ドル円 いよいよ103円台後半をターゲットに(週報8月第4週)

今週は戻りは弱く一段の安値を試しやすいと見て、103.70レベルをサポートに105.60レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円 いよいよ103円台後半をターゲットに(週報8月第4週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、一週間を振り返っても金曜のNY市場前場までは106円台半ばを中心としたもみあいに終始、値幅も50銭強と方向感のはっきりしない展開が続きました。これはジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の講演待ちという面が大きかったのですが、その講演をはるかに上回る動きが米中双方から出たことで、金曜のNY市場はダウ急落、そして為替市場はリスクオフの円高となっての週末クローズとなりました。

一応パウエル議長の講演にも触れておきますが、9月の利下げを示唆する内容であったことは想定範囲内でしたが、議長もこれまで懸念してきたことは貿易摩擦による景気後退懸念です。しかし、通商問題を金融政策でカバーするというのは前例が無いと、議長も述べてきた通りで、いくらトランプ大統領が利下げ圧力をかけても一時的に株式市場は持ち直すことがあっても、ベースにある米中貿易摩擦の解決の糸口が見えなければ無駄なカードを切ることになりかねません。

そして米中貿易摩擦は金曜に一段と激化、中国は米国に対しての報復関税を年間輸入額のほぼ全額に対して5%か10%の追加関税を9月1日と12月15日に発動すると発表しました。米国もこの報復にただちに反応し、これまでに発動している第3段までの制裁関税、12月に発動予定の第4弾、すべて5%の上乗せ関税を適用としています。米国は既に中国を為替操作国に認定していますので、理論上は45%まで関税を引き上げることが可能ですし、これはトランプ大統領の公約でもあったことを考えると、今後の展開次第では更なる摩擦激化という可能性もあるわけです。

トランプ大統領は米国企業に対して中国から他国へのシフトもうながしていて、今の状況が続くだけでも年後半の景気減速懸念は懸念だけでは済まず、先の逆イールド(2年債利回りが10年債利回りを上回る)の次にやってくるリスクとして1年以内のリセッションという過去の経験則があり、今まで以上に米国の通商政策が米中だけでなく世界経済に与える悪影響を注視すべき状況になってきたと言えます。

並行して先週後半には閣僚級の日米通商協議が行われていましたが、こちらは大枠で合意し、為替条項等の問題は出て来なかったようです。ただ米中間の問題に比べると市場参加者の注目度は低く、パルエル議長講演とともに米中の報復関税合戦の陰に消え去ってしまったというところです。今週は月末で一連の経済指標が出てはきますが、これらも現状では一時的な影響は出たとしても今のリスクオフ相場という大きな流れを変えるものでは無いため、今週はあまり気にする参加者もいなさそうです。

次にテクニカルな観点で気になる動きがありました。年初のフラッシュクラッシュでつけた104円台後半は、東京9時以降にはつけていない時間帯のダイバージェンスがこれまであったのですが、本日そのダイバージェンス部分のレンジを東京9時以降に見たことで、年初からの長期に渡った歪みは取り去られたことになります。しかし、週明けの早朝相場では窓を空けギャップダウンして始まった関係で、今度は早朝安値と9時以降安値に差異(104.45と104.85)が生じています。

この40線幅のレンジはおそらく短期に埋めに行く可能性が高いと思いますので、今のところ買い戻しが目立っていますが、逆に上がったところを売りで向かえば、104.45レベルは再度見に行く可能性が高いということは頭の片隅に留めておいたほうが良いでしょう。このことも含めてテクニカルな観点から見てみましょう。

テクニカルには長期的なドル安トレンドを再開し、年初のフラッシュクラッシュ安値を既に今朝の安値で下抜く動きとなりましたので、これで年初の安値(赤の水平線)は重要ラインから消えました。ここからは年初来高値112.40と8月高値109.32をそれぞれ起点とした逆N波動を考え、それぞれのフィボナッチ・エクスパンションを考えることとなります。

前者を青のターゲット、後者を水色のターゲットでしめしてありますが、枠で囲って強調したレートを見ると、これまでも指摘してきた年初来高値からの100%エクスパンションが103.70、8月高値からの78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションが103.62と、103円台半ばから後半をターゲットとする動きとなっています。週初は買い戻しもでていますが、上述の通り、時間帯ダイバージェンスがあるため、今週内の安値目途として見ておいた方がよいと考えています。

また戻りに関しては、仮にいったん安値を見て戻しが入ってから週後半に再度の下げといった動きを考える場合、8月高値と今朝の安値との戻しを考え、23.6%戻しが105.60、38.2%戻しが106.31(それぞれ緑のターゲット)となりますが、さすがに106円台はもはや遠いと言わざるを得ず、前者の105円台半ばから後半をめどに考えます。

今週は戻りは弱く一段の安値を試しやすいと見て、103.70レベルをサポートに105.60レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

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