GW急落の半値戻し手前で足踏み、戻り売り誘発の三度目介入あるか注目
〇先週のドル円、介入後の急落幅に対する1/3戻し154.62を超え、一時半値戻し156.00に迫る
〇三度目の市場介入が行われる可能性が警戒され、156円手前では慎重な動き
〇ミシガン大期待インフレ率は1年先が上昇、FRB高官は利下げ慎重発言を続ける
〇今週は5月14日の米PPI、15日の米CPI発表に注目集まる
〇155.23を上回るうちは156円を試し、市場介入なく続伸する場合は156円台中盤への上昇想定
〇155.23割れからは154円台中盤への下落想定。米CPI等から急落する場合は153円台後半試しへ
【概況】
ドル円は二度の覆面介入(4月29日午後の推定5兆円、5月2日早朝の推定3兆円)と思われる急落により4月29日高値160.16円から5月3日安値151.85円まで8.31円の大幅下落幅となったが、その後は当面の売り一巡による買い戻しで徐々に高値を切り上げて急落幅に対する3分の1戻し154.62円を超えて5月9日には155.94円を付けて半値戻しの156.00円に迫った。
三度目の市場介入に対する警戒感により156円手前で足踏み状態だが、5月9日午前安値155.16円や10日午前安値155.23円へ下げたところは買われて155円台を維持して確りしており、高止まりから一段高と市場介入姿勢を試そうという動きも見られるところだ。
【三度目の介入姿勢を試す】
財務省の神田財務官は5月9日朝に市場介入については「いつでもやる用意があり、極端に言えば今日やるかもしれないし、明日やるかもしれない。必要があればいつでも適切な行動をとる」と述べてけん制している。
一度目の市場介入で154.50円へ急落してから5月1日高値157.98円まで戻したところで戻り売りを誘発する二度目の市場介入が行われたこと、二度目の介入時安値153.01円から5月2日午前高値156.27円まで戻してから介入継続への警戒感で5月3日夜安値へ一段安したことを踏まえ、半値戻しの156円及び5月2日午前の戻り高値156.27円にかけての水準ではもう一度戻り売りを誘発するために三度目の市場介入が行われる可能性が警戒されるために156円手前では慎重な動きを見せている。
5月10日の経済財政諮問会議においては経済団体トップらから「大幅な円安や資源高による過度な物価上昇は民需の抑制につながる」として日銀に適切な金融政策運営を求めている。日銀の植田総裁も5月8日の講演で「最近の円安の動きを十分に注視している」、「一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率が上振れするリスクが高まる場合は政策上の対応が必要になる」と述べて追加利上げの可能性に言及しているため、日銀からの円安けん制的な市場へのメッセージ(日銀関係者からの発言リーク等)を強める可能性もあるだろう。
【ミシガン大期待インフレ率は1年先が上昇、FRB高官は利下げ慎重発言を続ける】
5月10日に発表された米ミシガン大の5月消費者信頼感指数速報値は67.4となり4月の77.2から大幅に低下して市場予想の76.0を下回った。米国の景況感は直近のISM製造業及びサービス業の景況指数悪化やコンファレンスボードの消費者信頼感が悪化するなど顕著であり、長期にわたる金融引き締めとインフレ高止まりの悪影響がみられる。ただ、米国株高は続いており市場は堅調な景気を維持しつつ年内利下げ期待による楽観的な先高感を継続している。
ミシガン大消費者調査における1年先期待インフレ率は4月の3.2%から3.5%へ上昇し、5年先も3.0%から3.1%へ上昇したため、消費者がまだ暫くインフレが高止まりすると認識していることが示された。
ミシガン大消費者調査における1年先期待インフレ率は4月の3.2%から3.5%へ上昇し、5年先も3.0%から3.1%へ上昇したため、消費者がまだ暫くインフレが高止まりするこ認識していることが示された。
米アトランタ連銀のボスティック総裁は5月10日に年内に利下げする公算は大きいとし、年内利下げ回数見通しを1回としたが、その判断については「少なくとも今後2か月は分からない」とし慎重姿勢を示した。ダラス連銀のローガン総裁も10日に「利下げを検討するのは時期尚早」とし、FRBのボウマン理事も10日の講演で「金融政策はあくまでもインフレ抑制を目指すことが最も重要」として引き締め状態がまだ続く可能性を示した。
5月7日にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が年内の利下げ回数がゼロになる可能性もあるとし、8日にボストン連銀のコリンズ総裁が「当初の想定よりも時間がかかる」とし、5月9日にサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が年内に利下げ開始については「様子見モード」と述べるなど、慎重な姿勢が繰り返し発信されている。
【米長期債利回りは総じて上昇、ダウは8連騰】
米長期債利回りは4月後半からの低下が落ち着いて概ね下げ渋りに入っており、10日は前日の下げ幅を解消する反発となった。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.04%上昇の4.50%で終了した。4月25日の4.74%をピークに低下に転じ、5月1日から5営業日連続低下して7日には一時4.42%をつけたが、8日は0.04%上昇、9日は0.04%低下、10日は0.04%上昇と持ち合いの様相となっている。
