ドル短期的にも長期的にも円高懸念が燻る(11月第3週)

先週のドル円を振り返ると最近はやや株価と乖離した動きとなってきたことに気づきます。

ドル短期的にも長期的にも円高懸念が燻る(11月第3週)

今週の週間見通し

先週のドル円を振り返ると最近はやや株価と乖離した動きとなってきたことに気づきます。日経平均株価は月曜に下げて以降は上下ともに安定したフラットチャンネルの中でのもみあいとなっていましたが、ドル円は木曜以降にもじりじりと水準を下げ、金曜には112円台半ばまで下押しする動きとなりました。ユーロが目先の安値から反転する動き、またポジション的に円売りポジションが高水準で続いていることから、週末を前にした調整の動きとも取れます。

しかし、中間選挙が終わりいよいよ本格化するであろう日米通商協議に向けて市場参加者の警戒感があることも間違いのないところです。もうひとつ気になった記事として、GPIF理事長による為替ヘッジの可能性が加わりました。以前からGPIFによる外債・外株投資に対する為替ヘッジの話はありましたが、金曜に「為替ヘッジの体制を整えた」との発言が同理事長から出てきました。

現状の安定した相場では動かないでしょうが、逆に円高の兆しが出てくるとヘッジのための外貨売りに出てくるリスクが高まります。GPIFだけではありませんが、機関投資家は流れに逆らったヘッジを行うことは稀で、通常流れが出始めた時にリスクヘッジのために円買いで市場に入ってきます。いまの円相場で考えるならば110円を割り込むような動きが出てきたら、逆にヘッジ売りに警戒が高まるといったイメージです。つまり、今は静観しているでしょうが、日米通商協議の行方か米国株の下げか、理由は何であれ円高の動きが出てきた時にはその動きを加速させる要因となり得る点に注意が必要ということになります。

日本の個人投資家の円売りポジションも高水準ですし、金曜には複数のFRB関係者が世界景気減速について言及しました。景気を測る材料のひとつに原油価格がありますが、NY原油も54.75ドルまで下落し月初から既に10ドル以上、10月高値からは20ドル以上の大幅な下落となっています。共有過多だけであればいいのですが、徐々に景気減速が進んでいるのだとしたら、米国主導の通商協議とともに気になる指標のひとつと言えるでしょう。

今週ですが、木曜は米国が感謝祭で休場、金曜は日本が休日で米国の取引所は短縮取引と実質的に週前半しかない一週間となりますし、徐々に街の景色と同様にクリスマスモードの年末相場へと移っていきます。材料はもちろんですが、市場参加者の減少により振れやすくなる面がありますので、そのあたりにも注意が必要でしょう。

目先の材料は明確なものがありませんので日足チャートをご覧ください。

現在のドル円は10月のレンジを基本レンジとして、10月高値と11月高値で変形ダブルトップをつけたチャートとなっています。落ち着きどころとしては10月レンジの半値にあたる112.96つまり113円水準となりますが、10月後半は下側、11月前半は上側、そして先週金曜に下側に戻ってきたという動きです。長期的にはダブルトップの形状から下値リスクの方が大きいと考えていますが、短期的には10月安値と11月高値の61.8%押し112.46を最初のターゲットに、78.6%(61.8%の平方根)押しの111.98までを視野に入れる可能性が高いと考えています。今週は112.00レベルをサポートに、113.25レベルをレジスタンスとする週を見ておこうと思います。

今週の週間見通し

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャート

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優12先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

11月19日(月)
06:45 NZ7〜9月期PPI
12:30 黒田日銀総裁講演
18:00 ユーロ圏9月経常収支
24:00 米国11月NAHB住宅市場指数
25:45 NY連銀総裁講演

11月20日(火)
09:30 豪中銀理事会(10月16日)議事要旨公表
16:00 ドイツ10月PPI
17:20 豪中銀総裁講演
22:30 米国10月住宅着工・建設許可件数

11月21日(水)
17:00 南ア10月CPI
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国10月耐久財受注
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感確報値
24:00 米国10月景気先行指数
24:00 米国10月中古住宅販売件数
24:30 週間原油在庫統計

11月22日(木)
**:** NY市場休場
08:30 本邦10月CPI
16:45 フランス11月企業景況感
**:** 南ア中銀政策金利発表
21:30 ECB理事会(10月25日)議事要旨公表
24:00 ユーロ圏11月消費者信頼感速報値
26:00 メルシュECB理事講演

11月23日(金)
**:** 東京市場休場
**:** NY市場短縮取引
16:00 ドイツ7〜9月期GDP改定値
17:15 フランス11月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ11月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏11月製造業・サービス業PMI速報値
21:00 デギンドスECB副総裁講演
23:45 米国11月製造業・サービス業PMI速報値

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

11月12日(月)
ドル円は東京市場では日経平均株価の買いが目立った動きに追随してリスクオンの動きが先行、後場には114.21レベルの高値をつけました。しかし、株価が反転し下げに転じる動きに続いてユーロが1.13の大台を割り込む動きからユーロ円でも急速に売りが進みその余波でドル円も下げる動きとなりました。その後も株価は下げ止まらずNY市場ではダウが600ドルを超える下げを演じたことからドル円も113.66レベルへと下値を広げた後にやや戻しての引けとなりました。

11月13日(火)
ドル円は東京前場こそ株安が影響してリスクオフの円買いが先行しましたが、その後株価が持ち直す動きとともに米中通商協議再開のヘッドラインからリスクオフの巻き返しで上昇しました。しかし高値は114.14止まりとなり直近の高値を超えられず、114円台前半での上値の重たさを改めて感じさせる動きとなりました。NY市場ではポンドがリードするユーロ高の動きから全般にドル売りの動きとなり、東京前場上げる前の水準へと押して引けました。

11月14日(水)
ドル円はNYの昼頃まで113.90を挟んで狭い値幅での膠着状態を続けていました。NYの昼前にダウに売りが入り週間安値を更新する動きに追随したリスクオフの動きからドル円も売りが入り、ストップオーダーも巻き込みながら一時113.30レベルの安値をつけました。引けにかけては多少の買い戻しも入り113.65レベルでの引けとなりました。

11月15日(木)
ドル円は前日NY後場に下げた影響から東京、欧州と上値の重たい展開を続けていました。NY市場に入りダウが再び下げる動きとともにドル円も一時113.10レベルまで水準を切り下げましたが、その後急反発しダウは日中高値を更新。ドル円も朝方の高値圏へと行って来いで引けました。

11月16日(金)
東京市場のドル円は一転下げに転じた日経平均株価を見ながらじり安の展開となり、113円台前半に押しての海外市場入り。ダウ先物も上値が重たい展開となり、NY市場に入るとドル円は前日安値を割り込みストップオーダーも巻き込みながら112円台半ばまで下押ししました。引けにかけてはダウが反転上昇する動きとともに日経先物も反発、ドル円も戻しは弱いものの下げ止まっての週末クローズとなりました。

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