ドル円見通し 米中首脳会談結果はリスクオンを進めるか?(週報7月第一週)

6月29日の米中首脳会談では通商協議の継続で合意し、米国による制裁関税第4弾については当面発動しないとされた。

ドル円見通し 米中首脳会談結果はリスクオンを進めるか?(週報7月第一週)

ドル円見通し 米中首脳会談結果はリスクオンを進めるか?

【概況】

4月24日と3月5日の両高値をダブル天井として下落期に入り、5月13日安値109.02円までを一段目の下げ、6月4日安値107.82円までを二段目の下げとし、6月4日以降は6月11日高値108.79円まで1円に満たない戻り幅でほぼ横ばいの持ち合いが続いていたが、6月20日未明の米連銀FOMCで早期利下げ姿勢が示されたことでドルが全面安となり6月25日安値106.75円まで三段目の下げとなった。
6月25日に安値を更新したきっかけはトランプ大統領が日米安保破棄に言及したとの報道だったが、持ち合いが続く中でややナーバスになっていたところで日米関係へのネガティブ材料だったことで円高反応となったが、やや過剰反応として持ち直した。

25日夜にはセントルイス地区連銀のブラード総裁が7月末のFOMCで利下げするとしても0.50%の引き下げは過剰だとし、26日未明のパウエル議長講演でも利下げ姿勢が強調されたものの状況を見定めるとして利下げ時期に言及しなかったことで、「7月末のFOMCで0.50%の利下げ」という市場のやや過剰だった期待がトーンダウンしたことも円高にブレーキをかけた。
6月29日に米中首脳会談が行われるために関税戦争休戦入りやファーウェイ等への規制緩和等が取り沙汰されたこともドル円にとっては突っ込み警戒感を抱かせた。

【米中の関税戦争休戦入り】

6月29日の米中首脳会談では通商協議の継続で合意し、米国による制裁関税第4弾については当面発動しないとされた。また中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)について、安全保障上の脅威があるとして米政府の許可なく米国企業から部品や技術を購入するのを禁止する「エンティティー・リスト(EL)」に加えていることについても、数日中に米商務省がELから除外するかどうか検討するとされた。

6月27日昼前に香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが「中国の習近平国家主席が首脳会談に応じた見返りとしてトランプ米大統領は中国からの輸入品ほぼすべてに追加関税を拡大する第4弾の発動延期を決めた」と報じていたために、市場も発動見送りの可能性もあるとみていたこと、第3弾までの制裁関税を解除するわけではないために大きなサプライズではないと思う。しかしひとまず現状からさらに深刻化してゆくことへの懸念は後退したことにより、ファーウェイがELから除外される場合は金融市場全般が楽観的なリスクオンに走る可能性が高まると思われる。直接的な問題ではないにしても6月30日にトランプ大統領が板門店で金正恩氏と会い、北朝鮮領土へ一歩足を踏み入れたことも楽観ムードには貢献すると思われる。
しかし、米中問題が従前よりも深刻化しないということになれば米連銀が利下げを急ぐ必要もなくなる。市場は7月末のFOMCにおける利下げ決定を期待してきたが、7月5日の米雇用統計等の米重要経済指標がさほど悪化せず、関税戦争休戦を好感して株高が進むなら予防的な意味合いでの利下げは先送りされる可能性が高まると思われる。

6月28日に発表された6月のシカゴPMIは49.7へ低下、市場予想の53.1及び5月の54.2を大きく下回った。6月30日に発表された中国国家統計局による6月製造業PMIは前月から横ばいの49.4となり市場予想の49.5を下回った。同非製造業景況指数も54.2で前月の54.3から低下している。関税戦争休戦だけでは米国および中国の景気減速感が改善するわけではない。より前向きで楽観的な交渉の進展と第3弾までの実施済拡大関税の早期解除が見込まれるような協議進展が必要だろう。

【3か月前後のサイクルで戻すか?】

中勢観を整理しておく。
(1)6月25日への下落により、終値ベースでは1月3日終値107.51円を割り込んでいる。このため昨年10月4日天井からの下落は1月3日までを一段目、今年4月24日から二段目の下落期に入った状況と思う。
(2)概ね10か月から1年周期の底打ちサイクル(以下、1年サイクル)では、今年1月3日安値で前回の底を付けたが、4月24日への上昇幅の3分の2を削っているため、すでに1年サイクルの戻りを一巡させて下落期入りしていると思われる。1年サイクルの次の底形成期は11月から来年1月にかけての間と想定されるので、中長期的な下落基調はまだ継続してゆくと考える。

(3)しかし、1年サイクルは底打ち周期が2か月から4か月弱で平均的には3か月前後のサイクル(以下、3か月サイクル)の組み合わせで構成されており、3月25日底から3か月目となる6月25日安値で底を付けた可能性がある。このため6月11日高値108.79円を上抜く場合は3か月サイクルによる上昇期として7月中後半まで上昇する可能性も出てくるが、戻りは短命の可能性もあるので、いったん3か月サイクルの上昇期に入ってもその後の反落で107.50円を割り込むところからは下げ再開注意、6月25日安値を割り込むところからは新たな3か月サイクルの下落期入りとして8月末から10月前半にかけての間への下落継続が想定される。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

