円安への戻しは終わったか(週報2016年5月第四週)

週明けは早朝市場こそ金曜NYの流れを受けて円高のスタートを切りましたが、前場に株価が上昇する動きに沿って109円間近まで水準を切り上げました。

円安への戻しは終わったか(週報2016年5月第四週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値    高値    安値     終値

ドル円  108.66   110.59  108.62   110.14
ユーロ円 1.1317   1.1349  1.1180   1.1223
ユーロドル 122.97   124.18  122.89  123.61
日経平均 16391.92 16841.04 16391.92 16736.35

前週の概況

5月16日(月)

週明けは早朝市場こそ金曜NYの流れを受けて円高のスタートを切りましたが、前場に株価が上昇する動きに沿って109円間近まで水準を切り上げました。その後、NY市場までは一進一退という流れが続きましたが、WTIが水準を切り上げる中、弱い経済指標を見て株式市場は利上げ思惑後退といった見方をした様子で主要株価が上昇。ダウも一時200ドルを超える上昇を見せ、その動きから為替市場は全般にドル買いの動きとなりました。ドル円は109円台に乗せての引け、ユーロは狭い値幅だったこともあり、ユーロ円が上昇してのクローズとなりました。

5月17日(火)

前日から年初来高値を更新し続けてきたWTI原油先物の動きは、東京市場では反応薄だったものの株式市場が引ける直前からリスクオン要因として反応、225先物の上昇と円売りの動きのきっかけとなりました。ドル円は欧州市場で一時109.65レベルまで上昇、ユーロドルは引き続き狭い値幅での取引となっていたこともあり、ユーロ円は124.18レベルの高値を付けました。しかし、欧州市場が始まって早い段階でダウ先物が下落に転じ、NY市場に入ってからもダウが下げる動きは止まらず2日かけての行って来い。為替市場もドル円、ユーロ円とも欧州市場の高値から反転、東京市場の水準へと押してのクローズとなりました。

5月18日(水)

東京市場から上下の振れは見られたもののドル買いの動きとなりました。G7に対する期待とは考え難いものの、ユーロドルが直近安値を下回る動きも手伝ってドルがじり高の流れを継続しての海外市場入り。ドル円は高値安値とも切り上げる動きの中、テクニカルな買いも目立つ状況でFOMCの議事録公表待ちとなりました。内容は4月のFOMC後に出てきた内容に沿うものではあったものの、6月利上げの可能性が思いのほか強く示されていたことから、遠のいていた6月利上げ思惑が再び脚光を浴びた議事録となりました。その後、ドル円、ユーロドルともにドルが一段高となりドル円は高値110.26レベル、ユーロドルも安値1.1214レベルを付け、それぞれドル高値圏でのクローズとなりました。

5月19日(木)

前日のFOMC議事録公表でドル円は110円台乗せでスタートしたものの、110円台では構えていた輸出筋を中心にドル売りオーダーが目立ち、110円台前半をじり高の動きとなってくると売りが入り109円台に押すという流れを終日繰り返していました。ユーロドルも前日に続き上値の重たい展開となったこともあり、ユーロ円は一時123円割れとなり、その後も上値の重たいままでのクローズとなりました。

5月20日(金)

金曜の為替市場はG7を控えて目立った材料が無い中、株価とともにじり高の展開を辿りました。NY市場の前場には、ドル円は110.59レベルと前日高値を更新、連日値動きの乏しいユーロドルからユーロ円も一時124.05レベルまで水準を切り上げました。後場に入ってからは週末前のポジション調整が主となり、それぞれやや調整が入ってのクローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月23日(月)
08:50 本邦4月貿易収支
16:00 フランス5月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ5月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏5月製造業・サービス業PMI速報値
19:15 セントルイス連銀総裁講演
21:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
22:45 米国5月MarkIt製造業PMI速報値
23:00 ユーロ圏5月消費者信頼感速報値

5月24日(火)
07:30 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
12:05 豪中銀総裁講演
15:00 ドイツ1〜3月期GDP確報値
15:45 フランス5月企業景況感
16:00 プラートECB理事講演
16:00 オーストリア中銀総裁議会証言
17:30 英国4月財政収支
18:00 ドイツ5月ZEW景気期待指数
18:00 ユーロ圏5月ZEW景気期待指数
18:10 フィンランド中銀総裁議会証言
20:00 トルコ中銀政策金利発表
23:00 米国4月新築住宅販売件数
23:00 米国5月リッチモンド連銀製造業指数
**:** ユーロ圏財務相会議(〜25日)

