ドル円見通し 米中の第一段階合意内容を不足として110円乗せへ進めずダブルトップ気配(週報12月第3週)

12月13日夜、米中両政府は通商協議の第1段階で正式合意したと発表した。

ドル円見通し 米中の第一段階合意内容を不足として110円乗せへ進めずダブルトップ気配(週報12月第3週)

米中の第一段階合意内容を不足として110円乗せへ進めずダブルトップ気配

【概況】

11月15日未明安値108.24円と11月21日午前安値108.26円をダブルボトムとして切り返し、12月2日昼には109.72円の高値を付けて8月26日底値104.45円以降の高値を更新した。しかし米中通商協議進展への懸念や12月2日夜の米ISM製造業景況指数が予想以上に悪化していたこと等から下落に転じて12月4日には108.41円、12月9日には108.40円まで下落して11月15日未明安値に迫った。12月6日の米雇用統計が予想以上に良好だったことに対しても一時的な反発にとどまったため、上値の重さがかえって意識されて108.40円台を維持できずに一段安へ進みかねない状況にあった。
12月12日の米連銀FOMCでは政策金利を予想通りに現状維持としたが、FOMCメンバーによる2020年の金利変更予想の中央値がゼロ回=現状維持のままとなったことで当面は利下げされた状況が続くと市場は受け止め、パウエル議長も会見で大幅なインフレ進行がなければ利上げしない姿勢を強調したためにドル高反応となり、ドル円は12日午前に108.44円まで再び売られたが、108.40円割れは回避した。

12月12日深夜、トランプ大統領が米中通商協議の第1段階合意内容を承認したとの報道からドル円は急伸となり109円を超えて12月4日以降の108円台中後半での持ち合いから一挙に上抜けた。13日朝には英国の総選挙で与党保守党が予想以上の大勝となりポンドが急伸してリスクオン心理をさらに増長させた。このためドルストレートでは豪ドルやユーロドル等の上昇でドル安となる一方でクロス円では円が全面安となり、ドル円は13日夜には109.70円へ続伸して12月2日高値109.72円にあと一歩まで迫った。

しかし、12月13日夜に米中両政府が第1段階合意内容を示すと、事前の観測報道よりも既発の税率引き下げが軽微な範囲にとどまり、第2段階合意への交渉が始まれば再び難航する可能性があると受け止められた。NYダウは前日に続き史上最高値を更新したが、終盤は失速して前日比3.33ドル高で終了した。米債券は安全資産買いで上昇し、10年債利回りは0.07%低下の1.82%となった。前日は一時1.91%まで上昇していたので0.1%近い低下となった。13日早朝に急伸していたユーロとポンドも深夜には反落、資源通貨の豪ドルも13日朝へ大幅続伸していたが13日深夜には急落した。楽観ムードは13日朝ないしは13日夜まででいったんピークとなった印象だ。

【米中通商協議、第1段階の合意から第2段階へ】

12月13日夜、米中両政府は通商協議の第1段階で正式合意したと発表した。双方の輸入品に課している追加関税を段階的に撤回し、12月15日に予定されていた米国の制裁関税拡大と中国の報復関税の発動は見送られた。この合意文書への署名は来年1月を目途に両国閣僚がワシントンで行い、合意文書に署名してから30日後に実施するとした。
トランプ米大統領は「非常に大きな合意に達した」と述べたが「第2段階」交渉を急ぐとした。また米高官は中国が合意を破れば関税を引き上げるとした。
今回の合意内容によると、米国は既に昨年時点で発動済の中国からの輸入品計3700億ドル分に対する追加関税のうち2500億ドル相当に課していた25%は据え置き、今年9月に拡大した1200億ドル相当分への追加関税を現行の15%から7.5%へ引き下げるとした。また米政府は中国が農産品やエネルギー資源等2000億ドル相当の米国産品を購入するとし、米国農産品については今後2年間で平均400〜500億ドル相当を購入するとしたが、中国政府は公式には数値目標を明らかにしなかった。

事前報道では既発の追加関税率を半減させるとされていたが、そこまでの米国側の譲歩はなかった。農産物輸入の数値目標も米国側は自国農家にアピールしているが中国政府はコメントしておらず不透明感も残る。曖昧さが残るものであり、米国側はいつでも関税引き下げを再開し、中国も農産物輸入を目標程に行わない可能性も残ることになったと思われる。
また第1段階の後には第2段階の交渉も始まるということを市場は再認識し、楽観ムードもさらに増長するような展開にはならなかったと思われる。
米中通商協議問題は単純な貿易戦争ではなく世界経済システムにおけるヘゲモニー争いであり次世代技術支配をめぐる戦争でもある。簡単には一件落着とはならないだろう。株式市場は基本的に楽観反応をしやすいが、ドル円は悲観材料に反応しやすくなってゆくかもしれない。

