ドル円3月末以降の上昇支持線ぎりぎり(7月第5週)

米経済指標は概ね良好で、特に27日の米第2四半期GDP速報は前期比年率で4.1%となり、前期の2.2%(2.0%から上方修正)を大幅に上回った。

ドル円3月末以降の上昇支持線ぎりぎり(7月第5週)

【概況】

3月26日底からドル全面高の流れに乗じて上昇、7月11日夜に5月21日高値を突破して一段高に入り、7月19日夜には113.17円まで続伸していた。ところが20日未明のトランプ大統領による米連銀の利上げ姿勢批判ツイートから急落に転じ、20日夜にはトランプ大統領がさらに米連銀利上げ姿勢とドル高を批判、ユーロ安及び人民元安を非難したことで112円割れとなり、週明けの23日午前には110.75円まで大幅下落した。この間の下げ幅は2.42円幅となり、5月29日以降の上昇期における調整安のレベルを超える下げ幅となった。
7月24日未明には急落の反動で111.54円まで戻したが、そこが週の高値となり、その後は26日に110.59円まで安値を更新、27日は111円台序盤まで戻すも111円台を維持できずに終わった。

米経済指標は概ね良好で、特に27日の米第2四半期GDP速報は前期比年率で4.1%となり、前期の2.2%(2.0%から上方修正)を大幅に上回った。年末のトランプ政権による大規模減税効果が発揮されて真冬の減速を倍返しで解消した印象だ。第3四半期以降も3.0%前後での堅調推移が期待されるが、貿易戦争問題の行方も大きく左右することになると思われる。

7月25日には米欧首脳会談により通商問題に対する協議的解決姿勢が示されたことで貿易戦争全面化回避の楽観が広がったもののドル円には影響は乏しかった。米国とEUの協議が進んでも本丸の米中問題は解決せず、次のターゲットである日本への圧力も拡大する可能性があるため市場はかえって警戒感を強めたかもしれない。
7月26日にはECB理事会が金融政策を発表、6月会合時に示した年末までの資産購入半減による継続を維持、マイナス金利政策を維持したが、金融政策正常化への前傾姿勢が強まったとは言えないとして発表後はユーロ安ドル高反応へ進み、ドル円にも多少の上昇要因となったが影響は限定的だった。

【人民元安とナスダック動向に注意】

米中貿易戦争全面化懸念を背景としたドル高人民元安は継続している。7月3日に6.7元を突破したところでは中国人民銀行総裁による牽制発言でいったん落ち着いたが、7月19日には高値を更新、さらに7月24日からは中国国有銀行系のドル売り元買いの動きで下落したものの26日午前の基準値発表から上昇再開、27日には6.8424元までドル高元安が進行した。ドル高人民元安と並行して円高人民元安も進行しているため、人民元安基調の継続はドル円にも大きな圧迫要因となっている。

もう一つ、気になる点はフェースブック、ツイッターの株暴落だ。26日はフェースブックが19%安、27日にはツイッターが20%安という歴史的大暴落となり、米ナスダック総合株価指数が大幅下落している。インテル等のIT関連も連想売りとなっているが、30日にはアップルの決算発表もある。NYダウは6月末から反騰してきたとはいえ2月序盤の暴落を解消できない程度にとどまっている。ナスダック指数はダウを後目に25日には史上最高値を更新してから上記2社の暴落発生で失速しつつある。米連銀は米国株高をバブルではないとしているが、トランプ大統領誕生をテーマとしたバブル的な大上昇を続けてきたのであり、それがいつ破裂しても不思議はない。また米中問題がこじれれば大幅下落一服中の上海株も崩れるリスクがある。株安発生の場合には円高へ走りやすくなるため、ナスダック、上海市場には注意したい。

