円 逆三尊形成か下落基調継続かの分岐点(9月第1週)

7月26日安値は3月26日底から5月29日安値、6月26日安値を結ぶ支持線及び52日移動平均で止まったが、8月13日への下落によりこれら支持線は割り込んでしまった。

円 逆三尊形成か下落基調継続かの分岐点(9月第1週)

【概況】

3月26日安値104.63円から7月19日高値113.17円まで凡そ4か月、上昇した。上昇の背景は米国が仕掛ける貿易戦争による人民元安、新興国通貨安、さらにユーロ安等によるドルストレートでのドル高がクロス円での円高に勝る状況が続いたこと、貿易戦争問題を意識しながらも米国株高が継続したことが材料視された。7月19日からは円高が勝り始め、7月末から8月15日にかけてはさらにドル高が加速したものの円高が勝ってドル安円高が継続した。
8月16日の米中商務次官級協議開催報道からドルストレートでドル高が一服してドル安が8月28日まで続いたが、ドル円は8月21日までを円高で推移したもののその後は米国株高の継続や貿易戦争問題へ楽観的な観測により29日深夜にかけて反発した。

8月29日夜は米GDP改定値が予想の4.0%を上回る4.2%となり、速報の4.1%を上回ったことから米国景気の強さが再認識されて株高が進行、ドルは反発に転じた。米国とメキシコのNAFTA再交渉も合意に達したことで株高が進み、ドル円も111.82円まで上昇して8月24日高値111.48円を上回った。しかしドルの強さが新興国通貨安、資源通貨安を再燃させ、ユーロやポンドも下落する中、クロス円での円高がドルストレートでのドル高に勝り始めてドル円は円高へ転じた。30日夜にはトランプ大統領が対中制裁関税拡大を9月序盤にも実行するとの観測記事が貿易戦争リスクを再燃させたため、ドル円は31日夕刻安値で110.68円まで失速した。31日深夜はやや戻して111円台を辛うじて回復して終了した。

【新興国通貨安への懸念】

8月16日に米中商務次官級協議開催が報じられてから人民元安を中心とする新興国通貨安が一服した。8月24日には中国人民銀行が基準値算出方式を変更して元安抑制へ動いたこと、27日に米国とメキシコがNAFTA再交渉で合意したことは貿易戦争全面化と新興国への負の影響を緩和するものと市場は受け止め、最も楽観的な米国株式市場ではナスダック指数やSP500指数が史上最高値を更新した。しかしトルコリラは暴落商状を再開し、アルゼンチンペソが最安値を更新、インドネシアルピアの下落、南アランドやロシアルーブルの下落なども再燃し始めている。30日午前は経済指標悪化をきっかけに豪ドルが下落、クロス円での円高がドル高に勝っり始めるきっかけとなった。

30日にはトランプ大統領がすでに発動されている対中制裁関税500億ドル規模の他に2000億ドル規模の関税強化を早急に実行する見込みとブルームバーグが報道した。31日には再交渉合意が期待されていたカナダと合意に至らず、協議は継続となった。トランプ大統領は人民元安やユーロ安への非難を強めているが、貿易戦争は米国が有利に仕掛けていることと、リスク回避で投資マネーが逆流することから結果的にはドル高を助長するという矛盾に陥っている。
米国株式市場の強気を見れば貿易戦争問題を過度に悲観する必要がないのではないかという感覚にも陥るが、新興国通貨安は米国株式市場が思っている以上に悲観的な負のスパイラルに陥り始めているのではないかとの懸念がある。米国株高が崩れる場合にはドル円も円高にぶれやすくなる点に注意がいるだろう。

【逆三尊の目があるが、昨年12月型の戻り一巡の可能性】

【逆三尊の目があるが、昨年12月型の戻り一巡の可能性】

7月26日安値は3月26日底から5月29日安値、6月26日安値を結ぶ支持線及び52日移動平均で止まったが、8月13日への下落によりこれら支持線は割り込んでしまった。8月21日へ続落した段階では11月6日天井への揺れ返し上昇が一巡して円高期に入った印象が強まった。
しかしその後の反発で52日移動平均を上抜き返し、8月24日高値では8月15日高値をわずかに上抜いて高値切り下がりパターンを破り、30日深夜にも高値を更新したため、30日朝時点では7月19日からの二段下げで調整安を消化して上昇再開に入る可能性が復活した。上昇再開継続のためには高値切り上げ後の安値も切り上げる必要があったのだが、31日への下落では27日安値を割り込んでしまったために上昇再開ムードは振り出しに戻った。