5月25日(水)
07:45 NZ4月貿易収支
15:00 ドイツ6月GFK消費者信頼感
17:00 ドイツ5月ifo景気期待指数
19:30 コンスタンシオECB副総裁講演
22:00 米国3月住宅価格指数
22:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
22:45 米国5月MarkItサービス業PMI速報値
23:00 カナダ中銀政策金利発表
23:30 米国週間原油在庫発表
24:40 (ミネアポリス連銀総裁講演)
27:00 (ダラス連銀総裁講演)
**:** フランス、スペイン、オランダ各中銀総裁講演

5月26日(木)
**:** 伊勢志摩サミット(〜27日)
16:00 スペイン1〜3月期GDP確報値
17:30 英国1〜3月期GDP改定値
18:30 南ア4月PPI
19:10 セントルイス連銀総裁講演
21:30 米国4月耐久財受注
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国4月中古住宅販売保留件数指数
25:00 パウエルFRB理事講演

5月27日(金)
08:05 英国5月GFK消費者信頼感
08:30 本邦4月CPI、5月東京区部CPI
15:45 フランス5月消費者信頼感指数
21:30 米国1〜3月期GDP改定値
23:00 米国5月ミシガン大消費者信頼感指数確報値
26:15 イエレンFRB議長講演

今週の週間見通し

先週のドル円も前週に続いてじり高、金曜には一時110.59レベルとGW中の安値105.55レベルから5円以上もの戻しを見せています。このまま円安方向へと戻していくのか、あるいは再び円高に回帰するのか、まずは週末のG7から見ていくこととしましょう。

G7では特段新たな材料が出て来ることはなく、円安方向に戻すことを期待する日本(麻生財務相)と、それを認めずドル高をけん制する米国(ルー財務長官)とが、それぞれこれまでの発言を繰り返すに留まりました、しかし、これまでのG7、G20の合意を確認したということから「過度の変動や無秩序な動き」と「通貨の競争的切り下げ」を回避するという2つの点について再確認が行われたことは異論の無いところでしょう。

そうなると、まず「過度の変動や無秩序な動き」ですが、この点について麻生財務相は今年に入ってからの動きではなく、GW中の動きについては当てはまると若干トーンダウンした発言も見られ、「無秩序とは言えない」とする米国側に配慮しているものと考えられます。しかも米国側から見ると、先週取り上げた日経新聞の記事のように米国内(特に議会)のことを考えると、実効レートがドル高止まりとなっている現状では、とてもドル高に戻す動きは認められないこととなります。

つまり、現在の円相場は無秩序と言えず、円安誘導は認められないという米国の主張が、長期的には円相場の重しとなってくる可能性のほうが高いと考えるべきで、仮に1〜2カ月かけて再び105円台半ばに到達するのであれば、日本としては歓迎できないものの許容せざるを得ないということになります。また、GW中の105円台は東京市場が休場の時に付けたドル安値で、東京市場という意味では105円台は見ていません。こうした市場間のダイバージェンスは後から効いてくることが多く、再び東京市場でも105円台を見る流れがとこかであるに違いないというのが私の見方です。

となると、円高に動く材料は何か?ということになりますが、まず日本の貿易収支の改善が著しいことです。2014年は過去最大の赤字、2015年はほぼ均衡、そして今年に入ってからは黒字が継続し、本日発表された4月貿易収支も8235億円の黒字と予想(4928億円)を大きく上回っています。最近でこそだいぶ戻した印象はあるものの、原油安による輸入額減少が効いています。他にも細かな材料は多々あるのですが、日本の貿易黒字が経常収支を大きく改善させている中、これも米国が設定した為替監視リストの対象要件を今一度振り返ります。

米国が4月にあげた条件として、(1)対米貿易黒字が年200億ドル超、(2)経常黒字がGDPの3%超、(3)介入による外貨買いがGDPの2%超、と3つの全ての条件に該当する場合には制裁対象とするというものでしたが、日本は(1)(2)の2つに当てはまっています。ちなみに3つとも当てはまっている国が無いことから、日本は介入した段階でアウトです。つまり、日本は米国が周到に用意した可能性がある為替監視リストの中では、もっとも制裁対象に近い位置にいることを忘れてはいけません。

そして貿易黒字となると円高で頭を痛めるのは当然輸出業者です。2月に発表された全輸出産業のブレークイーブンが103.20ですから、どうも彼らはこれまで同様、円高の波にさらされるという可能性(ジンクス)も考えざるを得ません。おそらく短期的ではないにせよ、サミットが終了して、9月の半期末あたりまでには再び円高に回帰する動きが出て来るであろうという中長期的な見通しとターゲットは先週も書いたので、そちらをご覧いただければと思います。

今週のドル円は、サミットもありますので基本的には大きくは動きにくいものと考えられ、108.50レベルをサポートに、110.50レベルをレジスタンスとする見通しとしておきます。

ドル円(日足)チャート

            ドル円(日足)チャート

            ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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