7月10日からの高値切り下がりの範囲、中勢下落基調継続
【概況】
7月第3週のドル円は週序盤にやや戻したものの週末7月19日朝には107.19円へ下落して7月3日安値を割り込んだ。7月20日未明には107.97円まで戻したものの108円には届かず、7月10日高値109.98円、7月12日高値108.60円、7月17日未明高値108.37円と高値ラインを切り下げてきた流れの範囲にとどまっている。
7月15日に発表された中国の4-6月期GDPが前年同期比で6.2%となり1-3月期の6.4%から減速して1992年の統計開始以来の低水準に陥ったものの、市場予想と一致したために同時に発表された小売売上高や鉱工業生産が予想を大幅に上回ったことで中国景気も6月からは持ち直しに入っているのではないかとされてリスクオン心理がやや回復、前週からの下落にはいったんブレーキがかかった。
7月16日午後から英ポンドが「合意無きEU離脱」への懸念拡大を背景に一段安に入り、1月3日安値を割り込んで2018年4月高値以降の安値を更新、2017年4月以来2年4か月振りの安値を付けた。これに同調してユーロも下落したために17日夕刻にかけてはポンド安ユーロ安からのドル高圧力によってドル円もやや戻し気味の推移だったが、17日夕刻からはポンドとユーロが持ち直し始めたためにドル円も失速する。
16日夜にトランプ米大統領が中国との貿易協議が進まなければ中国からの輸入品ほぼ全てに追加関税を拡大する第4弾の発動もあり得ると表明したことで米中摩擦問題への先行き懸念が再び強まったこともドル安再開要因となった。IT大手グーグルと中国政府の関係が国家安全保障に及ぼす影響についてトランプ大統領が「政権として調査を行う」と表明したことや、米上下両院の議員が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に対する厳しい制裁を維持する法案を提出するなどの動きも重なった。
18日夜にはNY連銀総裁が講演でゼロ金利政策に言及したことからFOMCが0.50%の利下げを行うのではないかとの思惑が強まったことで一段安となり19日朝安値で107.19円を付けたが、その後はNY連銀総裁発言への反応が過剰だったとして揺れ返しの上昇となった。
【FOMC待ちの思惑で騰落を繰り返しつつ下落基調】
米中貿易戦争の深刻化懸念と株安債券高、米10年債利回り低下を背景に4月24日高値から下落してきた。米連銀の利下げ観測が強まる中でNYダウは6月3日から反騰に転じたものの、6月20日未明のFOMCから早期大幅利下げ期待が強まったところからは株高の一方で円高が加速して6月25日安値106.75円まで下落した。
6月25日のセントルイス連銀ブラード総裁やパウエル米連銀議長講演での発言をきっかけに早期大幅利下げ期待がややトーンダウンしたとして7月10日高値108.98円まで戻したのだが、7月10日のパウエル米連銀議長による下院議会証言から利下げ期待が再び強まって下落再開となった。
7月18日にはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が講演で政策金利をこれ以上引き下げられなくなるゼロ金利制約問題に言及したことが月末のFOMCにおける大幅利下げ期待を強めたために19日朝安値107.19円まで円高ドル安が進んだのだが、市場の過剰反応に対してNY連銀担当者が「ウィリアムズ総裁の講演は学術的なもの」とロイター通信に語ったと報じられたためにドル円も戻した。
7月19日夜には米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版が7月末の金融政策会合では0.25%の利下げを軸に検討される模様と報じ、セントルイス連銀のブラード総裁も講演で0.25%の利下げを支持すると述べたと報じられたことで、0.50%利下げ期待が後退したこともドル円の反発に寄与した。
このようにドル円の騰落は米連銀の利下げ姿勢に対する評価・市場の受け止め方で左右されており、7月30−31日のFOMCで実際に利下げが決定されるのかどうか、利下げ幅及び今後の追加利下げ姿勢の強弱等によって先行きの流れも決まってゆくのだろうと思われる。仮に0.25%の利下げが決定されても市場にとっては織り込み済の内容となるため、その後に続く追加利下げ姿勢によってさらにドル安円高が進むのか、いったんドル高円安への揺れ返しとなるのかも定まるのだろうと思われる。
FOMC前段階では、米連銀の利下げ問題以外でリスク回避感が強まる場合は円高が加速する可能性もあるが、大きな情勢変化がなければ6月25日安値を割り込む一段安についても、7月10日高値を超える上昇へ転じることのいずれも時期尚早として現状近辺で揉み合いとなる可能性も考えられるところだ。
【中勢観の整理】
(1) 中期的には概ね10か月から1年周期の底打ちサイクルで推移しており、このサイクルの底は昨年3月26日、今年1月3日につけている。6月25日への下落で1月3日安値へ迫ったことを踏まえれば、1月3日安値を底とした1年サイクルの上昇期はすでに一巡しており、次の1年サイクルの底形成期となる11月から2020年1月にかけての間へ下落基調を継続しやすい状況にあると考えられる。
(2) 1年サイクルを4つ程度で構成する概ね3か月前後の底打ちサイクルでは、1月3日安値から3か月弱の3月25日で前々回の底をつけたが、そこから3か月目の6月25日で前回の底をつけて戻した。しかし7月10日高値からの反落で26日移動平均や一目均衡表の26日基準線を再び割り込み、直前の戻り幅の半値以上を解消しているため、既に7月10日高値で3か月サイクルのトップをつけて下落期に入ったと思われる。このため先行きでは6月25日安値を割り込み、次の底形成期となる8月末から9月末にかけての間へ下落継続しやすい状況にあると思われる。 1年サイクルの下落期とそれを構成する3か月サイクルの下落期が重なるので下落角度が厳しくなる可能性もあると注意するところとも思われる。この流れを覆すには、米連銀の利下げ確率が低下する場合や年内に1回の利下げ程度で後は様子見に入るような可能性が高まる等によって7月10日高値を超える反騰が発生するような情勢変化が必要と思われる。
