ドル円見通し 109円台序盤へ、感染拡大リスクで下落(20/1/24)

1月24日朝にかけてはやや戻しているものの感染拡大による株安・米長期債利回り低下・経済活動萎縮によるリスク回避感が強まっている。

ドル円見通し 109円台序盤へ、感染拡大リスクで下落(20/1/24)

【概況】

ドル円はイラン情勢の緊張緩和により1月6日朝安値107.75円と1月8日午前安値107.65円をダブルボトムとして反騰してきたが、110円台序盤では上値が重くなり1月17日高値110.28円の後は新たな高値更新へ進めずにいたが、中国武漢の新型コロナウイルスの感染拡大報道からリスク回避感が強まって21日午前には110円を割り込んだ。1月22日未明安値109.73円で1月15日深夜安値109.79円を割り込んでから小反発したものの22日昼からはジリ安が続き、23日深夜には109.26円まで安値を切り下げた。
1月24日朝にかけてはやや戻しているものの感染拡大による株安・米長期債利回り低下・経済活動萎縮によるリスク回避感が強まっている。

中国国営テレビは23日に新型肺炎の発症者が634人に拡大して死者が18人に増えたと報じた。世界保健機関(WHO)は「国際的な公衆衛生上の緊急事態と判断するには時期尚早」として緊急事態宣言を見送ったものの事態を見守る姿勢を強調した。中国は武漢等で交通を遮断する事態に陥っているが、2002年のSARS拡大において中国当局の対応が後手後手に回って情報開示が遅れた経緯もあるために先行きへの不安感が強まっている。

NYダウは1月17日に史上最高値を更新してから下落している。1月21日に前日比152.06ドル安となってから23日まで3日間続落している。しかし、ナスダック総合指数は22日に10日連続で取引中の史上最高値を更新し、23日は新たな高値更新には至らなかったものの終値ベースでは9400ポイント台へ初めて乗せて史上最高値を更新している。米国株式市場は感染拡大への懸念とこれまでの株高基調継続への期待感がまだ交錯しているところであり、感染拡大の終息が見えればリスクオン全開となり高値追及へ再び走りだすと思われるが、感染拡大懸念がさらに強まるようだとリスク回避感が一段と増して世界連鎖株安を招きかねない。
米10年債利回りは前日比0.04%低下の1.73%となった。1月5日の1.76%から1月8日に1.87%まで反発してからは下落基調が続いている。米10年債利回り低下基調が日米金利差による円高圧力を強めている印象だ。

欧州中央銀行ECBは1月23日の定例理事会で主要政策金利の据え置きを決定した。これは市場予想通りだったが、ラカルド新総裁が定例会見で物価目標を含む政策戦略の検証を開始したと述べ、「極めて緩和的な金融政策を長期間にわたり継続する必要がある」と述べたことを市場はハト派姿勢と受け止めてユーロが深夜に急落した。ユーロ安ドル高の一方でユーロ円での円高ユーロ安もあってドル円への影響は限定的だった。

米労働省が発表した週間の新規失業保険申請は季節調整済みで21万1000件で前週比6000件増加したが市場予想の21万5000件を下回った。
米調査会社コンファレンス・ボードが発表した12月の景気先行指数は前月比0.3%低下して市場予想の0.2%低下を下回ったが、11月は0.1%上昇へ上方修正された。

【110円を挟んだ持ち合いから転落】

1月22日安値109.73円から戻していた段階では、まだ1月14日高値以降の110円を挟んで前後0.30円弱幅の持ち合いの範囲だったが、1月23日の下落で109円台序盤まで一段安したため、110円を挟んだ持ち合い状態からは転落した。
1月17日への上昇で12月2日高値を上抜いたため、1月8日安値を起点とした一段高がさらに続く可能性はまだ残っていると思われる。しかし急落後のV字反発で高値を更新したものの長続きせずに失速した前例が昨年3月5日高値から4月24日高値への上昇とその後の下落再開時にみられる。その時は3月25日安値からのV字反騰幅が2.67円、高値の間隔が2か月弱、日足で37本だったが、今回は1月8日安値からのV字反騰幅が2.63円12月2日高値から1月17日高値までの間隔は2か月弱の35本目であり類似した状況にある。
戻り幅の半値押しは108.96円にあり、半値押しを超える下落へ進む場合は昨年4月天井からの下落再開時との類似性がさらに強まると警戒される。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月17日高値の後は新たな高値更新へ進めずにいたために、21日朝時点では17日午前高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして21日の日中から22日深夜にかけての間への下落を想定したが、1月22日未明安値から22日昼へいったん戻してから23日朝に安値を更新したため、23日朝時点では22日未明安値を直近のサイクルボトム、22日昼高値を同サイクルトップとして底割れからの新たな弱気サイクル入りとした。また新たなボトム形成期は25日未明から29日朝にかけての間として22日昼高値を上抜けないうちは一段安警戒とした。
1月23日深夜へ一段安してからやや戻しているが、109.75円前後までを戻り抵抗としてさらに一段安へ進む可能性があるとみる。強気転換には110円に到達するような反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では、21日午前の下落で先行スパンから転落し、遅行スパンも悪化したが、その後も両スパンの悪化が続いている。新たな安値更新を回避して109.65円以上での推移を続ければ遅行スパンは好転してくるので戻りを試しにかかるとみるが、先行スパンが戻り抵抗になりやすいとみて、遅行スパンがいったん好転しても再び悪化するところからは下げ再開と考える。強気転換には先行スパン突破が必要と思われる。

60分足の相対力指数は1月23日午後から深夜への安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られるので、50ポイント超えから続伸する場合は戻りを試しやすくなるとみるが、その際は60ポイント前後が抵抗となりやすいと思われる。35ポイント割れからは下げ再開と20ポイント台序盤への低下を伴う一段安を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月23日深夜安値109.26円を下値支持線、109.65円から109.75円を上値抵抗線とする。
(2)110.65円以下での推移中は下向きとし、109.26円割れからは109.00円試し、さらに108円台中盤への下落を想定する。109.50円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみるが、月曜朝の安値は目先の底打ちとなりやすい点に注意する。
(3)109.75円超えからは110円試しへの反騰を想定する。感染爆発リスクが大きく後退するような場合、株高と同調して円安が加速する場合は1月17日高値試しへ進む可能性もあるとみるが、逆に感染拡大が一段と深刻化する場合は110円手前へ戻してからの反落で一段安へ進みかねないと注意する。

【当面の主な予定】

1/24(金)
休場 中国(旧正月)
17:30 (独) 1月 製造業PMI (12月 43.7、予想 44.5)
17:30 (独) 1月 サービス業PMI (12月 52.9、予想 53.0)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI (12月 46.3、予想 46.8)
18:00 (欧) 1月 サービス業PMI (12月 52.8、予想 52.8)
18:30 (英) 1月 製造業PMI (12月 47.5、予想 48.9)
18:30 (英) 1月 サービス業PMI (12月 50.0、予想 51.0)
23:45 (米) 1月 製造業PMI (12月 52.4、予想 52.5)
23:45 (米) 1月 サービス業PMI (12月 52.8、予想 52.9)

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