世界連鎖株安は落ち着くか1年周期天井警戒
【概況】
10月8日、中国市場が国慶節による丸1週間の休場明けとなり上海株価指数が3.7%安と急落、人民元も下げて再開した。東京市場は祝日だったがドル円は113.50円を割り込んで一段安へ進み、9日未明には112.82円まで下げた。
10月9日の日経平均は314.33円安と下げたが上海株が下げ渋ったこともありドル円はさほど動かず、9日の日中から10日夜までは113円台序盤を中心として下げ渋りの横ばい推移だった。しかし10日夜にはNYダウが831.83ドル安と暴落し、ドル円も10日夜から11日午前へ大幅下落して111.97円まで安値を切り下げた。
10日のNYダウ暴落から11日には日経平均が915.18円安と暴落の連鎖となり、さらに11日夜にはNYダウが545.91ドル安と大幅続落した。ダウの大幅続落を受けてドル円は12日未明に111.84円まで下げたが、その後は12日の日経平均が103.80円高と下げ渋り、12日夜のNYダウも287.16ドル高と反発、2日間の大暴落一服となったため、ドル円も新たな安値更新には至らずに週を終えた。
【株安は1月末からの暴落時に類似】
10日のNYダウ急落は米長期債利回りが急伸したことに対する懸念を背景としたものだったが、直接的な下落要因となるような新たな材料や報道があったわけではなく、10月3日に史上最高値を更新した後に伸びきれず、自身の高値警戒感・自重から崩れ、10月8日安値を割り込んだところからプログラム売買による売りの連鎖反応が発生したと解釈されている。
今年1月末にNYダウが急落したのは米30年債利回りが3%を超えてそれまでの抵抗ラインを突破したことによる危機感が背景だった。今回はもう一段階上の3.25%ラインが2月以降の抵抗水準だったがそれを超えた上昇となったためにダウも危機感を増長して崩れたと思われる。
今回も米30年債利回りなど長期金利が落ち着けば株も落ち着くだろうと思われる。株安自体がリスク回避の米長期債買いを助長して利回りが低下すればバランスもとれる。しかしトランプ大統領による利上げ批判にもかかわらず米連銀の利上げ姿勢が強調される場合は長期金利の高止まりや上昇基調継続がもう一段階下へと株安を進める可能性も警戒されるところだ。
NYダウは今年1月26日高値26616.71ドルから2月9日安値23360.29ドルまで10日間で3256.42ドル安の暴落を発生させているが、今回の暴落もその当時とほぼ同角度での下落となっている。1月末暴落では2月2日に665.75ドル安、2月5日に1175.21ドル安と2日間暴落した翌日の2月6日には567.02ドル高と反発したが2月9日にかけてもう一段安となる下落へ発展した。今回も2日間の暴落から反発して見せたものの、直前の暴落幅に対しての反騰幅はさほど大きいものとはいえず、1月末暴落時と同様にまだ一段安へ進む懸念を残している。
日経平均は1月23日高値24129.34円から2月14日安値20950.15円まで暴落したが、その後も冴えない展開で3月26日安値20347.49円まで一段安となり、ダウが反騰入りしていった流れからは遅れをとった。1月末暴落に際してのドル円は、前年11月6日に天井を付け、12月12日に戻り高値を付けてから1月序盤まで持ち合いで推移し、1月10日からは株安に先行して下落期に入っていったが、2月序盤からは日経平均の下げと同調しつつ3月26日まで下落、3月26日からは日経平均もドル円も底を打って今月までそろって上昇してきた。
今回も1月末から3月末までの日経平均下落時と同様に株安動向に影響される状況と思われるので、まずは週明け以降に世界連鎖株安から連鎖株高へと基調転換できるか、株安が継続し金融市場全般が悲観ムードに覆われるのかによりドル円の趨勢も決まってくると思われる。日経平均の上昇基調がしっかり見えてくればドル円も同調した上昇に入り、逆に日経平均がまだ下げるようだと今年2月から3月26日にかけて日経平均もドル円も下落が続いたのと同様の展開になりやすいと思われる。
【1年周期の天井形成への警戒】
ドル円は概ね10か月から1年周期のサイクルで天井・大底を付けている。2015年8月24日から10か月目の2016年6月24日、10か月目の2017年4月17日、11か月目の2018年3月26日と大底を付け、2015年11月18日、13か月後の2016年12月15日、11か月目の2017年11月6日と天井を付けてきた。2017年11月6日天井から11か月目が今年10月4日高値である。まだ天井と決めつけるほどの下げには至っていないが、10月第3週も続落となる場合はこのサイクルの天井を付けての下落として下落期が長期化する可能性についても検討が必要になってくると思う。また高値更新へ反騰の場合も10月末から11月にかけてはこのサイクルの天井形成とその後の下落期入りという警戒感を持つ必要があると思われる。
【2017年に三度叩かれた114円台の抵抗帯】
10月4日高値で114.54円を付けてから下落している。昨年も5月11日に114.36円、7月11日に114.49円、11月6日に114.72円と三度114円台で戻り高値を付けて下落に転じてきた。今回もこの抵抗帯に到達しての下落として考えれば、昨年5月や7月からの下落時あるいは11月天井からの下落期を前例とするような下げに発展する可能性も警戒される。
今年3月26日底からの上昇期では5月21日高値から5月29日まで3.27円の下落、7月19日高値から8月21日安値まで3.38円の下落を入れたが、いずれもその後に一段高となっている。今回は10月4日高値から10月11日安値まで2.70円の下落であり、まだ5月及び7月からの下げ幅には至っていないので、まだ両高値からの下落が調整安にとどまって上昇トレンドを継続したように今回も大きな調整安を消化して次の上昇へと発展する可能性を残している。
5月29日安値は52日移動平均と104日移動平均が交錯するところで下げ止まって反騰入りした。7月19日からの下落では7月26日時点は52日移動平均まで下げ止まったもののその後にもう一段安して104日移動平均まで下げている。
現在の52日移動平均は111.82円、104日移動平均は111.21円にある。すでに52日移動平均にはおおむね到達しているので、さらに下げる場合は104日移動平均のある111円台序盤への下落を想定する必要がある。111円を割り込んでさらに続落してゆくようだと、5月及び8月の調整安レベルを超えて本格的な下げ相場入りとなる可能性を考える必要が出てくるということだろう。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)10月11日未明安値111.84円に対して13日未明安値111.88円では底割れを回避しているが、11日夜高値112.53円と12日午後高値112.49円と戻り高値がやや切り下がり、112円台前半での下げ渋り持ち合いの様相で週を終えている。このため、短期的には112.53円超えからはいったんリバウンド入りとし、安値更新の場合は下げ渋り持ち合いからの下放れによる一段安入りと考える。
