来週の為替相場見通し:『介入限界論台頭でドル円急伸。市場の関心は再び日米金利差へ移行』(5/11朝)

ドル円は、5/3に一時151.87まで急落しましたが、今週は再び騰勢を取り戻し、週後半にかけて、155円台後半へと反発しました。

来週の為替相場見通し:『介入限界論台頭でドル円急伸。市場の関心は再び日米金利差へ移行』(5/11朝)

『介入限界論台頭でドル円急伸。市場の関心は再び日米金利差へ移行』

〇今週のドル円、週明け早々の安値153.32から週後半にかけて、週間高値155.96まで上昇
〇前週の急落の反動、FRB関係者のタカ派発言、イエレン財務長官の介入牽制発言等が背景
〇ユーロドル1.07台で方向感に欠ける動き
〇ドル円、主要テクニカルポイントの上で推移、強い買いシグナルも成立、地合い強い
〇円キャリートレードの長期化期待、介入限界論、米政府によるドル高容認姿勢もドル円をサポート
〇来週は5/14に発表される米4月生産者物価指数(PPI)と、5/15の米4月消費者物価指数(CPI)に注目
〇ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):154.00ー158.00、(EURUSD):1.0600−1.0900

今週のレビュー(5/6−5/10)

今週のドル円相場(USDJPY)は、週初153.66で寄り付いた後、早々に週間安値153.32まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)急ピッチな下落(先週のドル円は160.24から151.87まで大暴落)に対する反動買い(押し目買い)や、(2)ボウマンFRB理事による「データ次第で追加利上げの用意がある」とのタカ派的な発言、(3)イエレン米財務長官による「こうした介入はまれであるべきで協議が行われることが期待される」との日本の為替介入に対する牽制発言、(4)リッチモンド連銀バーキン総裁による「強い労働市場を考えるとインフレが確実に下がると確信が持てるまで時間をかける余裕がある」とのタカ派的な発言、

(5)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「想定する中立金利は2%から2.5%に小幅上昇」とのタカ派的な発言、(6)ボストン連銀コリンズ総裁による「利下げを早期に実施することにはリスクがある」とのタカ派的な発言、(7)本邦3月毎月勤労統計(結果+0.6%、予想+1.4%)の市場予想を下回る結果(物価変動を加味した実質賃金も過去最長の24カ月連続マイナス)、(8)日米金利差に着目した円キャリートレードの長期化期待が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値155.96まで上昇しました。

その後は、(9)心理的節目156.00を背にした戻り売り圧力や、(10)米新規失業保険申請件数(結果23.1万件、予想21.2万件)の大幅悪化(米FRBによる利下げ開始時期の前倒し観測→米長期金利低下→米ドル売り)を背景に、一時155.26まで反落する場面も見られましたが、(11)米5月ミシガン大消費者信頼感における1年先期待インフレ率(結果3.5%、前回3.2%)の前回比上昇や、(12)ボウマンFRB理事による「金利をもう少し据え置く必要がある」とのタカ派的な発言、(13)ダラス連銀ローガン総裁による「利下げについて考えるのはまだ早い」とのタカ派的な発言、(14)米長期金利の反転上昇がドル買いを誘うと、週末にかけて騰勢を取り戻し、本稿執筆時点(日本時間5/11午前1時40分現在)では、155.80前後まで持ち直す動きとなっております。

尚、今週は神田財務官による「為替介入について、いつでもやる用意がある」との発言や、鈴木財務相による「市場を注視し、とるべき時にはしっかり対応」「介入原資が制約になるとは特段認識せず」との発言や、植田日銀総裁による「基調的物価上昇率に為替が影響してくるリスクが顕著に高まれば政策上の対応が必要になる」「急速かつ一方的な円安は日本経済にマイナスであまり望ましくない」との発言が相次ぎましたが、市場の反応は限られました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0758で寄り付いた後、(1)ユーロ圏3月生産者物価指数(結果▲7.8%、予想▲7.7%)の伸び率鈍化や、(2)レーンECB専務理事による「インフレ率が目標に向かって鈍化していくことを確信している」とのハト派的な発言、(3)リトアニア中銀シムカス総裁による「年内3回の利下げを見込む」とのハト派的な発言、(4)クロアチア中銀ブイチッチ総裁による「金利は時間の経過とともに徐々に引き下げられるだろう」とのハト派的な発言、(5)スペイン中銀デコス総裁による「物価の道筋が維持されるならば6月からの利下げが可能」とのハト派的な発言、(6)欧米金融政策格差に着目したユーロ売り・ドル買い圧力が重石となり、週後半にかけて、週間安値1.0724まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)米新規失業保険申請件数の大幅悪化や、(8)上記7を背景とした米長期金利の急低下(米FRBによる利下げ開始時期の前倒し観測再燃)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0791まで反発しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(9)エルダーソンECB専務理事による「6月利下げの公算大」とのハト派的な発言や、(10)ECB理事会議事要旨(4/11開催分)における「ディスインフレプロセス継続の確信で意見一致」とのハト派的な見解発表、(11)米5月ミシガン大消費者信頼感における1年先期待インフレ率(結果3.5%、前回3.2%)の前回比上昇、(12)上記11を背景とした米長期金利の反転上昇が重石となり、本稿執筆時点(日本時間5/11午前1時40分現在)では、1.0775前後まで反落する動きとなっております。