【3月以降の支持線ギリギリで日米金融政策発表へ】

【3月以降の支持線ギリギリで日米金融政策発表へ】

7月23日安値以降は111円を挟んだ揉み合いだが、26日にわずかながら安値を更新し、その後の反発でも24日未明高値を超えていないため、やや右肩下がりの揉み合いとなっている。
日足は23日、26日、27日と下ヒゲを付けて下げ渋っているものの、3月26日底と5月29日安値、6月26日安値とほぼ1直線で結ぶ支持線から下ヒゲ部分では転落している。またこれら安値は52日移動平均を割り込まないか到達したところで踏みとどまり、5月29日安値から3日連続の下ヒゲ足、6月26日も翌日まで2日連続の下ヒゲ足で踏みとどまってきた。今回もギリギリで踏みとどまっているという状況にはあるため、5月21日から5月29日への下落時と同様に現状から切り返して上昇トレンドを継続する可能性はあるが、7月26日安値を割り込んで、終値ベースでも52日移動平均割れとなり、さらに翌日以降へ続落となれば支持線からの転落となるため、4か月弱の上昇一巡による下落再開、円高局面入りとなる可能性が高まると懸念される。

現状で踏みとどまれるかどうか、まず7月31日昼前後に発表される日銀金融政策決定会合の結果内容、次いで8月2日未明のFOMC声明文等で決してゆくと思われる。

7月20日に大幅下落したのは直接的にはトランプ大統領ツイートだったが、日銀が長期金利の抑制を緩和してある程度の長期金利上昇を容認する姿勢へ変わるのではないかとの報道も背景にあった。この報道を意識して本邦10年債利回り等も上昇する場面が見られており、本邦長期金利が実質ゼロで動かない中で米長期金利上昇ならドル高円安という単純な反応では収まらなくなり始めている。いつもは現状維持の繰り返しで材料にならないが、今回は注目度が高い。長期金利上昇の一定容認となれば円高へ向かいやすいと市場は見ているため、FOMC前までは円高反応で進みやすくなるかもしれない。

7月31日から8月1日にかけて開催される米FOMCは議長会見の予定されない会合のために現状維持とみられるが、声明文で年4回の利上げペースへ引き上げた6月会合の姿勢を維持することを強調するかどうか注目される。トランプ大統領による連銀批判ツイートには忖度せずに動じないと思われるが、市場が12月に4回目の利上げが行われるであろうと予想する確率を引き上げるかどうか注目される。またその後の米雇用統計が利上げ継続に寄与すれば8月2日未明から3日夜にかけてはドル高反応になりやすいと思われるが、FOMCの姿勢がさほどタカ派性を意識させず、雇用統計が予想を下回る場合は円高加速要因になりかねない。

【当面の強弱判断目安】

(1)現状は7月20日からの急落一服により111円を挟んだ持ち合いとなっている。26日に若干安値を切り下げその後の戻りも切り下がっているため、右肩下がりの状況にある。日米の金融政策発表内容に対する反応、あるいはトランプ大統領ツイート等によっては急騰も急落もあり得る神経質な展開時期の中で3月26日以降の上昇トレンド支持線ギリギリのところにある。
(2)新たな安値更新回避か、わずかに安値を更新しても110円台を維持して反発するうちは上昇再開余地ありとし、7月24日未明高値111.54円越えを上向きとし、112円到達なら上昇再開の可能性を優先して7月19日高値を目指す上昇を想定する。高値更新なら昨年11月6日高値114.72円等のある114円台へ向かう可能性も再浮上すると思う。

(3)7月26日安値割れから110円割れへ崩れる場合、金融政策等で円高感が強まる場合は支持線割れによる下落期入りと仮定してまず6月26日安値109.37円試し、さらに5月29日安値108.11円を目指す下落を想定する。(了)<29日23:30執筆>

