ドル円 年初暴落を12日間かけて解消(週報1月第3週)

ブルームバーグ通信は18日、中国政府が対米黒字を2024年までに解消する案を示したと報じた。また米国側は中国に目標の前倒しを求める意見が出ているとした。

ドル円 年初暴落を12日間かけて解消(週報1月第3週)

【概況】

10月6日高値から12月13日までの間を高値切り下がりの三角持ち合いを形成していたが株安の深刻化と米長期債利回り低下を背景に三角持ち合いを支えてきた104日移動平均を割り込んで下放れ、年末年始へ大幅続落して1月3日午前には104.63円まで暴落的に下げた。2018年3月26日安値104.63円に迫ったが年初の薄商いの中で新たな材料によらない暴落だったために早々に買い戻されて1月3日は長い下ヒゲ=タクリ足となった。
暴落直後のリバウンドからジリ高で戻り高値を試して1月8日には109.08円を付けたが109円台を維持できずに10日には107.74円まで下げた。108円割れを買い戻されて16日までは1月8日から10日までのレンジ内推移が続いたが、12月26日を底としたNYダウや日経平均の反騰が続いたことにより17日未明には109.18円を付けて戻り高値を更新、さらに18日は109円台中盤へ乗せ、19日未明には109.88円まで戻り高値を切り上げた。

昇が続いたためにドル円においてももう少し積極的に戻り高値を試してよいのではないかとの市場心理の改善が見られたためと思われる。

【株の反騰継続と米中通商協議】

NYダウは10月3日天井から暴落に入り、12月26日に21712.53ドルの安値まで下げたが、その後は年末年始と二段戻しで上昇、1月4日の746.94ドル高を起点として5連騰、11日から14日まで上げ渋ったが15日から18日まで4連騰している。暴落に対する下げ過ぎからの自律的反発に加え、米中協議進展への期待、株暴落後に米連銀のパウエル議長等の発言が利上げ継続姿勢を年末時点よりも鈍化したものになってきたことが株高の背景といえる。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙は17日に「ムニューシン米財務長官が中国の輸入品に課されている関税の一部または全部を撤廃することを協議している」と報道した。財務省報道官は直後に「中国との交渉は継続中で完了には程遠い」と述べて報道内容を否定したが、市場は何等かの進展があるのではないかと株高反応を見せた。

ブルームバーグ通信は18日、中国政府が対米黒字を2024年までに解消する案を示したと報じた。また米国側は中国に目標の前倒しを求める意見が出ているとした。
米中通商協議の期限は3月1日。最近の統計では2018年の中国による対米黒字は3233億ドルで過去最高記録となっているが、米国側は昨年5月の通商協議で2020年までに2000億ドルの黒字を削減するように要求し、昨年6月序盤の劉副首相を交えた閣僚級協議では合意に至らずに人民元が対ドルで急落した経緯がある。

米トランプ政権としては米中協議で何等かの成果を上げてアピールしたいところだが、米国第一主義を掲げた貿易戦争には本腰を入れており、妥協的でも早く成果を上げたい柔軟派と強硬派が対立しているのだろう。報道ではムニューシン財務長官妥協はでライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が強硬派と言われている。
米中は1月30日かと31日にワシントンで閣僚級協議を開催する予定だが、昨年の決裂を繰り返すのか妥協的決着が見え始めるのか注目される。昨年6月は劉副首相出席の閣僚級協議が決裂したために米中貿易戦争全面化として人民元が暴落し為替市場では全般的にドル高となった経緯がある。

株高が継続ならリスク回避感の後退で米長期債が売られて米10年債利回り等が上昇する。米10年債利回りは1月3日に2.552%まで低下していたがその後は上昇基調で17日には2.788%まで戻している。日米長期金利差からはドル円の上昇要因となっている。
問題は株高が継続できるかどうかという点だ。NYダウは10月3日高値から12月26日まで5239ドル安だったが、この下げ幅に対する半値戻しが24331ドルで1月17日には到達している。また10月2日からは二段下げで12月26日へ下落したが、一段目の下落一服での安値が10月29日の24122ドルと11月23日安値24268ドルであり、それらをやや超えるところまで戻して二段目の下げを解消した。しかしここからさらに続伸してゆくには現状からの押し上げ材料が必要になってくると思われる。それは米中協議の進展についての信頼できる報道だろう。

【104円台から114円台でのボックス圏相場?】

1月3日の暴落で105円を割り込み、昨年3月底とほぼ同値まで下げたところから長い下ヒゲで反騰して暴落一服となり、当初の下げ一服持ち合いが落ち着き、戻り高値を試しに入っている。
2017年11月高値114.72円に対して2018年10月高値114.54円、2018年3月底114.63円に対して今年1月3日安値104.82円と、110円を中心にして114円台を抵抗、104円台後半を支持帯としたボックス相場という見方もできる。昨年10月から今年1月3日への下げ幅に対する半値戻しが109.68円であり、概ね109円台後半から心理的節目の110円がボックス圏の中心値といえる。

