ドル円「上がっても下がっても売り」(週報10月第1週)

今週の最大の注目材料はワシントンで開かれる米中通商協議です。

ドル円「上がっても下がっても売り」(週報10月第1週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、米国でも弱い経済指標が続いたことからドルも売られやすい地合いが続きました。しかし週後半は木曜に106.48レベル、金曜雇用統計直後には106.55レベルと2度ほど106円台半ばを試したものの抜けられず、また10月のFOMCでの利下げ期待から株式市場が木曜以降は反転上昇したことも、いったん下げ止まる材料となりました。

今週の最大の注目材料はワシントンで開かれる米中通商協議です。7・8が次官級、10・11が閣僚級と週を通して10月中の合意に向けて協議が続きますが、早期合意のため中国が交渉範囲を狭めているとの報道があり、米国側がこれまで同様にあくまでも米国が望む形での合意に固執すれば今回も協議決裂となる可能性があります。

トランプ大統領も部分合意は無いと発言したため、週明け早朝の市場は警戒が先行して、ドル円、クロス円でギャップダウンの円買いの動きから始まりました。これまでも何度も協議を繰り返して、これまでまとまっていませんので、さすがにそろそろ落としどころを見つけないと世界的な景気減速懸念が一段と強まることとなります。現時点では最大のリスクオフ懸念材料であることに変わりはありません。

他にもトランプ大統領の弾劾調査の進展具合や香港における50年ぶりの緊急法発動で更なるデモが起きるなど、リスクオフ要因ばかりが目立ちます。他には前回FOMC議事録の発表とパウエルFRB議長の講演がありますので、10月末のFOMCでの利下げ有無を読み解く材料となります。現時点ではFF先物の取引状況による利下げ織り込み度は80%以上となっていて、市場参加者はほぼ利下げを織り込んでいる状況です。

一方でFRBはFOMC時点では年内の利下げ見通しはしていませんので、ここに至るまで続いた弱めの経済指標や米中通商協議の行方などがどのように影響してくるのかといったところです。個人的には通商協議の合意の有無がそのまま利下げの有無に繋がってくるのではないかと考えていますが、来週のEUサミットで何らかの結論が出てくるであろうブレグジット問題もあり、月末FOMCはいまだ五分五分で見ていた方がよさそうです。

材料的にはリスクオフに繋がりやすいものが多いのですが、テクニカルにもドル安・円高方向に動きやすそうなチャートとなってきました。日足チャートをご覧ください。

長期的なドル安トレンドには変化がありませんので、ここ2カ月程度の動きを追っていきます。先週までは8月安値を起点とした上昇チャンネル(青の平行線)の中での動きを続けていましたが、先週の下げでこのチャンネルは下抜けました。すると、8月高値と10月高値を結んだレジスタンスライン(ピンク)を引くのが妥当と考えられますが、このラインと8月のリバーサルパターンを形成したネックライン(同じくピンク、抜けたレジスタンスがサポートとなる)がほぼ平行チャンネルとなり、短期的にはこれら両ラインが上下を抑えてくると考えてよいでしょう。

ここで、8月安値と9月高値のフィボナッチ・リトレースメントを見ると半値押しが106.47(赤のターゲット)となっていて、ほぼ先週の安値と一致します。いったん106円台半ばで下げ止まる動きはドル買いオーダーの存在からもテクニカルな観点からも支持される結果と言えます。しかし、材料的に上値が重たくなりやすい上に、テクニカルにも1か月半ほど続いたチャンネルブレークは気になるところです。いったん調整を挟んでも次のターゲットとなる61.8%押しの105.99レベル(赤のターゲット)をトライしに行く可能性がたかいでしょう。

また戻りに関しては上昇チャンネルを下抜けた水準が107.55レベル、また先週高値と先週安値の半値戻しが107.48レベルとなっていることから、107円台前半から半ばにかけては戻り売りが出てくる水準になってきそうです。今週は戻り売りを考えつつ、先週安値を割り込めばもう一段の下値トライを考え106.00レベルをサポートに107.50レベルをレジスタンスとする流れとします。