【当面の主な予定】

7/30(月)
タイ市場休場
(日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
08:50 (日) 6月 小売業販売額 前年比 (5月 0.6%、予想 1.6%)
18:00 (欧) 7月 経済信頼感指数 (6月 112.3、予想 112.0)
18:00 (欧) 7月 消費者信頼感 確定値 (速報 -0.6、予想 -0.6)
21:00 (独) 7月 消費者物価指数速報  前月比 (6月 0.1%、予想 0.3%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前月比 (5月 -0.5%、予想 0.1%)

7/31(火)
アップル決算発表
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利発表 
07:45 (NZ) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 7.1%)
08:01 (英) 7月 GFK消費者信頼感指数 (6月 -9、予想 -9)
08:30 (日) 6月 失業率 (5月 2.2%、予想 2.3%)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産・速報値 前月比 (5月 -0.2%、予想 -0.3%)
10:00 (NZ) 7月 NBNZ企業信頼感 (6月 39.0 )
10:30 (豪) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 -3.2%、予想 1.0%)

14:00 (日) 6月 新設住宅着工戸数 前年比 (5月 1.3%、予想 -2.5%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
16:55 (独) 7月 失業率 (6月 5.2%、予想 5.2%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数 HICP、速報値  前年比 (6月 2.0%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 4-6月期 四半期GDP、速報値 前期比 (前期 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 4-6月期 四半期GDP、速報値 前年比 (前期 2.5%、予想 2.2%)
18:00 (欧) 6月 失業率 (5月 8.4%、予想 8.3%)
21:30 (米) 4-6月期 四半期雇用コスト指数 前期比 (前期 0.8%、予想 0.7%)
21:30 (米) 6月 個人消費 前月比 (5月 0.2%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 個人所得 前月比 (5月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前月比 (5月 0.2%、予想 0.1%)
22:00 (米) 5月 ケース・シラー米住宅価格指数  前年比 (4月 6.6%、予想 6.4%)
22:45 (米) 7月 シカゴPMI (6月 64.1、予想 61.9)
23:00 (米) 7月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 (6月 126.4、予想 126.5)

8/1(水)
スイス 休場
07:45 (NZ) 4-6月期 四半期失業率 (前期 4.4%、予想 4.4%)
10:45 (中) 7月 財新製造業PMI (6月 51.0 )
16:55 (独) 7月 製造業PMI、改定値 (速報 57.3、予想 57.3)
17:00 (欧) 7月 製造業PMI、改定値 (速報 55.1、予想 55.1)
17:30 (英) 7月 製造業PMI (6月 54.4、予想 54.2)
21:15 (米) 7月 ADP民間雇用者数 前月比 (6月 17.7万人、予想 17.5万人)
23:00 (米) 6月 建設支出 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
23:00 (米) 7月 ISM製造業景況指数 (6月 60.2、予想 59.8)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利発表 (現行 1.75-2.00%、予想 据え置き)

8/2(木)
08:50 (日) 7月 マネタリーベース 前年比 (6月 7.4%)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 8.27億豪ドル、予想 9.00億豪ドル)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.8%、予想 0.8%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前年比 (5月 3.0%、予想 3.5%)
20:00 (英) イングランド銀行(BOE)政策金利発表 (現行 0.50%、予想 0.75%へ引き上げ)
20:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 据え置き)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 22.0万件)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 0.4%、予想 1.0%)
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 7.75%)

8/3(金)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.4%、予想 0.3%)
10:45 (中) 7月 財新サービス業PMI (6月 53.9 )
16:55 (独) 7月 サービス業PMI、改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI、改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI (6月 55.1、予想 54.7)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.0%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年比 (5月 1.4% )

21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -431億ドル、予想 -431億ドル)
21:30 (米) 7月 非農業部門雇用者数 前月比 (6月 21.3万人、予想 19.5万人)
21:30 (米) 7月 失業率 (6月 4.0%、予想 3.9%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前月比 (6月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 平均時給 前年比 (6月 2.7%、予想 2.7%)
23:00 (米) 7月 ISM非製造業景況指数 (6月 59.1、予想 59.0)

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