ドル円見通し イラン情勢急展開で急落から一転して反騰(20/1/9)

両国の全面戦争化は回避され中東全域を巻き込むような有事リスクはひとまず後退したとして株高となり、ドル円も1月7日夜高値を超え9日未明には109.24円まで続伸した。

ドル円見通し イラン情勢急展開で急落から一転して反騰(20/1/9)

【概況】

1月8日朝、イランは米軍の駐留するイラク空軍基地へ弾道ミサイル攻撃を行ったと報じられたことでドル円は8日午前に107.65円まで急落した。1月2日夜に米軍によるイラン革命軍司令官殺害空爆事件が発生して中東情勢が一挙に緊迫したために年明けの金融市場はリスク回避へ急旋回してドル円は1月6日午前には107.75円まで下落したが、その後はイラン側が3日間の喪に服す中で新たな軍事的動きがなかったことや株式市場がパニック的な下落には至らずに持ち直したために7日深夜高値108.62円までいったん戻していた。そこにイランの報復攻撃が発生したということでドル円は再び急落したのだが、イランの報復攻撃直後からイラン側は戦況拡大を望まないこと、トランプ大統領も「問題ない、犠牲者は出ていない」とツイートして米軍による即時反撃もなかったため、全面戦争化が回避される可能性もあるのではないかとみてドル円は買い戻しの動きに入った。

イラン外相は今回の攻撃を国連憲章51条に基づく自衛行為とし、これ以上の戦争拡大を望まないと早々に表明したが、更に攻撃を受ければ反撃するとして米国の同盟国への警告も発した。国連憲章51条は安保理が対処しない内は攻撃を受けた側が反撃するのを妨げないとするもので、イランは国連安保理に書簡を送ったと表明した。

トランプ大統領は1月8日深夜の演説で、「イランに強力な経済制裁を科す」としたが「軍事力は行使したくない」と述べた。この発言により両国の全面戦争化は回避され中東全域を巻き込むような有事リスクはひとまず後退したとして株高となり、ドル円も1月7日夜高値を超え9日未明には109.24円まで続伸した。

NYダウはリスクオン心理回復で前日比161.41ドル高と上昇、ナスダック総合指数は60.66ポイント高で終値での史上最高値を4日ぶりに更新した。
オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した昨年12月の全米雇用報告では民間部門雇用者数が20万2000人増となり市場予想の16万人増を上回った。また11月分は当初の6万7000人増から12万4000人増へ上方修正された。これらは株高ドル高要因となった。

【年明けのイラン情勢による急展開は一服、年末への下落基調を解消できるのか?】

年初からのドル円急落は、米国による突然の空爆によるイラン司令官殺害への衝撃により、イランと米国の全面戦争、イラン支持の武装勢力によるテロの拡大、イスラエルやサウジ等を巻き込んだ中東全域への有事リスク拡大等への懸念が背景であった。米国の攻撃に対してイランが相応の報復を行い、さらにエスカレートする状況に入らなかったことで、年初からの急落要因はひとまず材料から外れた。

しかし、年初に一段安する前の年末時点からドル円はNYダウ等の史上最高値更新の流れに同調しきれずに110円に乗せられない持ち合いに止まり、年末には持ち合いから転落した。米中通商協議が第1段階で合意に至ったことで株式市場は楽観を強めたが、第2段階以降の協議が簡単には進展しないであろうという懸念が株高への同調にブレーキをかけ、また米連銀が利下げを中断したものの世界的な金融緩和拡大感は継続するとの観測がドル円を押し下げていた。イラン情勢はひとまず脇における状況となったとして、年末までのドル安円高基調を覆す状況に入れるのかどうかは今後の米経済指標や米中協議の先行き動向にも左右されると思われる。


また、米国とイランの紛争もいったん双方の軍事的な攻撃というレベルに至ったことで、このまま終息できずに再び軍事的緊張感が強まる状況が発生しないとも限らない。イランと米国が核合意に戻り、米国が経済制裁を止めずに却って拡大する場合にはイラン側の反発も再燃し、司令官を殺害されたことでの怨念もぶり返す可能性があるということは押さえておきたい。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値で直近のサイクルボトムをつけて戻していたが、1月8日朝の急落で6日朝安値を割り込んだため、1月7日深夜高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りした。しかし、6日朝安値をわずかに割り込んだところからV字反騰となり7日深夜高値を上抜き返したため、現状は1月6日朝安値と8日朝安値をダブルボトムとした強気サイクル入りと考えられる。7日深夜高値を基準として高値形成期は10日夜から14日深夜にかけての間と想定されるが、サイクルが短縮されてのダブルボトムによる上昇のため、戻りも短期に終わる可能性にも注意がいる。このため108.60円以上での推移中は一段高余地ありとするが、108.60円割れからは下げ再開注意と考える。

60分足の一目均衡表では、8日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いているので、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、戻り高値更新が続かないと9日夜からは遅行スパンも悪化しやすくなると注意する。遅行スパン悪化からはいったん反動安入りするとみて安値試し優先とし、先行スパンからの転落を試す流れを想定する。

60分足の相対力指数は1月6日朝安値を8日朝安値で割り込んだ段階で指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて反騰入りしている。9日未明には70ポイントを超えてきているが、相場が高値を切り上げる中で指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られる場合は反落警戒とし、50ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.80円から108.60円を下値支持帯、109.25円から109.50円を上値抵抗帯とみておく。
(2)109円を割り込んでも切り返す内は109.25円超えから109.50円前後を目指すとみる。109.50円以上は反落注意とみるが109円以上での推移なら10日の日中も高値を試す可能性ありと考える。
(3)108.80円割れの場合は108.60円試しとするが、その範囲から切り返して109円を超えるところからは上昇再開とみる。108.60円割れから続落の場合は下げ再開と仮定して108.30円前後への下落を想定する。また108.60円以下での推移なら10日の日中も安値を試しやすいとみる。

【当面の主な予定】

1/9(木)
10:30 (中) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 4.5%、予想 4.7%)
10:30 (中) 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 -1.4%、予想 -0.4%)
16:00 (独) 11月 貿易収支 (10月 215億ユーロ、予想 210億ユーロ)
16:00 (独) 11月 経常収支 (10月 227億ユーロ、予想 238億ユーロ)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -1.7%、予想 0.8%)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -5.3%、予想 -3.6%)
19:00 (欧) 11月 失業率 (10月 7.5%、予想 7.5%)
22:00 (米) クラリダFRB副議長、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.8万人、予想 171.9万人)
25:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演(ロンドン)
27:20 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
28:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

1/10(金)
08:30 (日) 11月 全世帯消費支出 前年同月比 (10月 -5.1%、予想 -2.0%)
09:30 (豪) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.0%、予想 0.4%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数・速報値 (10月 91.6、予想 90.9)
14:00 (日) 11月 景気一致指数・速報値 (10月 95.3、予想 95.2)
22:30 (米) 12月 雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比 (11月 26.6万人、予想 16.4万人)
22:30 (米) 12月 雇用統計 失業率 (11月 3.5%、予想 3.5%)
22:30 (米) 12月 雇用統計 平均時給 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 雇用統計 平均時給 前年同月比 (11月 3.1%、予想 3.1%)
24:00 (米) 11月 卸売在庫 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%
24:00 (米) 11月 卸売売上高 前月比 (10月 -0.7%、予想 0.2%)

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