ドル円見通し 議長の議会証言時水準までイッテコイ、FOMC待ち
【概況】
7月10日のパウエル米連銀議長下院議会証言での利下げ姿勢をきっかけに7月10日高値108.98円から7月19日朝安値107.19円まで下げたが、6月25日安値割れを回避して切り返し、7月26日夜には108.82円を付けて議長の議会証言前水準を回復、ほぼイッテコイとなった。
7月18日にNY連銀総裁が講演でゼロ金利に言及したため7月末のFOMCでの0.50%利下げ期待が再燃した事が19日朝への一段安要因だったが、あくまでも政策論的な言及だったと報じられたことで19日朝への急落が過剰反応だったとしてその後の揺れ返しのきっかけとなった。
7月24日朝高値108.28円の後は24日深夜に107.94円まで下げて108円を割り込む場面もあったが確りし、25日は米耐久財受注が予想を大幅に上回ったことから利下げ期待度が後退して108円台中盤へ上昇し、26日夜も米GDPが予想程には悪くなかったことで108.82円まで高値を切り上げた。しかし7月10日高値108.98円及び109円には届かずに週を終えた。
【米GDPの今後と米連銀の緩和姿勢】
米国の4-6月期GDP速報は前期比年率で2.1%となり前期の3.1%から大幅に鈍化したものの予想の1.8%は上回った。発表から一時的にドル高反応となったが、25日の米耐久財受注発表後の反応程にはならずに動きは限定的だった。
4−6月期の米GDP統計では、個人消費が前期比4.3%となり市場予想の4.0%を上回り、前期の1.1%から大きく改善したが、米連銀の注目するコアPCE(個人消費支出物価指数)の前期比は1.8%で前期の1.1%からは持ち直したが予想の2.0%に届かずに低調にとどまった。
GDPの伸びはトランプ政権が掲げる「3%超」を2期ぶりに下回ることとなった。米中貿易戦争の影響で設備投資が鈍化していることが原因とされる。米中問題の解決が長引けば米国のGDP伸び率が7-9月期も2%を下回る状況が続く低成長入りとなることも懸念される。そうした懸念を払しょくするための予防的な金融政策として米連銀は利下げ姿勢へ転換したのであり、トランプ大統領が執拗に米連銀を批判してきた根拠もそこにある。
米連銀は7月30-31日のFOMCで0.25%の利下げを決定するだろうというのが市場のコンセンサスであり、一時盛り上がりかけた0.50%利下げはなかろうと市場は見ている。問題は0.25%利下げの単発で終わってしばらくは様子見姿勢となるのか、段階的に緩やかな利下げで実質的なゼロ金利への回帰を目指すのか、量的緩和の再開含みでバランスシートをやや拡大し始めるのかという緩和姿勢の内容と強弱ということになるだろう。
失業率や株高を見れば利下げを急ぐ必要性は全くないとも思われるが、株式市場はトランプラリーも含めてバブル的に大上昇して来てしまっており、相当程度にいつ高所恐怖症を発生させても不思議ないところにある。それ故、ちょっとしたショックでもパニック的な下落を発生する可能性もある。水準が高いだけに過去の急落時と同率の下げでも下げ幅は最大級となりかねない。先行きの大統領選挙情勢も踏まえて株のパニック的な暴落だけは何としても避けたいのがトランプ政権であり、息のかかった理事等が入り込んでいる現状ではパウエル議長も忖度せざるを得ないだろう。FOMCでトランプ大統領が満足する内容となるのか、激烈な批判が始まるのか、見ものだと思う。
中国との通商協議は上海(訂正 ×北京)で閣僚級協議が再開するが、昨年来の流れを踏まえれば、突然合意に至るような期待は市場も持っていないだろう。保留中の対中国制裁関税第4弾発動をちらつかせる動きも出始めるのではないかと思う。
それと、ドル円にとっては最近の地政学的リスクやその他の要因に対しても警戒しておく必要があると思う。イラン情勢は有志連合結成への協議が具体的に始まり、日本も巻き込まれそうな雲行きだが、イランはミサイル発射やタンカー拿捕等で対抗的だ。日米通商協議についても参院選が終わり、米国の強硬姿勢も徐々に出始めてくると思われる。増税による実体景気への懸念も意識され始める。日韓関係の悪化も両国経済にはよくない影響を与える。日経平均株価も6月4日からは戻し気味の推移だがNYダウが史上最高値更新まで戻したことと比較すれば22000円に届かずに勢いにかける。
【当面のポイント】
(1)中期的には概ね10か月から1年周期の底打ちサイクルで推移しており、4月24日高値で1月3日底からの上昇期が一巡して下落期に入っていると思われるので、先行きは次の1年サイクル底形成期となる11月から2020年1月にかけての間へ下落基調を継続してゆくという中勢観は変わらない。
(2)1年サイクルを4つ程度で構成する概ね3か月前後の底打ちサイクルでは、3月25日底から3か月目の6月25日で前回の底をつけて戻した。7月10日高値で戻りが一巡したと思われたが、7月19日からの揺れ返しで7月10日高値に迫っているので、FOMC等によっては7月10日高値を超えて6月25日からの上昇が二段上げ型へ発展する可能性も出てきた印象だ。
7月10日高値を上抜く場合は4月からの下落に対する半値戻し109.57円前後を目指すとみるが、4月24日高値からも3か月を経過したので高値更新後の上昇は短命とみて、109.50円以上は反落警戒圏とし、再び108円割れするところからは下げ再開の可能性を疑う。
(3)FOMCを前後して米10年債利回り低下、ドル安感が強まる場合は7月19日安値、6月25日安値を段階的に割り込んでゆくと考える。その場合は3か月サイクルの次の安値形成期となる8月末から9月末、やや長引く場合は10月序盤への下落継続感が強まるため、下値目途は1月3日底等のある104円台中後半へ切り下がるとみる。
