FOMCは25bpの利下げがコンセンサス。日米金利差縮小がドル円の重石に
今週のレビュー(7/22−7/26)
今週のドル円相場は、週初107.80で寄り付いた後、@米6月シカゴ連銀全米活動指数(結果▲0.02、予想0.08)の冴えない結果や、Aトランプ米大統領による「FRBによる利上げと引き締めは行き過ぎた」「金融政策の引き締めが我が国の競争力を低下させている」「FRBは政策運営を失敗した、二度と失敗するな」との批判ツイートを材料に、7/22海外時間に、週間安値となる107.70まで下落しました。しかし、Bライトハイザー米通商代表部(USTR)代表など米政府高官が「7/29に上海(訂正 ×北京)を訪問し、中国側と対面で通商協議を行う」との報道で反発に転じると、C米債務問題の先送りや、D米S&P500の史上最高値更新、E米6月耐久財受注(結果2.0%、予想0.7%)や、同コア指数(結果1.2%、予想0.2%)の良好な結果、F中国商務省による「来週7/30-7/31に上海で米中通商協議を再開する」との表明
G対ユーロでのドル買い圧力の高まり、H米第1四半期GDP(結果2.1%、予想1.8%)の力強い結果などが支援材料となり、週末にかけては、7/10以来、約2週間ぶり高値となる108.83まで上値を伸ばしました。米大幅(50bp)利下げ観測の後退を通じた、「米長期金利上昇→ドル買い」の経路と、米中交渉の再開期待を通じた、「リスク回避ムードの後退→円売り」の経路の双方で押し上げられる1週間となっております。
今週のユーロドル相場は、週初に高値1.1227まで上昇するも、一目均衡表雲下限に続伸を阻まれると、@ドイツ連銀・月報にて「第2四半期のドイツ経済がマイナス成長に落ち込む恐れがある」と警告されたことや、
Aユーロ圏7月消費者信頼感指数(結果▲6.6、予想▲7.2)の冴えない結果、Bボリス・ジョンソン氏の次期英首相選出で「合意なき離脱リスク」が高まったこと、Cフランスの7月製造業PMI(結果50.0、予想51.0)や、ドイツの7月製造業PMI(結果43.1、予想45.2)、ユーロ圏7月製造業PMI(結果46.4、予想47.6)の不冴えな結果、DECB理事会でのハト派的な内容が重石となり、週後半にかけては、2017年5月以来、約2年2ヶ月ぶり安値となる1.1102まで下げ幅を広げました。もっとも、1.11割れが阻まれると、週末にかけて幾分持ち直し、結局1.1130付近での越週となっております。
注目されたECB理事会では、政策金利(0.00%)、中銀預金金利(▲0.40%)、限界貸出金利(0.25%)の全てが据え置かれ、一部で期待されていたようなサプライズ利下げ(=ドラギ・マジック)は見られませんでした。しかし、声明文の中に、利下げを示唆する「or lower」の文言が盛り込まれたことや、「長期的に低金利を継続する姿勢」「金利の階層化」「新たな資産買い入れの検討」などの方針が示されたことがやや「ハト派的」と受け止められ、「欧州債利回りの低下(※ドイツ10年債利回りが過去最低水準を更新)→ユーロ売り」の波及経路で、ユーロドルを押し下げる結果につながりました。もっとも、ドラギECB総裁はその後の会見で、「依然として強い経済の兆候が見られる」「利下げや資産買い入れについて本日は議論しなかった」と発言するなど、過度なハト派姿勢を打ち消す姿勢も滲ませました(この間、ユーロドルは1.1102から1.1187へと急伸)。市場の前のめりの姿勢を牽制したものと推察されます。
来週の見通し(7/29−8/2)
ドル円は、一目均衡表基準線(107.88)や、一目均衡表転換線(108.01)、ボリンジャー・ミッドバンド(108.18)にサポートされる形で反発に転じると、週末にかけて、5/21以来、約2ヶ月ぶりに一目均衡表「雲下限」の上抜け(雲の中への突入)に成功しました。テクニカル的に見て、続伸リスクが意識されます。米長期金利の上昇を通じた「ドル買い」と、リスク回避ムードの後退を反映した「円売り」が持続すれば、心理的節目109円乗せも視野に入ります。
こうした中、市場の関心は7/30の日銀金融政策決定会合と、8/1の米FOMC(米連邦公開市場委員会)に移りつつあります。前者は、四半期毎に公表される展望レポート(経済・物価情勢の展望)で「物価見通し」を引き下げるに留め、追加緩和などの具体的な措置は見送られると考えられます(=副作用を警戒して追加緩和に踏み込めない)。緩和カードの乏しさが浮き彫りとなることで、ドル円には幾分下押し圧力が加わりそうです。一方、後者は、既に25bpの利下げが市場コンセンサスとなっており、大幅利下げ(50bp)の可能性は概ね消失しました。この為、パウエルFRB議長が会見にて「次回9月の利下げ」を示唆するか否かがポイントとなります。ハト派的な発言が見られれば、米連続利下げを織り込む形で「ドル売り」再開に繋がると予想されます。一方、「情勢を注視し適切に対応する」といった従来の発言に停まれば、米利下げ観測の後退を通じてドル高が進む可能性もあり、注意が必要です。
来週のドル円相場は、テクニカル的に見ると続伸リスクが意識されるものの、日米金融政策の方向性の違い(利下げ再開の米国と、緩和手段に乏しい日本)を考慮すれば、上値は次第に重くなると予想されます。余程強いドル買い材料が出てこない限り、ドル円の上値余地は乏しく、一巡後の反落リスクをメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は日米の金融政策イベント以外にも、米中通商協議の行方や、米7月ISM製造業景況指数、米7月雇用統計などイベントが目白押しとなります。米中協議再開でリスク回避ムードが後退したり(円売り材料)、米経済指標の良好な結果(ドル買い材料)を通じて、米利下げ観測が後退すれば、一時的にドル円が上昇する可能性がある点には留意が必要です。(来週の予想レンジ:107.00ー109.50 )
来週のユーロドル相場は、ビッグイベント通過(ECB理事会)で主体性に乏しく、「米ドル」主導の動きが予想されます。FOMCが予想よりタカ派的な内容となったり、米経済指標が力強い結果を示せば、米長期金利上昇→ドル買いの経路で、ユーロドルが心理的節目1.11を割り込むシナリオも想定されます。一方、FOMC後のパウエルFRB議長会見にて「連続利下げ」の可能性が示されるなど、全体的としてハト派的な結果に留まれば、米利下げ観測高進→ドル売りの経路で、ユーロドルが押し上げられる展開も想定されます。何れにせよ、来週のユーロドル相場は、米ドルの動きを睨みながらの神経質な展開となりそうです。尚、7/31に発表されるユーロ圏の第1四半期GDP速報値や、ユーロ圏7月消費者物価指数が市場予想を下回る結果となれば、ECBの追加緩和観測を通じて、「欧州債利回り低下→ユーロ売り」の流れが再開する可能性もあり、注意が必要です。(ユーロドルの予想レンジ:1.1050−1.1250)
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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