【概況】
7月20日のトランプ大統領による米連銀の利上げ姿勢及びドル高への不満がツイートされたことをきっかけに7月19日高値113.17円から7月23日安値110.75円へ急落、さらに7月26日には110.59円の安値を付けた。7月31日までは111円を挟んだ安値圏の持ち合いだったが、31日午後の日銀金融政策発表を円安材料として上昇、8月1日は112.15円まで戻したが、日銀要因による上昇はそこまででその後はジリ安が続いてきた。
8月1日高値112.15円の後、戻り高値は3日の111.87円、6日夜の111.52円と切り下がり、8日未明への反発も111.47円にとどまって高値切り下がりが続いた。一報では7月26日安値110.59円から31日安値110.75円、3日深夜安値110.10円と安値ラインも切り上がり、高値切り下がりラインとともに三角持ち合いの様相となっていた。
8月7日夜の下落で110.99円まで下げて3日深夜安値を若干割り込んだが戻したため、その時点では三角持ち合いの支持線をぎりぎり維持したという状況だったが、戻り高値切り下がりのまま8日夜に110.83円まで安値を更新したために7月26日以降の支持線割れ=三角持ち合い下放れとなった。8日夜、9日早朝も安値を更新しているため、支持線割れの状況が継続している。
【全般的なリスク回避感】
8日は英ポンドが1.28538ドルまで下落して今年4月17日高値1.43756ドル以降の安値を更新し、1年ぶりの安値水準となった。英国のEU離脱問題をめぐってEUとの合意なきハードランディングへの懸念が強まっていることが背景だが、2016年6月の英国民投票による離脱賛成からの大幅下落でつけた2017年1月安値1.19861ドルから今年4月高値まで1年3か月間の上昇だった。過度の悲観が後退したことによるリバウンドだったがこの上昇が一巡、再び悲観先行での下落となっている。そこに貿易戦争問題や米連銀の利上げ姿勢継続によるドル高感が圧力として加わっている。
ポンド安と同調してユーロも下落している。ポンドと同調的に2017年1月に1.0340ドルの安値を付けた後は今年2月高値1.2555ドルまで1年を超える上昇だったが、4月半ばまで高値圏持ち合いにとどまって下放れによる急落となった。5月末からは1.1500ドル割れを回避して横ばいが続いており、新たな安値更新は回避しているものの1.1500ドル割れに対する余裕も乏しくなっている。イタリアの放漫財政問題がクローズアップされてきているため、4月半ばまでの持ち合い形成とその後の下放れを再現するのではないかとの懸念も見え始めている。これらポンド、ユーロの下落感はドル円にとってはドル高要因である一方、欧州リスクとしてリスク回避の円高要因に様変わりしかねない。
【米中貿易戦争、日米FFR】
米国は中国への知的財産権侵害を根拠として中国製品総額500億ドル規模への制裁関税導入を決定し、その第一弾としてすでに340億ドル相当への関税発動を行ってきたが、7日からは残り160億ドルについての発動を決定した。これらに対して中国も同規模の報復関税導入を決めているが、米国はこれらとは別にさらに2000億ドル規模の中国製品への制裁関税の強化方針を示しており、9月6日の意見公募期間終了後に発動する予定となっている。
一時は米中による水面下での協議が継続しているとの報道から楽観視される時期もあったが、ここにきて両国関係改善の糸口が見えない状況に悪化してきている。
米国はトルコに対しても制裁関税の発動を計画、イラン核合意からの離脱によるイランへの制裁再開も始まっているため、貿易戦争問題は世界化しつつある。
そうした中で8月9日からは日米通商協議(FFR)が始まる。米国にとっては中国に次ぐ貿易赤字対象であり、これまでも防衛関連での高額調達を強要してきたが、さらに貿易面での対日圧力が強まると懸念される。特にトランプ大統領の手法としてまず最初に強烈な要求と強硬姿勢を示して妥協を引き出すということが、今回の日米FFRでも再現されるのではないかという懸念もある。トランプ大統領発言等が報じられる場合には円高要因になりやすいと注意する。
【60分足一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月31日安値から3日目の8月3日深夜安値で直近の安値を付けて戻しに入ったが、7日夜の下落で3日深夜安値を割り込んだため、8日朝時点では底割れによる新たな弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる8日夜から10日夜にかけての間への下落を想定した。8日夜へ安値を更新し、9日午前も続落しているため引き続きボトム形成中とみる。111.25円までを戻り抵抗としてその後の一段安警戒とするが、111.25円越えからは強気転換注意として6日夜高値試しとし、高値更新からは強気サイクル入りによる上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では7日夜の反発では先行スパンを上抜け切れずに8日夜への下落で先行スパンから転落している。このため遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、遅行スパン好転からは先行スパン突破試しを想定するが、先行スパンを上抜き返せないうちは下落基調が継続しやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当初、7月26日安値110.59円を支持線、111.25円を抵抗線とみておく。
(2)111.25円を下回るうちは一段安警戒とし、7月26日安値割れからは110円試しを想定する。またその際は7月19日の戻り高値を起点とした下落が二段目の下げに入ること、7月26日時点では維持した3月26日以降の中勢上昇トレンドの支持線からの転落により下落が加速しやすいと警戒される。
(3)111.25円越えからは強気転換注意として6日夜高値111.52円を目指す上昇を想定するが、111.50円手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。(了)<10:10執筆>
【当面の主な予定】
8/9(木)
シンガポール、南ア休場
06:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 1.75%、予想 据え置き)
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 3.2%、予想 3.1%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (5月 16.5%、予想 9.5%)
10:30 (中) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 4.7%、予想 4.4%)
10:30 (中) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 1.9%、予想 2.0%)
17:00 (欧) 欧州中央銀行(ECB)月報
21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 3.4%、予想 3.4%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前月比 (6月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前年同月比 (6月 2.8%、予想 2.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 22.0万件)
23:00 (米) 6月 卸売在庫 前月比 (5月 0.6%、予想 0.0%)
8/10(金)
08:50 (日) 7月 国内企業物価指数 前年同月比 (6月 2.8%、予想 2.9%)
08:50 (日) 4-6月期 四半期GDP、速報値 前期比 (前期 -0.2%、予想 0.3%)
08:50 (日) 4-6月期 四半期GDP、速報値 年率換算 (前期 -0.6%、予想 1.4%)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、四半期金融政策報告
17:30 (英) 6月 貿易収支 (5月 -123.62億ポンド、予想 -119.00億ポンド)
17:30 (英) 6月 鉱工業生産指数 前月比 (5月 -0.4%、予想 0.4%)
17:30 (英) 6月 製造業生産指数 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
17:30 (英) 4-6月期 四半期GDP、速報値 前期比 (前期 0.2%、予想 0.4%)
17:30 (英) 4-6月期 四半期GDP、速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.3%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.9%、予想 3.0%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 2.3%、予想 2.3%)
27:00 (米) 7月 月次財政収支 (6月 -749億ドル)
オーダー/ポジション状況
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