(4)ドル円の趨勢を決める要因は米10年債利回り動向、株式市場動向からのリスクオンまたはリスクオフ、イラン情勢等地政学的リスク、日米通商協議による円高圧力等があるため、FOMCだけに集中していると他の要因で動き始める可能性もあると注意する。(了)<28日17:00執筆>
【当面の主な予定】
7/29(月)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
08:50 (日) 6月 小売業販売額 前年同月比 (5月 1.2%、予想 0.2%)
08:50 (日) 6月 百貨店・スーパー販売額(既存店) 前年同月比 (5月 -0.5%、予想 -0.6%)
7/30(火)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、終了後政策金利発表
未 定 (日) 日銀展望レポート
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
07:45 (NZ) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 13.2%)
08:30 (日) 6月 失業率 (5月 2.4%、予想 2.4%)
08:30 (日) 6月 有効求人倍率 (5月 1.62、予想 1.62)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産速報値 前月比 (5月 2.0%、予想 -1.8%)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (5月 -2.1%、予想 -2.0%)
10:30 (豪) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 0.7%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 6月 住宅建設許可件数 前年同月比 (5月 -19.6%、予想 -24.3%)
15:00 (独) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 9.8、予想 9.7)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
18:00 (欧) 7月 経済信頼感 (6月 103.3、予想 102.7)
18:00 (欧) 7月 消費者信頼感確定値 (速報 -6.6、予想 -6.6)
21:00 (独) 7月 消費者物価指数速報値 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:00 (独) 7月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (6月 1.6%、予想 1.5%)
21:30 (米) 6月 個人所得 前月比 (5月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 個人消費(PCE) 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 個人消費(PCEデフレーター) 前年同月比 (5月 1.5%、予想 1.5%)
21:30 (米) 6月 個人消費(PCEコア・デフレーター、食品・エネルギー除く) 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 個人消費(PCEコア・デフレーター、食品・エネルギー除く) 前年同月比 (5月 1.6%、予想 1.7%)
22:00 (米) 5月 ケース・シラー米住宅価格指数 (4月 215.68)
22:00 (米) 5月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (4月 2.5%、予想 2.4%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前月比 (5月 1.1%、予想 0.3%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前年同月比 (5月 -0.8%)
23:00 (米) 7月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (6月 121.5、予想 125.0)
7/31(水)
10:00 (中) 7月 製造業PMI (6月 49.4、予想 49.6)
10:00 (NZ) 7月 NBNZ企業信頼感 (6月 -38.1)
10:30 (豪) 4-6月期 消費者物価 前期比 (前期 0.0%、予想 0.5%)
10:30 (豪) 4-6月期 消費者物価 前年同期比 (前期 1.3%、予想 1.5%)
14:00 (日) 6月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (前期 -8.7%、予想 -2.2%)
14:00 (日) 7月 消費者態度指数・一般世帯 (6月 38.7、予想 38.5)
15:00 (独) 6月 小売売上高指数 前月比 (5月 -0.6%、予想 0.5%)
15:00 (独) 6月 小売売上高指数 前年同月比 (5月 4.0%、予想 0.6%)
16:55 (独) 7月 失業者数 前月比 (6月 -0.1万人、予想 0.2万人)
16:55 (独) 7月 失業率 (6月 5.0%、予想 5.0%)
