ドル円 111円挟んで膠着 雇用統計睨みの展開(9/4)

9月3日は米国市場休場のため全般、小動きだった。

ドル円 111円挟んで膠着 雇用統計睨みの展開(9/4)

【概況】

9月3日は米国市場休場のため全般、小動きだった。週末31日は29日深夜高値111.82円からの下落基調が継続して夕刻には110.68円まで下落、下げ幅は1.14円幅となったが、その後は突っ込み警戒感から買い戻されて111円台を回復した。3日朝はその流れで111.18円をつけたが、米加のNAFTA再交渉が合意に至らなかったこと、新興国通貨安の継続、中国の財新PMIが悪かった事などから株式市場が軟調推移となり110.84円まで下げたが、午後からは111円台序盤を回復した。その後は米国市場休場を踏まえて小動きのままとなり、朝高値から昼安値までのレンジ内推移が続いた。
ひとまず29日深夜からの下落は落ち着いているものの、新興国通貨安への懸念、その背景にある貿易戦争問題や米連銀利上げ姿勢の継続、中国の景気減速感、NAFTAも3国合意に至らず、米国による中国への追加制裁関税強化の動き等、ドル円の市場心理としてはネガティブに傾斜しつつある印象だ。

【週末への懸念材料】

8月31日までに米国とカナダのNAFTA再交渉はまとまらなかった。27日に米国とメキシコが大筋合意した段階では市場も楽観ムードとなったが簡単には進まないようだ。トランプ米大統領は9月1日のツイッターで「カナダは何十年にも及んで地位を乱用してきた」「新たなNAFTAの取り決めにカナダをとどめておく政治的な必要性はない」と述べており、安易な妥協を図らない姿勢を示した。米加協議は9月5日から再開されるが、協議再開序盤に前向きな動きが見られないと悲観材料となりかねない

9月3日午前に発表された中国財新の8月製造業PMIは50.6となり前月の50.8から悪化して2017年6月以来の低水準となった。これを受けて上海総合株価指数は一時1%を超える下落となった。終盤は持ち直したものの最近の中国経済指標は成長鈍化を認識させる数字が多くなってきている。ドル人民元は8月24日に人民銀行が基準値算出基準の変更を発表して元安抑制姿勢を示したことで下落し、29日から30日にかけてはやや上昇したが31日、3日と反落しており抑制が効いている。しかし米中問題が再びこじれれば抑制も効かなくなると懸念される。

米国はすでに500億ドル規模の中国製品への制裁関税を発動済だが、これに加えて予てから2000億ドル規模への関税対象拡大姿勢を示してきた。この関税強化による影響について8月20日からUSTRの公聴会が開かれてきたが、9月6日には意見公募も終了する。8月30日には一部通信社が「トランプ大統領が9月の早い段階で2000億ドル規模の関税強化を発動することを支持している」と報じている。その後は続報が見られないものの、意見公募終了後の9月7日には発動されるのかどうか注目される。仮に発動されれば中国側が600億ドル規模の米国製品へ対抗関税を発動する見込みで米中貿易戦争問題はさらに混迷し、市場もリスク回避型行動へ走りやすくなる。

9月3日午後にトルコ中銀が8月の同国インフレ急伸に対応して「使い得るあらゆる手段を駆使し、13日の政策決定会合で金融政策スタンスを調整する」と表明した時にはユーロが上昇する等の反応が見られた。一時的なものだったが、市場も新興国通貨安をかなり警戒していることを再認識させた。トルコリラは8月13日に史上最安値をつけた後は新たな安値更新には至っていないが最安値に迫ってきている。インドネシアルピアが連日の史上最安値更新となり、イランのリアルも9月3日に史上最安値を更新した。経済破綻状態に近いアルゼンチン・ペソ、南ア・ランド、インド・ルピー等にも波及しているが、1997年から1998年にかけてのアジア通貨危機を彷彿とさせる動きだ。1998年の通貨危機から10年後の2008年にリーマンショックがあり、そこからさらに10年を経過している。米国株式市場が楽観している内は金融危機には陥らないだろうが、徐々に外部環境が悪化して負のスパイラルと投機マネー逆流が発生すればパニック連鎖を発生しかねないと注意すべきだろう。そうした不安心理がドル円にとっても重石となってきている。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月29日深夜高値でピークをつけて下落したが、31日安値で目先の底をつけて若干反発している。今回の高値形成期は9月3日朝高値を含めて5日にかけての間と想定されるが、既に3日朝高値と3日夜高値の小ダブルトップで戻りが一巡している可能性がある。111円割れを切り返す内は3日朝高値超えからの上昇余地ありとするが、3日昼安値110.84円割れからは新たな弱気サイクル入りと仮定して5日の日中から7日にかけての間への下落へ進みやすくなるとみる。

60分足の一目均衡表では3日の反発時では先行スパンが戻り抵抗となって上抜けずにいる。111円を挟んだ持ち合いのため遅行スパンは実線と交錯している。3日朝高値超えからは先行スパン突破へ進みやすくなるとみて、先行スパン突破からは111.50円前後を目指す上昇を想定するが、先行スパンを突破できずに3日昼安値を割り込んで続落するところからは先行スパン転落と遅行スパン悪化もそろうために下げ再開と仮定し、遅行スパン悪化中の安値試し優先とみてゆく。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3日朝高値111.18円を上値抵抗、3日昼安値110.84円を下値支持線とみておく。
(2)3日昼安値割れ回避か、一時的に割り込んでも切り返して111円台を回復する内は上昇余地ありとし、3日朝高値超えからは111.30円から111.50円にかけてのゾーンを試す上昇を想定するが、そこは戻り売りにつかまりやすいとし、その後の111円割れからは下げ再開とみる。
(3)3日昼安値110.84円割れから続落し始める場合は弱気サイクル入りと仮定し、31日安値110.68円割れからは次の安値形成期となる5日の日中から7日にかけての間への下落を想定する。当初は110.50円前後で買い戻しも入りやすいとみるが、111円以下での推移が続く内は4日夜、5日にかけては安値試しを継続しやすいとみて、110.25円から110.00円にかけてのゾーンを試しにかかるとみる。(了)<9:45執筆>

【当面の主な予定】

9/4(火)
10:30 (豪) 4-6月期 経常収支 (前期 -105億豪ドル、予想 -110億豪ドル)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 3.6%、予想 3.9%)
21:15 カーニー英中銀総裁、ホールデン理事、サンダース委員、テンレイロ委員らが議会証言
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 -1.1%、予想 0.5%)
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 58.1、予想 57.6)

9/5(水)
10:30 (豪) 4-6月期GDP 前期比 (前期 1.0%、予想 0.7%)
10:30 (豪) 4-6月期GDP 前年同期比 (前期 3.1%、予想 2.8%)
10:45 (中) 8月 財新サービス業PMI (7月 52.8、予想 52.6)
16:55 (独) 8月 サービス業PMI、改定値 (速報 55.2、予想 55.2)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI、改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI (7月 53.5、予想 53.9)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.3%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 1.2%、予想 1.3%)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -463億ドル、予想 -500億ドル)
22:20 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、米経済と金融政策についてプレゼンテーション
23:00 (加) カナダ銀行(BOC)政策金利 (現行 1.50%、予想 据え置き)
29:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演

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