ドル円見通し ダブルトップで終わるか?(11月第3週)

パウエル米連銀議長は現在の金融政策枠組みを来年再検証すると発表した。

ドル円見通し ダブルトップで終わるか?(11月第3週)

ドル円見通し ダブルトップで終わるか?

【米中貿易戦争問題、楽観と悲観の狭間】

トランプ米大統領は16日、ホワイトハウスで「中国は合意したがっているがまだ受け入れられない」「米国も合意したいが貿易は互恵的であるべきだ」「中国側の回答はかなり完成度の高いものだ」「習近平国家主席に敬意を表する」、中国から輸入する残る全ての製品への新たな制裁関税は「必要ないかもしれない」等と記者団の囲み取材に答えた。前日にはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が対中貿易制裁のさらなる措置を「既に保留にした」と述べたとの英フィナンシャル・タイムズ紙報道もあったため、月末のG20における米中首脳会談での協議進展を期待させるものとして16日の為替市場ではリスクオンのドル安反応が見られた。
しかし習近平国家主席は17日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)関連のCEOサミットで「米国は傲慢と偏見を減らすべきだ」と述べ、ペンス米副大統領は「中国が不公正な貿易慣行を是正するまで制裁関税を続ける」と述べて二人とも対立姿勢を堅持する姿勢を示した。このためこの問題に対する週明けの市場心理が週末時点とはズレてくる可能性もある。

【6月26日型押し目形成か、昨年12月型ダブルトップか】

10月26日安値から11月12日高値114.20円まで上昇してきたが、その後は失速して週末17日には112.64円の安値を付けた。この間の上昇幅は2.83円、下落幅は1.56円である。10月4日高値114.54円には届かずに下げたため、両高値でダブルトップを付けた可能性があるが、ダブルトップ完成から弱気転換となるのはダブルトップ候補の高値間にある10月26日安値111.37円を割り込む必要がある。
ダブル天井突破を目指して挫折し、その後は長期の下落期に入った前例は昨年11月6日天井の114.72円と12月12日高値113.74円の関係にみられるが、その時はダブルトップの間隔が数えで27日目、今回は10月4日から11月12日までが28日目で近い。今回は11月12日までのリバウンド率が99.7%、昨年12月は99.2%。当初は12月15日まで1.72円の反落を入れてからもう一度高値を試しているが、新たな戻り高値更新へ進めずにその後の安値更新から崩れた。

今回は11月17日までの下げ幅が1.56円だが、5月21日から5月29日まで3.27円の下落後に6月15日へ14日間で2.79円の上昇、その直後の調整安で8日目に1.53円の下落を入れてから切り返し、戻り高値更新に成功して7月19日天井まで一段高している。このため、現状はまだ6月26日への押し目形成時と同レベルの下げであり、同様に切り返して高値更新へ進み、11月12日高値超え、さらに10月4日高値突破という可能性も残されている。
週明けから週前半にかけて、11月16日の下落分を解消する113.62円以上へ上昇なら6月26日への押し目形成との類似性が高まるが、週前半に続落して12日からの下げ幅が2円を超えてくると押し目形成からの出直り期待が後退、10月26日安値試しへ向かい、ダブルトップ形成による下落期入り=円高ドル安期の本格化への警戒度が高まると思われる。

【ユーロ高は続くか?】

11月14日に英国とEUが離脱協定案に合意したと報じられてこの問題への市場の楽観が高まったところがメイ首相がこの合意案承認の閣議決定をする際にEU離脱担当相等複数閣僚が抗議して辞任、15日にはポンドが急落した。その後は後任人事等により落ち着いてポンドは続落回避し、ユーロドルも11月13日午前安値からの上昇を継続して16日夜には1.140ドルを超えた。これらはドル安要因となってドル円においても円高に作用した。しかし、11月17日に欧州委員会がイタリアの2019年予算に対して11月21日から「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」と呼ばれる制裁手続きに着手すると報じられた。イタリア政府は11月13日にEUへ予算案を再提出したが、10月時点でEU側から財政赤字見通しがEUルールに反するとして拒否された内容と変わらなかったために欧州委は21日にEDPを開始すると宣言することとなった。このまま進むと2019円1月のEU財務相会合でイタリアへの債務過剰状態が正式に宣言され、イタリア政府が3〜6カ月以内に是正措置を取らない場合は制裁が行われるという可能性がある。

英国のEU離脱問題は16日時点ではやや落ち着いているものの、今後に英国議会の承認が必要となるが政権混乱が収まらないとメイ首相への不信任や議会での否決、そして合意なきEU離脱状況の発生等の混乱へ進む懸念も残る。

