ドル円見通し 米中協議とブレクジットでのリスクオン優勢で109円に到達
【概況】
10月3日深夜安値106.50円から10月17日高値108.93円までの上昇が一服して10月23日午前安値108.25円まで下落したが、その後は持ち直して24日、28日と戻り高値を切り上げて10月17日高値に迫ってきたが、28日夜に109.03円まで上昇、8月1日に109.31円の高値を付けてから急落した時以来の109円台回復となった。深夜に109円台を付けた後は109円台を維持できずにいるがわずかに下回った水準での高値圏を維持している。
10月17日高値を超えたことにより10月3日安値からの上昇基調は継続となり、合わせて8月26日底からの上昇も9月18日までを一段目、10月3日から現状へ二段目となる上昇を継続している状況となっている
10月28日の上昇はEUが英国に対する三度目の離脱期限延長を承認したこと、さらにトランプ大統領が米中通商協議の第一段階合意について予定よりも早く合意する可能性を示唆したことで金融市場全般がリスクオンの流れとなったことが背景。
NYダウは前週末比132.66ドル高と上昇し、S&P500株価指数は16.87ポイント高の3039.42となりダウやナスダック総合指数に先んじて7月26日に付けた史上最高値3025.86を3か月振りに更新した。株高で債券は売られ、米10年債利回りは0.05%上昇して1.85%となった。
【ブレクジット、10月末の合意無き離脱は回避】
EU加盟27カ国は28日にブリュッセルで大使級会合を開き、英国のEU離脱期限を最大で来年1月末まで延期することで合意した。10月29日か30日には正式決定する見込み。ブレクジットの延期は三度目だが、この延期承認により10月31日の期限切れによる「合意なき離脱」は回避されることとなった。
英国とEUは首脳会談で離脱案を合意したが、英下院が9月19日に離脱案承認の採決を先送りしたために英国側が10月31日までに合意離脱することが不可能となり、英国はEUへ離脱期限の延期を要請していた。10月25日からEU側が協議していたが、今週に結論が先送りされたために先週末はこの問題でのリスク回避感がやや強まる状況にあった。
今回三度目の離脱期限延期となり英国側には猶予が与えられた。英政権は12月中に総選挙を実施して早期の合意離脱を目指すが、英首相には解散権がなく野党との対立が続けば1月31日の最終期限までに決着がつかない事態に陥る懸念も残るがひとまずは市場も安堵しているところ。
【米中通商協議第1段階の合意早い?】
トランプ米大統領は28日に、米中貿易協議の第1段階について「極めて大きな部分合意に予定より早く署名する」との姿勢を示した。具体的な時期には言及していないが、11月中旬のチリで開催されるAPEC首脳会議に合わせた米中首脳会談での署名よりも早い段階で署名する可能性を示唆したと思われる。トランプ大統領は第1段階合意については「米農家の他、銀行の要望の多くにも配慮したものになる」とも述べている。
第1段階合意は中国による米農産物の購入拡大、金融サービス開放、人民元安誘導防止策等が盛り込まれているが、中国政府による国有企業優遇策の改善等の構造改革問題は先送りされている。しかし第1段階を通過して米国による対中制裁関税第4弾発動の中止等へと両国関係が改善してゆけば市場のリスクオン心理も拡大すると思われる。
ただし、米中協議はこれまでも何度も合意寸前で破談した経緯もあるので、まだまだ紆余曲折がありと注意するところだ。28日には米連邦通信委員会(FCC)が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)を安全保障上のリスクが高い外国企業としてそれらからの製品を購入している米国企業に対する政府補助金使用を禁止することを検討していると発表した。11月19日に採決される予定とされるが、米国による中国企業への取引規制の動きは続いている。
10月30日夜に米7−9月期のGDP、31日未明にFOMC声明発表と議長会見、31日夜に米個人消費やADP民間雇用統計及びEUのGDP、11月1日夜には米9月雇用統計とISM製造業景況指数の発表と重要イベントが続く。それらが概ねリスクオン心理を助長する内容になればNYダウの史上最高値更新挑戦の動きと同調してドル円も高値追及の流れを継続する可能性があるが、それらがリスクオフへ流れを変えるようならドル円の上昇にもブレーキがかかりかねないと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月21日未明安値と23日午前安値のダブルボトムを直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしてきた。22日午前高値を基準とすれば今回のトップ形成期は25日から29日午前にかけての間と想定される。28日夕安値108.65円を上回るうちはサイクルトップ形成の延長入りか、25日夜安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りによる上昇継続となる可能性があるが、28日夕安値割れからはいったん弱気サイクル入りとして29日の日中から30日午前にかけての間への下落を想定する。ただし弱気サイクル入りの場合も早々に切り返して23日以降の高値を更新するところからは新たな強気サイクル入りとなる点に注意する。