【米中の第1段階合意の主な内容】

@中国は米農産品の購入を拡大する
A中国は知的財産権の保護強化を行う
B中国による技術移転強要を是正する
C中国の金融サービス市場開放を進める
D人民元相場の透明性を向上させる
E合意違反の罰則には関税拡大措置をとる
F米国は12月15日の対中関税拡大を見送る
G米国は発動済み関税を一部引き下げる

【米国の対中制裁関税推移と第1段階合意による変化】

@第1〜3弾(2018年中に実施済)
 中国からの輸入品2500億ドル分、関税率25%
 (第1段階合意では税率を維持)
A第4弾その1(2019年9月1日発動済)
 中国からの輸入品1200億ドル分、テレビや衣料品等へ関税率15%
 (第1段階合意で税率を7.5%に引き下げ)
B第4弾その2(2019年12月15日から発動予定)
 中国からの輸入品1600億ドル分、スマートフォン等に関税率15%
 (第1段階合意では発動延期)

【当面のテクニカルポイント】

(1)8月26日底以降は戻り高値更新後の反落時も安値を切り上げて次の高値切り上げへ進むという強気パターンを繰り返してきた。12月2日高値からの下落でも11月15日安値割れを回避して戻しているので、12月2日高値109.72 円を超えれば110円、110.50円、さらに111円を目指す可能性も出てくると思われるが、そのためには米中通商協議の第2段階への双方のかなり前向きな姿勢表明が必要だろう。
(2)12月13日高値では12月2日高値を超えずに失速して週を終えたため、週末時点では両高値をダブルトップとして今回は高値切り上げに失敗する可能性が発生している。このため109円台を維持するか一時的に割り込んでも切り返すうちは高値更新へ進む可能性ありとするが、109円割れからは弱気転換注意としてもう一度108.40円台試しへ向かう可能性があるとみる。

(1)8月26日底以降は戻り高値更新後の反落時も安値を切り上げて次の高値切り上げへ進むという強気パターンを繰り返してきた。12月2日高値からの下落でも11月15日安値割れを回避して戻しているので、12月2日高値109.72 円を超えれば110円、110.50円、さらに111円を目指す可能性も出てくると思われるが、そのためには米中通商協議の第2段階への双方のかなり前向きな姿勢表明が必要だろう。
(2)12月13日高値では12月2日高値を超えずに失速して週を終えたため、週末時点では両高値をダブルトップとして今回は高値切り上げに失敗する可能性が発生している。このため109円台を維持するか一時的に割り込んでも切り返すうちは高値更新へ進む可能性ありとするが、109円割れからは弱気転換注意としてもう一度108.40円台試しへ向かう可能性があるとみる。

【当面の予定】

12/16(月)
休場、南ア
11:00 (中) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 7.2%、予想 7.6%)
11:00 (中) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 4.7%、予想 5.0%)
13:30 (日) 10月 第三次産業活動指数 前月比 (9月 1.8%、予想 -3.7%)
16:00 (ト) 9月 失業率 (8月 14.0%)
17:30 (独) 12月 製造業PMI速報値 (11月 44.1、予想 44.8)
17:30 (独) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 51.7、予想 52.0)
18:00 (欧) 12月 製造業PMI速報値 (11月 46.9、予想 47.1)
18:00 (欧) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 51.9、予想 52.0)
18:30 (英) 12月 製造業PMI速報値 (11月 48.9、予想 49.4)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 49.3、予想 49.5)

22:30 (米) 12月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (11月 2.9、予想 5.0)
23:45 (米) 12月 製造業PMI速報値 (11月 52.6、予想 52.6)
23:45 (米) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 51.6、予想 52.0)
24:00 (米) 12月 NAHB住宅市場指数 (11月 70、予想 71)
30:00 (米) 10月 対米証券投資・合計 (9月 -376億ドル)
30:00 (米) 10月 対米証券投資・短期債除く (9月 495億ドル)

12/17(火)

