【概況】
ドル円はイラン情勢の有事緊張から1月6日朝安値107.75円、1月8日午前安値107.65円と二度の108円割れを見たが、米・イランによる全面戦争突入や中東全域への有事リスク拡大懸念が後退したために両安値をダブルボトムとして反騰に転じた。
先週末は109.68円まで上昇して年末からの急落前高値と同値へ戻し、今週は1月13日夜に12月2日高値109.72円を超えて一段高に入り、14日午前には110.21円をつけて昨年5月以来となる110円台回復を見た。しかし、110円突破を新たなきっかけとして上昇が加速する展開には至らず、14日午前高値の後はジリ安での推移で110円台を維持しきれずにいる。
【米国による対中制裁関税は続いている】
1月15日は米中通商協議の第1段落合意の署名が米ホワイトハウスで行われた。米中関係の改善期待から株高基調が続いてきたがNYダウは29127.59ドルをつけて取引中の史上最高値を更新、終値ベースでも29000ドル台に乗せて最高値更新となった。しかし第1段階合意署名が終わり、今後の第2段階以降の対立懸念もくすぶるとしてイベント通過感により高値からは100ドル近い下落となっている。米債券市場では10年債利回りが前日比0.02%低下の1.79%となり、やや債券買い優勢という印象だった。
今回の第1段階合意により、中国は米国産品の輸入を拡大して米国は制裁関税の一部を引き下げる。しかし中国の産業補助金や国有企業等の構造問題を含む「第2段階」の交渉は難航が予想されている。また米国は署名から30日後に昨年9月に発動した制裁関税第4弾の税率を現行の15%から7.5%に引き下げるが、制裁関税の第1弾から第3弾については据え置くため、中国製品計3700億ドル相当へ追加関税が課せられた状況は継続する。これら追加関税の撤廃には第2段階での合意が必要と米国は主張し、第1段階合意が順守されなければ関税引き下げを止めるとしている。
【次のテーマ探しへ】
年明け早々のイラン情勢は有事リスクが一挙に拡大したものの短期にひとまず終息したためにリスクオンへの揺れ返しが過剰となった。米中通商協議合意への期待という昨年末までの株高を支えてきた流れも署名実現によりひとまずは材料消化となった。ドル円は年末時点では110円の壁を超えられない程度に止まっていたが、イラン情勢の揺れ返しによる過剰反応で110円を超えたものの、さらに騰勢を継続してゆくには押し上げ材料不足というところに来ているのではないかと思う。
今後はイラン情勢のリスク回避的なぶり返しがないかどうか、米中協議の第2段階を巡る先行き不透明感が強まらないかどうか、関税が完全撤廃されない中で米中及び欧州等の景気が持ち直せるかどうか、それによる米連銀や各国中銀の金融緩和姿勢に変化があるのかどうか、そして11月の米大統領選挙へ向けた選挙運動・米国政局、ブレクジットの現実化による英国・EUへの影響等が焦点となってゆくと思われる。
ニューヨーク連銀行が発表した1月の製造業景況指数は4.8で12月の3.3から上昇、市場予想の3.55を上回った。ただ6カ月先の見通しは23.6で前月の26.1から悪化した。
米労働省が発表した12月の生産者物価指数前月比0.1%上昇、エネルギーと食料品を除いたコア指数も0.1%の上昇だった。前年同月比では全体が1.3%上昇、コアは1.1%上昇した。市場予想は前月比の全体とコア指数ともに0.2%上昇、前年同月比はいずれも1.3%上昇で、市場の反応は限定的だった。
【60分足一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値と8日午前安値をダブル底として強気サイクル入りしてきたが、先週末に小反落してから110円超えへ一段高となった。その後は110円を割り込んでのジリ安が続いているため、1月11日未明安値を直近のサイクルボトム、14日午前高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は16日未明から20日朝にかけての間と想定し、14日午前高値超えへ進めない内は下落余地ありとし、14日午前高値超えからは新たな強気サイクル入りとして17日午前から21日午前にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では、14日午前高値からのジリ安により遅行スパンが悪化し、先行スパンへ潜り込んでいる。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、両スパン揃って好転するところからは上昇再開の可能性を優先して14日午前高値試しとし、高値更新からは一段高入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は40ポイント台まで下げてからは下げ渋りとなっている。60ポイント超えへ戻せない内は下落余地ありとし、40ポイント割れからは30ポイント前後試しへ向かうとみるが、60ポイントを超えてその後も50ポイント以上での推移が続く場合は上昇再開の可能性ありと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月15日深夜安値109.79円を下値支持線、110.00円、次いで1月14日午前高値110.21円を上値抵抗線とする。
(2)110円以下での推移中は下向きとし、15日深夜安値割れからは109.50円前後試しを想定する。109.50円前後では押し目買いも入りやすいとみるが、材料を伴って109.50円割れから続落に入る場合は109.25円前後へ目先の下値目処を引き下げる。また109.79円以下での推移なら17日も下落余地ありとみる。
(3)110円超えからは14日高値110.21円試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして110.50円前後、さらに先行きで111円を目指すとみる。14日高値を上抜いた後も110円以上での推移なら17日以降への続伸を想定するが、14日高値をわずかに超えてもその後の反落で14日高値以降の安値を割り込む場合はダブルトップ形成からの下落再開を疑う。
【当面の主な予定】
1/16(木)
未 定 (南ア) 南アフリカ準備銀行政策金利 (現行 6.50%、予想 6.50%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数、改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数、改定値 前年同月比 (速報 1.5%、予想 1.5%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 12.00%、予想 11.50%)
21:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 12月 輸入物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 輸出物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 小売売上高 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 0.1%、予想 0.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 21.6万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 180.3万人、予想 172.0万人)
22:30 (米) 1月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (12月 0.3、予想 3.8)
24:00 (米) 11月 企業在庫 前月比 (10月 0.2%、予想 -0.1%)
24:00 (米) 1月 NAHB住宅市場指数 (12月 76、予想 75)
27:00 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言
30:00 (米) 11月 対米証券投資 (10月 -483億ドル)
30:00 (米) 11月 対米証券投資・短期債除く (10月 325億ドル)
1/17(金)
11:00 (中) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 8.0%、予想 7.9%)
11:00 (中) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 6.2%、予想 5.9%)
11:00 (中) 10-12月期GDP 前年同期比 (前期 6.0%、予想 6.0%)
11:00 (中) 10-12月期GDP 前期比 (前期 1.5%、予想 1.4%)
13:30 (日) 11月 第三次産業活動指数 前月比 (10月 -4.6%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調済 (10月 324億ユーロ)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調前 (10月 410億ユーロ)
18:30 (英) 12月 小売売上高 前月比 (11月 -0.6%、予想 0.6%)
18:30 (英) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 1.0%、予想 2.7%)
18:30 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 -0.6%、予想 0.8%)
18:30 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (11月 0.8%、予想 3.0%)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前月比 (10月 -1.0%)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前年同月比 (10月 0.3%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価指数、改定値 前年同月比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価コア指数、改定値 前年同月比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算件数 (11月 136.5万件、予想 138.0万件)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数 前月比 (11月 3.2%、予想 1.1%)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算件数 (11月 148.2万件、予想 146.0万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数 前月比 (11月 1.4%、予想 -1.5%)
23:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:15 (米) 12月 設備稼働率 (11月 77.3%、予想 77.1%)
23:15 (米) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 1.1%、予想 0.2%)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (12月 99.3、予想 99.0)
オーダー/ポジション状況
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15日(水)の海外市場でドル円は狭いレンジ内で膠着(1日の値幅が僅か21銭)。
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