トリプルトップ型,貿易戦争,対日赤字焦点化(9/7)

7日未明にはWSJ紙が記者インタビュー報道でトランプ大統領が対日赤字削減への強い姿勢を示したと報じたことで一段安となり、7日早朝には110.50円も割り込んでいる。

トリプルトップ型,貿易戦争,対日赤字焦点化(9/7)

【概況】

9月5日深夜に111.75円まで上昇して8月29日深夜高値111.82円に迫ったが高値更新に至らず、7日未明の北海道大地震発生からのリスク回避感から6日の日中は続落した。夜間も米国による対中制裁関税拡大への懸念を背景に米長期債が買われて長期金利が低下、ADP民間雇用が予想よりも低調だったことからドル売り円買いが進んで111円を割り込んだ。さらに7日未明にはウォールストリートジャーナル紙が記者インタビュー報道でトランプ大統領が対日赤字削減への強い姿勢を示したと報じたことで一段安となり、7日早朝には110.50円も割り込んでいる。

【雇用統計と米連銀の利上げ姿勢】

米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した8月の全米雇用報告では非農業部門民間就業者数は前月比16万3000人増、市場予想の19万人増を下回った。7日夜の米労働省雇用統計では失業率が3.8%、雇用が19.1万人増と予想されているが、予想を下回る可能性も出てきた。米雇用統計が強ければ米連銀の利上げ継続姿勢に寄与するが、NY連銀のウィリアムズ総裁は6日のNY州バッファローの討論会で「米経済は力強く雇用拡大も順調だが、インフレ圧力が弱いため利上げをさらに急ぐ必要はない」との見方を示した。8月24日のジャクソンホールシンポジウムでのパウエル議長講演でも講演内容はさほどタカ派ではないとしてドル安要因とされたが、7月までの年4回利上げ姿勢は継続しつつも来年には利上げサイクルが一巡する可能性や、貿易戦争問題等を意識して追加利上げを急ぐべきではないとのハト派的姿勢も目立ち始めている印象だ。

【WSJ紙報道、日米通商摩擦問題本格化】

ウォールストリートジャーナル紙はトランプ大統領が電話インタビューに答えて「安倍首相とは友好関係だったが、貿易赤字改善へ日本が米国に払うべきコストを通告すればこれまでの蜜月関係は終わるだろう」と語ったという。米国の仕掛ける貿易戦争、貿易赤字の解消への保護主義的政策は北米自由貿易協定=NAFTAの再交渉、EUとの協議、中国に対する知的財産権侵害を根拠とした制裁関税強化による赤字圧縮等が主要テーマであったが、既に対日赤字問題も隠れた焦点となってきた。6月の日米首脳会談では「真珠湾を忘れない」として対日赤字削減への強い姿勢を示したとのリーク報道もあったが、6日のWSJ紙でのトランプ大統領発言はかなり強硬な対日要求、批判を全面化させるものとなった印象だ。2017年の米国の対日貿易赤字は約690億ドルで中国、メキシコに次ぐ3位となっている。9月後半には日米首脳会談も予定されているが、日本はかなり厳しい状況に追い込まれるかもしれない。

【60分足のトリプルトップ】

9月5日高値111.75円では8月29日高値111.82円には届かずに失速し、両高値の中間にある31日安値110.68円を割り込んだ。このため両高値によるダブルトップ型が完成している。また8月24日高値111.48円も含めれば三点によるトリプルトップ=三尊天井型も形成されている。三尊天井型を形成しても、それが「中段の調整的な三尊」なら二段下げ調整を示すに過ぎないが、三尊から三段下げへと発展すれば下落感がかなり強まってくる。5日夜高値からの急落一服で戻しても、その戻り一巡後にもう一段安に入るようだと三段下げ入りとなりかねない。

日足では8月21日安値を中心に7月26日安値と8月31日安値を両肩とした逆三尊形成の可能性があったが、6日深夜の下落によりその可能性はかなり後退した。8月21日安値109.77円を割り込まなければやや深い押し目底形成から次の上昇へ進み8月29日高値を超えるという可能性も残るが、8月21日安値も割り込むところまで下げるようだと、7月19日天井に対する戻り天井を8月29日につけて、下落が中勢レベルでの二段下げに入り、さらに昨年11月高値への揺れ返し上昇終了による下落期として今年1月から3月にかけての円高ドル安期並に発展する可能性も浮上してくると思われる。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月31日安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りにより9月3日朝から5日深夜にかけての間への上昇を想定してきたが、5日深夜高値からの反落により6日朝時点では5日深夜高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りとなり、次のボトム形成期となる6日の日中から7日夜にかけての間への下落が想定されるとした。1日安値からは5日目に入るのでボトムをつけての反騰注意期にあるが、雇用統計や貿易戦争関連報道で下落が続く場合は週明け午前へと安値形成期が延長される可能性もある。111円台を回復できないうちは一段安警戒とし、111円台回復からはいったん強気サイクル入りとして10日夜から12日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では6日午前への反落で遅行スパンが悪化し、6日夜の下落で先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、遅行スパン好転からはいったん強気サイクル入りとするが、その場合は先行スパン下限が抵抗になってくると思われる。またいったん遅行スパンが好転しても再び悪化するところからは下げ再開として新たな弱気サイクル入りへ進む可能性がある点に注意する。

60分足の相対力指数は20ポイント台まで低下しているので、60分足レベルではかなりの売られ過ぎとなっているが、40ポイント台を回復、維持する反騰に入れない内は安値試しが続く可能性ありとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、111.00円を上値抵抗線、110.75円を下値支持線とみておく。
(2)110.75円以下での推移中は安値更新余地ありとして110円試しを想定する。110円割れへさらに下落が加速する場合は8月21日安値109.77円試しまで下値目処を引き下げる。109.77円以下は反騰注意とするが、110.50円以下での推移が続く内は週明けも安値を試しやすい状況が続くとみる。
(3)110.75円超えからは一旦強気サイクル入りする可能性ありとして111.00円前後試しを想定するが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。110.75円を超え、その後も110.50円以上を維持する場合は週明けにもう一度戻り高値を試す可能性ありとみるが、110.50円以下で終了なら下げ再開として週明けの安値試しを想定する。

【当面の主な予定】

9/7(金)
未 定 (中) 8月貿易収支 (7月 280.5億ドル)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 218億ユーロ、予想 195億ユーロ)
15:00 (独) 7月 経常収支 (6月 262億ユーロ、予想 198億ユーロ)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP、確定値 前期比 (改定値 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP、確定値 前年同期比 (改訂値 2.2%、予想 2.2%)
21:30 (米) 8月 非農業部門雇用者数 前月比 (7月 15.7万人、予想 19.1万人)
21:30 (米) 8月 失業率 (7月 3.9%、予想 3.8%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前年同月比 (7月 2.7%、予想 2.7%)
21:30 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
25:45 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演

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