8月31日安値110.68円は7月26日安値110.59円と対になる水準のため、現状から8月29日高値111.82円を上抜けば8月21日安値を頭、7月26日と8月31日安値を両肩とした逆三尊底形成となり、8月21日安値からの上昇基調が継続しやすくなる。その場合は3月26日底からの上昇波動が継続し、5月21日までを一段目、7月19日までを二段目とし、8月21日安値から三段目の上昇に入る可能性も出てくると思われる。
8月29日高値を上抜けずに8月21日安値を割り込めば逆三尊形成は失敗に終わり、7月19日高値からの下落が8月21日までを一段目とし、8月29日からは二段目に入るという見方が強まる。8月21日への下落が3.38円幅で29日への戻りが2.05円幅だが、これは昨年11月6日天井から11月27日へ3.88円幅して12月12日へ2.90円幅と戻したが高値更新できずに一段安へ向かった時に近い展開となってくる。中勢レベル、秋冬の展開を決める上で重要な分岐点といえる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、31日安値110.68円を下値支持線、111.30円を上値抵抗線とみておく。
(2)111.30円を超える状況が続き始める場合は29日深夜高値111.82円試しとみる。当初はその前後からの反落警戒とみるが、29日深夜高値を上抜いた後も111.50円以上を維持してさらに高値更新へ進む場合は上記の逆三尊底打ちパターンでの上昇継続感が強まるとみて112円台前半試しへ向かうとみる。8月1日高値112.15円を超える場合は7月19日高値試しへ向かう可能性も高まるとみる。
(3)31日安値を割り込む場合は逆三尊底打ちパターンへ進めずに29日深夜高値で戻り一巡となって下げ再開に入る可能性が高まるとみる。110.50円以下での推移が続き始める場合は21日安値109.77円試しを想定する。先行きで21日安値を割り込む場合は昨年11月天井から12月への展開類似による下落継続性を優先してゆく。(了)<20:40執筆>

【当面の主な予定】

9/3(月)
カナダ、米国市場休場
08:50 (日) 4-6月期 四半期法人企業統計調査・全産業設備投資額 前年同期比 (前期 3.4%、予想 6.5%)
10:30 (豪) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
10:45 (中) 8月 財新製造業PMI (7月 50.8、予想 50.6)
14:40 黒田日銀総裁、講演
16:55 (独) 8月 製造業PMI、改定値 (速報 56.1、予想 56.1)
17:00 (欧) 8月 製造業PMI、改定値 (速報 54.6、予想 54.6)
17:30 (英) 8月 製造業PMI(7月 54.0、予想、予想 53.8)
27:30 エバンス・シカゴ連銀総裁、アルゼンチン中銀主催の会合に出席[ブエノスアイレス] 9月4日まで

9/4(火)
08:50 (日) 8月 マネタリーベース 前年同月比 (7月 7.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 経常収支 (前期 -105億豪ドル、予想 -110億豪ドル)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、政策金利発表 (現行 1.50%、予想 据え置き)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 0.4%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 3.6%、予想 3.9%)
21:15 カーニー英中銀総裁、ホールデン理事、サンダース委員、テンレイロ委員らが議会証言
23:00 (米) 7月 建設支出 前月比 (6月 -1.1%、予想 0.5%)
23:00 (米) 8月 ISM製造業景況指数 (7月 58.1、予想 57.6)

9/5(水)
10:30 (豪) 4-6月期GDP 前期比 (前期 1.0%、予想 0.7%)
10:30 (豪) 4-6月期GDP 前年同期比 (前期 3.1%、予想 2.8%)
10:45 (中) 8月 財新サービス業PMI (7月 52.8、予想 52.6)
16:55 (独) 8月 サービス業PMI、改定値 (速報 55.2、予想 55.2)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI、改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI (7月 53.5、予想 53.9)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.3%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 1.2%、予想 1.3%)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -463億ドル、予想 -500億ドル)
22:20 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、米経済と金融政策についてプレゼンテーション
23:00 (加) カナダ銀行(BOC)政策金利 (現行 1.50%、予想 据え置き)
29:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演

9/6(木)
07:30 ボスティック・アトランタ連銀総裁、経済見通しと金融政策について講演
10:30 (豪) 7月 貿易収支 (6月 18.73億豪ドル、予想 14.50億豪ドル)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 -4.0%、予想 1.8%)
20:30 (米) 8月 チャレンジャー人員削減数 前年比 (7月 -4.2%)
21:15 (米) 8月 ADP民間雇用者数 前月比 (7月 21.9万人、予想 予想 19.3万人)
21:30 (米) 4-6月期 四半期非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (前期 2.9%、予想 2.9%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.3万件、予想 21.3万件)
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
23:00 (米) 8月 ISM非製造業景況指数 (7月 55.7、予想 56.8)
23:00 (米) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 0.7%、予想 -0.6%)

9/7(金)
未 定 (中) 8月貿易収支 (7月 280.5億ドル)
08:30 (日) 7月 全世帯家計調査・消費支出 前年同月比 (6月 -1.2%、予想 -0.8%)
09:00 (日) 7月 毎月勤労統計調査-現金給与総額  前年同月比 (6月 3.6%、予想 2.4%)
14:00 (日) 7月 景気先行指数(CI)・速報値 (6月 104.7、予想 103.5)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 218億ユーロ、予想 195億ユーロ)
15:00 (独) 7月 経常収支 (6月 262億ユーロ、予想 198億ユーロ)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP、確定値 前期比 (改定値 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP、確定値 前年同期比 (改訂値 2.2%、予想 2.2%)

21:30 (米) 8月 非農業部門雇用者数 前月比 (7月 15.7万人、予想 19.1万人)
21:30 (米) 8月 失業率 (7月 3.9%、予想 3.8%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前年同月比 (7月 2.7%、予想 2.7%)
21:30 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
25:45 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演

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