60分足の一目均衡表では28日への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いた状況も維持している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とし、遅行スパン悪化からはいったん調整安に入る可能性ありとみて安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は28日深夜に70ポイントを超えて目先は高値警戒圏があるが、50ポイントを上回るうちは上昇余地ありとみる。ただし28日深夜高値を超える段階で指数のピークが切り下がる弱気逆行が発生する場合は下落に転じやすいと注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月28日夕安値108.65円を下値支持線とし、8月1日高値109.31円を上値抵抗線とする。
(2)108.65円を上回るうちは上昇余地ありとし、109.20円台、さらに8月1日高値試しを想定する。8月1日高値前後は戻り売りも出やすいとみるが、リスクオン心理が優勢となって8月1日高値を超える場合は109.50円超への上昇を想定する。
(3)108.65円割れからはいったん調整安入りとして108.50円、次いで10月23日安値108.25円試しを想定する。10月23日安値を割り込まずに切り返せば、底上げパターンの維持により次の上昇期で高値を更新してゆく可能性が高まるが、23日安値を割り込む場合は底上げパターンが崩れるために下落長期化が懸念される。
【当面の主な予定】
10/29(火)
休場、トルコ(共和制宣言記念日)
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
15:45 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
18:30 (英) 9月 マネーサプライM4 前月比 (8月 0.4%)
18:30 (英) 9月 マネーサプライM4 前年同月比 (8月 3.2%)
22:00 (米) 8月 ケース・シラー米住宅価格指数 (7月 218.0)
22:00 (米) 8月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (7月 2.0%)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前月比 (8月 1.6%、予想 1.0%)
23:00 (米) 9月 住宅販売保留指数 前年同月比 (8月 1.1%)
23:00 (米) 10月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (9月 125.1、予想 127.9)
10/30(水)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
08:50 (日) 9月 小売業販売額 前年同月比 (8月 2.0%、予想 5.4%)
09:30 (豪) 7-9月期消費者物価 前期比 (前期 0.6%、予想 0.5%)
09:30 (豪) 7-9月期消費者物価 前年同期比 (前期 1.6%、予想 1.7%)
17:55 (独) 10月 失業者数 前月比 (9月 -1.00万人、予想 0.0万人)
17:55 (独) 10月 失業率 (9月 5.0%、予想 5.0%)
19:00 (欧) 10月 経済信頼感 (9月 101.7、予想 101.3)
19:00 (欧) 10月 消費者信頼感確報値 (9月 -7.6、予想 -7.6)
21:15 (米) 10月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (9月 13.5万人、予想 13.2万人)
21:30 (米) 7-9月期GDP速報値 前期比年率 (前期 2.0%、予想 1.6%)
21:30 (米) 7-9月期GDP個人消費速報値 前期比 (前期 4.6%、予想 2.6%)
21:30 (米) 7-9月期コアPCE・速報値 前期比 (前期 1.9%)
22:00 (独) 10月 消費者物価指数速報値 前月比 (9月 0.0%、予想 0.1%)
22:00 (独) 10月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (9月 1.2%、予想 1.1%)
23:00 (欧) ドラギECB総裁退任イベント[ラガルド次期総裁、独首相、仏首相らEU首脳がスピーチ]
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利 (現行 1.75-2.00%、予想 1.75-2.00%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見
オーダー/ポジション状況
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