30年債利回りは4月25日の4.85%をピークとして5月7日の4.57%まで大幅低下した後は下げ渋り、10日は前日比0.05%上昇の4.64%で終了した。
2年債利回りは4月30日の5.045%をピークに5月3日に4.77%まで低下したがその後は持ち直し気味の推移で10日は前日比0.05%上昇の4.87%で終了した。
一方でNYダウは前日比125.08ドル高と上昇して5月1日から8連騰とした。年内利下げ開始への楽観が優勢の展開で徐々に3月21日に付けた史上最高値へ迫っている。ナスダック総合指数は5.39ポイント安と下落したが5月2日から6日へ3連騰した後も高止まりの様相で3月21日の史上最高値へ迫る流れはダウと同様のようだ。
【米CPIと介入の有無、当面のテクニカルポイント】
ドル円は一度目の介入のあった4月29日に当日高値160.16円から夕安値154.50円まで5.66円の下落幅となり、二度目の介入のあった5月2日は前日の5月1日夕高値157.98円から2日早朝安値153.01円まで4.97円の下落幅であり、仮に三度目の介入があれば直前高値から5円前後規模の下落となり5月3日安値151.85円を割り込む可能性もあると思われる。
今週は5月14日の米PPI,15日の米CPI発表に注目が集まる。5月3日の米4月雇用統計で就業者増加数が予想を下回り失業率が予想外に悪化してインフレ指標の平均時給伸び率も鈍化したことで9月利下げと年内2回利下げの期待度が高まったことで米長期債利回りが低下傾向を見せている。
米CPIが顕著に鈍化すれば利下げ期待度が増して米長期債利回り低下による日米金利差縮小という円高バイアスが強まり、タイミングよく三度目の市場介入が仕掛けられればドル円も一段安へ進む可能性もあると注目したいが、逆に米CPIの高止まりで米長期債利回りが上昇し市場介入もなければ半値戻しの156円を超えて3分の2戻し157.39円から5月2日早朝の二度目介入時高値157.58円等へ向かい介入姿勢が問われることにもなりかねない。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月10日午前安値155.23円を下値支持線、156円を上値抵抗線とする。
(2)155.23円を上回るうちは156円を試し、156円到達で市場介入なく続伸する場合は156円台中盤(156.35円から156.65円)への上昇を想定する。米PPIやCPIをきっかけとして上昇がさらに勢い付く場合は157円台への上昇を想定するが、157円台は介入警戒感が一段と増すためいったん反落しやすいと注意する。
(3)155.23円割れからは154円台中盤(154.65円から154.35円)への下落を想定する。154.50円以下は反騰注意とするが、米CPI等から急落する場合は153円台後半試しとし、市場介入の疑われる急落商状の場合は152円前後へ下値目途を引き下げる。
【当面の予定】
5/13(月)
休場 イスラエル、コロンビア、ベネズエラ
08:50 (日) 4月 マネーストックM2 前年同月比 (3月 2.5%)
10:30 (豪) 4月 NAB企業景況感指数 (3月 9)
22:00 メスター・クリーブランド連銀総裁、ジェファーソンFRB副議長、対談
5/14(火)
休場 イスラエル
OPEC月報
08:50 (日) 4月 国内企業物価指数 前月比 (3月 0.2%、予想 0.4%)
08:50 (日) 4月 国内企業物価指数 前年同月比 (3月 0.8%、予想 0.9%)
15:00 (独) 4月 CPI(消費者物価指数)改定値 前月比 (速報 0.5%)
15:00 (独) 4月 CPI(消費者物価指数)改定値 前年同月比 (3月 2.2%)
15:00 (英) 3月 失業率・ILO方式 (2月 4.2%、予想 4.3%)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感 (4月 42.9)
18:00 (欧) 5月 ZEW景況感 (4月 43.9)
21:30 (米) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (3月 2.1%、予想 2.2%)
21:30 (米) 4月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前月比 (3月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 コアPPI(食品・エネルギー除く) 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.3%)
23:00 (米) パウエルFRB議長、講演
5/15(水)
休場 香港、韓国
10:30 (豪) 1-3月期 賃金指数 前期比 (10-12月 0.9%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.3%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 0.4%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.8%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -6.4%)