18:00 (欧) 6月 失業率 (6月 7.5%、予想 7.5%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.4%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (6月 1.3%、予想 1.1%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (6月 1.1%、予想 1.0%)
21:15 (米) 7月 ADP雇用統計 非農業部門民間就業者数 前月比 (6月 10.2万人、予想 15.0万人)
21:30 (米) 4-6月期 四半期雇用コスト指数 前期比 (前期 0.7%、予想 0.7%)
22:45 (米) 7月 シカゴ購買部協会景況指数 (6月 49.7、予想 51.5)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利発表 (現行 2.25-2.50%、予想 2.00-2.25%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見
8/1(木)
休場 スイス
10:30 (豪) 4-6月期 輸入物価指数 前期比 (前期 -0.5%)
10:45 (中) 7月 財新製造業PMI (6月 49.4)
16:55 (独) 7月 製造業PMI改定値 (速報 43.1)
17:00 (欧) 7月 製造業PMI改定値 (速報 46.4)
17:30 (英) 7月 製造業PMI (6月 48.0、予想 48.0)
20:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.75%、予想 0.75%)
20:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 4350億ポンド)
20:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨、四半期物価報告
20:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、発言
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.6万人)
22:45 (米) 7月 製造業PMI改定値 (速報 50.0)
23:00 (米) 7月 ISM製造業景況指数 (6月 51.7、予想 52.0)
23:00 (米) 6月 建設支出 前月比 (5月 -0.8%、予想 0.5%)
8/2(金)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
08:50 (日) 7月 マネタリーベース 前年同月比 (6月 4.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前期比 (前期 0.4%)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前年同期比 (前期 1.9%)
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.1%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 -0.1%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 1.6%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 -0.3%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 1.3%)
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -555億ドル、予想 -540億ドル)
21:30 (米) 7月 雇用統計 非農業部門就業者者数 前月比 (6月 22.4万人、予想 16.0万人)
21:30 (米) 7月 雇用統計 失業率 (6月 3.7%、予想 3.6%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 平均時給 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 平均時給 前年同月比 (6月 3.1%、予想 3.2%)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 -0.7%、予想 0.5%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 98.4、予想 98.5)
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2019.07.29
ドル円週報 FOMCなど注目材料多い、波乱の予感も(週報7月第5週)
先週のドル円は、ドルがしっかり。値幅そのものは限られたが、「週初安・週末高」の展開で、ドルの強さが目につく結果となった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2019.07.27
来週の為替相場見通し 『FOMCは25bpの利下げがコンセンサス。日米金利差縮小がドル円の重石に』(7/27朝)
米長期金利の上昇を通じた「ドル買い」と、リスク回避ムードの後退を反映した「円売り」が持続すれば、心理的節目109円乗せも視野に入ります。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。