ドル円見通し 26日移動平均戻し(11月第1週)

米商務省が11月2日に発表した10月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比25万人増となり市場予想の19万人増を上回った。

ドル円見通し 26日移動平均戻し(11月第1週)

ドル円見通し 104日移動平均下げ後、26日移動平均戻し

【概況】

株安懸念を背景にドル円は10月4日から26日夜まで下落してきた。10月2日に日経平均が1月高値及びバブル崩壊後の最高値を更新してから下落に転じ、10月3日にNYダウも1月天井を超えて史上最高値を更新したがその後の失速で世界連鎖株安を発生させた。その過程でドル円は10月4日高値114.54円で当面の天井をつけて下落に入り、10月15日からは下げ渋っていたものの10月26日には株安を背景に111.37円まで落して15日安値を割り込んだために3月26日底と8月21日安値を結んだ上昇トレンドから転落し、10月4日からの下落も二段下げ型となったが、10月26日深夜からのNYダウ反騰に同調して26日の日足は下ヒゲをつけて続落を踏みとどまった。3月26日と8月21日の安値を結んだ下値支持線をザラバでは割り込んだが終値ベースでは回復し、この安値は土俵における「徳俵」で残った状況だった。

10月29日から31日にかけては日米中の株反発を背景にリスクオン心理が勝ってドル円は上昇して10月31日には113.38円まで戻した。
3連騰に対する高値警戒感と週末の米雇用統計を控えたポジション調整もあって11月1日、2日午前にかけては下落したが112.50円割れを回避、2日夜の米雇用統計が良好だったことから米連銀の12月の利上げ確率が上昇、米長期債利回りが上昇してドル円も日米金利差を踏まえて113.31円への上昇して31日深夜高値に迫った。

【米雇用統計良好、米連銀利上げ継続を意識】

米商務省が11月2日に発表した10月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比25万人増となり市場予想の19万人増を上回った。また物価上昇の先行指標とされる平均時給伸び率も前年同月比で3.1%増となり9年半ぶりの伸び率となった。失業率は3.7%、半世紀ぶりの低水準を維持した。このため米連銀による12月会合での利上げ確率が上昇したと市場は受け止め、米10年債利回りは前日比0.08%上昇して3.21%となった。30年債利回りも0.07%上昇して3.45%となった。一方でNYダウが米長期金利上昇を警戒して4日ぶりに反落、109.91ドル安となり、ナスダック総合株価指数も77.07ポイント安と下げた。

米10年債利回りはまだ10月19日高値を超えていないが、米30年債利回りは10月9日高値を突破して2014年1月以来の高水準となった。NYダウが10月3日から急落して世界連鎖株安を発生させたのは10月9日への米10年債、30年債利回りが急伸したことがきっかけだった。米長期金利上昇は日米長期金利差からはドル高円安要因だが、株安を発生させる場合はリスク回避による円高が長期金利差によるドル高に勝って株安同調の円高を発生させるというのが10月4日からのドル安円高で経験している。
米雇用統計発表による米株下落は直前3日間の連騰に対する調整安レベルだが、週明け以降へ米長期金利上昇と株安継続という流れになる場合は10月4日からの円高ドル安を再現する可能性があると注意する。そこまで株安が深刻化しなければ米長期金利上昇によるドル高円安を継続できるかもしれないが、そのあたりの市場心理を見定める必要がある。

11月7日から8日に米連銀FOMCがあり、9日未明には金融政策発表が控えている。議長会見のない会合であり、利上げペースは概ね四半期毎のため今回のFOMCは現状維持と予想されるが、12月会合での利上げ姿勢を強める声明文の場合はドル高要因となりやすい。ただしそのドル高が株安を招く場合にはドルストレートでのドル高の一方でクロス円での円高を招き、ドル円ではドル安円高となりうる点にも注意がいる。

【当面のテクニカルポイント】

【当面のテクニカルポイント】

(1)10月26日への下落は10月4日からの下げ幅が3.17円、104日移動平均で止まった。5月21日高値から5月29日への下落幅は3.27円、7月19日高値から8月21日への下落幅は3.38円でいずれも104日移動平均に到達して底打ちした。それら前例の反騰入りは6月1日の0.72円高の陽線、8月23日の0.71円高の陽線であり、今回は10月30日に0.76円高の陽線をつけて反騰しており、状況は前例の上昇再開時に類似している。
(2)10月26日への下落では日足の下ヒゲ部分で3月26日安値と8月21日安値を結んだ上昇トレンドの支持線を割り込んだが翌日以降の反発で支持線以上へ回復している。
(3)当初の反発で26日移動平均まで戻したところでは前2例も反落を入れているがその後に戻り高値を切り上げるところから上昇が本格化している。今回も31日への上昇で26日移動平均を超えてから調整安を入れている。

(4)これらの状況は今回も10月4日からの下落を調整レベルとして消化し、上昇再開へ進む可能性を示しているが、そのためには31日高値を超えて続伸する必要がある。31日高値を超えて続伸に入れば類似性は高まるが、31日高値を超えずに反落する場合、ないしはわずかに高値を更新しても112.50円を割り込む下落となる場合は前2例との類似性が薄まる可能性がある。

