ドル円見通し 年初からの底上げパターン崩れる(3/22)

FOMCは政策金利を現状維持とし、年内の追加利上げを断念、保有資産縮小計画についても9月末で切り上げるとした。

ドル円見通し 年初からの底上げパターン崩れる(3/22)

【概況】

3月21日未明の米FOMC金融政策が予想以上にハト派的だったことからドル全面安となりドル円は111.50円近辺の水準から110.50円台まで一挙に急落した。売り一巡による反騰は見られずに21日夕刻には110.29円まで続落したが、その後は売り一巡による買い戻しで111円手前まで戻している。

米FOMCは前回の会合で当面の追加利上げ棚上げ姿勢と保有資産圧縮計画の早期終了姿勢を示したが、その後に公開された議事録では必ずしも追加利上げが断念されたわけではないという印象を与えていた。そのため今回の会合については前回会合での姿勢維持と予想し、年1回の追加利上げが9月前後となるのか年末となるのかという認識でいた。しかし今回のFOMCは年内の利上げを断念、2020年も利上げされないか利上げしても1回程度として前回よりもかなりハト派的な姿勢となった。市場にとってはサプライズであり、2020年には利下げもあり得るのではないかという見方も強まった。

21日夜は米経済指標が総じて良好だったこと、英ポンドが急落したこと等からドルがやや巻き返しとなり、FOMC関連の売りも目先は一巡したとしてドル円も戻した。
米フィラデルフィア連銀の3月製造業景況指数は13.7で前月のマイナス4.1から上昇して市場予想の4.5を上回った。米コンファレンス・ボードの2月景気先行指数は111.5となり前月比0.2%の上昇で市場予想の0.1%上昇を上回った。また週間失業保険申請件数は22.1万件で市場予想の22.5万件を下回る良好さだった。

英ポンドが急落したことも21日のドル反発要因となったが、ポンドドルは前日比で1%超の下落で一時は1.3ドル割れ寸前まで売られた。英国の離脱延期要請についてのEU側協議が難航していると報じられているため「合意無き離脱」への懸念がぶり返している。

【FOMC、年内利上げを断念】

米連銀(FRB)は3月19−20日の連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利を現状維持とし、年内の追加利上げを断念、保有資産縮小計画についても9月末で切り上げるとした。
参加メンバー17人による利上げ回数や金利水準等に対する予想は以下の通り。


・2019年の利上げ回数はゼロ回が11人、1回が4人、2回が2人となった。2019年12月時点ではゼロ回は2人、1回が4人、2回が5人、3回が6人だった。12月時点では3回を主張する者も多かったが今回はゼロ人になった。2回と3回の利上げ予想者も6人いるがゼロ回の11人が圧倒的な数となっている。

・2020年の利上げ予想外数はゼロ回が7人、1回が4人、2回が3人、3回が2人、4回が1人。かなりばらつきがあるが2019年の利上げを見送った上で既に利上げ打ち止めという見方をするものが最多であり、状況次第で1回の利上げはあるかもしれないという程度となっている。

・予想金利水準は2019年が2.375%で前回の2.875%から下方修正、2020年も2.625%で同3.125%から下方修正された。

・消費支出ベースの物価上昇率予想については2019年が1.8%で前回の1.9%から下方修正、2020年が2.0%で同2.1%から下方修正となっている。GDP伸び率についても2019年が2.1%で前回の2.3%から下方修正、2020年が1.9%で同2.0%から下方修正された。

・失業率見通しは2019年が3.7%で前回の3.5%から引き上げ、2020年が3.8%で同3.6%から引き上げられた。

【3月8日安値を割り込む】

今年1月3日暴落からの出直りでは、1月31日安値108.50円、2月27日安値110.33円、3月8日安値110.80円と上昇一服による調整の安値を切り上げる底上げパターンを維持してきた。また3月8日以降も14日未明安値111.00円、19日昼安値111.13円と60分足レベルの底上げを維持してきた。しかし21日未明の急落により3月8日安値を割り込んでこれらの底上げパターンが崩れた。
3月5日高値からの下げも二段目に入り、2月27日及び3月8日安値を支持した26日移動平均も割り込んだ。このため1月3日からの出直り上昇が一巡して下落期に入った可能性がある。

およそ2か月の上昇で上昇幅が7円を超えた状況は2017年11月6日へ7.40円の上昇後に11月27日へ3.88円の下げとなった前例がある。2018年3月26日底から5月21日へ6.75円の上昇後に5月29日へ3.27円の下落を入れている前例もある。昨年5月への下落は長期的な上昇基調の範囲内での「押し目」だったが、今回も仮に1月3日からの上昇基調がさらに長期化するとしても高値から3円超の規模で調整安を入れる可能性があるということだろうが、今のところは3月5日深夜からの下落幅は1.83円で2円に満たない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の高値・安値形成サイクルでは、3月14日未明安値から3日目となる19日昼安値でボトムを付けて強気サイクルに入っていた。20日朝時点では今回の高値形成期を20日の日中から22日にかけての間とし、FOMC前後から下落反応なら19日昼安値割れから新たな弱気サイクル入りとした。
21日未明の急落により3月8日安値を割り込んだために弱気サイクル入りしたと思われる。今回のボトム形成期は22日の日中から26日にかけての間と想定される。21日夕安値から戻しているため、111円を超えてくるようならボトム形成を短縮して強気サイクル入りする可能性があるが、日柄が浅いため110.50円割れからは下げ再開とし、21日夕安値割れからは22日夜、週明けへの下落継続と考える。

60分足の一目均衡表では21日未明の急落により遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。21日夕安値からの反発で遅行スパンが好転してきているが、先行スパンを上抜けないうちは次の遅行スパン悪化から下げ再開とする。先行スパン突破からは上昇再開の可能性を優先するが、先行スパンから再び転落の場合はもう一段安へ進みやすくなるとみる。

60分足の相対力指数は21日未明安値から21日夕への安値更新に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行となっているので戻りを試しやすい姿だが、40「ポイント割れからは下げ再開の可能性を優先する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.29円を下値支持線、111円を上値抵抗線とする。
(2)110.60円を上回る内は111円超えから戻り高値を試す可能性ありとみるが、111.00円から111.20円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)110.60円割れからは下げ再開注意とし、110.29円割れからは一段安入りとなるので109円台後半試しへ向かうとみる。またその際は先行きで1月31日安値108.50円を目指す流れへ入るとみる。

【当面の予定】

3/22(金)
EU首脳会議最終日(ブリュッセル)
17:30 (独) 3月 製造業PMI (2月 47.6、予想 48.0)
17:30 (独) 3月 サービス業PMI (2月 55.3、予想 54.8)
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調済 (12月 162億ユーロ)
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調前 (12月 330億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 製造業PMI (2月 49.3、予想 49.5)
18:00 (欧) 3月 サービス業PMI (2月 52.8、予想 52.7)
23:00 (米) 1月 卸売在庫 前月比 (12月 1.1%、予想 -0.1%)
23:00 (米) 1月 卸売売上高 前月比 (12月 -1.0%)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (1月 494万件、予想 510万件)
27:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 87億ドル、予想 -2300億ドル)

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