ドル円、安値更新後にまさかの急騰。トランプ大統領の一挙手一投足に乱高下
海外時間の為替概況
26日の外国為替市場でドル円は急落後に急騰。先週末金曜日のニューヨーク市場引け後に、トランプ米大統領が対中報復関税(@既に発表済みの第1弾から第3弾に係る2500億ドル相当分について25%から30%へ関税引き上げ、A今後予定されている第4弾に係る約1100億ドル相当分については当初9/1より10%の予定であったが15%へ引き上げ、B家計部門への影響度が大きい約1600億ドル相当の財についても当初12/15より10%の予定であったが15%に引き上げ)を発表したことで、週明けオセアニア市場でドル円は窓を開けて急落。心理的節目105円丁度や、1/3のフラッシュクラッシュ時に付けた年初来安値104.97を割り込むと、約1年5ヶ月ぶり安値となる104.46まで下げ幅を広げました。
しかし、短時間で急激に下げ過ぎた反動から買い戻しが優勢となると、ドル円はショートカバー主導で急反発(※105円丁度のリバースノックアウトオプションが消滅したことで、105.00-106.00円ゾーンが巨大なショートガンマに転じた可能性あり)。トランプ米大統領による「中国は米国との通商協議再開を望んでいる」「週末に中国側から電話があった(※後に中国外務省が電話協議の事実を否定)」との発言も支援材料となる中、「米中対立激化の緩和→リスク回避ムード後退→株高・債券安(金利上昇)・円売り」の流れが強まり、ドル円は106円より上のストップを巻き込みながら一時106.32まで急伸しました。もっとも、トレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンド(106.48)に続伸を阻まれると、引けにかけて再び反落。結局106.10付近でのクローズとなっております。週明け早々から、日通し安値(104.46)と日通し高値(106.32)が2円に迫る大相場が繰り広げられた格好です。
一方、ユーロドル相場は終始軟調な値動き。欧州時間朝方に発表されたドイツ・8月Ifo景況感指数(結果94.3、予想95.1)が冴えない結果となったことで、「欧州経済の減速懸念→次回ECB理事会での追加緩和観測→欧州債利回り低下→ユーロ売り」の流れが強まった他、米中対立激化の緩和を受けて「米国債利回り上昇→ドル高」の流れが加わったこともユーロドルの上値を抑制しました。NY時間引けにかけて1.1094まで下落し、結局1.11絡みでクローズしております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は5営業日に亘り「膠着状態」の後、@ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長によるややハト派寄りの発言、Aトランプ米大統領による過激なツイート、B米中貿易戦争の激化を経て、「保ち合い」→「下放れ」のトレンド転換が実現しました。足元強烈に下げ過ぎた反動から急伸する動きを見せたものの、@短期トレンドラインの下方ブレイク(添付チャートの赤線)や、A強い売りシグナルを表す「一目均衡表・三役逆転」、Bトレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンドを18営業日連続で下回っていることなどを考慮すれば、ドル円はテクニカル的に見て「一巡後の反落リスク」が警戒されます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@世界的な貿易戦争が世界的な通貨安戦争(利下げドミノ)に波及するリスクや、A米中貿易摩擦の激化(報復合戦の応酬)、Bイランやトルコ、香港や朝鮮半島、インドやパキスタンを巡る地政学的リスクの高まり、C世界経済の不安定化(ドイツ経済のリセッションリスク)、Dアルゼンチンやイタリアを巡る政局不透明感の高まりなど、ネガティブ材料は山積みです。E追加緩和の手札に乏しい日銀と、9月の大幅(50bp)利下げが織り込まれつつある米国との金融政策格差は明らかであり、ドル円にはテクニカル面、ファンダメンタルズ面双方の影響から「下落圧力」が加わり易い状況が続くと考えられます。Fトランプ米大統領による過激なツイート(FRBや中国に対する批判及びその他各国の通貨安批判など)もドル円の上値余地を阻む一因となりそうです。
本日も、米中貿易摩擦を巡るヘッドラインや、トランプ米大統領のツイート、中国当局の発言などに振らされる展開が見込まれます。米利下げ観測を背景とした「米長期金利低下→ドル売り」の流れと、米中貿易摩擦の激化を背景とした「リスク回避の円買い」の流れは続くと見られ、当方では引き続き「ドル安・円高」地合いの継続をメインシナリオとして予想いたします。(本日の予想レンジ:105.00ー106.50)
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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