ドル円見通し 新型コロナウイルス肺炎感染拡大でリスク回避、110円台維持できず(20/1/22)

米国での感染者発見報道でNYダウが下落したためにドル円も一段安となり109.73円まで安値を切り下げた。

ドル円見通し 新型コロナウイルス肺炎感染拡大でリスク回避、110円台維持できず(20/1/22)

【概況】

ドル円はイラン情勢の緊張緩和により1月6日朝安値107.75円と1月8日午前安値107.65円をダブルボトムとして反騰に転じ、1月14日には110.21円まで上昇して110円台を回復、17日には110.28円までわずかながら高値を切り上げ。110円台を維持して先週を終えた。週明けの20日は米国市場がキング牧師生誕記念日による祝日となったために手掛かりに乏しい中で小動きに止まり、110円台序盤で推移した。

1月21日午前に中国武漢での新型コロナウイルスによる肺炎感染拡大報道から経済活動停滞への懸念が強まって株安となり、リスク回避的な動きとなる中で円高となり109.88円まで下落、その後は深夜まで下げ渋っていたが、米国での感染者発見報道でNYダウが下落したためにドル円も一段安となり109.73円まで安値を切り下げた。

NYダウは17日に史上最高値を更新して20日は休場だったが、21日は6日ぶりの反落で前日比152.06ドル安となった。ナスダック総合株価指数は取引時間中の最高値を更新したものの米国での感染発見報道から売られて上昇幅を解消して18.13ポイント安で終了した。リスク回避感が強まる中で債券は買われて米10年債利回りは前日比0.04%低下して1.78%となった。

【SARS以来の感染爆発リスク】

中国は1月24日から春節による大型連休に入り、帰省や海外旅行での大規模な移動が始まるため、中国全土及び世界的な感染の拡大が懸念されている。今のところ2002年から2003年に感染拡大したSARSの発生時に近い状況だが、SARS感染拡大の当初に中国当局が十分な情報発信をしなかったことで世界的な感染拡大となり国際的な非難にさらされた経緯もある。中国政府は22日にこの件での記者会見を予定しているが、すでに感染者が300人を超えたとの報道もあり、実際の感染状況や症状・重症度等に対する市場の不安も大きい。

SARSは2002年11月から2003年7月にかけて発生したが、中国南部を中心にアウトブレイクし、世界保健機構(WHO7)報告では香港を中心に8096人が感染し、37ヶ国で774人が死亡している。
この時期のドル円は2002年1月に135.15円の高値を付けて円高ドル安の下落期に入っていたが、この下落期は2005年1月安値101.66円まで続いた。NYダウは2000年1月に11750.28ドルの高値をつけてITバブルの天井となり、その後は乱高下を挟みながらも2002年10月の7197.49ドルまで下落が続いた。日経平均も2000年4月に20833.21円の天井を付けて下落期入りしていたが、2003年4月底の7603.76円まで続落している。株安や円高は必ずしもSARS要因による下落ではなかったもののSARSの感染爆発も金融市場全般をリスク回避へ傾斜させる一要因となっていたと思われる。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値と8日午前安値をダブル底とした上昇が1月14日高値でいったんサイクルトップを付けて1月15日深夜へ小反落し、1月17日に高値を更新したことで新たな強気サイクルに入っていたが、その後は新たな高値更新へ進めずにいたために、21日朝時点では17日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。また17日午前高値を上抜けないうちは21日の日中から22日深夜にかけての間への下落余地ありとした。

1月22日未明へ続落してからはやや戻しているのでボトムを付けた可能性があるが、21日深夜の戻り高値110.11円を超えないうちは一段安余地ありとみる。また21日深夜高値を超える場合はいったん強気サイクル入りとして22日午前から24日午前にかけての間への上昇を想定するが、その後に底割れするところからは新たな弱気サイクル入りとなって25日未明から29日未明にかけての間へ下落しやすくなると注意する。

60分足の一目均衡表では、21日午前の下落で先行スパンから転落し、遅行スパンも悪化した状況がその後も続いている。110.11円超えへ進めば両スパンそろって好転してくるため強気サイクル入りと考えるが、いったん遅行スパンが好転してもその後に再び悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は1月21日午前安値から22日未明への安値更新時に指数のボトムが切り上がって強気逆行の気配となっている。50ポイント超えからは上昇再開とみるが、再び30ポイントを割り込む場合は急落型の下落に入りやすいと注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月22日未明安値109.73円を下値支持線、1月21日深夜の戻り高値110.11円を上値抵抗線とする。
(2)110.11円以下での推移中は下向きとし、109.73円割れからは109.50円前後試しを想定する。109.50円前後は押し目買いされやすいところとみるが、リスク回避感が強まって円高が加速する場合は109円台序盤へ下値目途を引き下げる。
(3)110.11円超えからは強気サイクル入りとみて17日高値110.28円試しを想定する。17日高値を上抜く場合は一段高入りとなるため上値目途を110.50円試し、さらに先行きで111円を目指す可能性も出てくるとみるが、いったん強気転換した後に109.90円を割り込むところからは下げ再開注意とし、週初からの安値を更新する場合は新たな弱気サイクル入りにより109円台前半への下落へ進むと考える。

【当面の主な予定】

1/22(水)
23:00 (米) 11月 住宅価格指数 前月比 (10月 0.2%、予想 0.3%)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (11月 535万件、予想 543万件)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数 前月比 (11月 -1.7%、予想 1.3%)

1/23(木)
08:50 (日) 12月 貿易統計・通関・季調前 (11月 -821億円、予想 -1700億円)
08:50 (日) 12月 貿易統計・通関・季調済 (11月 -608億円、予想 -2360億円)
09:30 (豪) 12月 新規雇用者数 (11月 3.99万人、予想 1.10万人)
09:30 (豪) 12月 失業率 (11月 5.2%、予想 5.2%)

13:30 (日) 11月 全産業活動指数 前月比 (10月 -4.3%、予想 0.1%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数・改定値 (速報 90.9)
14:00 (日) 11月 景気一致指数・改定値 (速報 95.1)
21:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.4万件、予想 21.4万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 176.7万人、予想 175.0万人)
24:00 (米) 12月 景気先行指数 前月比 (11月 0.0%、予想 -0.2%)
24:00 (欧) 1月 消費者信頼感 (12月 -8.1、予想 -7.8)



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