21:30 (米) 4月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 3.5%、予想 3.4%)
21:30 (米) 4月 コアCPI(食品、エネルギー除く) 前月比 (3月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 コアCPI(食品、エネルギー除く) 前年同月比 (3月 3.8%、予想 3.6%)
21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.7%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 1.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (4月 -14.3、予想 -10.0)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 0.4%、予想 0.0%)
23:00 (米) 5月 NAHB住宅市場指数 (4月 51、予想 51)
23:05 (英) バーナンキFRB元議長、英議会財務委員会証言
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、座談会
5/16(木)
08:40 (豪) ハンター豪中銀総裁補、講演
08:50 (日) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 0.1%、予想 -0.4%)
08:50 (日) 1-3月期 GDP速報値 年率換算 (10-12月 0.4%、予想 -1.4%)
10:30 (豪) 4月 新規雇用者数 (3月 -0.66万人、予想 2.44万人)
10:30 (豪) 4月 失業率 (3月 3.8%、予想 3.9%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産・確報値 前月比 (2月 3.8%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (2月 -6.7%)
13:30 (日) 3月 設備稼働率 前月比 (2月 -0.5%)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数・年率換算 (3月 132.1万件、予想 143.5万件)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数 前月比 (3月 -14.7%、予想 8.6%)
21:30 (米) 4月 建設許可件数・年率換算 (3月 145.8万件、予想 148.8万件)
21:30 (米) 4月 建設許可件数 前月比 (3月 -4.3%、予想 1.4%)
21:30 (米) 5月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (4月 15.5、予想 8.0)
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 0.4%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.1万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 178.5万人)
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.4%、予想 0.2%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 78.4%、予想 78.4%)
23:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
25:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
28:50 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会
5/17(金)
休場 ノルウェー
07:45 (NZ) 1-3月期 PPI(生産者物価指数) 前期比 (10-12月 0.7%)
11:00 (中) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 3.1%)
11:00 (中) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 4.5%)
18:00 (欧) 4月 HICP(調和消費者物価指数)改定値 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.4%)
18:00 (欧) 4月 コアHICP(食品エネルギー等除く)改定値 前年同月比 (3月 2.7%、予想 2.7%)
23:00 (米) 4月 コンファレンスボード 景気先行指数 前月比 (3月 -0.3%、予想 -0.3%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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