ドル円見通し110円の壁3度挑戦で超えず(週報1月第4週)

1月25日までNYダウは戻り高値を切り上げたもののドル円は110円の壁を超えられなかった。

ドル円見通し110円の壁3度挑戦で超えず(週報1月第4週)

ドル円見通し110円の壁3度挑戦で超えず

【概況・ポイント】

1月3日の暴落一巡で1月8日高値109.08円まで戻した後は1月16日まで概ね108円台での横ばいの推移だったが、17日に戻り高値を切り上げ、19日未明に109.88円、さらに23日深夜には109.99円をつけたが110円台へ乗せきれなかった。1月25日夜も109.94円を付けたものの110円乗せには至らずに109.50円前後まで失速して週を終えた。
ドル円上昇のためには金融市場全般のリスクオン心理拡大、特に株高が重要だ。日米株は12月26日に当面の底を付けて反騰入りとなり、年明けからの続伸したことでドル円の反発を後押ししてきた。しかし1月25日までNYダウは戻り高値を切り上げたもののドル円は110円の壁を超えられなかった。

1月3日安値104.82円から1月23日高値109.99円までの戻り幅は5.17円と大きいが、1月3日の暴落が数時間の急落と反騰だったため、当日の日足の下ヒゲ部分を捨象すれば当日終値の107.51円からは2.48円程度戻しているに過ぎない。10月4日天井からの下落当初に11月12日まで戻したところが2.83円、2017年11月6日天井に対する12月12日の戻り高値への戻り幅が2.90円であり、今回も今のところはそれらと同様の戻り幅の範囲にある。

【110円乗せを阻むネガティブ要素】

その1、米連銀の金融引き締め姿勢の鈍化
ドル円を押し上げるためには日米長期金利差の拡大も必要だが、米長期債利回りは年末まで下落した後は1月21日まで戻したものの、その後は伸びを欠いた。1月29日−30日に米FOMCが開催されるが、そこでの利上げ姿勢鈍化や米連銀の資産圧縮ペースの鈍化ないしは早期終了観測が出ていることが長期債利回り上昇を抑えている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は25日に「米連銀はリーマンショック対策による量的緩和で買い入れた米国債等の保有資産圧縮を早期に切り上げることを検討している」旨を報じた。昨年12月のFOMCではパウエル議長が「変更するつもりはない」と述べて市場を失望させた経緯があるが、年明けの議長発言では柔軟に見直す姿勢も示している。量的緩和では総額4兆5000億ドルを保有したが現在は毎月500億ドルずつ圧縮(売却)し、現在は4兆ドルにまで縮小している。

その2、米中貿易戦争問題
米中貿易戦争問題では1月30日から31日までワシントンにおいて閣僚級協議が開催される。株式市場動向をみる限りでは市場は楽観的に受け止めている印象だが、10−12月期の中国GDPの伸び鈍化等の中国景気指標の悪化したこと、24日にはロス米商務長官が対中貿易問題は「解決まで程遠い」と発言したこと、また日米通商協議も2月から始まることも意識されてドル円においては株式市場程の楽観的な上昇要因になっていないようだ。

その3、国内経済統計への不信
国内景気への楽観度も落ちている。政府統計の改ざん問題が拡大する中で日本の経済統計そのものへの信頼度が落ちているため、アベノミクスから始まった景気拡大期待が大きく後退していることもドル円の積極的な浮上を妨げている印象がある。1月24日には日銀金融政策決定会合があったが予想通りの政策現状維持と物価及び成長見通しの下方修正がなされ、政府・日銀の手詰まり感が印象つけられている。

その4、トランプ政権の先行き不安
1月24日にはトランプ大統領の盟友で先の大統領選挙で選対顧問を務めたロジャー・ストーン氏が起訴され、25日には逮捕された。任期の半分を経過して連邦政府機関一部閉鎖の最長記録を更新する等迷走中のトランプ政権に対する先行き不安も強まった。
閉鎖が続いた米連邦政府機関を3週間再開させる暫定予算が1月25日に米上下院で可決され、トランプ大統領も署名した。国境の壁予算が含まれていないため暫定予算終了後についての米政権と議会との交渉は続くが、トランプ大統領は「力強い壁を造る以外に選択肢はない」として合意できなければ「非常事態を宣言する」とも述べている。
1月25日のNYダウは上昇しておりこれらの問題への反応は限定的だったが、これらの問題をドル安要因として為替市場では前日まで下落が続いてきたユーロが反騰するなどドルが全面安となった。メジャー通貨の加重平均であるドル指数は1月10日から上昇してきたが25日の下落で直前6日分の値幅を解消している。また裏ドルともいわれる安全資産のゴールドが昨年6月以来となる1300ドル台へと急伸している。

【中勢判断】

概ね3か月前後の底打ちサイクルでは、昨年3月底以降はやや短めに2か月から3月の幅で底打ちを繰り返している。1月3日安値でこのサイクルの底をつけて戻してきたが、前回のサイクルトップである11月12日高値からはすでに2か月を経過しているので日柄的には戻り一巡となっても不思議ないところだが、1月末から2月前半にかけての間へ戻り基調を継続する可能性も残る。
1月10日安値107.74円、14日安値107.98円、23日安値109.13円と底上げしてきた流れを維持するうちはサイクルの上昇期の継続と考えられるが、この底上げパターンが崩れるところ=1月23日未明安値109.13円を割り込む場合は弱気転換注意と考えられる。さらに1月3日終値からの戻り幅の半値を削るところ=108.75円割れからは下げ再開の可能性が高まるところと考えられる。

