来週の為替相場見通し 『米中楽観ムードの賞味期限と、ブラックアウト前の米当局者発言に注目』(8/31朝)

米中対立激化の解消期待を背景に、ドル円は、ジャクソンホール後の急落分の全値戻し(106.75→104.45→106.68)まであと一歩に迫りました。

来週の為替相場見通し 『米中楽観ムードの賞味期限と、ブラックアウト前の米当局者発言に注目』(8/31朝)

今週のレビュー(8/26−8/30)

<ドル円相場>


今週のドル円相場は、米中対立激化を嫌気する形で、週明け早々に約1年5ヵ月ぶり安値となる104.45まで急落しました。しかし、急激に下げ過ぎた反動から買い戻しが優勢となると、@トランプ米大統領による「中国は米国との通商協議再開を望んでいる」「週末に中国側から電話があった(※後に中国外務省が電話協議の事実を否定)」との発言や、A米・8月コンファレンスボード消費者信頼感指数(結果135.1、予想129.0)及び、B米・7月リッチモンド連銀製造業指数(結果+1.0、予想▲4)の良好な結果、C中国商務省による「米中両国はこれまで協議していた9月の交渉について話し合っている」との発言、

Dトランプ米大統領による「米中対立解消に向けて、両国の通商交渉団が本日より協議を行う予定」との発言、E上記CDを受けた「米中貿易摩擦の緩和期待→株高・債券安(米債利回り上昇)→リスク選好の円売り」の流れが支援材料となり、週後半にかけては、約1週間ぶり高値となる106.68まで急伸しました。もっとも、直近高値106.75(8/23のパウエルFRB議長講演前の高値)を前に戻り売りが強まると、週末にかけて再び反落。106.11まで下押しした後、結局106.20台での越週となっております。

<ユーロドル相場>



今週のユーロドル相場は、週明け早々に高値となる1.1166を記録するも、@ドイツ・8月Ifo景況感指数(結果94.3、予想95.1)や、Aドイツ・第2四半期GDP改定値(結果▲0.1%、予想▲0.1%)の冴えない結果、BデギンドスECB副総裁による「長期的に低金利が続くだろう」とのハト派的な発言、Cドイツ・8月消費者物価指数(結果1.4%、予想1.5%)や、Dユーロ圏・8月消費者物価指数(結果0.9%、予想1.0%)の伸び悩み、DラガルドIMF専務理事(次期ECB総裁)による「ECBの政策金利は下限に達していない」との追加利下げを示唆する発言、E上記@からDを受けた「次回ECB理事会での追加緩和期待→欧州債利回り低下→ユーロ売り」の流れ、F米中対立激化の緩和を受けた「株高・債券安(米債利回り上昇)→ドル買い」の流れが重石となり、週末にかけては、2017年5月以来、約2年3ヶ月ぶり安値となる1.0963まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、結局1.0980台での越週となっております。

来週の見通し(9/2−9/6)

<ドル円相場>



米中対立激化の解消期待を背景に、ドル円は、ジャクソンホール後の急落分の全値戻し(106.75→104.45→106.68)まであと一歩に迫りました。106円台にしっかり乗せてきた他、トレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンドを20営業日ぶりに上抜けするなど、テクニカル的に見て、「下落→中立」へのトレンド転換が意識されます。

とはいえ、@世界的な貿易戦争が世界的な通貨安戦争(利下げドミノ)に波及するリスクや、A米中貿易摩擦を巡る不透明感、B米2年ー10年債利回りの逆転を受けたリセッション懸念の高まり、Cイランやトルコ、香港や朝鮮半島、インドやパキスタンで燻る地政学的リスク、D世界経済の不安定化、E英国の合意なき離脱リスクの高まりなど、ファンダメンタルズ面での不安要素は山積みです。F追加緩和の手札に乏しい日銀と、9月FOMCでの大幅(50bp)利下げを織り込む米国との金融政策格差は明らかであり、ドル円の上値余地は限られそうです。

来週は、週初(9/2)がレーバーデーで米国市場が休場となる為、9/3の米・8月ISM製造業景気指数や、9/5の米・8月ADP雇用統計や、米・8月ISM非製造業景気指数、9/6の米・8月雇用統計、9/7以降のブラックアウト期間入り(FOMC前後の時期に金融政策に関する発言を会合メンバーに対して禁じるルール)を前にした米当局者の発言に注目が集まります。

一連の米経済指標が冴えない結果となったり、米当局者よりハト派的な見解が示されれば、9/17ー9/18に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)での大幅利下げを織り込む形で、ドル売りが強まるシナリオも想定されます。また、米中貿易摩擦を巡る続報にも注意が必要です。今週は、米中貿易摩擦の解消期待がドル円をひとまず下支えしましたが、こうした楽観ムードは長続きしない可能性があります。米利下げ観測を背景とした「米長期金利低下→ドル売り」の流れと、米中貿易摩擦を背景とした「株安→円買い」の流れは続くと見られ、106円台後半での「上値追い」には注意が必要でしょう。当方では引き続き、「ドル安・円高」基調の継続をメインシナリオとして予想いたします。(来週の予想レンジ:104.50ー107.50)

<ユーロドル相場>



ユーロドルは週後半にかけて急落し、約2年3ヶ月ぶり安値(1.0963)を記録しました。トレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンドを下回っている他、強い売りシグナルを表す一目均衡表三役逆転の出現、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークなど、テクニカル的にみて、「下落リスク」が強く意識されます。

また、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスクや、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感(ドイツ経済のリセッションリスク)、Bイタリアの財政不安や政局不透明感の高まり、C中東を巡る地政学的リスク、D英国の合意なき離脱リスクの高まりなど、ファンダメンタルズ面での不安材料も山積みです。E次回ECB理事会(9/12)での追加緩和期待も、「欧州債利回り低下→ユーロ売り」の経路でユーロドルを押し下げると考えられます。

来週は、9/2に発表されるドイツ及びユーロ圏・8月製造業PMIや、9/3のユーロ圏・7月生産者物価指数、9/4のドイツ及びユーロ圏・8月非製造業PMI、9/6のユーロ圏・第2四半期GDP確報値に注目が集まります。欧州経済の冴えない結果が示されれば、「次回ECB理事会での追加緩和期待→欧州債利回り低下→ユーロ売り」の経路で下げ足を速めるシナリオも想定されます。余程強いユーロ買い材料が出てこない限り、ユーロドルの下落基調は当面続くと予想いたします。(ユーロドルの予想レンジ:1.0850−1.1150)

来週の見通し(9/2−9/6)

ドル円日足

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