(3) 仮に6月25日安値を割り込む場合、下値目処は1月3日安値104.82円や昨年3月26日底104.63円にある104円台中後半と想定されるが、さらにそれらを割り込んで100円試しへ向かう可能性も考えておく必要があると思う。 米中対立が再び深刻化し、米連銀が7月末に利下げし、さらに年内の追加利下げ、来年の利下げ継続を示唆するならドル安円高が一段と進みやすくなる。また参院選後の消費税再増税問題等で日本株安懸念が強まる場合やイラン情勢等でのリスク回避的なクロス円投資の手仕舞い衝動が高まる場合には円高が加速しやすくなると思われる。
【当面のポイント】
(1)当面は7月19日安値107.19円を下値支持線、108円台序盤を上値抵抗帯とみておく。
(2)107.50円を上回るか、一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、20日未明高値107.97円を上抜く場合は7月18日夜高値108.01円から7月17日未明高値108.37円までの範囲で高値を試すとみる。ただし108円台序盤は戻り売りにつかまりやすいところとみて、108円を超えた後に107.75円割れしてくるところからは下げ再開を警戒する。
(3)107.50円割れから続落の場合は7月19日朝安値107.19円試しを想定する。安値更新を回避するうちは107.75円超えから再び戻りを試しにかかる可能性もあるが、107.19円割れからは6月25日安値106.75円試しへ向かうとみる。FOMC前段階での6月25日安値割れを時期尚早とみれば107円割れからはいったん戻しやすいかもしれないが、リスク回避系の材料を伴って6月25日安値を割り込む場合は106円台序盤まで下値目途を引き下げる。(了)<21日22:20執筆>
【当面の主な予定】
7/22(月)
14:00 (日) 安倍自民党総裁、記者会見
24:00 (日) 黒田東彦日銀総裁、発言
7/23(火)
英保守党が新党首発表
22:00 (米) 5月 住宅価格指数 前月比 (4月 0.4%、予想 0.3%)
23:00 (米) 7月 リッチモンド連銀製造業指数 (6月 3、予想 5)
23:00 (欧) 7月 消費者信頼感・速報値 (6月 -7.2、予想 -7.2
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (5月 534万件、予想 534万件)
7/24(水)
07:45 (NZ) 6月 貿易収支 (5月 2.64億NZドル、予想 1.00億NZドル)
14:00 (日) 5月 景気一致指数(CI)・改定値 (速報 103.2)
14:00 (日) 5月 景気先行指数(CI)・改定値 (速報 95.2)
16:30 (独) 7月 製造業PMI (6月 45.0、予想 45.2)
16:30 (独) 7月 サービス業PMI (6月 55.8、予想 55.2)
17:00 (欧) 7月 製造業PMI (6月 47.6、予想 47.6)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI (6月 53.6、予想 53.3)
22:45 (米) 7月 製造業PMI (6月 50.6、予想 51.0)
22:45 (米) 7月 サービス業PMI (6月 51.5、予想 51.8)
23:00 (米) 6月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (5月 62.6万件、予想 65.8万件)
7/25(木)
08:50 (日) 6月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (5月 0.8%、予想 0.8%)
12:05 (豪) ロウ豪中銀総裁、昼食会で講演
17:00 (独) 7月 IFO景況指数 (6月 97.4、予想 97.0)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 24.00%、予想 22.00%)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ドラギECB総裁、定例記者会見
21:30 (米) 6月 耐久財受注 前月比 (5月 -1.3%、予想 0.7%)
21:30 (米) 6月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (5月 0.4%、予想 0.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.6万件、予想 21.7万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.6万人)
7/26(金)
08:30 (日) 7月 東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く) [前年同月比] 0.9% 0.8%
21:30 (米) 4-6月期 GDP、速報値 前期比年率 (前期 3.1%、予想 1.8%)
21:30 (米) 4-6月期 個人消費・速報値 前期比 (前期 0.9%、予想 4.0%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE・速報値 前期比 (前期 1.2%)
日米貿易実務者協議最終日、ワシントン
オーダー/ポジション状況
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