再び円高に向かいやすい(週報2016年5月第三週)

先週のドル円は、週初に107円台前半から108円台半ばへと上昇して以降、108円台半ばと109円台前半での一進一退を続けました。

再び円高に向かいやすい(週報2016年5月第三週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値   高値   安値   終値

ドル円  107.36  109.57  107.23  108.64
ユーロ円 122.24  124.65  122.17  122.86
ユーロドル 1.1386 1.1447  1.1283  1.1309
日経平均 16226.57 16814.64 16159.31 16412.21

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

5月9日(月)

東京市場では、先週の105.55レベルで短期的な底打ちをしたと考える参加者も多く、株高の動きとともに円売りが先行してのスタートを切りました。その後、目立った材料が無い中で実需筋のドル買いの動きや麻生財務相が国会で円売り介入に言及する等、ドル円を下支えする材料が目立ち、クロス円での買いも含め円全面安の展開となりました。NY前場までは株価指数が夜間取引で一段高となったことも手伝って、ドル円は108.60レベル、ユーロ円も 123.71レベルへと水準を切り上げ、NY後場には株価とともにやや調整が入ってのクローズとなりました。

5月10日(火)

前日に続いて円安が進行する一日となり、東京前場から株価とともに株高、円安とこれまでの動きに対する巻き返しが目立つ展開となりました。実現可能性は乏しいと考えられるものの、繰り返し麻生財務相が円売り介入も考えているとの発言も円安に作用していたようです。海外市場に移ってからも円安の動きは収まらず、目立った材料も無い中、ポジション調整が一段と進み、ドル円が109.35レベル、ユーロ円も124.44レベルの高値をつけ、それぞれ円安値圏でのクローズとなりました。

5月11日(水)

前日からのドル買い戻しも東京市場が始まるまでには息切れ。4月日銀会合前の高値111.88とGW中の安値105.55の61.8%戻しにあたる109.46レベルをほぼ達成したことで買い戻しも一巡、株式市場が始まってからは上値の重たい株価の動きも手伝ってじり安の展開を辿りました。海外市場に移ると主役がユーロとなり、ユーロドルの買いが目立つドル安相場となり、ユーロドルが1.1447レベルまで上昇する流れの中で、ドル円も108.37レベルへと水準を切り下げ、ドル安値圏でのクローズとなりました。

5月12日(木)

ドル円は安く始まった株式市場の反応を見て序盤こそ売りが先行したものの、その後急速に値を回復した株価とともに円安が進行、欧州市場では一時109.40レベルと10日高値を上回る展開となりました。その間、ユーロドルもドル円同様にドル買いの動きとなっていたものの動きは小さく、ユーロ円は124.64レベルの高値を付けました。NY市場までこの動きは続いていましたが、年初来高値を更新していた原油先物に利食い売りが入り反落、それをきっかけにダウが売られ、為替市場でもドル売りで反応しました。しかし、高値を更新しドル買いが強まっていたこともあり、引けにかけては109円台に戻してのクローズとなりました。

5月13日(金)

東京市場では、高寄りしたもののその後は上値の重たい株式市場に反応し、ドル円はじり安の展開となりました。欧州市場序盤には108円台半ばまで水準を下げましたが、欧州主要国のGDPがほぼ予想通りのイベント通過となる中、ユーロドルの売りが出て、直近安値を割り込む動きからドル高の動きへと転じる流れを見せました。その後のNY市場でも強めの経済指標に反応しドル買い、ユーロドルは1.12台後半まで水準を下げユーロを中心としてドル高地合いは継続。ドル円も109円台半ばまで切り返したもののユーロ円の売りに引っ張られて、再び安値圏へ押してのクローズ。ユーロ円も東京朝方の124円台から122円台後半へ下げて引けました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月16日(月)
**:** チューリッヒ市場休場
16:00 トルコ2月失業率
21:30 米国5月NY連銀製造業景況指数
23:00 米国5月NAHB住宅市場指数
29:00 米国3月対米証券投資

5月17日(火)
08:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
16:45 プラートECB理事講演
17:30 英国4月CPI、PPI
18:00 ユーロ圏3月貿易収支
21:30 米国4月住宅着工件数、建築許可件数
21:30 米国4月CPI
22:15 米国4月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 ユーログループ議長議会証言
25:00 (サンフランシスコ連銀総裁、アトランタ連銀総裁講演)
26:15 (ダラス連銀総裁会見)

