ドル円年始からの戻り一巡か見定め
【概況】
1月3日の暴落から出直りに入り、1月後半への戻りでは110円を超えられなかったところまでは暴落に対する自律的なリバウンドの範囲だったが、2月4日深夜への上昇で110円に到達、1月3日からの上昇は二段上げ型に発展した。1月25日から31日までは米連銀の追加利上げ棚上げ姿勢への転換を織り込んでのドル安円高だったが、2月1日の米雇用統計をきっかけにそれまでの流れを材料消化としてドル円は一段高に入った。
米連銀の利上げ棚上げによるドル安効果をいったん消化した後で、ユーロ安やポンド安、さらに豪ドルやNZドルが相次いで下落したことによりドルが相対的に押し上げられた。欧州の経済指標が総じて弱く、ブレクジットの混乱も続き、豪中銀が利下げの可能性を示唆し、NZの四半期失業率が予想外の大幅悪化となったこと等が重なったことでドル指数は31日から9連騰し、14日へさらに高値を更新した。
ドル円は2月4日高値で110円に到達した後は11日の日中まで109円台後半での持ち合いにとどまっていたが、ドル指数による押し上げ効果とクロス円での円高が均衡したこと、米中関係等のリスク問題への意識から一段高へ進むのを躊躇していたが、2月11日に欧州圏成長率見通しが大幅に下方修正されたことや英GDPの鈍化等によるユーロ安やポンド安によるドル指数が一段高したことでドル円も押し上げられ、2月14日には111.12円まで高値を切り上げた。
2月11日までの持ち合い幅の倍返しなら110.77円、1月31日から2月4日深夜への上昇幅並みなら111.18円が当面する上値目途だったが、ほぼこれらを実現した。
しかし2月14日夜に失速した。14日夜の米小売統計が予想以上に悪かったことでドル高にブレーキがかかったことがきっかけだったが、15日昼には110.25円の安値を付けて14日高値からの下げ幅は0.87円まで拡大した。15日夜には110.64円まで戻したが110.50円以上を維持できずに直前の下落に対する半値戻しに届かない程度にとどまって週を終えた。
【米中問題解決は円安か円高か】
2月15日には米中通商協議において習近平主席も加わった閣僚級協議が行われたが、19日からワシントンで閣僚級協議を継続することが決まった。またトランプ大統領は協議が順調に進んでいるとして3月1日の交渉期限延長の可能性を示唆した。このため米中協議進展への期待感から株高となる一方、リスクオン心理が回復してユーロやポンドが買い戻されてドル安となり、ドル円も15日昼からやや戻したもののクロス円での円安よりもドルストレートでのドル安が勝ったためにドル円の戻りは限定的なものにとどまった。
仮に米中協議が合意へ進み、米国の対中関税発動期限が延期され、米中首脳会談実現の運びとなれば金融市場全般がリスクオン心理優先となり、投機通貨買いによりドル安が進む可能性がある。しかしクロス円での円安がドルストレートでのドル安に勝ればドル高円安へ進む可能性もある。リスクオンに株高が加われば株高円安のセット効果でドル円が上昇というケースも考えておく必要があるわけだ。
現時点では楽観が勝っている米中協議だが、結局のところ決裂するか、中国及び世界景気を後退させかねない中国不利な合意に留まる場合はリセッションへの懸念が噴き出す可能性もある。その際はリスクオフでドルストレートでのドル高が進む一方でそれ以上にクロス円での円高が進行し、株安円高のセット効果でドル円も下落が加速することも考えられる。このように米中問題は株式市場動向とも絡んで円高にも円安にもなりうる。その時にユーロやポンド、資源通貨等がそれら自身の要因で下落する場合には円高感が勝る組み合わせになりやすい。市場はこの問題で一喜一憂し、1月後半からはやや楽観的な見方を優先してきたが、市場の気分も変わりやすい。
【年初暴落の安値から6.30円上昇】
ドル円は1月2日から3日にかけての2日間で5円以上の大暴落を発生させた。1月3日の下げ幅を取り戻すのに2週間、2日間の暴落を取り戻すのに1か月を要した。ようやく不安心理が後退して111円まで回復したとはいえ、諸情勢は常に変化する。年初暴落の記憶もトラウマとして残っている。
昨年3月26日底からの上昇途中においても2か月で6.75円の上昇後に5月21日高値から3.27円の下落を発生させた。その2か月後には5.04円の上昇後に7月19日から3.38円の下落となった。8月21日安値から1か月半の上昇で10月4日で天井を付けたが、10月26日へ3.17円安の下落を発生させて三角持ち合いを警戒し、最終的には年末年始暴落へと発展した。
今年1月3日からの上昇は1か月半を超えて上昇幅も6.30円となったが、昨年5月21日への上昇規模を実現している。すでに戻りが一巡したとしても不思議ない水準には到達しているということも念頭に入れておきたい。
【当面のポイント】
(1)2月15日の下落により1月31日安値と2月9日安値を結んだ上昇トレンドからは転落している。1月31日から二段上昇だったが、二段目上昇の起点となった2月6日安値109.53円はまだ割り込んではいない。このため109.53円割れに至らないうちは一時的に110円を割り込んでも回復すれば三段目の上昇へ進み、年初来高値を更新する可能性がある。現状から110.75円を超えてくれば上昇再開の可能性が高まるので2月14日高値111.12円試しとし、さらに高値更新からは111円台後半への上昇も想定される。
(2)2月14日高値を上抜く場合、昨年10月からの下げ幅に対する3分の2戻し111.30円、昨年10月26日安値111.37円等のある111.30円台が上値目途と考えられる。111.30円台を超える場合は111.50円から112円手前への上昇とみるが、昨年5月21日からの下落発生の前例も踏まえて111.30円以上は反落警戒圏と考える。