来週の見通し(5/13−5/17)

<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は4/29に記録した約34年振り高値160.24をトップに反落に転じると、5/3に一時151.87まで急落しましたが、今週は再び騰勢を取り戻し、週後半にかけて、155円台後半へと反発しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表転換線、基準線、雲上限)の上側で推移していることや、強い買いシグナルを示唆する「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること、フィボナッチ38.2%戻し(4/29高値160.24と5/3安値151.87の38.2%戻し155.06)を達成したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日米金利差に着目した円キャリートレードの長期化期待(日米金利差は当面縮まらないとの思惑→投資家によるドル買い・円売り安心感)や、(2)政府・日銀による介入限界論(介入原資に限界があるため、ファンダメンタルズに即したドル買い・円売りの流れを止め続けることは困難との見方)、(3)米政府・当局によるドル高容認姿勢(米国はインフレ抑制に繋がるドル高を容認する構え→イエレン米財務長官は日本の為替介入に否定的な立ち位置)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は上記1を見極める目的で、5/14に発表される米4月生産者物価指数(PPI)と、5/15の米4月消費者物価指数(CPI)に注目が集まります。PPIおよびCPIが市場予想を上回る場合には、米FRBによる利下げ観測後退→米金利上昇→米ドル買いの経路で、ドル円に再び強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されます。

一方、PPIおよびCPIが市場予想を下回る場合には、米FRBによる利下げ開始時期の前倒し観測→米金利低下→米ドル売りの経路で、初期反応はドル売り・円買いで反応する可能性が高いものの、一巡後は、米金利低下→株高→リスク選好の円売りの経路で、ドル円が持ち直すシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米インフレ指標以外にも、米4月小売売上高や、米当局者発言(ジェファーソンFRB副議長、クリーブランド連銀メスター総裁、パウエルFRB議長、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁など)、本邦1ー3月期GDP速報値などイベント盛沢山の1週間となります(目先は4/29高値160.24と5/3安値151.87の半値戻し156.05を試すシナリオを想定)。

来週の予想レンジ(USDJPY):154.00ー158.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は4/16に記録した安値1.0601(昨年11/2以来、約5カ月ぶり安値)をボトムに反発に転じると、5/3に一時1.0812まで上値を伸ばしましたが、今週は一度も1.08台を回復できず失速するなど、上値の重さが目立つようになりました。上方より一目均衡表の雲が急ピッチに垂れ下がってくることや、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、上値余地は乏しい(地合いは弱い)と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、欧米金融政策の方向性の違い(今週もECB当局者より「6月利下げ開始とその後の連続利下げの可能性」を滲ませる発言が複数回あり)や、それに伴う欧米金利差拡大観測など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

こうした中、来週は欧州経済指標(ドイツ5月ZEW景況感指数、ユーロ圏1−3月期GDP改定値、ユーロ圏4月消費者物価指数改定値)と、米国経済指標(米4月PPI、米4月CPI)に注目が集まります。欧州経済指標が市場予想を下回る場合や、米インフレ指標が市場予想を上回る場合には、ECBによる早期利下げ観測→欧州債利回り低下→ユーロ売りの経路と、米FRBによる利下げ観測後退→米金利上昇→米ドル買いの経路が組み合わさることで、ユーロドルに強い下落圧力が加わるシナリオが想定されるため、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0600−1.0900

注:ポイント要約は編集部

『介入限界論台頭でドル円急伸。市場の関心は再び日米金利差へ移行』

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