5月18日(水)
07:45 NZ1〜3月期PPI
08:50 本邦1〜3月期GDP速報値
09:00 NZ中銀総裁会見
17:00 南ア4月CPI
18:00 ユーロ圏4月CPI確報値
23:30 米国週間原油在庫発表
27:00 FOMC(4月26・27日)議事録公表

5月19日(木)
10:30 豪州4月失業率
17:00 ユーロ圏3月経常収支
20:30 ECB理事会(4月21日)議事要旨公表
21:30 米国4月シカゴ連銀全米活動指数
21:30 米国5月フィラデルフィア連銀製造業指数
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国4月景気先行指数
23:30 NY連銀総裁講演

5月20日(金)
23:00 米国4月中古住宅販売件数
**:** G7(〜23日)

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初に107円台前半から108円台半ばへと上昇して以降、108円台半ばと109円台前半での一進一退を続けました。金曜にはユーロドルが主導のドル高の動きに週間高値を更新する場面も見られたもののクロス円の動きに結局はもみあい下限でのクローズとなりました。

この間、麻生財務相が何度となく円売り介入を厭わないとの発言を繰り返しましたが、ゴールデンウィーク中の105円台半ばから4円近く戻した動きの中では円高方向への押しを多少抑える効果は見られたものの110円の大台の遠さを一層強く感じさせる結果となっただけに思えます。

今週は仙台G7、来週は伊勢志摩サミットと日本も含め主要国の首脳が日本に集まります。為替に関してはサミット以上に今週末のG7がより重要です。議長国である日本としては、円高を阻止する声明をなんとか入れたいと考えているのでしょうが、今朝の日経朝刊にもあるように(4面「米、ドル高警戒3つの理由」)、景気が減速している中でドル高は望んでいないことは確かで、これについてはFOMCでも何度も触れられてきた通りです。

また、大統領選も材料とされていますが、これはトランプ氏だけでなくクリントン氏もどちらかというと保護主義的発言をしていることから、今後どちらが優勢になったとしてもドル高への回帰は考え難いと言えます。

他にもTPPに絡めて通貨安競争を避けたいこと、実効為替レートは10年ぶりの高値圏にあることが挙げられていて、全体として米国のルー財務長官は日本の現状の円安に戻したいというスタンスに対して警戒していると述べられています。

仮にG7において、過度の変動に対する警戒といった文言が入ったとしても、米国は円相場は秩序的だと言っている以上、現在の動きではなく100円の大台を割り込むような動きでもない限り、過度との判断はしがたく、それをきっかけに円安に反転するといったことも無いと考えられます。

ここでは、テクニカルな面から「ドルインデックス週足チャート」を見てみましょう。

          ドルインデックス週足チャート

          ドルインデックス週足チャート

ドルインデックスのチャートから、100という大台は明らかにドル高値圏として警戒されていることがわかります。また100の水準から直近の安値92レベルまでかなり調整は入ったものの、ドルとしての水準は依然高い水準にあり、かつこのチャートパターンは先週もドル円の動きの振り返りで取り上げたばかりなので、皆さんも見覚えがあると思います。

ドル円が2015年に125.86レベルの高値を付け、ネックライン115.45を割り込む動きのチャートにそっくりです。ドルインデックスが現在の92という水準を明確に割り込んできた場合、ドルインデックスも2015年高値100.79とネックライン91.88の高さ8.91をネックラインから引いた82.97(現行諮詢94.55から12%低い水準)を目指す動きとなってもおかしくありません。

ドルインデックスにおける円の寄与度は13.6%ではありますが、おそらく100円の大台をトライする動きとなる可能性は考えておいてもよいかと思います。先週示したいくつかのターゲットの内、史上最円高値75.58レベルと昨年高値125.86レベルとの半値「100.72レベル」というターゲットはいかにも試しやすい水準であると言えるでしょう。

さて、今週ですがそこまでの大きな動きは無いにしても(G7の結果は週末)、再び円高に向かいやすい流れになってきたことは間違いありません。今週のドル円は、基本的に先週のレンジに近い107.00レベルをサポートに、109.30レベルをレジスタンスとする見通しとしておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る