【概況】
ドル円は11月15日未明に108.24円まで大幅続落した。11月1日の米雇用統計が良好だった事をきっかけに10月31日から下落基調から反転して11月8日未明には109.48円をつけて8月26日以降の高値を更新したが、8日夜高値が109.47円に止まってダブルトップ型となり、週明けは米中通商協議への不透明感が再び増し始め、先週の楽観的なムードに対する揺れ返しとなって週後半へと続落している。11日夜安値108.89円を13日午後に割り込み、さらに14日夜には7日安値108.64円も割り込んだために支持線割れとして売りの連鎖反応も見られたようだ。1週間上昇すると翌週から基調が変わることも多々あるが、今週末から週明けで11月8日高値からの下落基調を切り返すことができるのかどうか試されるところだ。
米連銀のパウエル議長は下院予算委員会で証言したが、前日の上下両院合同経済委員会での証言と同様の内容で当面の利下げ停止による様子見姿勢を再確認した。
米労働省が発表した10月の生産者物価指数は前月比0.4%上昇で今年4月以来の大幅な伸びとなり、9月のマイナス0.3%から持ち直して市場予想の0.3%を上回った。しかし前年同月比は市場予想の0.9%を上回る1.1%だったが、9月の1.4%から鈍化して2016年10月以来の小幅な伸びとなった。
米労働省が発表した週間新規失業保険申請は季節調整済みで22万5000件となり前週比1万4000件増加し、市場予想の21万5000件を上回った。これらに対する市場の反応は限定的だった。
香港の反政府デモが激化していることもドル円にとってはリスク回避感を助長するものとなっている。14日は学校の休校や高速道路封鎖等で市民生活に深刻な影響を及ぼしているが、米国側が中国政府の強硬な対応を非難すれば両国関係の悪化や通商協議への影響がでることも懸念される。
【米中通商協議へのネガティブ報道続く】
11月7日に中国商務省が米中両国は通商協議合意の際には段階的に追加関税を撤廃することで合意したと会見したことが11月8日へのドル円上昇の根拠だったが、11月12日のトランプ大統領NY講演においては、米中通商協議は早期に合意するとの楽観姿勢を示しながらも米国有利な条件でなければ合意しないとし、合意できない場合は関税引き上げもあり得るとしたことで先行き不透明感が増し始めた。
11月13日には米中が農産物購入を巡り暗礁に乗り上げたと米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じ、14日には英フィナンシャル・タイムズ紙が「米中は知的財産や農産物の購入と関税について交渉しているが 最終合意に苦戦している」と報じた。
中国商務省の高峰報道官も14日の記者会見では米中貿易協議「第1段階」合意に向けて両国の追加関税撤回問題を深く議論していると述べたものの、7日の会見で述べたような両国の合意については言及しなかった。
米中通商協議は解決への楽観と悲観が交互に繰り返されてきたが、なかなかまとまらない。単純な貿易不均衡是正の問題ではなく、次世代技術や世界経済に対する覇権争いという側面があり、中国との経済戦争で負けてはならないというのが米国の与野党揃っての意志でもあり、中国も簡単には引き下がらない粘り強い姿勢を継続している。
12月15日には米国による対中制裁関税第4弾の発動予定もあるため、11月末までに合意署名への見通しが確実になってゆかないと再び双方が制裁と対抗に動く可能性もあるところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
11月7日安値を割り込んだことにより、60分足レベルでは11月8日のダブルトップを中心に6日未明高値と12日午後高値を両肩とした三尊天井型が形成されている。15日未明安値からはやや戻しているが、さらに安値更新の場合は11月1日安値へのイッテコイとなる可能性も警戒される。また日足レベルでは8月26日安値と10月3日安値、11月1日安値がほぼ1直線の下値支持線を形成してきたが、15日未明への下落で同線を割り込み始めているため、仮に11月1日安値を割り込む場合は8月26日からの戻りが一巡して下落期に入る可能性も警戒される。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月8日未明高値と8日夜高値をダブルトップとした弱気サイクル入りとして12日の日中から14日昼にかけての間への下落を想定してきたが、14日朝時点では前回ボトムから5日目に入るために11日夜安値をやや短縮されたサイクルボトムとし、12日夕高値を同サイクルトップとした新たな弱気サイクル入りと仮定した。またボトム形成期は14日夜から18日夜にかけての間として109円以下での推移中は一段安警戒とし、109円超えからは強気転換注意とした。
11月15日未明へ一段安してからやや戻し、11日夜安値から3日を経過しているので15日未明安値で直近のサイクルボトムをつけた可能性がある。108.50円を超えても維持できない内は一段安警戒とするが、108.50円超えから続伸の場合は強気転換注意とし、108.75円超えからは強気サイクル入りとして15日夜から19日夜にかけての間への上昇を想定する。ただしその場合も戻りは短命の可能性があるので、強気転換した後に8日以降の安値を更新するところからは新たな弱気サイクル入りとなる点に注意する。
60分足の一目均衡表では13日の下落から遅行スパンが悪化し、先行スパンからの転落状況も続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からは高値試し優先へ切り替えるがその場合は先行スパンが抵抗となりやすいとみる。騰勢回復には先行スパン突破が必要と思われる。
60分足の相対力指数は14日未明安値から15日未明への一段安に対して指数のボトムは切り下がっているため強気逆行はみられない。30ポイント割れに対する売られ過ぎ警戒で戻りを試しやすいが50ポイント台へ乗せても維持できないならまだ一段安しやすいと注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月15日未明安値108.24円を下値支持線、108.50円から108.75円までを上値抵抗線とみておく。
(2)108.50円を超えても維持できない内は一段安警戒とし、108.24円割れからは11月1日安値107.88円試しへ向かう流れとみる。108円以下は反発注意だが、108.25円以下で終了の場合は週明けも安値を試しやすいとみる。
(3)108.50円から108.75円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみるが、108.75円超えからはいったん強気サイクル入りとして109円手前を試す上昇を想定する。ただし、108.75円を超えた後に108.50円割れするところからは下げ再開の可能性ありとみる。
【当面の主な予定】
11/15(金)
休場、ブラジル(共和制宣言記念日)
13:30 (日) 9月 設備稼働率 前月比 (8月 -2.9%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産確報値 前月比 速報 1.4%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 1.1%)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調済 (8月 203億ユーロ、予想 187億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調前 (8月 147億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 0.2%、予想 -0.2%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 -0.2%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 4.0、予想 5.0)
22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -0.3%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・ 除自動車 前月比 (9月 -0.1%、予想 0.4%)
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.4%、予想 -0.4%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 77.5%、予想 77.1%)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.0%、予想 0.1%)
オーダー/ポジション状況
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