ドル円見通し、米国の香港人権法成立と中国の反発でも109円台を維持(19/11/29)

中国側が米国批判をしたものの具体的な対抗措置を示さなかった事、米国が感謝祭で休場となるため米中通商協議への影響を悲観するのは時期尚早として持ち直した

ドル円見通し、米国の香港人権法成立と中国の反発でも109円台を維持(19/11/29)

【概況】

11月27日に米中協議進展期待と米GDP速報や耐久財受注が予想を上回ったことでリスク選好優勢となって株高ドル高が進み、ドル円は11月26日午前高値109.20円を超えて急伸となり、28日未明には109.60円をつけて8月26日以降の高値を更新した。
ところがトランプ米大統領が28日早朝に米上下院が可決して大統領署名待ちとなっていた「香港人権・民主主義法案」に署名し、同法案が成立したと報じられ、中国側が即座に反発姿勢を示したことで28日午前に109.32円まで反落した。しかしその後は109.50円前後まで持ち直した。
米国の香港人権・民主主義法成立への中国側の反発と対抗が、第1段階合意間近の大詰めに来ているとされる米中通商協議の進展に悪影響を与えるのではないかとの懸念が28日午前の下落を招いたが、中国側が米国批判をしたものの具体的な対抗措置を示さなかった事、米国が感謝祭で休場となるため米中通商協議への影響を悲観するのは時期尚早として持ち直した印象だ。

【米中通商合意は越年か?】

中国外務省は駐中国米大使を呼んで香港問題への干渉をやめるよう要請した。米国の法案成立は両国関係を緊張させて「重要な分野での協力に影響を与えるリスクがある」と警告した。中国外務省も会見で米国を猛烈に批判して報復行動を宣言したが、詳細には触れなかった。米国側からも感謝祭入りでこの問題に関する続報は出てこなかったため、市場としては影響を見定めるために続報待ちとしてドル円は持ち直し、ダウ先物も報道から一旦下げたが下げ幅を縮小している。
米国は12月15日に対中国制裁関税第4弾の発動予定を控えている。それまでにトランプ大統領が固執する米国有利な第1段階の合意に達して関税拡大を回避すれば、トランプ大統領にとっては再選への外交通商成果のアピールとなり、中国側も制裁関税の段階的撤廃により経済的なメリットを得る事が出来るため、双方ともに合意したいところではあろう。

しかし米国の香港人権・民主主義法は内政干渉として中国政府には琴線に触れる重大な問題でもあり、ここで弱腰を見せるのは内政上も香港の民主化デモの拡大を阻止する上でも避けたいところだ。
中国側が内外に対して強気の姿勢を維持し、かつ米国との関係改善も進めたいとするなら、通商協議第1段階合意への前向き姿勢を継続しつつも難癖をつけてゆく事も考えられる。ただしその際にトランプ大統領が関税拡大に走り、戦う大統領をアピールし始めると両国の通商協議は暗礁に乗り上げて先行きの不透明感も増し、問題の長期化による実体経済への悪影響、貿易の萎縮を拡大しかねない。中国にとっては難しい選択を迫られる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月15日未明と21日午前の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしてきたが、26日午前高値から一旦109円を割り込んで切り返して高値を更新したため、27日朝時点では26日午前高値を直近のサイクルトップ、26日夜安値を同サイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとした。またトップ形成期は29日から12月3日午前にかけての間と想定したが、サイクルトップは短縮されることもあるので109.20円割れから続落の場合は弱気転換注意とした。
11月28日午前安値109.32円から戻して109.50円を挟んだ横ばいとなっているので、60分足レベルでは三角持合いの様相に見える。このため28日午前安値割れ回避の内は上昇余地ありとし、28日午前安値割れからは三角持合い下放れとして弱気サイクル入りとし、次のボトム形成期となる29日の日中から12月3日にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では週明けの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンも突破した。28日朝高値の後は新たな高値更新へ進めずにいるので遅行スパンは実線と交錯し始めているが、先行スパンを上回る状況は維持されている。このため、28日朝高値を上抜くところからは三角持合い上放れによる上昇開始として遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、28日午前安値割れからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は28日早朝高値時に80ポイントを超える「買われ過ぎ」水準となり60ポイント割れまで失速したが、その後は60ポイントを挟んで小康状態にある。70ポイント台回復からは上昇再開とするが、その際は28日朝高値時よりも指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られたら弱気転換注意とする。50ポイント割れからは下げ再開を警戒し、28日午前安値109.32円割れからは30ポイント前後を目指す流れを想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月28日午前安値109.32円下値支持線、11月28日早朝高値109.60円を上値抵抗線とする。
(2)109.32円以上での推移中は上昇余地ありとし、28日早朝高値超えからは109.75円前後、更に材料的な後押しあれば110円試しへ向かうとみる。また109.50円以上での推移なら週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)109.32円割れからは三角持合い下放れとして109円試しを想定する。109円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、米中関連でのネガティブ報道から大幅続落となる場合は108.75円前後まで下値目処を引き下げる。また109.32円以下での推移なら週明けも安値を試しやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/29(金)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -4.9%、予想 -7.6%)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 36.2、予想 36.8)
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.0%、予想 5.0%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 7.5%、予想 7.5%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (10月 0.7%、予想 0.9%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (10月 1.1%、予想 1.2%)

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