09:00 (NZ) 12月 NBNZ企業信頼感 (11月 -26.4)
09:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
18:30 (英) 11月 失業保険申請件数 (10月 3.30万件)
18:30 (英) 10月 失業率・ILO方式 (9月 3.8%、予想 3.9%)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調済 (9月 183億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調前 (9月 187億ユーロ)
22:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論参加
22:30 (米) 11月 住宅着工件数・年率換算件数 (10月 131.4万件、予想 134.0万件)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数 前月比 (10月 3.8%、予想 2.0%)
22:30 (米) 11月 建設許可件数・年率換算件数 (10月 146.1万件、予想 140.5万件)
22:30 (米) 11月 建設許可件数 前月比 (10月 5.0%、予想 -3.8%)
23:15 (米) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.8%、予想 0.8%)
23:15 (米) 11月 設備稼働率 (10月 76.7%、予想 77.4%)
26:30 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
26:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、記者会見

12/18(水)

未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合、1日目
未 定 P(英) 英中銀金融政策委員会(MPC)、1日目
06:45 (NZ) 7-9月期 四半期経常収支 (前期 -11.06億NZドル)
08:50 (日) 11月 通関貿易統計・季調前 (10月 173億円、予想 -3500億円)
08:50 (日) 11月 通関貿易統計・季調済 (10月 -347億円、予想 -570億円)
16:00 (独) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 -0.2%、予想 0.1%)
17:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演

18:00 (独) 12月 IFO企業景況指数 (11月 95.0、予想 95.4)
18:30 (英) 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 -0.2%、予想 0.2%)
18:30 (英) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 1.5%、予想 1.5%)
18:30 (英) 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 1.7%、予想 1.6%)
18:30 (英) 11月 小売物価指数 前月比 (10月 -0.2%、予想 0.2%)
18:30 (英) 11月 小売物価指数 前年同月比 (10月 2.1%、予想 2.2%)
18:30 (英) 11月 生産者物価コア指数 前年同月比 (10月 1.3%)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.7%)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前年同月比 (9月 -0.7%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
19:15 (米)ブレイナードFRB理事、講演
26:40 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、質疑応答

12/19(木)

未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
06:45 (NZ) 7-9月期GDP 前期比 (前期 0.5%)
06:45 (NZ) 7-9月期GDP 前年同期比 (前期 2.1%)
06:45 (NZ) 11月 貿易収支 (10月 -10.13億NZドル)
09:30 (豪) 11月 新規雇用者数 (10月 -1.90万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 11月 失業率 (10月 5.3%、予想 5.3%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
18:30 (英) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -0.1%、予想 0.5%)
18:30 (英) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 3.1%、予想 2.6%)
18:30 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 -0.3%、予想 0.5%)
18:30 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (10月 2.7%、予想 2.1%)

21:00 (英) イングランド銀行 政策金利 (現行 0.75%、予想 0.75%)
22:30 (米) 7-9月期経常収支 (前期 -1282億ドル、予想 -1210億ドル)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数 (11月 10.4、予想 9.0)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 25.2万件、予想 万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 166.7万人、予想
24:00 (米) 11月 景気先行指数 前月比 (10月 -0.1%、予想 0.1%)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (10月 546万件、予想 545万件)
24:00 (米) 11月 中古住宅販売件数 前月比 (10月 1.9%、予想 -0.2%)
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.50%、予想 7.25%)

12/20(金)

08:30 (日) 11月 全国消費者物価指数 前年同月比 (10月 0.2%、予想 0.5%)
08:30 (日) 11月 全国消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (10月 0.4%、予想 0.5%)
08:30 (日) 11月 全国消費者物価指数・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (10月 0.7%、予想 0.7%)
09:01 (英) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 -14、予想 -14)
16:00 (独) 1月 GFK消費者信頼感 (11月 9.7、予想 9.8)
18:00 (欧) 10月 経常収支・季調済 (9月 282億ユーロ)
18:00 (欧) 10月 経常収支・季調前 (9月 358億ユーロ)
18:30 (英) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
18:30 (英) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
18:30 (英) 7-9月期 経常収支 (前期 -252億ポンド、予想 -150億ポンド)

22:30 (米) 7-9月期 GDP確定値  前期比年率 (改定値 2.1%、予想 2.1%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費確定値 前期比 (改訂値 2.9%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE確定値 前期比 (改訂値 2.1%)
24:00 (欧) 12月 消費者信頼感 (11月 -7.2、予想 -7.6)
24:00 (米) 11月 個人所得 前月比 (10月 0.0%、予想 0.3%)
24:00 (米) 11月 個人消費(PCE) 前月比 (10月 0.3%、予想 0.4%)
24:00 (米) 11月 PCEデフレーター 前年同月比 (10月 1.3%)
24:00 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%)
24:00 (米) 11月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (10月 1.6%、予想 1.5%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 99.2、予想 99.2)

米中の第一段階合意内容を不足として110円乗せへ進めずダブルトップ気配

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る