ドル円見通し110円の壁3度挑戦で超えず

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月23日未明安値109.13円及び108.75円を下値支持線、110円を上値抵抗線とみておく。
(2)109.13円を割り込まないか、一時的に割り込んでも109.50円以上へ切り返す場合は上昇基調の継続性ありとみる。110円超えの場合は10月4日高値からのた三角持ち合いの起点となる安値だった10月26日安値111.37円を目指すとみる。月末月初の重要イベントを強気で通過してゆく場合には三角持ち合い終点の安値だった12月6日安値112.24円まで上値目途が切り上がる可能性も検討される。
(3)109.13円割れを弱気転換注意とし、さらに108.75円割れからは3か月サイクルの戻り一巡による下落期入りの可能性を優先して1月3日暴落時の終値107.51円前後試しへ向かうとみる。月末月初の重要イベントをかなり悲観的に通過する場合は1月3日並みの暴落再現不安も発生しかねないと注意する。(了)<27日21:50執筆>

【当面の主な予定】

1/28(月)
休 場 (豪) 建国記念日
08:50 (日) 12月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (11月 1.2%、予想 1.2%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
23:00 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、講演
23:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、講演

1/29(火)
未 定 (米) EU離脱代案の議会審議と採決
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
06:45 (NZ) 12月 貿易収支 (11月 -8.61億NZドル、予想 2.25億NZドル)
09:30 (豪) 12月 NAB企業景況感指数 (11月 11)
23:00 (米) 11月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (10月 5.0%、予想 4.9%)
24:00 (米) 1月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (12月 128.1、予想 124.6)

1/30(水)
08:50 (日) 12月 小売業販売額 前年同月比 (11月 1.4%、予想 0.8%)
09:30 (豪) 10-12月期消費者物価 前期比 (前期 0.4%、予想 0.4%)
09:30 (豪) 10-12月期消費者物価 前年同期比 (前期 1.9%、予想 1.7%)
16:00 (独) 2月 GFK消費者信頼感 (1月 10.4、予想 10.3)
19:00 (欧) 1月 経済信頼感 (12月 107.3、予想 106.9)
19:00 (欧) 1月 消費者信頼感確報値 (速報 -7.9、予想 -7.9)

22:00 (独) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.1%、予想 -0.8%)
22:00 (独) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 1.7%、予想 1.6%)
22:15 (米) 1月 ADP非農業部門雇用者数 前月比 (12月 27.1万人、予想 18.0万人)
22:30 (米) 10-12月期GDP速報値 前期比年率 (前期 3.4%、予想 2.6%)
22:30 (米) 10-12月期GDP個人消費 前期比 (前期 3.5%、予想 3.9%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前月比 (11月 -0.7%、予想 0.5%)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 2.25-2.50%、予想 2.25-2.50%)
28:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

1/31(木)
08:50 (日) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -1.0%、予想 -0.5%)
08:50 (日) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 1.5%、予想 -2.3%)
09:01 (英) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -14、予想 -13)
09:30 (豪) 10-12月期輸入物価指数 前期比 (前期 1.9%、予想 0.3%)
10:00 (中) 1月 国家統計局製造業PMI (12月 49.4、予想 49.3)
14:00 (日) 12月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (11月 -0.6%、予想 2.0%)
17:55 (独) 1月 失業率 (12月 5.0%、予想 5.0%)

19:00 (欧) 12月 失業率 (11月 7.9%、予想 7.9%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 1.6%、予想 1.2%)
22:30 (米) 12月 個人所得 前月比 (11月 0.2%、予想 0.5%)
22:30 (米) 12月 個人消費(PCE) 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 PCEデフレーター 前年同月比 (11月 1.8%、予想 1.7%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前月比 (11月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (11月 1.9%、予想 1.9%)
22:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 19.9万件、予想 21.1万件)
23:45 (米) 1月 シカゴPMI (12月 65.4、予想 60.0)

2/1(金)
08:30 (日) 12月 失業率 (11月 2.5%、予想 2.5%)
09:30 (豪) 10-12月期生産者物価指数 前期比 (前期 0.8%)
09:30 (豪) 10-12月期生産者物価指数 前年同期比 (前期 2.1%)
10:45 (中) 1月 財新製造業PMI (12月 49.7、予想 49.7)
17:55 (独) 1月 製造業PMI改定値 (速報 49.9、予想 49.9)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI改定値 (速報 50.5、予想 50.5)
18:30 (英) 1月 製造業PMI (12月 54.2、予想 53.5)
19:00 (欧) 1月 消費者物価・HICP速報値 前年同月比 (12月 1.6%、予想 1.4%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価・HICPコア指数速報値 前年同月比 (12月 1.0%、予想 1.0%)

22:30 (米) 1月 非農業部門就業者数 前月比 (12月 31.2万人、予想 16.0万人)
22:30 (米) 1月 失業率 (12月 3.9%、予想 3.9%)
22:30 (米) 1月 平均時給 前月比 (12月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 1月 平均時給 前年同月比 (12月 3.2%、予想 3.2%)
24:00 (米) 1月 ISM製造業景況指数 (12月 54.1、予想 54.3)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 90.7、予想 90.7)

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