(2)株高等を背景にリスクオンが進む場合、米長期金利上昇による金利差注目でドル高の場合は112.53円超えから10月4日以降の下落に対するリバウンド入りとして113円台序盤を目指す上昇へ進む可能性を考える。ただし株高が相当程度に楽観さを回復してこないうちはもう一段安への懸念も残るので113円台を回復した後に再び112.50円を割り込む場合は下げ再開を警戒する。
(3)12日未明安値を割り込む場合は一段安開始としてまず111円試し、さらに株暴落再開の場合は110円台前半への下落を想定する。111円以下は売られ過ぎ警戒とみるが、111円を割り込むところまで下げる場合は中長期的な下落継続性が強まると注意する。(了)<14日21:10執筆>
【当面の主な予定】
10/15(月)
米財務省、半年次為替報告書の議会提出期限
イタリア、2019年度予算案の欧州委員会への提出期限
休 場 (タイ) ラーマ9世国王追悼日
13:30 (日) 8月 鉱工業生産・確報値 前月比 (7月 0.7%)
21:30 (米) 10月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (9月 19.0、予想 19.0)
21:30 (米) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.1%、予想 0.6%)
21:30 (米) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 0.3%、予想 0.4%)
23:00 (米) 8月 企業在庫 前月比 (7月 0.6%、予想 0.5%)
10/16(火)
06:45 (NZ) 7-9月期消費者物価 前期比 (前期 0.4%、予想 0.7%)
06:45 (NZ) 7-9月期消費者物価 前年同期比 (前期 1.5%、予想 1.7%)
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
10:30 (中) 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 4.1%)
10:30 (中) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 2.3%)
17:30 (英) 8月 失業率・ILO方式 (7月 4.0%、予想 4.0%)
18:00 (欧) 8月 貿易収支 (7月 176億ユーロ、予想)
18:00 (独) 10月 ZEW景況感指数・期待 (9月 -10.6、予想 -10.8)
22:15 (米) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.4%、予想 0.2%)
22:15 (米) 9月 設備稼働率 (8月 78.1%、予想 78.2%)
23:00 (米) 10月 NAHB住宅市場指数 (9月 67、予想 67)
10/17(水)
休 場 (香) 重陽節
17:30 (英) 9月 消費者物価指数 前月比 (8月 0.7%、予想 0.2%)
17:30 (英) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 2.7%、予想 2.6%)
17:30 (英) 9月 小売物価指数 前月比 (8月 0.9%、予想 0.1%)
17:30 (英) 9月 小売物価指数 前年同月比 (8月 3.5%、予想 3.5%)
17:30 (英) 9月 生産者物価コア指数 前年同月比 (8月 2.1%、予想 2.3%)
18:00 (欧) 9月 消費者物価指数 HICP改定値 前年同月比 (速報 2.1%、予想 2.1%)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数・年率換算件数 (8月 128.2万件、予想 121.0万件)
21:30 (米) 9月 建設許可件数・年率換算件数 (8月 122.9万件、予想 127.5万件)
25:10 (米) ブレイナードFRB理事、講演
25:30 (独) バイトマン独連銀総裁、講演
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 9月25、26日開催分
10/18(木)
休 場 (印) デサラ祭
08:50 (日) 9月 貿易統計・通関ベース (8月 -4446億円、予想 -433億円)
09:30 (豪) 9月 新規雇用者数 (8月 4.40万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 9月 失業率 (8月 5.3%、予想 5.3%)
17:30 (英) 9月 小売売上高指数 前月比 (8月 0.3%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 21.0万件)
21:30 (米) 10月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (9月 22.9、予想 20.0)
22:05 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
23:00 (米) 9月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (8月 0.4%、予想 0.5%)
25:15 (米) クオールズFRB副議長、講演
10/19(金)
08:30 (日) 9月 全国消費者物価指数 前年同月比 (8月 1.3%、予想 1.3%)
08:30 (日) 9月 全国消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 0.9%、予想 1.0%)
11:00 (中) 7-9月期GDP 前年同期比 (前期 6.7%)
11:00 (中) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 9.0%)
11:00 (中) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 6.1%)
15:35 (日) 黒田東彦日銀総裁、全国信用組合大会で挨拶
17:00 (欧) 8月 経常収支 (7月 213億ユーロ)
22:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
23:00 (米) 9月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (8月 534万件、予想 529万件)
24:30 (英) カーニー英中銀総裁、講演
25:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
25:45 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
オーダー/ポジション状況
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12日の東京市場は、ドルが小じっかり。レンジそのものは決して広くなかったが、夕方にかけてドル高が進む「大引け高」の様相で、ドルの強さが目に付いた。
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