介入警戒強いなか、ドル続伸にも要注意
〇先週のドル円、週間安値152.80を付けたのちドル買い優勢、緩やかな上昇たどる
〇上方向のポイントを次々に突破、週間高値155.95まで値を上げ高値圏で越週
〇政府関係者のみならず経団連会長など産業界からも円安けん制発言相次ぐ
〇しかし、植田総裁「今のところ基調的物価に大きな影響ない」の発言もあり、効果は限定的
〇経済指標や要人発言に一喜一憂するも、足もとは再び米利下げ先送り観測強まる
〇今週は米4月PPI、CPIの発表、各国要人発言に要注目
〇ガザ情勢、場合によっては相場の波乱要因に
〇ドル高・円安方向、先週超えられなかった156円レベルが最初の抵抗
〇ドル安・円高方向、先週末安値を含めた155円前半が短期的なサポート
〇今週のドル円予想レンジ:153.50-157.50
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルが反発。前週末3日につけた151.86円を目先安値に、先週は156円近くまでの戻りを記録していた。
前週末は、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘の休止と人質解放をめぐる間接交渉が実施されたほか、日本絡みではGWを利用した岸田首相や上川外相、木原防衛相などの外遊がたびたびニュースで取り上げられていた。
そうした状況下、週明けのドル/円は152.95円レベルで取引開始。すぐに週間安値152.80円を付けたが、以降はドル買いが優勢の状況に。再び鈴木財務相などによる円安けん制発言が聞かれ、日本当局の円買い介入警戒も取り沙汰されるなか、緩やかな上昇をたどると上方向のポイントを次々に突破。週間高値の155.95円まで値を上げ、週末NYは155.75-80円の高値圏で取引を終えて越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「円買い介入」と「米金融政策」について。
前者は、いわゆるゴールデンウイーク期間中に当局は2回、合計8.5兆円規模の「覆面円買い介入」に動いたと推測されるが、それを念頭に置いていたのかイエレン米財務長官から「為替介入はまれであるべき」との発言が聞かれ、様々な思惑を呼んでいたようだ。ちなみに、そののち神田財務官は記者からイエレン発言について問われたものの、「コメントしない」とノーコメントの姿勢を貫いたうえで、「各国中銀当局とは緊密に意思疎通」、「過度な変動や無秩序な動きあれば適切に対応」と述べている。そうしたなか、先週は政府要人だけにとどまらず、たとえば経団連会長から「150円を超えるような円安はいくら何でも安過ぎる」といった発言が聞かれるなど、産業界からも円安けん制発言が相次いでいた。しかし、日銀の植田総裁が「円安、これまでのところは基調的物価に大きな影響ない」と発言したこともあり、円売りの抑制効果は限定的だった。
それに対して後者は、発表される米経済指標や要人の発言に一喜一憂で、なかなか腰が定まらない。3日発表の米雇用統計悪化もあり、「年内二度の利下げ」観測が有力視される状況下、6日に発せられたNY連銀総裁発言「FRBはいずれ利下げを実施する」を受け、週明けはさらに弱気ムードが強まっていた。しかし、翌7日のミネアポリス連銀総裁発言「政策金利を長期間据え置く可能性が高い」、「追加利上げの可能性もゼロではない」−−を受け様相が一変。また、週末にはボウマンFRB理事「年内に利下げを開始することが適切になるとは思わない」、ダラス連銀総裁「利下げについて検討するのはまだ早い」との発言も聞かれている。
<< 今週の見通し >>
先々週のドル/円相場は週間を通し8.36円もの変動をたどり大荒れだったが、先週はさすがにそれよりも落ち着いた値動き。週間を通した変動は3円強(152.80-155.95円)だった。とは言え、その値動きはというと前述したように、おおむねドルが戻り歩調をたどる展開。「週初安・週末高」と言える動きで、日本当局の円買い介入警戒も聞かれるなか、前述したように156円手前まで再び値を上げている。年初来高値160.22円は少し遠いが、それでもドルは今週さらに続伸する可能性も否定できない。
日米を中心とした各国金融政策が注視されるなか、先でも取り上げたように二転三転をしつつも、足もとは「米利下げ先送り観測」が再び強まりつつあるようだ。一時は有力視されていた「年内二度利下げ」観測から「やはり利下げは一度」といった見方へと修正されている。しかし、引き続き発表される米経済指標や要人発言の内容如何では、再び色彩を変化させることも予想され、予断を許さない。一方、それとは別に先週末、結局停戦合意に至らなかったガザ情勢の行方を警戒する声も多く、場合によっては相場の波乱要因に。
テクニカルに見た場合、ドル/円相場は160円を示現後のドル急落で、移動平均の21日線を一時割り込んだものの、先週しっかりと回復してきた。今後はこれまで同様、ドルのサポートとしての役割が期待されているが、若干気になるのは21日線が週内に155円台まで値を上げてくることで、一連の動きのなかで日足が再び下回る可能性もないではない。その場合は、先週見られた21日線の回復はダマシで、ドルの下値リスクが一気に高まることも懸念されているようだ。
そうしたなか今週は、4月の消費者物価指数や同小売売上高などが発表されるほか、週間を通して米国だけでなく欧州要人の発言機会も多く、そちらにも注意を払いたい。また日本や中国の経済指標発表を警戒する声も一部から聞かれていた。
そんな今週のドル/円予想レンジは、153.50-157.50円。ドル高・円安については、先週超えられなかった156円レベルが最初の抵抗。ちなみに、同レベルはフィボナッチポイントにも合致する。上抜けると157円、そして158円などが意識されそうだ。
対してドル安・円高方向は、先週末安値を含めた155円前半が短期的なサポート。先でも取り上げた移動平均の21日線も近くに位置するだけに、ザラ場だけでなくNYクローズベースの動きにも注目したい。割り込むと154円や153円半ばがターゲットに。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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