ボックス圏の中心値前後では戻り売り圧力も出てくると思われるが、仮に110円乗せ、維持へと進むようだと、ボックス圏上限へ戻して行くのではないかとの楽観論も出始めるかもしれない。
しかし、昨年10月からの三角持ち合い転落による下落はボックス圏での往来相場における下落というレベルではなく、より長期的にみれば2016年6月底から2年半の大三角持ち合いから転落し始めた相場であり、より厳しいレベルの下落期の到来を示している印象だ。ボックス型往来に見える相場が概ねその下半分のレンジ内に留まる程度なら、より上位の下落圧力が勝ってボックスから転落してゆきやすいと思われる。

【2か月から3か月周期のリバウンド】

【2か月から3か月周期のリバウンド】

昨年3月26日以降、中勢の底打ちは日足47本目の5月29日、61本目の8月21日、49本目の10月26日と2か月強から3か月の間隔で推移している。昨年10月底から今年1月3日までが日足50本であり、この周期で底を付けたと思われる。10月26日から1月3日までの間の高値は11月12日高値であり、そこからすでに2か月を経過しているので、この周期においてはいつピークを付けて下落期に入っても不思議ないところと思われる。仮に次ぎの下落期も手前の底から2か月強から3か月とすれば3月前半から4月序盤にかけての間が底形成期となり、ちょうど昨年3月26日底から1年目となるので、概ね1年周期の底を形成しやすい時間帯とも重なる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、110円を上値抵抗とし、109.50円から109.00円を支持帯とみておく。
(2)既に10月からの下げ幅の半値戻し109.68円を超えているので、現状から110円前後までのゾーンは高値警戒圏とみる。一時的に110円台前半へ乗せても維持できずに110円割れ、109.50円割れと下げるところからは下落再開を警戒する。
(3)109.50円割れからは弱気転換注意として109円試しを想定する。1月8日から10日への下げ幅が1.34円幅なので、今回も高値から1.34円幅、1.50円幅となるあたりは押し目買いされやすいとみるが、109円以下での推移が続き始める場合は1月3日からの二段戻し一巡による下落期入りの可能性を踏まえて週後半から月末にかけて108円前後まで下値目途を引き下げてゆく。(了)<20日22:00執筆>


【当面の主な予定】

1/21(月)
米国 休場、キング牧師誕生日
英メイ首相、EU離脱代替案提示
11:00 (中) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 8.1%、予想 8.2%)
11:00 (中) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 5.4%、予想 5.3%)
11:00 (中) 10-12月期GDP 前年同期比 (前期 6.5%、予想 6.4%)
11:00 (中) 10-12月期GDP 前期比 (前期 1.6%、予想 1.5%)
16:00 (独) 12月 生産者物価指数 前月比 (11月 0.1%、予想 -0.2%)

1/22(火)
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議) 1/25日まで、スイス・ダボス
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
18:30 (英) 11月 失業率・ILO方式 (10月 4.1%、予想 4.1%)
19:00 (独) 1月 ZEW景況感・期待指数 (12月 -17.5、予想 -18.5)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (11月 532万件、予想 523万件)

1/23(水)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未 定 (日) 日銀「経済・物価情勢の展望レポート」
06:45 (NZ) 10-12月期消費者物価 前期比 (前期 0.9%、予想 0.0%)
06:45 (NZ) 10-12月期消費者物価 前年同期比 (前期 1.9%、予想 1.8%)
08:50 (日) 12月 貿易統計・通関ベース、季調前 (11月 -7373億円、予想 -353億円)
08:50 (日) 12月 貿易統計・通関ベース、季調済 (11月 -4922億円、予想 -2907億円)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
23:00 (米) 11月 住宅価格指数 前月比 (10月 0.3%、予想 0.2%))
24:00 (米) 1月 リッチモンド連銀製造業指数 (12月 -8、予想 -2)
24:00 (欧) 1月 消費者信頼感 (12月 -6.2、予想 -6.5)

1/24(木)
09:30 (豪) 12月 新規雇用者数 (11月 3.70万人、予想 1.80万人)
09:30 (豪) 12月 失業率 (11月 5.1%、予想 5.1%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数(CI)改定値 (速報 99.3)
17:30 (独) 1月 製造業PMI (12月 51.5、予想 51.4)
17:30 (独) 1月 サービス業PMI (12月 51.8、予想 52.2)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI (12月 51.4、予想 51.3)
18:00 (欧) 1月 サービス業PMI (12月 51.2、予想 51.5)
21:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、定例記者会見
22:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 21.3万件、予想 21.5万件)
22:30 (米) 週間失業保険継続受給者数 (前週 173.7万人)
24:00 (米) 12月 景気先行指数 前月比 (11月 0.2%、予想 -0.1%)

1/25(金)
08:30 (日) 1月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (12月 0.9%、予想 0.9%)
18:00 (独) 1月 IFO企業景況指数 

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