米) 1月 シカゴ購買部協会景況指数 (12月 48.9、予想 48.9)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 99.1、予想 99.0)

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