週明けはまず、米中関税戦争休戦入りに対する金融市場全般の反応を見定める必要がある。リスクオンで株高円安反応の場合はそれが継続的で勢いのあるものになるのか鈍いものに留まるのかの見極めが必要だ。7月4日は米独立記念日で休場となり、休場明けの5日に米雇用統計の発表があること、トランプ大統領が米国に戻ってからの発言や姿勢も市場がリスクオン心理で進んでよいのかどうかを左右する。7月2日にはウィリアムズNY連銀総裁とメスター・クリーブランド連銀総裁の講演もあるので米連銀の利下げ姿勢がどの程度なのか注目されるところだ。

(1)当初、6月27日高値108.16円を上値抵抗線、28日昼安値107.56円を下値支持線とする。
(2)概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは6月27日午後高値が直近のサイクルトップ、28日昼安値が同サイクルボトムとなっているため、28日昼安値を割り込まないうちは上向きとし、27日高値を上抜く場合は7月2日から4日にかけての間への上昇を想定し、6月11日高値108.79円を目指すとみる。6月11日高値を超える場合、109円台序盤、さらに4月24日殻の下げ幅に対する半値戻し109.57円前後まで上値目途が切り上がる可能性も出てくると思われる。
(3)6月28日昼安値を割り込む場合、概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおける下落期入りとして7月3日から5日にかけての間への下落を想定する。その場合は当初の下値目途を107円から6月25日安値106.75円にかけての間と想定する。
(4)中勢レベルでは6月25日安値を割り込むところからは1月3日安値104.82円試しへ向かう可能性が高まる。6月29日の米中首脳会談による関税戦争休戦への楽観が崩れるような状況が発生する場合は要注意と思う。(了)<30日21:50執筆>

【当面の主な予定】

7/1(月)
休場 カナダ(建国記念日)、香港(香港特別行政区設立記念日)
OPEC総会、OPECと非加盟産油国の閣僚会合((ウィーン)
世界経済フォーラム夏季会合(夏季ダボス会議)(中国・大連、7月3日まで)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業業況判断 (前期 12、予想 9)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業製造業先行き (前期 8、予想 7)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業業況判断 (前期 21、予想 20)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業非製造業先行き (前期 20、予想 19)
08:50 (日) 4-6月期 日銀短観・大企業全産業設備投資前年度比 (前期 1.2%、予想 8.1%)
10:45 (中) 6月 財新製造業PMI (5月 50.2、予想 50.0)

14:00 (日) 6月 消費者態度指数・一般世帯 (5月 39.4)
15:15 (米) クラリダFRB副議長、講演(ヘルシンキ)
15:45 (欧) デギンドスECB副総裁、講演(フランクフルト)
16:55 (独) 6月 製造業PMI改定値 (速報 45.4)
16:55 (独) 6月 失業率 (5月 5.0%)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI改定値 (速報 47.8、予想 47.8)
17:00 (欧) 5月 マネーサプライM3 前年同月比 (4月 4.7%)
17:30 (英) 6月 製造業PMI (5月 49.4、予想 49.2)
18:00 (欧) 5月 失業率 (4月 7.6%、予想 7.6%)
22:45 (米) 6月 製造業PMI改定値 (速報 50.1)
23:00 (米) 6月 ISM製造業景況指数 (5月 52.1、予想 51.2)
23:00 (米) 5月 建設支出 前月比 (4月 0.0%、予想 0.0%)

7/2(火)
米国による対中関税に関する公聴会後の意見公募期間終了
06:00 (NZ) バスカンドNZ中銀副総裁、講演
07:45 (NZ) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -7.9%)
08:50 (日) 6月 マネタリーベース 前年同月比 (5月 3.6%)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利 (現行 1.25%、予想 1.25%)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 -0.3%)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 2.6%)
19:35 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演(チューリヒ)
24:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演(ロンドン)

7/3(水)
10:30 (豪) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -4.7%)
10:30 (豪) 5月 住宅建設許可件数 前年同月比 (4月 -24.2%)
10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 48.71億豪ドル)
10:45 (中) 6月 財新サービス業PMI (5月 52.7、予想 52.6)
16:55 (独) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 55.6)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 53.4、予想 53.4)
17:30 (英) 6月 サービス業PMI (5月 51.0)
19:00 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演
21:15 (英) ブロードベント英中銀副総裁、講演
21:15 (米) 6月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (5月 2.7万人、予想 12.2万人)
21:30 (米) 5月 貿易収支 (4月 -508億ドル、予想 -503億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数
21:30 (米) 失業保険継続受給者数

22:45 (米) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 50.7)
22:45 (米) 6月 総合PMI改定値 (速報 50.6)
23:00 (米) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -0.8%、予想 0.1%)
23:00 (米) 6月 ISM非製造業景況指数 (5月 56.9、予想 56.0)

7/4(木)
休場 米国(独立記念日)
10:30 (豪) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -0.1%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -0.4%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 1.5%)
18:10 (欧) デギンドスECB副総裁、講演

7/5(金)
08:30 (日) 5月 全世帯消費支出 前年同月比 (4月 1.3%)
14:00 (日) 5月 景気先行指数(CI)速報値 (4月 95.9)
14:00 (日) 5月 景気一致指数(CI)速報値 (4月 102.1)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 0.3%)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前年同月比 (4月 -5.3%)
21:30 (米) 6月 雇用統計・非農業部門就業者数 前月比 (5月 7.5万人、予想 16.0万人)
21:30 (米) 6月 失業率 (5月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前月比 (5月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前年同月比 (5月 3.1%、予想 3.2%)

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