(3)109.53円を割り込む場合は26日移動平均割れとも重なり、1月31日からの底上げパターンが崩れるので1月31日安値108.50円試しへ向かうとみる。108.50円前後は買い戻されやすいとみるが、108.50円割れの場合は1月3日からの底上げパターンが崩れるため戻り一巡による下落期入りが考えられる。
(4)108.50円割れの場合、概ね3か月周期の底打ちサイクル(2か月強から3か月強のレンジで推移中)による次の安値形成期となる3月前半から4月序盤にかけての間まで下落基調が続きやすいと考える。(了)<17日9:50執筆>
【当面の主な予定】
2/18(月)
休 場 (米) 大統領の日(ワシントン誕生日
休 場 (加) 家族の日
08:50 (日) 12月 機械受注 前月比 (11月 0.0%、予想 -1.1%)
08:50 (日) 12月 機械受注 前年同月比 (11月 0.8%、予想 4.8%)
2/19(火)
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨
18:00 (欧) 12月 経常収支・季調済 (11月 203億ユーロ)
18:00 (欧) 12月 経常収支・季調前 (11月 232億ユーロ)
18:30 (英) 12月 失業率・ILO方式 (11月 4.0%、予想 4.0%)
19:00 (独) 2月 ZEW景況期待指数 (1月 -15.0、予想 -13.0)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数(1月 58、予想 59)
2/20(水)
06:45 (NZ) 10-12月期生産者物価指数 前期比 (前期 1.5%)
08:50 (日) 1月 通関ベース貿易収支・季調前 (12月 -553億円、予想 -1兆295億円)
08:50 (日) 1月 通関ベース貿易収支・季調済 (12月 -1836億円、予想 1711億円)
16:00 (独) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 -0.4%、予想 -0.2%)
24:00 (欧) 2月 消費者信頼感 (1月 -7.9、予想 -7.7)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
2/21(木)
ロシア・イスラエル首脳会談(モスクワ)
09:30 (豪) 1月 新規雇用者数 (12月 2.16万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 1月 失業率 (12月 5.0%、予想 5.0%)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.8%、予想 -0.8%)
16:00 (独) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%、予想 1.4%)
17:30 (独) 2月 製造業PMI (1月 49.7、予想 50.0)
17:30 (独) 2月 サービス業PMI (1月 53.0、予想 52.9)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI(1月 50.5、予想 50.3)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI (1月 51.2、予想 51.3)
21:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 23.9万件、予想 22.9万件)
22:30 (米) 2月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (1月 17.0、予想 14.3)
22:30 (米) 12月 耐久財受注 前月比 (11月 0.7%、予想 1.7%)
22:30 (米) 12月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (11月 -0.4%、予想 0.3%)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (12月 499万件、予想 500万件)
24:00 (米) 1月 景気先行指数 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.2%)
2/22(金)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数 前年同月比 (12月 0.3%、予想 0.2%)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (12月 0.7%、予想 0.8%)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (12月 0.3%、予想 0.4%)
16:00 (独) 10-12月期GDP改定値 前期比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
16:00 (独) 10-12月期GDP季調前改定値 前年同期比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
18:00 (独) 2月 IFO景況指数 (1月 99.1、予想 99.0)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%、予想 1.4%)
24:30 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁発言
オーダー/ポジション状況
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