【米連銀の2019年利上げ姿勢】

今週は米連銀当局者発言も注目された。
パウエル米連銀議長は現在の金融政策枠組みを来年再検証すると発表した。雇用最大化やインフレ率2%がほぼ達成されている状況を踏まえて金融政策姿勢やガイダンスのあり方などを再評価するために来年6月4日から5日に専門家会合を開催し、外部の意見も踏まえて報告書をまとめるとした。量的金融緩和策解消によるバランスシートの終着点、目標政策金利水準が景気への中立レベルに留まるのか引き締めレベルまで進めるのかについての市場の思惑や予想も強弱交錯してゆくことになる。
16日には米連銀のクラリダ副議長が「政策金利が中立水準に到達した時点で利上げを停止すべき」との見解をインタビューで示し、ダラス連銀のカプラン総裁は「世界経済に若干の逆風が吹き始める見通し」として早期の利上げ打ち止め姿勢を示した。逆にシカゴ連銀のエバンズ総裁は「現在(2.0〜2.25%)からあと4回程度の利上げを支持する」として中立よりも金融引き締め領域に入ることが妥当との姿勢を示している。次回のFOMCは12月18−19日。11月30日未明には前回会合の議事録要旨公開がある。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

巻頭に記したように、現状は10月4日高値と11月12日高値をダブルトップとして弱気転換してゆくのか、ここを10月26日底からの上昇波動における調整的な押し目の範囲として切り返してゆくのかの重要な岐路にある。

(1)11月16日は当日の騰落レンジが1円近い陰線となっているので、まずその中心値113.13円を超えるか、下回るのかどうかを試す。113.13円以上を維持し始める場合は16日の陰線をクリアする113.62円超えまで進めるのかどうかが試され、クリアできれば6月26日の押し目形成と同様に今回も押し目形成として上昇再開へ向かい、11月12日高値及び10月4日高値突破に再挑戦する流れへ向かう可能性が出てくる。ただし、16日の陰線をクリアしても11月12日高値超えへ進めなければダブルトップ形成による下落期入りの可能性を引きずると思われる。
(2)113.13円以下での推移中は下向きとし、17日未明安値112.64円を割り込んで続落の場合はダブルトップ形成からの下落期に入る可能性を優先して10月26日安値111.37円試しを想定する。112円割れからは押し目のレベルを超えてくるために、ダブルトップからの下落感がかなり高まると思われる。10月26日安値を割り込む場合は110円台後半まで一挙に下値目途が切り下がる可能性ありと注意し、先行きは11月末には8月21日底109.77円を目指すと考える。(了)<18日20:45執筆>

【当面の主な予定】

11/19(月)
休場 メキシコ
06:45 (NZ) 7-9月期 生産者物価指数 前期比 (前期 0.9%)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関ベース (9月 1396億円、予想 -700億円)
12:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、ユーロプラスで講演
18:00 (欧) 9月 経常収支 (8月 239億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前月比 (8月 -0.5%、
19:00 (欧) 9月 建設支出 前年同月比 (8月 2.5%、
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 68、予想 67)

11/20(火)
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
16:00 (独) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.5%、予想 0.3%)
17:20 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
19:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁 財務委員会で議会証言
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算件数 (9月 120.1万件、予想 123.0万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工許可件数・年率換算件数 (9月 124.1万件、予想 126.0万件)

11/21(水)
ECB理事会 金融政策発表無し
OECD(経済協力開発機構)経済見通し発表
13:30 (日) 9月 全産業活動指数 前月比 (8月 0.5%、予想 -0.9%)
22:30 (米) 10月 耐久財受注 前月比 (9月 0.8%、予想 -2.5%)
22:30 (米) 10月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (9月 0.1%、予想 0.4%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.6万件、予想 21.5万件)
24:00 (米) 10月 景気先行指数 前月比 (9月 0.5%、予想 0.1%)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 98.3、予想 98.3)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (9月 515万件、予想 520万件)

11/22(木)
休場 米国 感謝祭(外為、債券、株式、商品休場)
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行 政策金利 (現行 6.50%、予想 6.75%)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価指数 前年同月比 (9月 1.2%、予想 1.4%)
08:30 (日) 10月 全国消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 1.0%、予想 1.0%)
21:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
24:00 (欧) 11月 消費者信頼感・速報値 (10月 -2.7、予想 -3.0)
26:00 (欧) メルシュECB理事、講演

11/23(金)
休場 日本
16:00 (独) 7-9月期GDP、改定値 前期比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (独) 7-9月期GDP、改定値 前年同期比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
17:30 (独) 11月 製造業PMI、速報値 (10月 52.2、予想 52.2)
17:30 (独) 11月 サービス業PMI、速報値 (10月 54.7、予想 54.5)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI、速報値 (10月 52.0、予想 52.0)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI、速報値 (10月 53.7、予想 53.6)
21:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演

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