今週の週間見通し

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。


10月7日(月)
**:** シドニー、香港、中国市場休場
07:45 カンザスシティ連銀総裁講演
15:00 ドイツ8月製造業新規受注
23:20 (ミネアポリス連銀総裁講演)
**:** 次官級米中通商協議(〜8日)

10月8日(火)
08:50  本邦8月貿易収支
09:30 豪州9月企業景況感
10:45 中国9月MarkItサービス業PMI
13:00 英中銀総裁講演
15:00 ドイツ8月鉱工業生産
15:45 フランス8月貿易収支
18:30 フィンランド中銀総裁講演、スペイン中銀総裁講演
21:30 米国9月PPI
26:35 シカゴ連銀総裁講演
26:50 パウエルFRB議長講演


10月9日(水)
06:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
08:30 豪州10月消費者信頼感
23:00 米国8月卸売売上高・在庫
23:30 パウエルFRB議長講演
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事要旨公表
**:** ユーロ圏財務相会議

10月10日(木)
15:00 ドイツ8月貿易収支
15:45 フランス8月貿易収支
17:30 英国8月貿易収支
20:30 ECB理事会議事要旨公表
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国9月CPI
**:** EU財務相会議
**:** 閣僚級米中通商協議(〜11日)


10月11日(金)
15:00 ドイツ9月CPI
16:00 トルコ8月経常収支
17:00 ポルトガル中銀総裁講演
21:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
21:30 米国9月輸入物価指数
23:00 米国10月ミシガン大消費者信頼感速報値
26:15 ボストン連銀総裁講演
28:00 (ダラス連銀総裁講演)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

9月30日(月)
東京市場のドル円は上値の重たい株価とともにやや水準を下げたものの、半期末ということもあって総じて動意薄の状況が続きました。欧州市場に入りユーロが下げる動きとともにドル円でもドル買いの動きに転じNYの昼過ぎには前日高値と並ぶ108.18レベルの高値をつけ、そのまま底堅い地合いで引けました。


10月1日(火)
東京市場のドル円は日経朝刊1面に出た「GPIF外債投資拡大へ」という記事がドル買いのきっかけとされ、さらに下期に入って日経平均株価が堅調な動きとなったこともリスクオンの動きにつながりました。欧州市場前場にはドル円は108.47レベルの高値をつけましたが、9月18日高値は超えられず相変わらず108.50よりも上の水準でのドル売りオーダーを意識させました。NY市場までは高値圏でのもみあいとなっていましたが、ISM製造業景況指数が弱かったことから米株が大幅安となり、トランプ大統領がドル高牽制発言をしたことも警戒され、ドル円は107.63レベルまで下押し後やや戻して引けました。

10月2日(水)
東京市場のドル円は日経平均株価が比較的底堅かったこともあって、やや円安気味に推移していましたが、戻りも鈍く前日の下げを警戒しながらの海外市場入り。欧州市場序盤からじりじりと水準を下げる動きとなっていましたが、NY市場に入りダウが大幅安となったことを受け、ドル円も107.05レベルまで安値を切り下げ、上値の重たいままでの引けとなりました。


10月3日(木)
ドル円はNY市場に入るまでは107円台前半で方向感のはっきりしないもみあい相場となっていました。NY市場に入って発表されたISM非製造業指数が予想よりも弱かったことをきっかけにダウが大幅安となり、為替市場ではドル売りが勢いづき一時106.48レベルの安値をつけました。引けにかけては利下げ期待からダウが下げる前の水準よりも上昇する動きとなり、ドル円もリスクオフの巻き返しで107円に近づいての引けとなりました。

10月4日(金)
雇用統計自体は単月の影響は限られているものの、最近の米国経済指標の弱さもあって、NY市場までやや水準を下げる展開が続きました。発表結果はミックスしていたものの、当初は予想よりも弱いNFPと平均時給に反応し、106.55レベルの安値をつけました。しかし106円台半ばをトライしきれなかったことや、失業率が3.5%と低下したことから週末前の買い戻しが強まり直後に107.13まで買い戻され、引けにかけては前日終値水準に押して引けました。

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