ドル円 持ち合い上放れで112円到達(週報3月第1週)

米国による対中国制裁関税の発動が見送られて協議期限が3月1日から延期されたことで米中協議の進展期待が強まったが、

ドル円 持ち合い上放れで112円到達(週報3月第1週)

ドル円 持ち合い上放れで112円到達

【概況】

2月14日高値111.12円から2月15日安値110.25円へ反落した後は概ね110円台後半での持ち合いが続いてきた。このため前週の週間見通しでは持ち合い放れ待ちとし、上放れの場合は去年10月4日から12月半ばまでの三角持ち合いから転落したところへの回帰として112.50円前後試しへの上昇を想定し、持ち合い下放れの場合は1月23日から1月31日への下落時並みとして109.65円前後への下落、さらに109.50円割れへ向かう可能性があるとした。
「持ち合いは持ち合い放れにつけ」が鉄則だが、2月26日未明高値で111.23円を付けて2月14日高値をわずかに上抜いた後は振るい落としとなって2月27日には110.37円まで下げた。しかし2月15日安値割れを回避したところから持ち直し、2月28日夜の上昇で26日未明高値を上抜いて持ち合い上放れの追認となった。3月1日には株高債券安・米長期債利回り上昇と同調して112円台に到達した。

1月25日のWSJ紙等の報道で米連銀が保有資産圧縮計画を早期に切り上げる見込みが強まったとしてドル安が進んでドル円も下落したが、この件は米連銀の1月31日未明の声明にて当面の追加利上げを棚上げし保有資産圧縮計画の早期切り上げを検討するとしたことでひとまず材料消化となり、その後はユーロ等の下落によりドルが相対的に押し上げられたためにドル円も2月14日まで一段高となった。
2月14日夜は米小売統計が悪かったとして反落したが、その後は強弱感が拮抗したために持ち合い相場が長引いていた。

2月28日の米GDP(10−12月期)が予想程悪くなかったとしてドル全面高となったが、3月1日夜の米個人消費統計では、12月の個人消費支出は前月比0.5%減となり予想の0.2%減よりも悪く11月の0.6%から悪化した。市場が注目する12月の個人消費支出コアデフレーターは前年同月比1.9%と市場予想及び11月と同じだった。その後に発表された2月のISM製造業景況指数は54.2で市場予想の55.5及び前月の56.6を下回り、ミシガン大の2月消費者信頼感指数確報値も93.8で速報の95.5から悪化した。このように米経済指標だけを見れば米連銀が利上げ再開を探るという警戒感を強めるものではない。


しかし2月27日から米10年債利回りは3連騰している。2月26日に2.63%台まで低下していたがその後の連騰で3月1日には2.75%台後半へ上昇している。米国による対中国制裁関税の発動が見送られて協議期限が3月1日から延期されたことで米中協議の進展期待が強まったが、特に中国株式市場がかなり強気な反応を見せている。上海総合株価指数は1日に1.8%高と大幅上昇したが、この1週間では6.8%の上昇で2015年6月以来の上昇率となった。NYダウも2月25日高値の後は小幅に3日間続落していたが1日は110.32ドル高と反騰しており、12月26日からのV字反騰基調を継続している。投機マネーが株へ流れ、債券が売られて利回りが上昇してドルを押し上げ、ドル円もその流れに乗って持ち合いを上放れたということだろう。

【年末の三角持ち合い転落直前水準へ戻す】

1月3日の暴落から出直ってきたが、1月後半までは直前の暴落に対する自律反発の範囲だった。しかし1月23日高値を超えて戻りは二段上げ型に発展したため、10月からの下落幅に対する3分の2戻し111.30円前後、昨年10月26日安値111.37円、さらに去年10月4日高値から12月半ばまでの三角持ち合いを下放れた水準の112.50円等を目指す可能性が出てきていた。
3月2日未明高値で112.07円を付けたが、1月3日からの上昇幅は7.25円まで拡大した。去年10月4日からの三角持ち合いから転落する直前の安値は12月6日安値112.24円や11月20日の112.29円だがそれらに迫っている。また当時の三角持ち合い下放れは104日移動平均を転落したところから始まったが、3月1日の上昇で同線を上抜いている。

すでに3分の2戻しを実現していることを踏まえれば、100%戻しとなる10月4日高値への挑戦へ進む可能性も出てきた印象だ。2018年3月26日安値104.63円と今年1月3日安値104.82円はほぼ同水準。2017年11月6日高値114.72円と2018年10月4日高値114.54円もほぼ同水準。これらのレンジ内での往来相場としてその上限を目指しているところという印象が強まったと思う。しかし、1月3日からの上昇幅も7円を超えている。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)3月1日まで日足は3日連続陽線となった。4本目は修正も入りやすいところだが、3連騰からさらに続伸した前例としては昨年2月26日底からの上昇途中の4月18日からの6連騰がある。4連騰の場合はそのまま売り方の踏み上げも続いて112.50円、さらに113円台を目指す可能性も出てくると注意する。
(2) 上値抵抗線としては昨年12月6日安値112.24円、11月20日安値112.29円等の112円台序盤、次いで112.50円だが、その上は12月13日高値113.70円から10月4日高値114.54円まで順次切り上がる可能性がある。
(3)2月14日高値111.12円を上回るうちは2月14日以降の持ち合い上放れ状態の維持としてさらに上昇基調を継続する可能性がある。

