ドル円見通し 米中首脳会談効果の円安鈍い(12/4)

米中の貿易戦争休戦は1月1日から90日間とされた。

ドル円見通し 米中首脳会談効果の円安鈍い(12/4)

【概況】

12月1日の米中首脳会談により両国間の貿易戦争については休戦、貿易戦争全面化・新たな冷戦突入はひとまず回避された。米国は年明けから実施するとしてきた対中追加関税の現行10%から25%への引き上げ、関税対象拡大は90日間の協議継続中は凍結され、中国側とは知的財産権侵害問題等を協議してゆくことが合意された。トランプ米大統領は「米中関係は大きな進展を遂げた」などとツイッターに投稿して成果を強調している。
ドル円は11月29日未明のパウエル米連銀議長講演内容が利上げの終点が近い事を意識させるものだったとしてドル全面安となった流れで急落、直前高値114.03円から29日夜安値113.19円まで下げた。その後はやや戻し気味で推移していたが、週明けは米中首脳会談成果を受けて続伸、朝には113.82円の高値をつけたのだが、その後は失速した。

株式市場は楽観ムードで日経平均は223.70円高と上昇して11月22日からの連騰を7日間と伸ばし、上海株も反騰、NYダウは週末の248.45ドル高からの続伸で287.97ドル高となった。この株高に対して通常ならばリスクオン心理の同調でドル円も上昇してよいところだと思われたが、為替市場は全般的にドル安反応で欧州通貨はまちまちの動きで方向感が強く示されなかった。ユーロは対ドルで早朝に上昇したが夜間でいったん失速して持ち合い。英ポンドは夕刻へ反騰したものの深夜の下落でこの間の安値を割り込む一段安となった。豪ドルは早朝から一段高したが夕刻からはやや失速したてその後は持合いとなった。ドル指数は若干下落したが大きな動きには至らなかった。

【株高とセットでの円安感が強まらず】

米中貿易戦争を始めとしてNAFTAの再交渉、EUや日本との通商協議という米国保護主義が全面化していた中では米国有利の通商戦争としてドル高基調となった。今回はそうした米国の強硬性がひとまず緩んだのだからドルが下落しても不思議ない。ただ、このドル安は11月以降の米長期金利低下によるものとも解釈される。
米30年債利回りは11月2日に3.46%をつけて2014年以来4年半ぶり高水準となったが、その後は失速して3.25%まで低下している。米10年債利回りも11月8日に3.23%の高値をつけた後は下落基調で12月3日は3%割れとなる2.966%まで低下している。米長期債利回り低下に併せて独、英、加、豪等の長期債利回りも低下しており、全般的な債券高・長期金利低下傾向になっていることがクロス円及びドル円の上値を抑える状況を作っている。これが楽観的な株高にかならずしも歩調を合わせてドル円が上昇できていないことの背景かもしれない。

NYダウは11月23日での下落では10月29日安値割れを回避して反騰している。日経平均も10月26日安値割れを回避して反騰し、11月8日高値を超えてダブル底形成による上昇入りという可能性も出てきている。株高のリスクオン心理がドル円を支えるとしても、米中貿易戦争による世界景気への悪影響や株安への不安感が後退するということは米連銀の利上げ継続への慎重姿勢にも影響を及ぼし、かえって利上げに積極的になるのではないかという見方も出てくる。
米中の貿易戦争休戦は1月1日から90日間とされた。その間で合意に達すれば株高基調もさらに続いてドル円もリスクオン心理有利による円安ドル高へ進む可能性も考えられるが、12月3日の市場反応を見る限りはそう単純化できないのかもしれないという印象が残った。年明けからは日米の通商協議も厳しく展開し始める。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月29日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて強気サイクルに入った。今回の高値形成期は29日未明高値を基準として12月3日夜から6日未明までの間と想定される。29日安値113.19円から3日安値113.35円へ安値を切り上げているので3日安値割れ回避の内は高値を試す余地ありとするが、3日安値を割り込むところからは弱気サイクル入り警戒として29日夜安値試しとし、さらに底割れからの弱気サイクル入りでは4日夜から6日深夜にかけての間への下落期に入る事が考えられる。

60分足の一目均衡表では遅行スパンと先行スパンが実線との交錯を繰り返しているので方向感に乏しい。3日朝高値超えからは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、先行スパンから転落の場合は3日安値試しとし、3日安値割れからは遅行スパン悪化中の安値試し優先としてゆく。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月3日安値113.35円を支持線、3日朝高値113.82円を抵抗線とみておく。
(2)12月3日安値割れ回避の内は113.82円超えから114円前後試しへ向かうとみるが、114円前後では戻り売りも出やすいとみる。ただし114.03円超えからは11月20日安値からの上昇が60分足レベルで三段上げへと発展するので10月4日高値114.54円試しへ向かう可能性が高まると留意しておく。
(3)12月3日安値割れからは戻り途中で下落再開に入った可能性を優先し、まず29日夜への下落並の下げ幅としてN計算値112.98円前後試しとし、さらに下落が加速する場合は3日朝高値までの戻り幅の倍返しでV計算値112.56円前後を試しにかかるとみる。(了)<9:45執筆>

【当面の主な予定】

12/4(火)
12:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現行 1.50%、予想 1.50%)
18:15 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁 発言
18:30 (南) 7-9月期 GDP・前期比年率 (前期 -0.7%、予想 2.0%)
18:30 (南) 7-9月期 GDP・前年同期比 (前期 0.4%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数・前月比 (9月 0.5%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数・前年同月比 (9月 4.5%、予想 4.5%)

12/5(水)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP・前期比 (前期 0.9%、予想 0.6%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP・前年同期比 (前期 3.4%、予想 3.3%)
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 50.8、予想 50.8)
17:55 (独) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 53.1、予想 53.1)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI (10月 52.2、予想 52.5)

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