(5)概ね10か月から1年周期のサイクルで天井・大底を形成している。昨年11月6日が前回天井であり、11か月目の10月4日高値で天井を付けた可能性があるが、まだ11月中ないしは12月にかけて天井形成へ高値を更新する可能性も残している。114円台到達での10月4日からの反落は、昨年5月や7月及び11月高値が114円台を壁として失速していることから10月4日で天井を付けた可能性を意識させるが、10月31日高値を超えて続伸の場合はまず10月4日高値試しとしてダブル天井形成からの反落警戒とするが、高値更新の場合は天井形成への続伸として115円超えへ進む可能性が考えられる。
(6) 31日高値を超えないか、超えた後の反落で112.50円割れへ進む場合は下げ再開警戒として10月26日安値試しとし、底割れからは3月以降の上昇トレンドからの転落を再確認することとなるため中長期の下落期入りとしてとして年末から年明けへの円高継続へ進むと考えられる。その場合は8月21日安値109.77円、5月29日安値108.11円等を段階的に試してゆくとみる。 (了)<4日22:30執筆>

【当面の主な予定】

11/5(月)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
10:00 (日) 黒田東彦日銀総裁、発言
10:45 (中) 10月 財新サービス業PMI (9月 53.1、予想 52.8)
18:30 (英) 10月 サービス業PMI (9月 53.9、予想 53.3)
21:45 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
22:25 (加) ポロッツ・カナダ中銀総裁、講演
24:00 (米) 10月 ISM非製造業景況指数 (9月 51.6、予想 59.3)

11/6(火)
休場 シンガポール
08:30 (日) 9月 全世帯消費支出 前年同月比 (8月 2.8%、予想 1.5%)
12:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、政策金利 (現行 1.50%、予想 1.50%)
16:30 (欧) プラートECB理事、講演
16:00 (独) 9月 製造業新規受注 前月比 (8月 2.0%、予想 -0.5%)
17:55 (独) 10月 サービス業PMI、改定値 (速報 53.6、予想 53.6)
18:00 (欧) 10月 サービス業PMI、改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
19:00 (欧) 9月 生産者物価指数 前月比 (8月 0.3%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 4.2%、予想 4.3%)
20:15 (欧) クーレECB理事、講演[ブリュッセル]
21:00 (欧) ラウテンシュレーガーECB理事、講演

11/7(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 四半期失業率 (前期 4.5%)
14:00 (日) 9月 景気先行指数CI、速報値 (8月 104.5、予想 103.9)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -0.3%、予想 -0.3%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前月比 (8月 -0.2%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 1.8%、予想 0.8%)
29:00 (米) 9月 消費者信用残 前月比 (8月 201億ドル、予想 160億ドル)

11/8(木)
未 定 (中) 10月 貿易収支・米ドル (9月 316.9億ドル、予想
未 定 (中) 10月 貿易収支・人民元 (9月 2132.3億元、予想
05:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
08:50 (日) 9月 機械受注 前月比 (8月 6.8%、予想 -9.0%)
08:50 (日) 9月 機械受注 前年同月比 (8月 12.6%、予想 8.2%)
08:50 (日) 9月 国際収支・経常収支 (8月 1兆8384億円、予想 1兆8685億円)
08:50 (日) 9月 国際収支・貿易収支 (8月 -2193億円、予想 3367億円)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー・現状判断DI (9月 48.6、予想
16:00 (独) 9月 貿易収支 (8月 172億ユーロ、予想 184億ユーロ)
16:00 (独) 9月 経常収支 (8月 153億ユーロ、予想
18:00 (欧) 欧州中銀(ECB)月報
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 2.00-2.25%、予想 2.00-2.25%)
23:15 (欧) クーレECB理事、講演

11/9(金)
08:50 (日) 10月 マネーストックM2 前年同月比 (9月 2.8%、予想 2.8%)
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、四半期金融政策報告
10:30 (中) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 3.6%、予想
10:30 (中) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 2.5%、予想
18:30 (英) 9月 貿易収支 (8月 -111.95億ポンド、予想 -113.00億ポンド)
18:30 (英) 9月 鉱工業生産指数 前月比 (8月 0.2%、予想 -0.1%)
18:30 (英) 9月 製造業生産指数 前月比 (8月 -0.2%、予想 -0.2%)
18:30 (英) 7-9月期GDP、速報値 前期比 (前期 0.4%、予想 0.5%)
18:30 (英) 7-9月期GDP、速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.4%)
22:30 (米) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 0.2%、予想 0.2%)

22:30 (米) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 2.6%、予想 2.7%)
22:30 (米) 10月 生産者物価コア指数 前月比 (9月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 生産者物価コア指数 前年同月比 (9月 2.5%、予想 2.5%)
22:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
22:45 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:00 (米) クオールズFRB副議長、講演
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (10月 98.6、予想 97.7)
24:00 (米) 9月 卸売売上高 前月比 (8月 0.8%、予想
24:00 (米) 9月 卸売在庫 前月比 (8月 1.0%、予想

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