(4)すでに1月3日からの上昇も日足で42本を経過したが、昨年3月26日からの上昇は最初の41本目で5月21日高値(上昇幅は6.75円)を付けて5月29日へ3.27円の下落を入れている。昨年7月19日高値の後も3.38円の下落、10月4日高値の後も3.17円の下落を入れている。つまり上昇基調の中にあっても2か月前後の大幅上昇の後には3円を超える調整安が入りやすいという点では今回も既に反落警戒圏には来ていると考えるところだ。仮に2月14日高値に被さる下落発生の場合は2か月の上昇一巡による基調転換を警戒すべきとみて、110円、さらに109円台後半へ崩れる可能性を考えてゆく。
(5)米10年債利回り上昇と株高がドル円上昇に寄与しているとすれば、10年債利回り上昇と株高の流れにヒビが入るところは基調転換しやすいと警戒すべきだろう。逆に言えば株高、米10年債利回り上昇が継続するうちは高値を試しやすいとみる。(了)<3日23:50執筆>

【当面の主な予定】

3/4(月)
08:50 (日) 2月 マネタリーベース 前年同月比 (1月 4.7%)
09:30 (豪) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 -8.4%、予想 1.5%)
09:30 (豪) 1月 住宅建設許可件数 前年同月比 (12月 -22.5%、予想 -28.9%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 -0.8%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 3.0%、予想 2.9%)
24:00 (米) 12月 建設支出 前月比 (11月 0.8%、予想 0.2%)

3/5(火)
09:30 (豪) 10-12月期 経常収支 (前期 -107億豪ドル、予想 -91億豪ドル)
10:45 (中) 2月 財新サービス業PMI (1月 53.6、予想 53.5)
12:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現行 1.50%、予想 1.50%)
17:55 (独) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 55.1、予想 55.1)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 52.3、予想 52.3)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI (1月 50.1、予想 50.0)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.6%、予想 1.4%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 0.8%、予想 2.3%)
24:00 (米) 2月 ISM非製造業景況指数 (1月 56.7、予想 57.3)
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (11月 65.7万件、予想 58.9万件)
24:35 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、上院で証言
28:00 (米) 1月 月次財政収支 (12月 -135億ドル、予想 30億ドル)
25:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁(FOMC投票権有)、講演

3/7(木)
09:30 (豪) 1月 貿易収支 (12月 36.81億豪ドル、予想 29.00億豪ドル)
09:30 (豪) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.3%)
14:00 (日) 1月 景気先行指数(CI)速報 (12月 97.5、予想 96.0)
19:00 (欧) 10-12月期GDP確定値 前期比 (改定値 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP確定値 前年同期比 (改定値 1.2%、予想 1.2%)
21:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、定例記者会見
22:30 (米) 10-12月期非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 2.3%、予想 1.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.5万件、予想 22.5万件)
26:15 (米) ブレイナードFRB理事、講演
29:00 (米) 1月 消費者信用残高 前月比 (12月 165.5億ドル、予想 170.0億ドル)

3/7(木)
09:30 (豪) 1月 貿易収支 (12月 36.81億豪ドル、予想 29.00億豪ドル)
09:30 (豪) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.3%)
14:00 (日) 1月 景気先行指数(CI)速報 (12月 97.5、予想 96.0)
19:00 (欧) 10-12月期GDP確定値 前期比 (改定値 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP確定値 前年同期比 (改定値 1.2%、予想 1.2%)
21:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、定例記者会見
22:30 (米) 10-12月期非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 2.3%、予想 1.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.5万件、予想 22.5万件)
26:15 (米) ブレイナードFRB理事、講演
29:00 (米) 1月 消費者信用残高 前月比 (12月 165.5億ドル、予想 170.0億ドル)

3/8(金)
未 定 (中) 2月 貿易収支・米ドル (1月 391.6億ドル、予想 271.5億ドル)
未 定 (中) 2月 貿易収支・人民元 (12月 2711.6億元、予想 1220.0億元)
06:45 (NZ) 10-12月期製造業売上高 前期比 (前期 2.0%)
08:50 (日) 10-12月期GDP改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.4%)
08:50 (日) 10-12月期GDP改定値 年率換算 (速報 1.4%、予想 1.7%)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調前 (12月 4528億円、予想 1610億円)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調済 (12月 1兆5623億円、予想 1兆3749億円)
08:50 (日) 1月 貿易収支 (12月 2162億円、予想 -1兆1524億円)

11:00 (米) パウエルFRB議長、講演
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 -1.6%、予想 0.5%)
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前年同月比 (12月 -7.0%、予想 -3.1%)
22:30 (米) 2月 雇用統計・非農業部門就業者数 前月比(1月 30.4万人、予想 18.5万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 4.0%、予想 3.9%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.1%、予想 0.3%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 3.2%、予想 3.3%)

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